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The Left Arm Wars  作者: 過酸化水素水
【5章 偽りの想念】
113/121

108: 長(下)

 

「親玉ではない、だと? 何故そう思う?」

 アーラは困惑した面持ちで尋ねる。

 一瞬見えた希望が、陽炎に過ぎないと言うのだ。アーラは少なからず動揺していた。


「これはあくまで他の魔物の例なんですけど……」

 そう前置きしてから、リシャールは話し始める。

「今の『ウォーバット』程の規模じゃないんですが、群れで行動する魔物は少なくないんです。特に小さい魔物ほどその傾向が強いんです」

「……それで?」

「そう言った魔物には、必ず群れを統率する"長"が居ます」

「なるほど、確かにそうだろう。各々が勝手に行動していては群れとしての力は発揮できんからな……」

 アーラは運動場に散らばる生徒達を眺めながら、含みがあるような調子で呟く。

 リシャールはアーラの言葉に頷き返す。

「はい。その通りなんです。それでそういった"長"の殆どは、あのでっかいのみたいに、自分だけで襲い掛かって来たりはしません。もっと大きい魔物……例えば『トロール』のような馬鹿でっかい魔物だとそうじゃないこともありますけど、『ウォーバット』みたいに小さい魔物なら殆どがそうだと思います」


 リシャールの言った『トロール』とは、深い森の奥を住処とする、人間の優に三倍以上の体躯を持つ隻眼の魔物のことである。滅多に人前に現れる事は無いが、パウルースの国民の間では凶暴な存在として認識されている。

 "言う事を聞かないと、『トロール』に連れて行かれるよ"

 というのは、親が言う事を聞かない幼子を脅す際の常套文句として古くから活用されている。

 それにより、何時の時代でもパウルースの子供達の恐怖の対象なのであった。


 なお、深い森が住処という事は、ビリザドのネムース大森林も該当する。

 ビリザドで実際に『トロール』と遭遇した事がある人間は限られているが、アーラとリシャールは過去に一度だけその姿を見た事があるのだった。

 

 アーラは当時の事を思い出しながら、苦々しい顔でリシャールの話を認めた。

「……そうか。筋は通るな」

 幼い頃から自由騎士をしているリシャールの見解だ。普段は頼りなくとも、こういう場合の見識は信じるに値する。

 ただ今の話が本当だとすると、危機は依然として危機のままだ。

 そう考えたアーラは、ふと疑問が浮かび固まった。

 確たる考えはないままに、言葉を紡ぎ出す。


「……奴は違うとしても、親玉は居るのだな?」

「え、ええ。多分居る筈です」

「……他の魔物の場合は、親玉を倒せば群れはどうなる?」

「ええっと、僕の経験上では大体が逃げていった気がします……って、ど、どうしたんですか? そんなに怖い顔して」

 無意識的に感情を表情に出してしまっていたようだ。

 ただ”怖い顔”という部分が気に入らなかったアーラは、怯えるリシャールを一度ねめつけると、再び思考する。


 つまり話を纏めると、『ウォーバット』に全体を統率する親玉は居る。

 怒り狂っているように見えて、それでも奴等は親玉に統率されている。

 あの巨大な奴は、恐らく敵の主力なのだろう。それか単に変わり種なのか。いずれにせよ奴は親玉はではない。

 ということは親玉は他の固体のどれかになる。


 アーラはざっと学校の敷地内を見回す。

 空は何処を見ても『ウォーバット』で溢れているが、どこにもそれらしき風体の『ウォーバット』はいない。

 ならば、親玉はこの場には居ないのか。南の空の大群の中にいるのだろうか。

 アーラは少し考えて、両方の考えを否定した。


 先程ここから見た、校舎の北から現れた魔物達の様子を思い出したからだ。

 あの直前まで、北の空には魔物の影はなかった。だが魔物は北から現れた。

 魔物達はまるで学校の人間の目に付かないように、低く飛んで学校内に侵入したのだ。

 南の空の大群がこれ見よがしにこちらに向かってきているのとは、まるで違う。構成しているのは同じ『ウォーバット』なのにも関わらずだ。

 では両者に行動の違いがあるのは何故なのか?

