第32話 【動画魔法】
グラの魔法で今確認できてるのは高速化、鈍足か化の二つだけ。でも動画って確か一時停止に巻き戻しとかあったわよね。今使ってこないあたり何か条件があるか、もしくは使うまでもない状況ってことか。
その中でも高速化を多用してくるあたり使い勝手がいいんだろね。今もグラの動きを捉えきれずにアタシ達は翻弄されては体術で着実にダメージを与えてきてる。
魔獣の召喚だけど。これはきっとレギオンの召喚を同じ物。魔将として全員が持ち合わせてる能力なのかも。
「私の魔法が分かったって言って対処できなかったら分かってないのと同じなんだよお姉ちゃん!」
「くっ……」
確かにその通り。この異常な速さ。タイミングを掴んだと思えば速度が変わって攻撃のタイミングがずらされる。感覚的に2倍速、3倍速って感じ。
考えていると、グラの打撃がアタシの腹に3発打ち込まれた。肺から空気が溢れ頭がくらつく。
「ほら! ほらほらほらぁ!」
「こんのぉ!」
ぶん! 拳を振るうが空振った。その一瞬だったが、見えたわよ。アンタの癖がね!
アタシはインカムにガジェットとスコープに今気づいたことをグラの攻撃を交わしながら小声で伝える。
「分かったわよ。この速さのタネが」
『本当か!? 早く教えてくれ!』
スコープがボウガンで狙いは矢を放つも当たらず。こんなに早いと流石の名手でも困難極まるわよね。
「グラだけど高速化する時不自然に自分の体を見てる。多分だけど、動きを早くしたり遅くしてるのは目で見てる範囲だけなんじゃないかな」
『目で見てる範囲か……よしその可能性を確定させてみるか。ガジェット!』
『おっけー。そう言うことなら!』
ガジェットが魔具の銃口にエネルギーをチャージし始めた。グラはそんなガジェットを見て高笑いを決めている。
当たると思っていないんだろう。でもガジェット何するつもり――
「こいつを食いやがれ!」
バシュウウウッ!!!
極太の光線が放たれグラに向かう。が――
「そんな隙だらけの攻撃なんて当たるわけないでしょ〜! ばーか」
ヒョイと交わしてみせたが――ニヤリとガジェットが微笑んだ。「かかったね」と言って。
「僕の狙いはこっちだよ!」
ガジェットは魔具を床に目掛けて軌道修正し大きく砕いた。この塔の瓦礫が宙に舞う。そうか! そう言うことね!
「ゲスト! スコープ! 撃ちまくれぇ!!」
「「おうっ!!」」
アタシは宙に浮かんだ瓦礫をクラフトアックスで打ちまくった! スコープもボウガンに矢を装填しグラ目掛けて撃ちまくる。
弾幕だ。瓦礫と矢の弾幕が一斉にグラに向かう。
これには余裕だったグラの表情も引き攣ったものに変わった!
「んっ!?」
見た! 同時にアタシ達が放った弾幕が鈍足化し、まるで宙に浮いて止まっているのように動いている。
「やっぱりね! ゲストの言う通り君の魔法は視界でとらえた範囲にしか作用しない」
ガジェットがグラの死角に回り込んで魔具を向けた!
その銃口には新たなエネルギーがチャージされている。チャンスだ! グラにようやく届く! アタシ達の反撃の一撃が!
「行って! ガジェット!」
「任せなって! 【フルブラスタァァァ!!】」
「【と、止まれ!!】」
銃口からエネルギーが放たれた! と思いきや止まった!? ガジェット毎、その全てが!
代わりにアタシ達の放った弾幕がグラに襲いかかり瓦礫が彼女の体に食い込み矢が突き刺さる!
「きゃああああ!!」
痛みに苦しんでいるようだけど、それでもグラはガジェットから目を離さない。目から赤い液体が滴り落ちてる……。停止の魔法はかなり体を消耗させるみたいね!
「スコープ! 今だよ!」
「おう!」
スコープが射撃し、アタシは一気に距離を詰める!
今の同時攻撃、アタシとスコープの攻撃からガジェットの攻撃に目を移した。つまりより驚異的な攻撃に対処したってこと。弱点が見えた!
要は罰別の角度からの同時攻撃にはグラは対処しきれない!
右からアタシ。左からスコープ、正面で動きを止められているガジェット。さあグラ。この同時攻撃にどう対処する?
「あんまり私を舐めないでよね!」
カチッ!
そんな音が聞こえたと思いきやガジェットの体が視界に回り込む前の場所に転移していた。
カチッ!
まただ! 今度はスコープの攻撃がどっかに行っちゃた!? いや。スコープの様子を見るに、矢が、打たれる前に戻ってる!?
「もう分かってるんでしょ? スキップバックってやつよ」
脅威を減らしてアタシに集中してきた!
「こんのぉ!!!」
クラフトアックスを全力で振りかぶったが――また体が重くなった! 鈍足化だ! あと少しだってのにぃ!!
「無理無理。汚染体程度が私たちの魔法を超えようなんて無――」
理と言おうとしたようだけど、グラの死角から唐突に伸びた瓦礫の破片が横顔に激突した!
グラは何が起こったか理解できてない様子。
「な、なにが!? 2人の動きは完全に把握してる。ならこの攻撃は!?」
グラの目線がアタシから外れる。
体が動いた! 今ぁ!!
「うらああああああ!!!」
クラフトアックスを放り投げ、グラにぶつける! その衝撃で体が上に向いた。その隙に出来る限りの全力攻撃で打撃を与え続ける! 人間で言うところの肺と鳩尾、腎臓に心臓! ありとあらゆる急所を殴りまくった!
「この! 調子に乗らないで!」
ガチン!
アタシの動きが止まる。なるほどね。止められてる間でも思考は動いてるみたい。これだったら。
今見える範囲ではガジェットの格闘とスコープの射撃を身体機能だけで対処してる。
アタシからの攻撃はないって鷹を括ってるみたいだけどおあいにく様! アタシにはこの魔法があるのよ!
視界に収めた瓦礫に【伸びろ】と念じる。それはさっきアタシがクラフトアックスで打った瓦礫の破片。
魔族が作った巣だから遠距離での発動は無理だけど、一度触れたものなら!
破片が歪に伸びてグラの背中を穿つ!
「かっはっ!?」
視界がズレて、アタシの体に自由が戻った。
「良くやったゲスト!」
「まさかその魔法にそんな使い道があったなんてね」
「そ、そう言うこと!? お姉ちゃんの魔法で見えないところから攻撃してたんだね?」
グラは気付いた。今の奇襲もさっきから理解できなかった攻撃も全部アタシの【伸縮魔法】だって事に。
アタシ達3人の攻撃がグラに向かう。勝った!
そう確信したが――
ドゴオオオオン!!
「なに!? なんなの!?」
巣の壁が大きく砕かれ外から巨大な拳が飛んできた。スコープとガジェットがその拳に殴り飛ばされて壁に激突した。
「グラ! 生きてる?」
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃん!? そう呼ばれた存在が大穴の向こうに見えた。そこには巨大なロボのような姿の巨人が……。グリダリア!? なんでここに!
「ママに言われて加勢に来たよ。このお姉さんは僕たちの天敵らしいから」
「助かった〜。正直かなり危なかったから……」
ガジェットとスコープは!? 良かった。まだ意識はあるみたい。なんとか立ちあがろうとしてるけど、今の不意打ちでかなりのダメージを負ったみたいね。
にしてもここに来てグラとグリダリアの2人が相手って……。
「これってかなりまずい状況じゃない?」
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