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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第13章 天魔大戦 滅びの未来編
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第15話 廃村マインツ村奪還作戦①

 教会――かつてアタシがシスターと過ごした、質素ながら温かみのあった面影はなかった。

 壁には大きな穴が空いていて、礼拝堂の真ん中には人間の血と思われる染みが大きく広がっている。

 穴から風が吹き抜けるたび、ノア教の壇幕が揺れ、ここがもう人のいない場所なんだと嫌でも思い知らされる。


 

「マインツ村……。確か過去に魔獣災害で滅んだんだよな……」


 

 キーパー? なに言ってんの?


 

「アタシ……それ知らないんだけど……」


「ああそうか。ゲスト、確かお前は過去の――別の世界から来たんだったな」

 


 どうやらキーパーはエレオノーラからアタシのことを聞いてるらしい。

 キーパーが知ってるってことは、スコープも必然的に知ってることになるけど。

 


「うん。でもアタシの世界じゃここは問題なく過ごせてるんだけど……」


「そうなのか? 俺は帝国出身だが、あの魔獣災害は大陸中に知れ渡るほどの事件だったんだが……」


「なにが……あったの?」


「確か何十年か前に、魔獣が1匹、村の子供を襲うっていうありふれた事件のはずだったんだが、その魔獣が突然変異して、村人のほとんどを殺害してな……。まあその魔獣は共和国警備隊によって駆除されたんだが。酷い有様だったって聞くぜ?」

 


 今から何十年か前……。アタシの時代からここは15年後辺りでしょ? その魔獣ってまさか、あの猪型? いやいや断定できないけど……。それしか心当たりがないし。


 

「その事件から、魔獣討伐は定期的に行うよう冒険者協会から通達が大陸中に出されたって話だ。まあ、それ以降この村は復興して時代にあった農村になったわけだが……。それが今度は魔族どもに滅ぼされるなんてな。ついてない話だ」


「そ、そうだね……」


 

 そうなると、この世界のアタシはかなり辛い思いをしてきたんじゃないかな?

 エレオノーラにも過去の話をしたくなかったみたいだし。何となく見えてきたかもしれない……。あのおじさんと出会わなかったアタシ、魔獣が村を壊滅させた事実。それで絶望したアタシはシスターに弟子入りして神官になったってことかな?

 


「やっぱここはアタシの知ってる世界と違うみたい……」


「まあそう落ち込むな、ゲスト。お前の世界じゃこの村は滅んでないんだろ?」


「うん。パパとママも生きててジャガイモ畑がい〜っぱいあるんだから! まあ時代には置いてかれてるけど……」


「ふっ。なら考え込むことはないな。スコープ! 準備できたか?」


 

 キーパーが屋根に上がったスコープに叫んだ。そんなに叫んだら周りの魔族に聞こえるんじゃ――

 


「キーパーお前ふざけるなよ? ガジェットの野郎から渡された魔具あるだろ。聞きたいことがあんならそいつで話せ」


 

 屋根の上からスコープがそう怒鳴った。そりゃ怒るわ。

 キーパーは「すまんすまん」と笑いながら、ポケットから思い出したかのように小さな魔具――イヤホンのような物体を取り出して耳に取り付けた。

 


「ほれゲスト。これはお前の分だ」


「これは?」


「俺たちの仲間、ガジェットの野郎が作った通信機だ。半径1キロはこいつで通信できるって代物らしいぞ? 付けときな」


「へぇ〜。この世界にもインカムってあるんだね〜。ありがと」


 

 受け取って耳に突っ込む。はめ心地もインカムとそっくりだ。試しに声を出してみる。

 


「あー。あー。テステス。聞こえる?」


 『感度良好だゲスト。流石、技術が発展した世界から来ただけあって慣れてるな』


 

 耳からスコープの声が響いてきた。少しノイズが走っているようだけど、全く聞こえないほどじゃないわね。

 にしてもアタシの世界の方が技術発展してるって、何回聞いても違和感しかないわね。

 


「よし。準備完了だな。ゲスト、お前のその獲物の準備はいいのか?」

 


 キーパーがアタシのグローブに取り付けた柄と刃を指差して聞いてきた。

 多分、分解された状態なのが気になったんでしょうね。


 

「問題ないわ。これこういうもんだから」


 

 言いながらアタシはキーパーにクラフトアックスを組み立てて実演して見せた。

「ひゅ〜」と口笛を吹いて感心してる。


 