 アーラはそこに答えがあるような気がした。


 唐突に、巨大な『ウォーバット』が雄叫びを上げた。

 思考の海から引き戻され、アーラは苛立ちの篭った目でそちらを見つめる。

 そして、その巨大な体躯を改めて眺めた時、アーラの脳裏に電撃が走った。呆然とした面持ちで呟く。

「……リシャール。我々は間違っていた。退避している場合ではなかった」

「え、ええ? ど、どうしたんです急に?」

 リシャールは目を丸くする。アーラの発言の意図が掴めないようだ。


「親玉は教師達を襲っている群れの中にいるに違いない!」

「え? 何で? ど、どうしてそれが分かるんです?」

「それは……ええいっ! 説明している時間はない! ともかく我々も急ぎあちらに戻るぞ!」

 考えを説明する時間を惜しみ、アーラはリシャールの腕を掴んだ。

 そのまま強引に引きずって行こうとするが、リシャールは涙目で抵抗する。

「や、止めて下さい! アーラ様正気に戻って! 駄目です駄目です駄目ですよ! 危ないです。危険です。絶対駄目根拠もないのに――あいたっ!」

 後ろ向きな発言ばかりなのに苛立ったアーラは、リシャールの頭をポカリと殴りつけた。


「うるさい! 私を信じろ! 敵の親玉は必ずあそこに居る!」

「か、仮にそうだったとしても、あの大群の中からそれを見つけ出して倒すなんて、そんなこと無理ですよぉ!」

「ならば、あそこに居る奴等を全て倒してしまうのだ! そうすればどれかは親玉の筈だ」

「む、無茶です! そんなの作戦でも何でもないですよっ! 第一、僕等の魔法なんて何の役にも立ちません。邪魔になるだけです絶対!」

 リシャールは必死に踏ん張りながら、アーラの再考を促した。

 今ざっと見ても魔物は数百は居る。北から現れた魔物の総数を考えると、死角となっている土壁の奥には、その数倍以上の数が潜んでいるのは明らかだった。


 だがアーラは考え直すどころか、更に決意の炎を瞳に宿して言った。

「それが何だ! ともかく今は一匹でも多く、奴等を倒さないといけないのだ! 運がよければ、それが親玉かもしれぬではないか! でなくば、この戦いは終わらない!」

「で、でも、"長"を倒したとしても、必ず奴等が逃げ出すって決まっている訳じゃないですよ!?」

「ならば他に手はあるか? あの大群を退けられる策が」

「そ、それは…………」

 アーラに真顔で言い返され、リシャールは口ごもる。

 その様子を見て、アーラははっきりと言い切った。

「ともかく、我々にはこれしか道はないのだ」

「…………」

 リシャールは沈黙する。可能かどうかは置いておいて、アーラが考えはそれほど間違っていないと思ったからだ。

 踏ん張る力が抜けていくのを自覚しながら、校舎の前に居る大群の『ウォーバット』を見つめ続けた。



 この時、二人の意識は校舎前の大群に向いていた。

 話の経緯からすると仕方の無いことではあったが、その間にも時は止まっていた訳ではない。  

 当然のことながら、人も魔物達も活動を続けていた。


 その中の一体。

 アーラが注意を割いてはいけないと感じていた、巨大な『ウォーバット』も同じであった。

 "咆哮"を警戒してか、生徒達は皆遠巻きに様子を伺っているだけで、散発的な攻撃しか加えていなかった。

 なので魔物は、大した邪魔をされずに比較的自由に行動出来た筈だった。

 にもかかわらず、魔物は"洞窟"の上から移動しようとしない。

 よって生徒達は警戒しながらも安心していたのだが――――魔物が周辺で孤立していた『ウォーバット』を自分の元に集めだしたのを見て、誰もが顔色を変えた。


 学校敷地内にバラバラと散在していた『ウォーバット』が、巨大な魔物前方の空間に集っていく。そして、その集団は二つの"洞窟"を覆い隠すように地上に降り立った。

 更に魔物は合流を続け、程なくしてそれも終わる。

 空はガランと拓けた代わりに、『ウォーバット』の身体で"洞窟"は外壁が完全に覆い隠されてしまっていた。まるでこんもりと『ウォーバット』達が寄り固まっているかのようだ。


 いざ戦闘中の教師達の元に行こうとしていたアーラも魔物達の行動に気付き、実行に移せなかった。魔物達の意図が読めなかったのだ。

 "洞窟"内の生徒達も気になったが、中は『硬化』で強化された土壁で護られている筈である。重さで崩れる心配もない。

 そう考えると、外より余程安全な場所な気がしたので、アーラは”洞窟”への視線を切った。


 そうしてアーラが動けないでいる中、魔物達が行動を起こした。

 まるで学校の敷地内に居る全ての人間を威嚇するように、一斉に鳴き声を上げ始めたのだ。共鳴する鳴き声は、運動場に居る者達の脳に鈍い痛みを感じさせた。が、それだけだった。

