第25話 魔族の動向
共和国、王国を魔族の手から退けてから数日が経った。
てっきり2国を取り戻そうと魔族が躍起になる可能性も考えられたが、そんな事もなく平和な日が続いていた。
紅龍テラフォーミュラー跡地でのマロン達による通信アンテナの設置も滞りなく終わり、この世界にもR.O.Dの通信環境が整った。
ただの通話ができるようになっただけでなく、なんと司令部でテレビ通話を使った作戦会議までもできるようになったのだ。
ちなみに大型モニターを作り上げたのは我らがマロンとイデアなんだけどね。
この2人ときたらラングの街にある廃材だけでモニターをたった数時間で組み上げちゃったよ。
これにはエレオノーラもフェイも……ってかこの世界の連合軍のみんな驚いたようだった。
こんな小さな子が? そう言った声が多く聞こえてくるたび私はなんだか誇らしかった。
そんなアタシ達は今司令部で王国側――サーシャとテレビ通話で話し合いをしている最中だ。
話題は、現状の魔族の動きについて。
共和国に続き王国を解放してからというものこれと言った動きがない様子が気になったのだ。
ってか気にならないほうがおかしいまであるんだけどね。
「王国側から見た様子だと、魔族がここを取り戻そうと攻めてくる様子は以前見られない」
「それはこちらも同様だ。もしかすると先の度重なる戦いで魔族も戦力を大幅に損失したということか?」
サーシャにエレオノーラが答えた。
アタシもそう思う。なんせレギオンもドミニオンも魔将が居て初めて顕現できる存在なのだから、その魔将を2人も失った今、配下を召喚する人材も不足しているのではないかと思ったまでだ。
しかしとサーシャは眉を顰める。
「これまでも大きな戦はあったのだろう? その時も魔族は消耗したはずじゃないのか?」
「過去と今は違うんじゃないか? なにやら魔族も変わり始めているようだし」
グラとグリダリアがチラリと言ってたっけ。
感情がどうのこうとか。魔王も人が変わったとか言ってたし、もしかするとアタシ達と同じように感情に目覚めたのかもしれない。
グラはアタシと紅龍を巡った時に見たあの笑顔は嘘とは思え合いし、グリダリアの怒りだってそう。
感情がない存在ならああして怒りを爆発させることはないはずだもの。
なら魔王だって心境の変化とかあるのかもしれない。
「確かに以前端末で見た記録の中の魔族と現在の魔族は違っているようだ。むしろ退化していると言っていい。効率が悪いように思えてならん。この世界を乗っ取るのであればなぜ人類に対して余裕を与える? 大陸の8割を奪って目的達成が目の前だったというのに」
「ううむ……」
エレオノーラが悩みだした。悩んだとしても答えに行きつかないだろう。なんせ魔族については分からないことだらけなのだから。
「こればっかりは本人達に直接聞いてみないと分かんないよね。こうなったら魔王と直接話をしても良いんじゃない?」
とアタシ。感情が芽生えたのなら以前と違って言葉を交わす余地があるんじゃないかと思ったわけなのだが――
サーシャとエレオノーラは鼻で笑って「敵が話し合いに応じるわけがないだろう」と言ったが、モルトは首を振った。
「いいやティナの意見もあながち外れちゃいねぇと思うぜ」
「モルト!?」
「なんで自分で言っておきながら賛成された瞬間に驚いてんだ……」
いや、まさか賛成してくれるなんて思わなかったからだけど……。アンタは特に否定しそうだったから。
とは口には出さず。モルトは続ける。
「魔族に感情が芽生えて、大陸侵略の手を緩めてるなら必ず理由があるはずだ。まあ戦闘は続いてっから完全に信用できる存在じゃないのは分かってるけどな」
「理由……」
それは一体どんな理由なのだろうかアタシにもみんなにも分からない。もしかしたら魔族にも分からないのかもしれない。唯一わかるのは魔王本人のみ。
「兄ちゃんと姉ちゃんの話も分かるけど、魔王を信じて話し合いの場を作ったら騙し討ちに遭うかもしれんやん。ウチは反対や」
「マロンの意見に俺も賛成だ。ゲストの話は負けが濃厚な賭けでしかないだろう」
とマロンとスコープ。
現在反対派は4人、賛成派がアタシとモルトの2人。
残りは判断ができずに保留といったところか。
サーシャは難しい顔を浮かべながら重いため息を溢してこの話題を切り上げる言葉を切り出す。
「この話に答えはないだろう。今現状で1番気がかりなのは魔族の動向であって、向こうが何を考えているかを想像することではない」
「ですね。ではサーシャさんどうしますか? 中立都市へ偵察に向かうか、このまま離れた場所から状況を見守るか……どちらかですが」
イデアも来たばかりなのによく考えてくれる。
その言葉に一同は考え込んだ。
中立都市への偵察は正直アタシ的にはアリだと思う。
この世界のあの場所がどういう風になってるかは見たわけじゃないから分かっていないけど、エレオノーラにフェイから聞いた話からして、そこまで大きく違った様子ではない事はイメージ出来ている。
違う点があるとすれば技術の発展度合いか。
本当にそれぐらいなのである。であればどこから入ってどう進めば良いかも必然的に思い付くわけだから偵察は望むところといった感じなのだ。
「偵察するにせよ少数精鋭。それも戦力と隠密に長けた者を選抜する必要があるな」
エレオノーラの言うとおり。中立都市にはもちろんテラフォーミュラーがあって、そこを守護してるのがあのグリダリアなのだ。
もし偵察中に奴が出てこようものなら1人残らず倒されてしまうだろう。
それ程までに奴の魔法が厄介なのだ。
【接続魔法】周りにある者全てを自分の体に取り付け体にする魔法は厄介極まりないのだから。
「偵察に長けた存在なら帝国にも何人か居るが、戦力となるとな……」
「こちらは真逆だな。戦力はあるが偵察可能な人材が枯渇している……なにせ多くを失ってしまったのだからな」
エレオノーラの言葉にスコープが顔を伏せる。
その人材というのは恐らくガジェットのことだろう。
【シザリア特攻隊】メンバーはこれまで単独での潜入やら調査を行っていたというのだから。
だがガジェットはもう居ない。いるのはスコープとキーパーだけだ。たった2人だけでの偵察は困難極まる。
「なら現地集合の合同偵察任務ってことで良いんじゃないかな?」
そう思いアタシは口に出した。
これにはサーシャもエレオノーラも首を縦に振ってくれた。よかった……さっきみたいに否定されるんじゃないかって思ったよ。
「そうとなれば選抜する必要があるな」
「ああ。そのようだ」
どうやら偵察する事はもう確定されたようで、サーシャとエレオノーラは偵察部隊の選抜に考えを移し始めるのだった。
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