「凄いな。一体何で出来てるんだ? まあいい。お前の準備も出来たようだから、作戦について振り返りを行うとしようか」


「おっけー」


――――――――――――――――――――――――


 作戦はこうだ。アタシとキーパーがここから隠れつつ広場へ先行し、レギオンを統率するドミニオンを捜索、強襲。スコープがここからアタシ達の行動を監視して安全なルートを指示と援護。


 

 言うは易しって作戦だ。ドミニオンを討伐すればレギオンは消滅するらしい。

 数は多いけど、頭さえ抑えればアタシ達の勝利って訳だね。


 

「んじゃ最後にメンバーの力の確認といくか。って言っても俺とスコープはゲストの能力を把握してる訳だが……」


「えっ。アタシの力知ってんの?」


「まあな。【破壊の聖女】と同じ力を持ってんだろ? あの人は英雄だしな。よ〜く知ってんぜ? 炎と暴力の2つだろ?」


 

 なんか言葉にされると馬鹿みたいな力ね。

 


「もう一個あるわよ? 【伸縮魔法】」


「魔法だ? だめだめ。詠唱込みの力なんて大して使い物になんか――」


 

 相当この世界の魔法は弱いみたいね。

 ちょうど良いや。

 アタシは足元に転がってた石ころを拾って魔法を付与する。すると石が異様に長く伸びた。

 それを見たキーパーは目をパチクリさせる。


 

「詠唱無しだと!? 〈オーバード〉かお前……」


「ふっふ〜ん。アタシの世界じゃみんなこれぐらい簡単に魔法を使えるのよ♩ それどころか爆発とかビーム撃っちゃうんだから」


「ビームってのは分かんねえが、無詠唱で使えるなら戦力になるな……。てっきり俺たちと同じ〈オーバード〉かと思ったぞ」


「キーパーって〈オーバード〉なの?」


「ああそうだ。ほら」

 


 キーパーが袖を捲り上げると腕輪が取り付けられてあった。奴隷の証だ。何だか嫌な感じね。

 


「そう嫌そうな顔すんなよ。奴隷っつったってこのご時世だ。迫害はされてない。因みにスコープも〈オーバード〉だ」


 

 屋根を見上げると、スコープがこっちに手を振って応えてくれた。

 


「まあそんな話は今はどうでもいい。大事なのは魔法だ。俺の魔法は【念力】。手を伸ばした先の物を引き寄せたり、ふっ飛ばしたり、持ち上げたりも出来る代物だ」


 『俺は【意識阻害】だ。相手の資格情報を見出すことが出来る』


「キーパーは分かりやすいけど、スコープのよく分かんないわね〜」


 『そうか。なら俺を見てみろ』


 

 言われてスコープを見上げる。するとスコープの姿が見えなくなった。今さっきまでそこに居たのに!?

 キョロキョロ首を動かしていると、ふっとスコープの姿が見えるようになった。

 さっきからずっとそこに居たように。

 


 『どうだ? 理解したか?』


「今消えた気がしたけど……」


 『消えたんじゃない。気にならなくなっただけだ。俺の魔法は俺を捉えようとする生物の視覚情報に作用して、自然の一部に溶け込む誤情報を与える。まあ見えてはいるけど石ころとか木と同じように見えて感じてしまうって魔法だな』


「へ、へ〜。すんごい魔法ね〜」


「そのおかげでこいつ、影が薄いって昔は悩んでたんだぞ? ウケるよな」


 

 プププ〜と笑うキーパー。

 想像しただけで浮かんでくるよ。コントロールが出来なかったら、常に姿が捉えられないってことでしょ。

 


「大変ね……」


 『ちっ。余計なこと言いやがって。これで全員の能力の把握は済んだな。ゲスト。お前がこの部隊の攻撃の要だ。俺たちの力はお前の力と思って使ってくれて構わない。指示があればできる範囲で応えてやる』


「ああ。俺もお前と同じ戦場に立つが、基本サポート役だと思ってくれ」


「おっけー。理解したわ。念力と意識の阻害ね……」


 

 面白いじゃん。アタシにない力を上手く使えってことでしょ。いろんな組み合わせができて、ちょっとワクワクしてきちゃう。

 


「んじゃ……作戦開始! ムーブッ!」



 キーパーの掛け声と共にアタシは教会の外へ踏み出すだった。

 

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