 大分距離を置いているのが幸いし、誰一人のたうち廻るようなことにはなっていない。

「外ですし、これくらい距離があれば全然大丈夫ですね」

 安心して頬を緩ませるリシャールに、

「…………うむ」

 アーラは浮かない返事を返す。


 自分達には影響なかった今の鳴き声だったが、その特異な行動が気になっていた。

 今の魔物達の一連の行動は、一見あの巨大な魔物が起こさせたように見えた。

 だが、あれは敵の親玉ではないことは、先程明らかにしたばかりだ。つまりあの巨大な魔物には、他の魔物達を統率する能力はない筈である。

 ――――そう思っていたのだが、その推測は本当に正しいのか、アーラは判断に迷っていた。

 

 結果的に、アーラは全く的外れの心配をしていた。

 アーラがそれに気付いたのは、突然巨大な魔物が"洞窟"を飛び立ち、運動場に散らばる生徒達に"ちょっかい"を出し始めてからだった。

 魔物は"咆哮"する訳でもなく、ただ生徒に近づいては離れる。そしてまた別の生徒に近づいては離れる、という"ちょっかい"としか言いようのない行動をとり始める。

 生徒達も魔法で狙うが、誰一人として直撃させる事は出来なかった。


 誰もが巨大な魔物に気を取られている。いつ自分の所に来るか分からないので、気が抜けなくなっていたのだ。

 ただ「こ、こっち来ないで下さいよぉ~~」と怯えているリシャールの隣で、アーラだけは"洞窟"に残った魔物達を注視していた。

 残った魔物達はキィキィと耳障りな鳴き声の合唱を続けている。

 もしあの巨大な魔物が他の魔物を集めたのであれば、何故今別行動をしているのかが分からない。何の為に集めたのかは、謎以外の何ものでもない。

 それがどうしても腑に落ちなかったのだ。


「アーラ様? 何見てるんです……あの魔物達を見てるんですか?」

 考え込むアーラに気付いたリシャールが不思議そうに話しかける。が、思考中のアーラはそれを無視した。

 ただリシャールは特に気にせず話し続ける。

「あいつらは一体何してるんでしょうね? やっぱり知能が低いのかなぁ。こんな拓けた場所じゃ、あいつらの鳴き声なんて大した事ないのに。あのおっきいのと一緒に襲ってくれば、こっちにしたらかなり大変なんだけど……って、僕等からすればそれで良かったんですけど」

「!?」

「やっぱり気を付けなくちゃいけないのは、あっちの――――」

「今、何と言った!?」

 突然、血相を変えたアーラがリシャールの言葉を遮って詰め寄った。


「え、え? やっぱり警戒しなくちゃは、あのおっきいのですって……」

「その前だ!」

「ええ? えーーと……」

 リシャールはあせあせと考え込むが、やがて申し訳なさそうに苦笑いする。

「……僕、何て言いました?」

「馬鹿者! たった今発言したばかりの自分の言葉を忘れるな!」

「そ、そんなぁ」

 アーラの叱責に、リシャールは涙目になった。

 その間にも魔物達の鳴き声は耳に入っている。アーラは騒音に苛立ち、表情を歪めた。

「この鳴き声、気に障るな!」

 そう吐き捨てるように言ってから、アーラは何かに気付いたように目を見開いた。


「こ、今度は、どうしたんですか?」

「……そうだ。それだ。鳴き声だ!」

「鳴き声? あいつらの、ですか? それが何か……」

 アーラはじっと魔物達を観察するように見つめる。

 やがて何かに気付いたように声を上げた。

「やはり! リシャール行くぞ!」

「え、え!? ど、どこに!? あ、向こうへ行くって話ですか!? それは駄目ですよって……」


 アーラはそんなリシャールの心配を一蹴する。

「違う! あの"洞窟"の魔物達を追い払いに行くのだ! もう奴等が鳴き出してから時間が経っている。このままでは拙い!」

「えええ!? 何でです!?」

「馬鹿者! それを私に気付かせたのはお前だろうが!」

 ますます疑問符浮かべるリシャールに、アーラは苛立ったように頭を振ってから、一息に言い切った。

「今、"洞窟"の中にいる連中は、どうなっていると思う!? それが理由だ!」

 アーラは唖然とするリシャールを置いて、そのまま走り出した。


 "洞窟"へと向かいながら、アーラは大きな声で呼びかけた。

「誰か協力してくれ! "洞窟"の中の連中を救い出す!」

「え? どういうことだ?」

「どうやって気付いたのかは分からぬが、恐らく奴等の鳴き声は我々ではなく、"洞窟"の中の連中に向けられている。密閉空間であんな声を受け続ければどうなるか、お前達も想像できるだろう!?」

