第26話 楼閣館
紅龍のある警備隊詰め所は木製でなんとも異国感溢れる空間だった。龍の置物に壺……。まるで民家みたい。そんな場所にやってきたんだけど、この中で言い争いをする警備隊にモンクと呼ばれる修行僧達に挟まれて凄く居心地が悪い……。
「どっちが前線に立つかってだけでなんでこんな喧嘩してんの……この人達……」
「紅龍人は元々狩猟民族がルーツだからね〜。より戦果を上げた人が誉ある闘士として扱われる。だからこその状況だよね〜」
「ガジェット……アンタねぇ。そうやって呑気に構えてるけど話が進まなきゃどうしようもないのよ? 分かってんの?」
ははは! とガジェットが笑って携帯食のバーを齧ってる。なんて呑気な奴……。
それにグラもこんな大人の喧嘩をお腹を抱えて笑って見てるし……。
グラを街の子供達の集まる託児所に預けようとも思ったけど、1人で紅龍を目指したことから今は少しでも安心できる存在と一緒の方がいいとスコープが言った。
だからこんな場所に連れてきたんだけど……。教育に良くないよね〜。
「まあ安心しろゲスト。これはいつものことだ。それにもう直ぐ――ほら来たぞ」
「お前達! 少しは鎮まれ! まったく……なぜこのような状況下にあると言うのに未だ手を取り合えんのだ」
殴り合いが起きそうなその時、扉が開いた。奥から入って来るのは若い男……。見た目からモンクと同じ修練着を纏った人だ。
この人の【気】……。凄い洗練されてる。無駄な【気】の流れが一切ない。強さで言ったらこの警備隊とかモンクの中で1番ね。
「お師匠! それはこいつらが非力な癖に前線に立つと言ったからで私たちは決して手を取り合わないとは――」
「なんだと!? そうやって我々を非力と決め付けるからこっちは腹が立ってんだよ! 分かれよ! クソ坊主!」
お互いの代表が睨み合う様子に師匠と呼ばれた男は呆れ果てていた。そんな男は話が進まないと見るや代表2人の額にデコピンを当てて、アタシのそばをモンクの男が吹っ飛ばされていった。
「えっぐ……」
振り返るとモンクの男は完全に伸びていた。対面にも警備隊の男が砕けた壁の中でぐったりしてる。
ただのデコピンではこうはならない。今感じた一瞬。僅かに彼の【気】が膨れ上がったように感じた。あの人……めっちゃやり手ね。
「はぁ。これで少しは頭が冷えましたか?」
男の呟きに皆が首を縦に振っていた。
冷えたと言うか頭を黙らせた……って感じ。
「おや。一見さんも今回はいらっしゃるのですね。ガジェットさん。こちらの方は?」
「あー。こいつらは俺の同僚のスコープと新人のゲストって言うんだ。力に関しては俺と同じかそれ以上だから安心してね」
「なるほど。あなたがそう言うのなら信じましょう。初めまして。私は楼閣館第36代目尊師ヤオ・リャンチーと申します」
「初めまして……ゲストです」
スコープが会釈でアタシは挨拶を返すと。ヤオさんは皆に号令をかけて会議が本格的に執り行われ始めた。
アタシは隣のスコープに肘打ちして耳を近づけさせる。
「ね。ねえ!」
「なんだ?」
「楼閣館ってなに?」
「はぁ? お前が知らないでどうするよ。古巣だろ?」
古巣? どう言うこと? 首を傾げたアタシにスコープは「マジかよ」と少し驚いたような顔を浮かべていた。
もしかしたらこの世界のアタシとまた違う点かもしれない。
「多分こっちのアタシだけが知ってる古巣だ。少なくともアタシは楼閣館なんて知らないわね」
「なるほどな。パラレルワールドから来たんだもんな。良いさ教えてやる。楼閣館――それはお前も使ってる格闘術――楼凛拳を学び、鍛え、高める武館の一つだ」
「楼凛拳の!?」
確かに名前に楼って同じ名前がある……。こっちのアタシはその楼閣館で修行してたって事?
「楼閣館は龍仙挟にある。かなり脅威な魔獣が蔓延る場所なもんであの技を体得しようにも辿り着くために相当な力を必要とされる……。そんなモンク達がこの天魔大戦の戦況を見かねて降りて来てくれたわけだが……ここまでで良いか?」
「あ……うん。ありがとう。ここまで分れば十分よ」
「そうか」
言ってスコープは会議の話がより聞こえる方へ向かった。アタシはこの手の話は苦手だ。殴ってぶっ飛ばしてドカーン! って感覚で戦って来たからね。
そう思ってグラのところに行こうとしたら肩を誰かに叩かれた。
振り返るとそこにはさっきみんなを黙らせたヤオさんが立っていて、アタシを見るなり拳に手を合わせて頭を下げて来た。
「師匠。ご無沙汰しております」
「師匠……」
周りを見るが師匠らしい人は居ない。え……まってまさか!
「師匠ってアタシ!?」
「貴方以外に誰がいると言うのですかフォルティナ師匠! いや……天火大帝とお呼びした方が?」
「いやいやいや! アタシは確かにフォルティナだけど、アナタが知ってるフォルティナと違って……って天火大帝?」
それって未来のイデアが名乗ってた名前……。
ヤオさんは不思議そうにアタシを見てるけど――
「その燃えるような【気】は紛れもない師匠の物だ……。だけど私が知らない? すみません一体どう言う事ですか? その姿と何か関わりが?」
そうか。今のアタシの姿は本来この世界にいるはずのアタシより若いんだった。この人は【気】だけでアタシがフォルティナだって気付いたんだ。
まあ別に隠すことでもないし、これから協力する上で勘違いされたままだと困るわよね。
そう思いアタシはヤオさんに全てを話すことにした。
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