第27話 休暇
「そうだったんですか。通りで【気】が少し違うわけだ」
ヤオさんにアタシが過去の――別の世界からやってきた事を話すと、すんなり信じてもらえた。
それはアタシの中の【気】がこの世界のアタシとは違っていたからだと言ってるけど、どう違うのかさっぱり分かんない。
「違うって言ってもほんの少しだけですよ? 今の師匠の【気】は私の知ってるものより薄いというか……そんな感じです」
「薄い……あっそうか」
アタシの【神気】はアレッシオさんから譲り受けたもの。本来は全部受け取るもののはずなんだけど、オメガ――クルードさんが途中で奪っちゃったから半分の力しか受け取ってないんだった。だから少し違うんだね。
「なにか気づいたことでも?」
「いいやいいや。大丈夫。ちょっと昔のことを思い出しただけだから。あはは」
「そうですか。また平和が戻れば師匠と組み手をしたいところです……」
「組み手ね……。平和になったらやろ? この世界のアタシの弟子の力、見てみたいしさ」
「ええ是非! その為にも今回の作戦は必ず成功させましょう!」
ヤオさんと手を交わした時だった。
スコープとガジェットの2人がアタシ達のところにやってきた。
「こっちの話は終わったぞゲスト」
「ってありゃありゃ? これはこれはヤオ師匠。どうしてゲストのところに?」
「いやなに。懐かしい【気】を感じたので少々昔話に花を咲かせてましてね。会議に参加できずに申し訳ない」
ヤオさんが頭を下げると、スコープがいいと断った。
会議をしていた場所に目を向けると、いがみ合っていた警備隊とモンク達が手を取り合い結託している様子が見える。
どうやら会議は順調に終わったみたいだね。
「で? どうなったの?」
「ああ。ゲストの案を組み込んだ奇襲作戦に変更になったぞ。まあ大元は同じだからそこまでの変更はないがな」
「って事は突入部隊も――」
「もちろん。俺とガジェット、それとゲストの3人だけだ。少数部隊の方が巣の中でも戦いやすいし何より被害が少なく済む。最悪失敗しても犠牲は俺たちだけで済むからな」
「失敗なんてしないしさせない。もうアタシは迷わないから」
そうだ。この大陸に平和を取り戻すためにアタシはもうしくじれない。でも心の片隅でもしかしたらまだ話し合いでどうにかなるんじゃないかって思ってる自分もいる。正直アタシは魔族のことも知っておきたい。だけど……知ろうにも時間が足りない。
「ふん……。なー? スコープさんよぉ? ここいらで少し休暇ってのはどうだい」
ガジェットが徐にそんなことを言い出した。
「休暇ってそんな暇は――」
「そうだな。作戦開始予定まであと1日あるし、ここは少し頭を整理する時間があってもいいはずだなぁ」
「スコープ! アンタまで!?」
2人とも、もしかしてアタシが疲れてるとか考えちゃってる!? アタシ全然元気だけど! めっちゃピンピンしてますけど!
「ゲスト。お前はこの世界に来て巻き込まれる様にしてこの戦争に参加してる。だがこの戦いは本来お前には関係のないものだ。一緒に戦ってくれる事には正直感謝してる。何せお前の力がなければ魔族との戦いもかなり厳しいものばかりだからな」
「そうそう。でもさ。君は君自身の戦う理由をちゃんと探した方がいいと思うんだよねぇ。じゃなきゃきっと迷いが生まれる。それは君も嫌だろ?」
「う、うん……」
確かにそうかもしれない。しっかりするって言っても心の端に引っかかってる物がまだあるんだもん。
2人はそれを解消する為に考える時間を作れって言ってくれてるのよね。ならアタシはどうすれば……。
「ま。やる事が分からんのならあの嬢ちゃんを連れてどっかに遊びに連れてってやれ。な?」
そう言ったスコープが顎で指した先には退屈そうにあくびをしながら木箱に座るグラが見える。
ここに来てから会議っていうつまんない話を聞かされて物足りないわよね。子供だもん、めいいっぱい遊びたい盛りなはず。
「そうね。そうする。グラと一緒に街を散策しながらアタシ少し頭の中を整理してくるわ」
「そうそう。ゲスト。君もまだ若いんだしさ。肩の力を抜いておいで。紅龍はいいぞ〜? でっかい龍のオブジェにお寺とか神秘的なパワースポットが沢山あるんだ。きっと君の悩みも吹っ飛ぶはずだよ」
パワースポットか。そういやアタシ最後にちゃんと観光したのってノーラに案内してもらった王国が最後かも。
「ありがと。じゃあアタシ早速グラを連れて行ってくるね!」
「おう。集合は明日の明朝5時。ここに集合な?」
「おっけー。ありがとスコープ。それにガジェット〜。ヤオさんもまたね〜」
アタシは3人と別れ、グラを引き連れて紅龍の街へと繰り出した。ここでウジウジ悩んでいても仕方ない。
出来るだけリフレッシュしながら考えを整理しなきゃね。
――――――――――――――――――――――
「行ったか?」
「うんうん。行ったね〜」
フォルティナを見送った後、スコープとガジェットの2人は少し息を吐いて向かい合った。
「ゲストには例の作戦伝えないでいいの?」
「ああ。伝えたらまたアイツは止まってしまうだろう。これはギリギリに伝える方がいい」
「そう、だね。その為に集合時間ギリギリまで遊んでくる様に言ったんだしね」
2人が話し合っているとヤオが話に入ってくる。
「お二人にはご迷惑をおかけする事になってしまい申し訳ありません」
「迷惑って。俺たちは気にしてない。それにこの作戦で俺たちの力が人類に希望を託せるんだ。〈オーバード〉冥利に尽きるってもんだ」
「スコープの言う通りさ。僕らがあげる最後の打ち上げ花火。この紅龍にどデカく咲かせてみせるよ」
「すみません。本当に……私達が無力ばかりに……」
スコープとガジェットの2人は俯き涙を流すヤオの背に手を置いた。
2人は今の大陸では英雄だ。数々の魔族を打ち払い、人々を守り希望を与えてくれた。
だがそれもこの作戦で終わる。
3人の手にしていた作戦資料にはこう書かれていた。
『オペレーション・オーバーノヴァ』と……。
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