 アーラの訴えに、近寄ってきた生徒達は理解の色を瞳に宿す。

 言い残した後、走り去っていくアーラの後ろ姿を呆然と見つめて、

「それは……大変だ!」

 ようやく生徒達は動き出す。

 事態の深刻さが分かり、次々にアーラの後を追っていった。


+++


 近づくにつれ、鳴き声の影響は大きくなる。

 外に居るアーラ達は耐えらない程ではないが、中に居る連中への影響は計り知れない。

 奇しくも敵から身を護る為の避難所が、被害を増幅させる檻となっていた。

 その皮肉に、アーラの顔に苦々しい表情が浮かぶ。

 中から誰も出てこないのも、気になった。

 ジッと耐えているのか、はたまたそれが出来ないのか。いずれにせよ、影響がないとは思えない。


 また、周囲の人間は誰も気づいていないようだが、今の状況は既に致命的だった。

 もし"洞窟"に逃げると、魔物達の鳴き声を一方的に受ける事になってしまう。空気穴を塞げば音は防げるかもしれないが、今度は呼吸が出来ない。

 それはつまり、"洞窟"に潜んで大群をやり過ごす、という作戦が瓦解したことを意味していた。作戦を立てた教師達は、鳴き声の効果について大して知識がなかったのだろう。

 アーラは呻きたくなったが、何とかそれを押さえ込む。

 物事を悲観的に捉えるのは性分ではないし、後で分かるより良かった。そう思い込むことにした。

 

