第23話 最後の精鋭・ガジェット
「へ〜。ここが紅龍か〜。なんだか賑やかな街ね〜」
辿り着いた紅龍の街は今まで見てきた街並みとはまた違った雰囲気が漂ってて、赤い造形物に、道を照らす街灯は灯籠って呼ばれるもので暗い空間が明るい。それになにより街を行き交う人達みんな笑顔で溢れてる。
「ここも魔族の攻撃受けてるんだよね?」
「ああ。だがラングの街ほどじゃない。西側はラングで魔族の進行を堰き止めていて、北側にはカルロスがあるしな。南と東は海なもんで、魔族の奴ら、何度も攻め込んできてはいるが、なかなかこの街を攻め落とせないみたいだぞ」
「なるほどね〜。要は地形に恵まれてるってわけだ」
「そういう事だ。だが――あそこを見てみろ」
スコープが指差した先、東の海に佇む塔のような高い建物が見える。暗黒の空間を天辺に輝く赤い光の波紋が照らされていてなんとも不気味だ。
「あれは?」
「あれは魔族共の巣だ。あそこからレギオンにドミニオンが溢れて出てきやがる。それも絶え間なくな」
そう言ったスコープの目はかなり険しい。その様子で、あの塔がどれだけ厄介な存在かが窺える。
でもそれが――
「あんなに近くに!?」
紅龍の街からそんなに離れてない距離だよ?
「近いっちゃ近いが、まあ紅龍在中の警備隊は海戦に慣れてるからな、大体の敵は海の底でおやすみなさいだ」
「そんなに強いんだ……」
警備隊って言ったらアンガス隊長とかサイモンさんしか知らないけどね。
「っとまあ。観光案内もここまでだ。目的のガジェットを探すぞ」
「りょーかい。観光は平和を取り戻した後って事だね」
アタシ達の今の目的は舞台最後の仲間ガジェットと合流する事だ。観光したいけどそんな暇はないよね。
「そうだ。ってかお前は帰った後でいいだろ」
スコープが冷たいこと言ってくれる。
未来と過去は別よ別。こっちの食べ物とか流行りとかすっごい気になるじゃん!
っと……浮かれる気分を押し殺してアタシ達はエレオノーラから伝えられていた場所へと向かう。
人で賑わう表通りを裏に抜けて、一気にアングラな雰囲気漂う場所に出た。浮浪者がそこらで座り込んで酒瓶を煽ってるし……。
そんな道を進んで辿り着いたのはバーだった。
ネオンライトがパチパチと点滅する貫禄のある店にスコープが先に入って行く。
アタシも後に続くと――
「いらっしゃい」
バーテンダーの男がすぐに声をかけてきた。
そんなバーテンダーにスコープが指を一つ立てる。
「ここにガチャガチャした見た目の野郎は来てるか? クソみたいにおしゃべりな奴なんだが……」
「あー……」
バーテンダーは顎で奥のテーブル席を促した。そこには確かにガチャガチャしてると言っていいほどに銃やら魔具やらといった装備を取り付けた人が座って酒を飲んでいた。
「いたいた。……ったく。こんな時に酒かよ……」
スコープがその席に向かうと向こうも気付いたのか酒瓶片手に振り返った。
「おー。そのやる気のない声は僕の1番の友達スコープ君じゃないか〜」
あー。声を聞いただけで分かるけど、おしゃべりな人って感じね。てかヘルメットで顔が見えないからどんな人か分かんないけど取り敢えず男の人だ。
そんなガジェットの前にスコープと座ると、ニヤァとガジェットの口元が緩んだ。
「おうおうおう。スコープ君よ〜。ダメだね〜。未成年とデートなんてさ〜」
「なっ!? なんで――むぐっ!」
声を上げようとしたらスコープに手で口を塞がれた。
周りの客にバーテンダーがアタシの方を睨んでる……。ごめんなさい……。迷惑だったよね。
「ガジェット。いくら酔ってるからって茶化し方にもマナーがあるだろ」
「すまんすまん。にしても随分とお早い到着だね〜。徒歩だろ? それか良い馬が見つかったとか?」
「馬よりすごいもんだったぞ。後でお前にも見せてやる、絶対気にいるから。良いよな? ゲスト」
「まぁ……構いやしないけど……」
別に減るもんじゃないし良いんだけど……。この人がキーパーとスコープと同じ精鋭なの? ただの飲んだくれのヘルメットオヤジにしか見えないんですけど。
「ん? ゲスト……。それって本名じゃないよね〜?」
ガジェットが首を傾げた。それが本名だと本当に思うの?
「ああ。ゲストはコードネームだ。名前は別にちゃんとある」
「って事は新しいお仲間かい!?」
ガジェットは椅子から飛んで立ち上がりアタシの手を握ってはブンブンと上下に振ってくる。
「ま、まあね。よろしく」
めちゃくちゃ歓迎してくれてるみたいなんだけど、キーパーとスコープと全く違くない? 明るいとは聞いてたけどここまでとは……。
「いや〜! ようやく補充要員が来てくれたんだね〜。めでたい! こんなにめでたい事はないよ! そうだ――マスター! このテーブル一杯に食べ物と飲み物を持ってきてちょうだい!」
ガジェットは徐にバーテンダーに手を挙げて、注文し始めたのだが、バーテンダーは呆れ顔をガジェットに向けた。
「おい飲んだくれ。今が物資不足だって忘れたか? ここにあるのは1日1杯だけの酒と乾燥ビーンズだけだ。クソが……脳みそ膿んでんじゃねぇのか?」
「あらら。怒られた」
そりゃそうだ。今は戦争中なんだもん。ここだけ食料に恵まれてることなんてあるわけないでしょ?
呆れたのはスコープも同じだったようで彼も酔ったガジェットに向かってあからさまな舌打ちをしていた。
「まあ。なんでもいいや。早く到着したんなら早速任務について話でもしようかね〜」
「え〜……。酔っ払いのアンタが今真面目な話できんの〜?」
絶対無理でしょ。
そう思って茶化したが――
「酔いは覚めたよ。こんな時なんだ、仕事とプライベートはキッチリするよ? いくらなんでもね」
雰囲気が一気に変わった。この冷えた感じ……。なるほどこれは確かに精鋭って呼ばれる訳だ。キーパーとスコープに負けず劣らずの闘気をガジェットからも感じるんだもの。
アタシとスコープはガジェットの前の席に座った。そんなアタシ達を客と見た店員は水の入ったグラスを運んでくる。ここの店員はなんだかシスターみたいな服を着てる……。確か……チーパオって服だったかな? 本で見た事はあるけど。実物を見るのは初めて。
「ゲスト」
「あっ。ごめんごめん」
スコープに諭され意識をガジェットに戻す。
いけないいけない。集中しなきゃ!
「それじゃあ。話を始めようか……。紅龍の海に浮かぶ魔族の巣攻略作戦についてね」
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