第33話 死闘。怒りにまかせて
グリダリアの参戦で状況は一気に混沌へ。
瓦礫の巨人が巣の外側から外壁を破壊しながら巨腕を振るう。ってかここがアンタ達の大事な場所だってはずなのになんでこんなぶっ壊しながらお構いなしな攻撃できんのよッ!
「ちょっとお兄ちゃん! ここが私の家だってこと忘れてるわけじゃないよね! 分かってる? ここが壊れたらママが困るんだからね!」
「分かってるよ! でもお姉さん相手にそうも言ってられないだろ! 巣はどうせ時間が経てば元通りになるんだし、優先はこっちだよ!」
狭く限られたスペースにグリダリアの広範囲攻撃はヤバすぎる!
ガジェットが魔具を操作して空に飛び上がる。
一体何を――
『ゲスト! お前はスコープと嬢ちゃんの方を頼むね! 僕はこのデカブツをなんとかしてみるからさ!』
「ちょっとゲスト! 1人じゃ無理よ! アイツの魔法はアンタにとって――」
『相性最悪だろ? そんな事団長の報告を聞いて承知してるって〜』
だったらなんで!? 魔具を操る戦闘スタイルのガジェットは【接続魔法】の餌食になる! どこにそんな自信が!
「ゲスト! これは試合じゃないんだ。命をかけた生存競争だ! ここで誰かが奴の攻撃を妨害しなきゃ全滅は目に見えてる! ガジェットが如何に不利だとしてもだ! やるしかないんだ!」
「そ、それはそうだけど!」
「私を無視しておしゃべりとか! 舐めすぎなんじゃないお姉ちゃん!」
しまった!?
集中が途切れた隙にグラが肉薄し、アタシの体をめった打にする! 速い速すぎる!? 自分の体を見ながらの高速化!? アタシに目を向けてもないのになんでこんな正確に打ち込めるの!!?
「お姉ちゃん達はいらない存在なの! ここで絶対に消しちゃうんだから!」
「いらないってなんでよッ!」
強引に突き出した拳がグラの腹部に直撃し体が吹っ飛んで瓦礫の山に激突した。
間髪入れずアタシは全力を解放する事にした!
「【鬼焔羅刹ッ!】」
全身に力が漲る! 今回は体力も十分だからかなり長く覚醒状態を維持できる!
相手が子供だからってもう容赦はしない! 今のこの状況はアタシがグリダリアを逃したから起こった最悪の結果! もう……躊躇わない! 相手は魔族。魔族なんだ! アタシ達人類の――敵ッ!!
「らああああああーーーッ!!」
ドゴンッッ!!
瓦礫の山に拳を打ち付ける! そこに居るはずのグラに向かってアタシは拳を振い続ける! クラフトアックスじゃ振りが遅くて逃げられる! この子は格闘で――速度重視で沈めてやるッ!!
「ウララララララッッ!!!!」
ラッシュラッシュラッシュ!!!
急所がどうとか関係ない、ただひたすら溢れる力に任せて瓦礫の山を殴り続けた!
「いったいなぁ。そんなガサツな攻撃を私に向けないでよ!」
瓦礫の山から足が飛び出た! 咄嗟に腕をクロスさせて防御するが速度が増したグラの蹴りの威力はかなり高くて覚醒状態のアタシでも完全に防ぐことが出来なかった!!
吹っ飛ばされたアタシに瓦礫から飛び出したグラが迫る! スコープの援護射撃が彼女の行く手を遮るが、それを手で掴んでへし折った!
「お姉ちゃん達の役目は終わったの! この世界を住みやすいように作り変えるだけで十分なのにさぁ。余計なことして神様達を困らせないでよ!」
「神様!? アンタ一体なんの話をしてんのよ!」
追いついたグラがアタシをボールのように蹴り飛ばす!
やばい!!? 速すぎて受け身が取れない!?
宙に放り投げられた時に見えたのは、グリダリアの魔法に魔具を奪われたガジェット。やっぱり無理だ! どうしたらこの状況を――
ドゴォ!!
「ぐはっ」
瞬きした瞬間、腹に重たい一撃が突き刺さった! 踵落とし!? 地上に落下して激突、肺の空気が全部飛び出た!? 意識が持っていかれる……。
「ゲスト! 避けろぉ!!」
スコープの声にすぐさま反応しその場を横に転がる! 瞬間グラの拳がアタシの居たところを殴りつけ、砕き、貫いた!
確実に殺すつもりできてる! 今の避けなかったらアタシの頭は今頃潰れたトマトになってたわね!