 そんな事を考えている内に、アーラを含めた生徒達は"洞窟"の前に陣取ろうとしていた。

 アーラは思考を切り替える。

「……よしっ! 一斉に魔法を放つのだ! 中への影響は気にするな。とりあえず先に奴等をどかさない事にはどうにもならん!」

 アーラの呼びかけに、生徒達は一斉に魔法光を纏い始めた。

 もちろん、中への影響が気にならなかった訳ではない。が、土壁が護ってくれるだろうという推測もあった。

 そして、アーラが号令を出そうと口を開いた時。

「アーラ様! 離れて! 上、上ですっ!」

 切羽詰ったようなリシャールの悲鳴が割り込んできた。


 仔細を尋ねずとも、アーラは理解していた。

 だが生徒達の意識が逸れる前に、アーラは叫ぶ。


「放てぇぇぇぇぇぇっ!!」


 その号令から一呼吸遅れて、生徒達は魔法を放った。

 炎、水、氷、風。

 それらの魔法の礫が、雨のように洞窟を覆う魔物達へ降り注ぐ。


 しかし、その着弾を見届ける前に、不可視の衝撃がアーラを含めた全員を襲った。

 巨大な魔物の"咆哮"が、アーラ達を直撃したのである。

 効果範囲に居た全員が地面に横倒しになる。


「ぐっぅっ!」

 この攻撃は外傷こそないものの、痛みが治まるまでは歩く事もままならない。

 その無防備な所を他の固体に狙われれば、抵抗も出来ずやられてしまうだろう。

 もしかしたら、本来はそういった連携で使われているのかもしれない。

 そう考えると非常に恐ろしい能力だったが、今は後詰の魔物は居ないのが幸いだった。


 暫し苦しんだ後、

「……く、ま、魔物はどうなった?」

 アーラはようやく痛みの収まってきた頭を擦るように手を当てながら身を起こした。予め”咆哮”が来ることを予測していたからか、立ち直りは他の者達よりも早かったようだ。

 アーラ以外ので巻き込まれた者は、まだ地面に蹲っている。誰もが呻き声を漏らしているが、致命傷を負った者は見当たらない。とりあえず全員動いている。

 それを視界の端で確認しつつ、アーラは辺りを見回そうとする。

 が、その前に再び"咆哮"が辺りに響き渡った。


 一瞬ギクリとしたアーラだったが、声が少し遠いのに気付く。そちらを見ると、アーラ達とは別の一団が襲われているが分かった。

 どうやらアーラ達と同じように、"洞窟"に向けて魔法を放っている所を狙われたようだった。

 しかし、そうしている間にも、更に他の一団が"洞窟"に向けて魔法を放っている。


 アーラは状況を把握した。

 先程のアーラの話が殆どの生徒に伝わったのだろう。今、"洞窟"を支点としてグルリと半月を描くように、生徒達が展開していた。

 それぞれ十数名ごとの固まりを作って、"洞窟"に向かって魔法を放っている。

 ただどの一団も"洞窟"からは二十間ほど離れており、それ以上は進めないようだ。

 巨大な『ウォーバット』が接近を許さないのだ。


 そうして手を拱いている間にも、『ウォーバット』達の鳴き声は続いている。

 魔物達は運動場に散らばるアーラ達に向けて鳴いているのではない。真意を理解した上で、目を凝らすとそれがよく分かる。

 やはり魔物達は、自分達の鳴き声を洞窟内に伝えようとしているに違いなかった。

 更に"洞窟"に張り付いている魔物達は、空気穴を塞いでいた。音と空気。中の人間はその二重苦に苛まれている事は確定的だった。


 至る場所の空気穴を押さえられているからか、中から声は聞えてこない。

 あるいはもう少し近づけばどうか分からないが。

 少なくとも今の位置では悲鳴も苦痛の声も、何も聞えない。

 密閉空間で『ウォーバット』の鳴き声を受けては、容易に耐えうるものではないだろう。

 最悪の事態も考えられる。一刻も早く、中の生徒達を救いだす必要があった。


 "咆哮"は危険だったが、それを使う魔物は一体しかいない。

 近づく事は出来ずとも、手数では明らかにこちら側が有利だった。

 巨大な『ウォーバット』も忙しなく動き回っているが、"咆哮"はメイジ自身を一定時間行動不能にさせる事が出来ても、メイジが放った魔法はどうにも出来ない。

「よし! あと少しだ!」

 アーラの言葉が少し弾む。


 "洞窟"を覆う『ウォーバット』の数が、目に見えて減っていた。

 魔物達は魔法の雨を受けているにもかかわらず、逃げ去ろうとはしなかった。一旦離れては再び取り付いて鳴く。を繰り返している。

 攻撃するのに都合は良かったが、その分中の人間は苦しみ続けているだろう。

 後は時間との戦いだった。


 また、アーラは魔物の親玉が魔物達の中に含まれているのではないか、と睨んでいた。

 ひっそりと校庭の方の集団から移動してきたのだろう。

 そうでないと魔物達の特異な行動の説明がつかないからだ。

 なのでアーラは己が魔法を使えない代わりに、親玉を匂わせる固体が居ないか、注意して観察していた。

「い、いけそうですね!」

 隣で『火弾』を放っていたリシャールも、手応えを感じているようだ。

 周囲の生徒達も手を休めることなく、最後の詰めを続けている。

 あと少し。誰もがそう確信していた。


「!? 待て! 今、あそこで……」

 アーラが急に目の色を変える。


 その瞬間を捉えたのは偶然だった。

 校舎前の様子を確認しようと、"洞窟"に向けていた目を一瞬だけ逸らそうとした時。

 アーラから見て"洞窟"の右の辺りを飛んでいた『ウォーバット』に、流れてきた火球がぶつかりそうになっているのを視界の隅で捉えた。

 それだけならば今、この一辺で現在進行形で展開されている光景である。

 だがそのままやられそうになっていたその『ウォーバット』を、まるで庇うように別の固体が身を挺してそれを防いだ、様に見えたのだ。魔法をその身に受けた魔物は、地面へと落下していく。


「…………」

 アーラは今の出来事が妙に気になった。

 何となくそちらを見続けていると、同じ光景を再び目撃するのに左程時間は掛からなかった。


 アーラは確信する。

「奴だっ!!」

 叫ぶなり、アーラは駆け出した。

 リシャールの呼び止める声が聞えた気がしたが、今はそんな事を気にしている場合ではなかった。

 一度目は偶然かとも思ったが、二度目は明らかに身を投げ出していた。

 同格の固体で命を投げ出して護る、などという事は魔物ではありえない筈だ。

 なのにそれをしたという事は単純に考えて、護られた方と護った方、両者は同格の存在ではなかったという事だ。

 魔物に人間の軍隊のような細かい階級制度があるとは思えない。

 もしかしたらそういう魔物もいるのかもしれないが、『ウォーバット』は違う。少なくともアーラはそう感じていた。

 その想定が正しいのであれば、護られた方は親玉であるという事になる。校舎前から移動してきたのだろう。

 仮に想像が外れていても、現状維持なだけだ。何かが悪い方向に進む事はない。狙う価値は十二分にあった。

 

 数は大分減っているとは言え、沢山の姿形の変わらぬ同族が飛び交う中で、一匹の『ウォーバット』を捉え続けることなど出来ない。

 だが、アーラは親玉と思わしき固体を視界に収め続けていた。

 その固体は、殆どその場を動いていなかったからである。


 (今しかない!)

