Episode2 主人公、なる。
『任務』。依頼人が、ギルドを通して冒険者に依頼した仕事のことを指す。ひとつの依頼の成功ごとに報酬とともに、ギルドポイントが加算される。
一定のギルドポイント数を超えれば、ランクが上がる。もちろん、失敗するとギルドポイントはマイナスとなり、一定の切れたポイント数は下回ればランクが下がる。
また、ギルドが制定しているルールを破った場合にもランクが下がり、ひどい場合は冒険者称号剥奪となったりする。
要するに、大人しく楽しく働いて、成功を続ければ簡単にランクは上がるのだ。そして、ランクが上がると、その分危険で報酬が高い任務が増える。
「こちらなんかはどうですか?」
受付嬢のキレイなお姉さんが任務表をこちらに渡してきた。
そこには、草花の採集、隣の町の店までのお届け物など、誰でもできそうな内容の依頼ばかりだった。
やはり冒険者初めたての初期は配達や採集、調査いわゆるおつかいイベントくらいしかない。
といっても、配達は人為的な危険、採集と調査には動物的な危険が伴う。………結果的にどちらも危険か。
けど、やるのみ! これ以外に今の年齢からお金を稼ぐ方法はない!
とりあえず報酬が少し高めの2つを受けることにした。もちろんその分危険も伴う。だが、背に腹は代えられない。
「『白鳥の雫の調査・採集』、『山守への食糧配達』を受けます」
「わかりました。今、こちらで手続きしますので、ギルドキーをこちらにお願いします」
ギルドキー、さっきもらったバッジのことだ。受付嬢のお姉さんに渡すと、すぐに手続きをしてくれた。
「はい、これでOK! どうぞ。初任務、頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます。いってきます」
そうやり取りをした後、私は騒がしいギルドを後にした。
◇◇◇
そういえば、母さんに冒険者になることを伝えてみたとき、驚くべき反応をした。
「母さん、ちょっと冒険者になって金稼いでくる」
「あら、ついに!? 冒険者になれる年になったの! キャー! お母さんうれしー!」
「え………………母さん、反対しないの?」
「反対も何も、私も元々冒険者だったからね。むしろその年になったらすぐになってもらう気満々だったわよ!」
「マジかい……」
お茶目な感じでこう言う母さんは、こういうことを本当にやりかねないから侮れない。というか優しいけどたまに普通に怖い。特にこういうところが………。
「じゃあ、ちょっとお小遣い奮発してあげる!」
「えっ! いいの!?」
「いいよ〜。この前、狩りで美味しくていいもの捕ってきてくれたし、装備はマシなの揃えて欲しいからね」
「あぁ……あれは大変だった………もう二度と会いたくない奴……」
「…………ま、とりあえず、はい、これ!」
そういって、紙とお金を1枚づつこっちに投げた。
ディアナはそれらを拾い上げると、驚き、困惑した。
「えっ、これ銀貨じゃん! こんなにいいの?」
「いいよ。ただし、武器はその紙に書いてあるところで買いなさい」
「わ、わかった。」
✳✳✳
説明しよう!
『レア』。この世界の通貨名である。簡単に言えば、日本で言う『円』のこと。
1円は鉄銭、10円は銅銭、100円は銅貨、1000円が銀貨、10000円は金貨と、計5種類の通貨がある。
平民の最低賃金は、銅銭3枚、つまり、30レアだ。
低すぎる! と、思うだろうが、そもそももう少しお給料はもらえる。30レアもあれば2週間は生活できる。次の給料日までには十分生きていけるので安心してほしい!
通貨の価値が高いので、パンは少なくとも3レアで買える。おいしいものになると12レアと、だいぶ高くなる。
主人公が住んでいるこの街は、他の町と比べて発展している方の街であり、職人たちが多く住む街でもある。だから、より高品質な装備品を生産、販売をしている。
だからこそ、他の町よりものの値段が少し高い。
例えば、木の剣。京都で買う木刀や他の町では15レアか20レアほどなのだか、この街では50レアほどと、まあまあ高い。
服などもちろん高く、100レアもすることがある。お貴族様が買うドレスなんかはその10倍の1000レア以上もすることも!
つまり、銀貨自体平民でも滅多にお目にかかることはできないのだ!
頑張れ、ディアナちゃん! 作者は君を応援している!
✳✳✳
「で、来てみたけど……本当にあってるの? ここで……」
ディアナの目の前には、裏路地の家と店の合間にある暗く狭い道があった。
(ここ……だよな? 紙にもここをまっすぐって書いてあるし……)
「行くっきゃないか。」
そう言いながら、ディアナは暗く狭い道へと足を踏み入れた。