どうにかしてこの速度に対応しなきゃ。グラは停止とか鈍足化を、むやみやたらに使ってこない。ここぞという時に使ってくるつもりね。
瓦礫を蹴り上げ、グラの接近を妨害してやった!
動きが少し遅くなった瞬間を狙ってアタシは腕を振るう!
でもここぞって時に停止か鈍足化されるのはきつい。いやもしかしたらアタシの動きの方を高速化させてタイミングをずらされるかも! つまり、高速化、鈍足化、停止、巻き戻し。この4択を常に迫られるって事だ。シスター……。2秒で思考をまとめる修行をしてきたけど、今回の相手はそんな次元じゃないわよ!
心の中でシスターに文句を言ってやる。なんとか喰らいつくが、やはり追いつけそうにない。目が慣れるとかそういう問題の話じゃない!
こうなったら自滅覚悟でやるしかないか!
「スコォォプ!! 爆発する矢をアタシ目掛けて全部撃っちゃって! 絶え間なくね!」
「だがそんな事したらお前もタダじゃ――」
「リスクは承知の上! そうでもしないとこの子に一生追いつけない! 少しでも視界を塞いで動きを緩める! 選択を絞る! あとはアタシの勘と運でなんとかするから!」
「分かった!」
スコープが爆裂矢を装填し連射する! 矢が降りかかると同時に爆発がアタシとグラを襲う! 痛い! 体が弾け飛ぶかも! 瓦礫がアタシの体を斬り裂き傷から血が滴る! でも煙と爆炎で目の前が見えないわよねぇ!
グラの格闘は型が無いストリートファイトスタイル。
足捌きと息遣いで【気】を探るまでもなく居場所が分かってんのよっ!!
腕に【神気】を集中!
殴る殴る殴る!! 煙の向こうから伝わる硬めの肉の感触! 魔族由来の外殻を砕いて柔らかな肉の感触が拳に伝わってくる。そして聞こえるグラの苦しげな嗚咽。
効いてる! ヤレる! 今の状態なら!!
「矢は残り10本だ! これまでになんとかしろォ!!」
「十分!!!」
殴り続けながら力を溜め続ける。今まではチャージに時間がかかってた技だったけど、もうこれまでに2回は撃ってコツは掴んだ! やれる。今のアタシになら絶対に!
左の拳をグラの腹を下から打ち上げる!
「ぐえぇっ!?」
鳩尾を抉った! 入った! これで――キメるッ!!
溜めに溜めた【神気】の右拳を突き出す! グラも負けじと爆炎の奥から拳を突き出した!
「私は負けない!! 汚染体を全部消してママに褒めてもらうんだからぁ!!!」
「消させない! アタシ達は生きる!! 生きて生きて! 最後まで争ってやるッ!!」
クロスカウンターだ! グラの拳がアタシの右目に激突する! グチュリとした音と激痛が襲う!
目がやられたからって――! たかが片目だけよッ!
「【んんんッーー!! 破煌けぇぇぇぇんッ!!!】」
アタシ全力の一撃がグラの腹を穿ち! 貫いた!!
「ごぼぉ!!」
小さな腹にアタシの腕が突き刺さる。魔族の赤い血がアタシの腕を伝って滴る。暖かい……。魔族も同じ生き物なんだと思わされる嫌な感じだ。気分は最悪……。でもやるしかなかったのよ……。
「グラあああああああああッ!!!」
空からグリダリアの絶叫が! 顔を上げるとガジェットが瓦礫の手の中でジタバタともがいていた!
「く、くそぉ……締まらないねぇ……」
「ガジェット!!? だから言ったのに!!」
早く助けなきゃ!!
そう思った瞬間――
ガジェットの体をグリダリアが握り潰し放した。
「お前! お前お前!!! オマエガアアアアアアアア!!!」
グリダリアはすかさずアタシに拳を放ってくる!
だけどアタシは落ちてくガジェットから目が離せなかった……。
ガジェット……?
ガジェットが空から落ちていく。そのボロボロの姿にアタシは一気に怒りが吹き出した!!!
「グリダリアアアアアアアアアア!!!!!」
グラから腕を引き抜き、相棒であるクラフトアックスに手を向け、柄を伸ばして掴む。
迫る瓦礫の拳にアタシは飛んで向かう!!
「待てッ! ゲスト早まるなぁ!!」
スコープの声が聞こえた気がしたけどもう止まれない!! こいつが、こいつらが存在するからアタシの周りから人が死んでいく!!! ぶっ殺してやる!! 魔族なんてアタシが全員ぶっ殺してやるッ!!!!
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