 アーラはそう思い、魔法が降り注ぐ中を駆け抜ける。

 いくつかの魔法が肌を掠めていったが、アーラはそれに気付いていなかった。

 脇目も振らずに走り続け、遂に目前に親玉と思われる固体を捉えた。魔物は得物があるならば十分届く高さに浮かんでいる。

 アーラは走り抜けた勢いそのままに大きく跳躍した。

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

 宙で得物を限界まで大きく振りかぶる。


 あと瞬き程の時間があれば、固体を地面に叩きつける事が出来ただろう。

 しかし、その前に横合いからの衝撃がその身を襲い、振り下ろす事が出来なかった。


 "咆哮"である。

 巨大な『ウォーバット』は他の魔物の援護を放っても、アーラへの対処を優先したようだ。

 その行動こそがアーラの推察が正しかった事を証明していた。

 

 比較的至近距離からの"咆哮"だったからか、アーラは先程数度受けた時以上の頭痛に襲われていた。

 縄で頭の中身を直接締め付けられているような痛みの中で、アーラは意識を手放さぬよう必死に歯を食いしばって耐えた。

 親玉は目の前である。後一歩で届くところに居る。絶好の好機だ。

 ここで逃せば、親玉は二度と手の届く範囲に降りてこないかもしれない。

 今逃すわけにはいかなかった。

 アーラは奥歯を噛み締めて、抜けそうな腕の力を可能な限り込めて、一直線に得物を振り下ろした。


 

 手に確かな感触が伝わってくる。

 確実に何かを打ち据えた。



(…………だが)

 得物の先には何もない。

 地面にも叩き伏せられた魔物の姿はない。

 アーラが慌てて周囲を見回すと同時に、一匹の『ウォーバット』が脇を抜けていった。そのままフラフラと空へ飛び去っていく。

 巨大な『ウォーバット』がそれに付き添うようにして、アーラの傍から離れていった。

 その様子からすると、恐らく今のが本当に親玉だったのだろう。


 正に絶好の機会だった。

 だが、失敗した。

 "咆哮"の影響で、力が込められなかったのだ。もし手にしていたのが剣であれば、結果は違っただろうが……。

 それは言っても詮無きことだった。

 アーラは自分が唯一の好機を逃した事を悟った。



「アーラ様! 大丈夫ですか!?」

 リシャールと、他数名の生徒達がアーラの元に近づいてくる。

「……すまぬ。仕留められなかった」

 リシャールの心配そうな顔を見て、アーラは悔しそうに唇を咬みながら謝罪する。

「アーラ様……」

 何を謝っているのかは、リシャールだけしか理解できなかった。

 他の生徒達は「ともかくここは離れよう」と、アーラを皆で抱えるようにして"洞窟"前から離れていった。

 アーラが"洞窟"の傍に居た事で、生徒達の半数が十分に魔法を使えていなかったのだ。

 とはいえ、もう距離を取ったので再開出来るはずだった。

 


 しかし、一向に魔法の雨は始まらなかった。

 散発的に放たれていた魔法も、自然と途絶えていく。

 アーラはいつの間にか巨大な魔物の"咆哮"が聞えてこないのに気付いた。

 ただ代わりに何かを勝ち誇るかのような雄叫びが聞えている。


「あ、あ、ああ…………」

 周囲からは絶望に彩られた嘆きが聞えてくる。

 一つではなく、幾つも。


「……ア、アーラ様ぁ」

 傍で泣きそうな声が上がる。

 ただそれが聞きなれたものであった事に、逆にアーラは安心を覚えた。

 普段は苛立つ事が多いのに、おかしなものだ、と不意におかしくなる。

「アーラ様?」

 思わず口元が緩んだアーラだったが、直ぐに引き締める。

 既に痛みは治まっていた。

 肩を借りていたことに礼を言って、自分の足で地面に立った。

 礼を言われた方は、まるで聞いていない様子だったが。


「ここからが本番だな」

 アーラは独りごちる。

 眼前に広がる光景を目にしても、アーラは不思議と落ち着いていた。

 ずっと手に持っていた得物を握り締め軽く振る。

 感じた違和感に目をやると、先程親玉を打ち据えた事が原因か、そもそも無理が過ぎたのか、得物にしていた箒の竹が、ボッキリと折れてしまっていた。もはや武器としては使えない。

 アーラは悔しそうにそれ見つめると、傍に放り捨てた。

 

「素手では流石に厳しいな……」

 アーラの声の中に弱気な気配を感じて、リシャールは心配そうに近寄る。

 ただ何も声を掛けられずに、そのまま眼前に広がる絶望を眺めた。



 遂に、南の空の大群の先鋒が、学校の敷地内に入り込んできたのである。



 遠目からは塊に見えていたが、大群の中でも進行速度には差があったようだ。その為、実は長い縦列となっているようだった。考えてみれば当然の話である。

 とはいえ、今現れている数だけ見ても、数万は居るだろう。

 まるで空が黒い布で覆い隠されているようだ。


 校舎の前で戦闘していた教師達も気付いていたようだ。

 魔法そこそこに、こちらを目指して後退を始めている。

 ただ北から現れた魔物はそれを容易に許さないのか、教師達の退避は中々進まない。

 師達によって大分減らされた魔物達だが、まるでここが契機と分かっているように、出現の勢いが一層増していた。

 

