第23話 顕現せし勇者ランドール
モルトに突き飛ばされたフォルティナは目の前の光景に絶望し安否が気になるモルトを呼び続ける。
「モルト! モルト!?」
「うるせ〜な!」
振り下ろされた腕と床に出来たクレーターからモルトがサムズアップしながら這い出てきた!
「モルト! 良かった生きてた!」
フォルティナは泣き出しそうになりながらモルトを立たせる。
「こんな事で死んでられねぇよ! それと!」
ボカッ!!
モルトに頭を強く小突かれる、小突いたはずのモルトの方が痛がり手を振りながらフォルティナに説教する。
「あの女の事を考えるのは後にしやがれ! イチチ……お前の頭硬すぎだろうが……今はこいつをなんとかしねぇとだろ?」
そうよ……モルトの言う通りよ……今はこの勇者をなんとかしなきゃみんなが危ない!!
「ごめんモルト! アタシもう大丈夫!!」
フォルティナは斧を構えランドールに向き合う! モルトもフォルティナの横に着き剣を抜き構える!
ランドールは片腕を上げ手にエネルギーを集めて巨大な剣を精製した!
「勇者ランドールの武器は魔剣オラシオンだったな……警戒しろ! ティナ! 劇で見た内容と同じなら魔剣オラシオンは不可避の斬撃を放つらしい!」
「不可避!? じゃあどうやっても当たっちゃうじゃない!!」
モルトの説明に驚くフォルティナだがモルトは続ける。
「大丈夫だ!」
「?」
「お前なら大丈夫だろ?ガキンチョ!」
モルトのその言葉に自信が湧き上がりフォルティナは後に引けない……引かない為にモルトに答える!
「当たり前よ! アタシを誰だと思ってんの!! アタシはマインツ村ジャガイモ畑農家出身の農民の娘!フォルティナ・ロックスよ!」
フォルティナはそう告げながら走り出し! ランドールの体に斧を構え飛んだ!
そして斧を全力で振って……叩く!!
ランドールは屋上に倒れ込みフォルティナが着地する!
「あいにくアタシは田舎出身が故に知らない事が多いの…… 敗北も!絶望も!アタシはまだ知らないわ!!」
モルトが口笛を吹き。
「お〜お〜! 派手にやるねぇ 俺様もやりますか! 俺様はモルト!! 共和国首都ジャイナ出身の孤児だ! 世の中の美人を抱きまくるまでこんな所で終われるかよ!」
モルトは倒れているランドールに走り、剣で腹部を切り裂く!
「アアアアア!!」
ランドールの悲鳴が響く! モルトは下がりフォルティナに指示を出す。
「ティナ! あいつの攻撃を防いで今みたいに体勢を崩してくれ! 倒れたあいつの弱点を俺様が探す! いけるか?」
「楽・勝!!」
モルトの指示に斧を前に構えながら答える! ランドールが立ち上がり剣を構え……フォルティナ目掛け剣を突いてきた!!
フォルティナは横に回転するように回避する!
が……背中に剣で刺されたような傷が刻まれた!
「あぁッ! なんで!? 避けたのに!!」
幸いにも傷は深く無かった……傷口に手を当て止血魔法を自身の魔気で施す、出血を抑え立ち上がり斧を構える。
あれが不可避の斬撃……でもあんなにデカい剣なのに斬撃は小さいのね……
「ティナ! 大丈夫かぁぁぁ?」
「大丈夫! 平気平気〜!」
モルトは安堵する、先程の攻撃で傷を負ったフォルティナを見て体を動かしながら考えていた。
ティナは間違いなく奴の攻撃を避けたはずだ……あれが不可避の斬撃ってやつか……だがそれだとティナの体はすでに真っ二つになっていてもおかしく無い……傷も小さいようだな……
モルトが考えているとランドールが剣を横に薙ぐ!!それをフォルティナは飛んで避けようとしていたがモルトが声を上げる!
「避けるな! 防御だ!!」
フォルティナはモルトの指示に従い斧を体の横に立て柄で薙ぎの一閃を防御する!
あれ? 意外と軽い……それに斬撃も来ない
斧で一閃を防御し剣の軌道が止まっている隙にフォルティナは斧から手を離しランドールの顔に飛んだ! 空中で格闘術……楼凛拳の技をランドールに撃ち込む!
「桜花激烈翔!!」
フォルティナの桜花激烈翔……アッパーカットをランドールの顎に撃ち込み……ランドールは再び体勢を崩し倒れ込んだ!
「でかした! ティナ!」
モルトが走り額を剣で刺す! が消滅する気配はない……
ランドールがモルトを振り払う為、空いた手で振り払おうとするがモルトは急ぎ顔から降りて回避する!
「危ねぇ! 頭に心臓も効果無しか……やっぱ普通の人間とは違うよな……」
だがやはりおかしい……デカい図体の割に威力も低く防御も疎かすぎる……ただ弱点が無いからこそ馬鹿みたいに耐久が高い!
「ティナ悪い! こいつに人間の弱点は通用しねぇみたいだ!」
「了解! ならアタシがぶっ叩き続けたら良いだけってことね!」
「そーゆーことー!」
って言うけどアイツ意外と速いのよね……そうだ!
フォルティナは斧を拾い立ち上がったランドールの足元に駆け込む!
「どうよ! これなら剣も当たらないわよ〜!」
フォルティナが余裕ぶっているがランドールは剣を何も無い場所に振り下ろす!
モルトが何かに気づき叫ぶ!
「そう言う事か!! 上から斬撃が来るぞ!斧で防げ!」
「ッッ!!」
フォルティナはモルトの声を聞いて斧を上に構える!ランドールの剣が床に着弾! そのすぐ後にフォルティナの斧に衝撃が走る!!
本当に来た! 今のは危なかった……!
「ありがとう!」
フォルティナからの礼を聞き安堵したモルトはフォルティナに告げる。
「やっぱりな!こいつの斬撃は外しても剣の軌道どうりに不可避の斬撃が狙った相手の体に襲い掛かるみたいだ!それに気を付けろ!」
「分かったわ!」
不可避の斬撃の正体を見切りフォルティナは安堵するが……その時ランドールが咆哮を上げながら体を縮ませ……成人男性程度の身長までになった。
「なになに〜? これって弱くなったってこ……」
言葉を言い切るよりも速く……縮んだランドールが高速でフォルティナに接近し横に切り払う! 反射的に背を逸らし回避するが……
「おい! 馬鹿ティナ!横から斬撃が来るぞ!」
斧を急ぎ体の横に構えようとするが……ランドールの片手で斧を掴まれる!
「あっ……やばぁ……!」
瞬間フォルティナの横腹が不可避の斬撃で切り裂かれた!
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