第30話 第二の魔将戦
中立都市フロンタイタスの塔から、グリダリアは共和国にある紅龍を目指していた。
西に突っ切ると汚染体の残存勢力と激突してしまう。だから南から出て、海路で迂回する事にした。
【接続魔法】を都市で使用して、最先端魔具に魔族側で製造した武具を上限いっぱいまで接続したことで、以前汚染体と交戦した時よりも高性能かつ頑丈な巨人を組み上げることが出来た。
「破損箇所も回復した。早く行かないとグラが……」
ポッドで治療を終えた時、ホログラムで投影されたママから「紅龍へ向かい、グラと協力して塔の設置を急げ」と命令を受けた。
急ぐ理由はそれだけじゃない。あの僕の体を貫いてきた汚染体……。あいつの力は脅威だ。きっとグラだけじゃやられてしまう。
これが焦りなのか、胸を締め付ける感覚が僕を苦しめて、進む足をさらに前へと急がせる。
到着まではそう掛からないとは思う。だけどそれでも急がなければいけない気がした。
――――――――――――――――――――――
巣の中への侵入に成功したアタシ達は、ひたすら上へ上へと歩みを進める。途中、レギオンの襲撃もあったけど、アタシの【死】の前には雑魚魔獣と何ら変わりなかった。
「さすがの力だな。お前が子供じゃなければ良かったのにって思ってるよ」
嫌味を言ってくるスコープ。恐らくマインツ村のことを言ってるんだろうね。
決戦が近いから、あの時と同じ間違いは起こすなって言いたげに。
大丈夫よ。巣に出てくるやつがどんな奴であっても、アタシは絶対に倒すから。
廊下を突き抜けると広い空間に出た。壁は変わらず鉄で出来ていて、赤いライトが点滅している暗い空間だ。
だけど、アタシ達がそこに足を踏み入れた瞬間。
パッパッパ。
天井のライトが暗い空間を明るく照らし始めた。
「きたきた。待ってたよ〜みんな」
現れたのはグラと同じ子供サイズの表情が捉えられない能面の魔族。
言葉を発するところから明らかに魔将だよね。
アタシ達は各自武器を構えて敵の動きに備える。そんなアタシ達を見て、魔将ははははと笑って手を広げだした。
「随分といきなりなんだね。もっとお喋りしようよ〜」
「黙れ魔族! お前らの言葉なんざ犬猫の鳴き声と変わらんだろ。意味のない言葉じみた鳴き声。俺達を惑わすための罠。そうそう引っ掛かるかよ」
「ふ〜ん。やっぱりつまんない。でもおじさんの言う通りだよね。私達と汚染体達は絶対に分かり合えないんだし」
「そういうこった!!」
スコープがボウガンの矢を放つ! 不意打ちの一撃。これが開戦の火蓋が切られた合図だ。ガジェットと挟み込むように左右から攻める。
ガジェットの体に取り付けられた魔具の腕が展開されて、魔将の体を捉える。
スコープの矢を掴んだ魔将。同時に光線が放たれ、その輝きが魔将の腕に直撃し、苦悶の声を漏らさせた。
「効いてるぞ!」
魔将が怯んだ隙に一気に攻め込み、一発顔面をぶん殴る! だがその一撃は届かず、魔将の体が奥へと逃げるように移動していた。
一体いつ動いたの? 見えなかった。
時が止まったってわけじゃない。何か不思議な挙動。まるで氷の上を滑るみたいな。
「あはは! 楽しいね! いらないデータを削除する作業って本当に楽しい!」
魔将が手を広げると、レギオンではない。魔獣が虚空から何十体も姿を現した。
狼型から猪型、それにドレッドベアーまでも。懐かしい面々がお出迎えだ。
魔獣達が一斉にアタシ達めがけて駆け出す。
「さあ行って、私のお友達! 目の前のバグを食べて消しちゃって!」
「グルルル!!」
スコープが矢を放ち、何体かが駆けつけながら倒れていく。ガジェットも自前のアームパーツで殴り飛ばしては無力化させていっていた。
アタシも負けじとドレッドベアーと組み合い、背負い投げて頭を汲み上げたクラフトアックスでかち割った。
「走れゲスト!」
!!? いきなりの指示にアタシはビクリとしつつ魔将に向かって駆け出した。
「遅いのよ!」
そんなアタシに魔将がまた召喚した魔獣を放ってくる。掻い潜り、倒しながら前へと進む。
その時だった。
「消えた!?」
魔将が突然アタシの姿を見失ったように慌てふためき始めた。
スコープの魔法だ。今のアタシの姿が、この空間で当たり前に存在しているものと同格に見えているって事だ。
ガジェットが光線で道を開き、スコープが魔将をボウガンで牽制してくれたおかげで、難なく肉薄することが出来る!
「入った! これでお終いよ!!」
「うそ……どこから……」
どこからも何も、アタシはただ真っ直ぐ走ってきただけ。
ただスコープのサポートを受けて気付かれなかっただけよ!
クラフトアックスを体を捻り、全力で振った!
ブン! と風を切る音を発しながら振られた一撃が躱されてしまう。
ギリギリで気付かれた!? 攻撃の瞬間だけは存在を認識できるって事か!
反応され、魔将が体を逸らされたがクラフトアックスを強引に軌道修正し魔将の顔面に激突させ、ガキン! と砕いた!
「やった!」
「いやまだだ! 一度退くんだゲスト!」
いっ!!? 魔将が小さな体を捻って回し蹴りをぶつけてきた。これ以上の追撃は無理ね。
アタシは距離を取って魔将に目を向ける。
今当てた一撃が相当深かったのか、能面が砕けていく。
そしてその下にあった顔が顕になると、アタシは目を疑った。
「やってくれるじゃない、お姉ちゃん」
「グ、グラ……?」
現れたのは紅龍の街で、どこにいったか心配していたグラだった。
なぜここに? そう思ったけど、髪と肌の白い色、瞳の赤。全てが魔族だと思わせてくる。
つまり――
「アンタ、アタシ達を騙して街に忍び込んでたって事?」
ここまで読んで頂きありがとうございます!
もし面白いと思って頂けたら
評価とブックマークをして頂けると励みになります。
よろしくお願いします!