 更に、『ウォーバット』に備わる情報共有能力の為か、南に現れた大群はそちらの教師達の方を目指していた。

 魔物達も一番厄介な相手が誰だかを理解しているのだろう。先にその厄介な連中を仕留めるつもりに違いなかった。

 アーラ達としても教師達をやられる訳にはいかない。頼みの綱を切られてしまっては、もうどうしようも無いからだ。

 しかし、それが分かっていながらも、アーラ達は助けに向かうことはなかった。


 教師達の居る場所は、明らかな死地である。

 魔物達が教師を狙っているであれば、助けに行くとそれに巻き込まれるのは必死だった。

 教師達が全員倒されてしまえば次は自分達、という事は分かっていても、目にはっきりと映る数の暴力という恐怖から逃れられないでいた。


 やがて教師達の元に大群が到達し、一瞬の内に彼ら全員の姿が消えた。

 大量の魔物の身体か黒い壁となって教師達の姿を覆い隠していた。

 そんな絶望の中にあってもまだ抵抗しているのか、微かな隙間から火の魔法の余波と思わしき炎が溢れ出てくる。だが、やがてそれも収まり、それ以後は何の変化も起こらなかった。


 "洞窟"の中の者達を救い出すことも忘れ、運動場の生徒達は呆然と立ち尽くしていた。

 肝心の教師達もやられてしまった。

 もはや自分達に未来(さき)はない事を明瞭に悟ったのだ。

 それからの崩壊は、ある意味当然の事だった。


 生徒達の半数以上が、我を忘れて逃げ出した。

 一縷の望みをかけて正門の方に逃げる者。生徒寮の方へ走り出す者。魔物が比較的少ない南西の隅に逃げる者。様々だった。

 僅かに残った数名の教師達の必死の声掛けも無駄だった。

 生徒達はどんどん分散していき、そのまま運動場に残ったのは僅か百名足らずである。

 更にその中で、応戦しようという意志を持ち続けている人間は、ほんの数名だけ。

 

 その中の一人であるアーラは、必死に打開策を考えていた。

 絶望的な状況である。

 生徒達が逃げ出してしまうのも無理はない。攻める事はできない。

 逃げ出すことで皆助かるのであれば、アーラも逃げ出したかった。

 だが絶対にそうはならないことは分かっていた。各個撃破されるのは目に見えている。

 だからその前に、あの大群を何とかする必要がある。


 魔物を全滅させるか、親玉を探し出して仕留めるか。

 前者が出来れば確実に戦いは終わるだろう。だがそれはもはや無理だと言って良い。

 恐らく、パウルース最強と称される『レオー騎士団』であっても難しいのではないだろうか。

 ならばまだ半人前の集まりである学校の生徒達にどうこう出来る訳も無い。


 必然的に後者を狙うしかアーラ達に道はない。

 ただ視界を覆い尽くす数の魔物が、親玉とはいえたった一匹倒した所で、本当に逃げ出すかは賭けでしかない。

 この有象無象の大群の中に、たった一匹だけ居る親玉を仕留めること。

 そんな気が触れたようにしか思えない策が、この学校の人間が生存する為の、一縷の可能性だった。


 教師達はやられてしまったのだろう。

 大群はゆっくりと矛先をこちらに向けていた。

「…………」

 まるで壁が迫ってくるような錯覚に襲われながら、アーラは決死の覚悟を固めていた。

 隣ではリシャールが頭を抱えて蹲っていた。恐怖から逃れるように、ぶつぶつ何かを呟いている。

 他にはオレリア達の姿もあった。三人は寄り添うようにして支えあっている。

 エレーナの姿もある。彼女も恐怖しているに違いないのだが、いつもののほほんとした笑顔で、周囲の生徒達を宥め、和ませ廻っている。

 その他の生徒達も教師達も、互いに励ましあっていた。

 

