第13話 並んで立ってくれる存在
「って事で食料調達のための作戦にアタシも参加させなさいよノーラ!」
「フェイ。お前……話したのか?」
「あー……あはは。はい……」
はぁぁぁ……と深い息を吐くエレオノーラ。
アタシ達は今、作戦司令部の小屋に戻って直談判中だ。
ちょうど良く、机の上には近隣の村を取り戻す計画書が広げられていた。
「却下だ」
「なんで!?」
意味分かんない! こう言う時は使える手段はなんでも使うべきはず!
「なんでって……さっきも言っただろう。貴様は過去に帰す。それまでじっとしていろと」
「帰るまでまだ時間あんじゃん! それまでアタシも手伝うって言ってんの! 分かんない?」
頭パーになった? とばかりに馬鹿にしてみる。エレオノーラはブチ切れるかと思いきや、予想は外れて呆れて首だけを振っていた。
「気分を逆撫でしても無駄だ。貴様の性格は分かりきってる……。私を煽って熱くさせて感情的になったところを言葉巧みに畳み掛ける。フォルティナ……貴様の常套手段だったな」
「ぐっ……」
ぐえっ。未来のアタシ……どこまで見透かされちゃってんのよ……。アタシの付け入る隙が無いじゃないのさ。
「分かったら出て行け。貴様は軍関係者でもないんだしな。それとフェイ……貴様には後で話がある」
「は、はい!」
ギロリと睨まれたフェイが震えあがっちゃってるよ。あーあ……あれかなり長い説教コースだ……。きっと説教も進化してべらぼうなことになってるんだろうなぁ〜。
「話は終わりだ。出て行け」
「いやよ! 困ってるんでしょ! 魔族に立ち向かえる人が少ないから!」
「チッ。だからどうした! 命懸けで生き残った者を守る……それが連合軍だ! 軍人でもない貴様に頼るわけにはいかん!」
「いーや。違うね! アンタはアタシを戦わせたくないだけよ! 魔王との戦いで仲間を失ったから? 嫌われたくないから? そんなん知らないけどさ。今確実に成功させなきゃ明日がないんだよ!? 分かってる?」
「貴様……どこまで……」
チラリとフェイを睨むエレオノーラ。
ごめんね。こうでも言わないと絶対に認めてくれないからさ……。
「なにビビってんの! アタシが死ぬかもしれないのが怖いの?」
「ああ! 怖いさ! 一人……また一人と顔馴染みが帰ってこなくて、周りの人々から私を人殺しと指を差される――。みんな今の貴様と同じように自信を持って言い放つ……それを聞いて待つ恐怖が貴様にわかるものかッ!」
「ええ分からないわ! だけどそんな恐怖に溺れるなら団長なんて降りなさいよッ! ハッキリ言って今のノーラは器じゃないわ!」
「なにを――」
「確かにアタシは部外者だよ? こんなこと言うのも烏滸がましいぐらいの綺麗事ばっか言っちゃう馬鹿だ! だけど覚悟はあるの! アタシはこの体でアンタを手伝いたい! なんとかしてあげたい! だってアンタはエレオノーラでアタシの――親友なんだから!」
「なっ……」
エレオノーラの目が少し見開いた気がした。
今のアタシの言葉は本当に無責任で相手の歩んできた中で固められた気持ちを土足で踏み荒らす汚い言葉だ。
だけどこの気持ちだけは一切間違っても嘘でもない!
自信? んなもん親友の疲れ切った顔を見たら幾らでも湧かせてやるわッ!
だからアタシは覚悟だけを示せばいいの!
「貴様は……やはりフォルティナなんだな……」
「? 当たり前じゃん。アタシはどの時代、どの世界に存在してもアタシよ? きっとアンタの知ってるアタシも同じ事言ったはずだよ?」
「そう……だな……。確かにそうだろうな」
「で? どうすんの? アタシって特別な武器を使う使わない? どっちなの? ノーラ!」
エレオノーラは張り詰めていた表情が雪のように溶け、穏やかな顔を浮かべていた。
その顔だけでアタシは次の言葉が見えた気がする。
でもアンタの口からその言葉を聞きたいからアタシはにっこり笑って待つ事にした。
「頼みがある……この作戦に貴様――フォルティナの力を貸してくれないか?」
「ええ! 勿論よ! ちなみにアタシの事はティナで良いわよ? ノーラ!」
「あぁ……了承した……ティナ」
――――――――――――――――――――――
『えー。なんでノーラってばアタシの事ティナって呼ばないのさ〜』
呼ばないのではなくて呼ぶのが怖かったんだ……。
そう呼べばいつか別れが来た時に私は弱くなる気がしたんだ。
体だけじゃなく心まで弱いんだ……。モルトのような狡賢さも、マロンとイデアのような知恵も……フォルティナの様な頼りになる安心感は私には一切ない。
何も無いのだ……。
失うことが怖い。
何かを失うたび心の中を剣が突き刺していく感覚が重なっていく。一本……また一本と――
仲間の笑顔……言葉と共に確かに傷跡を残してくる。
私はそれに耐えきれないから皆とどこかで距離を取ろうと努めた……。
だが今の……過去から来た無知なティナの真っ直ぐすぎる言葉を聞いて、何故だか私の心に光が差した気がしたのだ。
ただの感情論だ……。実績も何も無い子供の戯言。
だけどその言葉が妙に心地よくて一層私の心に響いた。
そうか……私は誰かに言って欲しかったんだ……。
『私は一人じゃない』そんな言葉に近いものを。
共に戦い、傷付き、支え合う――あの頃旅を歩みあった仲間達の様な。
無駄に生きたな……。長く一人だったな……。
懐かしい……。なぁ? イデア、マロン……私はまた人に頼ろうとしてるが君たちは許してもらえるだろうか……。
会いたい。いつかこの戦争が終わったらまた君たちと旅がしたいな。
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