 何故こんな状況に陥ることになったのか、この場の人間は誰も分からない。

 アーラも知らないし、生徒達も教師達もそうだろう。

 だがこの場の人間は、嘆く前に他者を思い合っていた。或いは精神の限界まできて、その境地に達したのかもしれない。

 アーラはそんな彼らを何とか護りたいと思った。


「リシャール、立て。まだ終わっていない」

 一人陰を纏っているリシャールの腕を掴んで、無理やりに立ち上がらせる。

「た、立ったって、どうしようもないですよぅ。僕達は死んじゃうんだ……」

 紡がれる泣き言は無視して、アーラは両手でリシャールの頬をムギュッと挟んだ。そして、涙の溜まったリシャールの目をジッと見つめる。


「だが、私はまだ死んではいない」

「ふぇ、ふぇもぉ……」

「お前もだ。リシャール」

「…………」

 アーラはここを訪れた本来の目的を思い出していた。

「言っておくが、私はここで死ぬ予定はない。私は小母様を助けなければならんのだ。こんな所で死ぬわけにはいかない」

 まだ薬の手掛かりを掴んでいない。アーラにはまだやらねばならない事がある。

 その事を思い出すと、不思議と活力が湧いてきた。

 その勢いを借りて、アーラはリシャールへと問いかける。


「お前の父上殿も言っていただろう? 『騎士は死を恐れる必要はない。死は友と(・・・)あるものだ』と。つまり父上殿は友が……この場では私だ。私が死を恐れてないのに、自由騎士であるお前が恐れてはいけない、とそう言っておられたのだ」

 アーラは過去を思い返すように目を瞑って語る。

 いい格言である。しかも父の言葉である。

 さぞかしリシャールは心強く思った事だろうと目を開けると、リシャールは困惑した目でアーラを見つめていた。


「む? 何だ?」

 リシャールはアーラの手の内から逃れると、申し訳なさそうに言った。

「アーラ様、違います。父上が言っていたのは『騎士は死を恐れる必要は無い。死は共に(・・・)あるものだ』です。多分、騎士は常に死と隣合わせだから、今更恐れる必要はない、という事を言いたかったんだと思います」

 そうアーラの言葉を訂正した。


 アーラは当時を思い返すように遠い目をする。

 やがて自分の間違いに気付いたのか、少し頬を染めた。

「そ、そうだったかもしれんが、私の方が格好良いだろう? 友は大事なのだ」

 間違いを誤魔化すように声を張る。

「ええ? そうですかぁ?」

 リシャールは半笑いで首を傾げる。

 その様子が気に入らなかったアーラは、リシャールの頭に拳骨を落とした。

「あいた! 酷いですよぅアーラ様! 間違えたのはアーラ様なのに!」

「うるさい!」

 涙目で不満を吐露するリシャールだったが、いつの間にか先程の不安は表情から消えていた。

 正直アーラはこの効果を狙って昔話をしたわけではないが、まあ結果的に良い方向に転んだので由とすることにした。


 大群から最前の位置で俄かに騒ぎ出したアーラ達を、他の生徒達は唖然とした様子で見つめていた。

 今のところ具体的な打開策は無い。なのにこの余裕はなんだろうか。

 まるで隠している何かが、あるかのように見える。


 そう考えると、期待が湧いてくる。

 まだ希望は残っているのではないか、という願望が恐れを心の隅に追いやっていく。

  

 正直アーラには具体的な策はなかった。

 親玉を倒せば、というのはあるがそれは最終的なもので、今目の前の状況を切り抜けるにはそれでは足らない。

 それにアーラにしてもリシャールにしても得物すらない。満足に戦うことすらままならないのだ。


 だが、確かにアーラには希望はあった。

 一筋の……いや五筋の希望が。


 今程ではないにしろ、これまでも何度も、絶望的な状況を覆してくれた希望達が。

 アーラはその希望を信じていた。

 だからこそ、その希望が自分を見つけられる様に、自分自身も光り輝いていなくてはならない。


 アーラは何かを決心した顔で数歩前に歩くと、立ち止まり後ろを振り返った。

 全員を見渡せる位置に立ち、気炎を上げる。

「感傷もここまでだ。皆聞いてくれ。ここが正念場だ! 前に進む為に、まずはあの"壁"を乗り越える!」

 指示を与えると、どうしていいか分からなかった生徒達も、淀みなく動き始める。

 無理だ、不可能だ、という領域は既に皆通り過ぎていた。

 ポツポツと魔法光が立ち上る。やがてそれは色鮮やかな一個の大きな光となっていく。

 

 そういえば、とアーラは横目で"洞窟"の方を見た。すると、そこには魔物の死骸が散乱しているだけで、鳴き声はもう聞えなかった。

 まだ少し魔物は残っていた筈だが、もしかしたらあちらの"本隊"と合流したのかもしれない。

 今なら中の人間を助け出せるかもしれないが、この状況では中に居た方がまだ安全だろう。

 そう思いアーラは視線を切った。

 そして、正面に向き直る。

 

 近づいてきているので当然だが、魔物の壁は先程よりも一回り大きく見える。

「さぁ……行くぞ」

 恐れを胸の奥に押し込めて、アーラ達は意を決した。


 やがて一斉に魔法が解き放たれる。

 百近くもある魔法は、魔物の壁にポツポツと小さな壁を開けた。

 

 成果といえば――――それだけだった。

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