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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第13章 天魔大戦 滅びの未来編 1
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第10話 オペレーション・サジタリウスの矢

 人類存亡を賭けたオペレーション・サジタリウスの矢が開始された。

 連合軍全部隊が出撃し、私達を魔王城へと侵入させる為に魔族に悟らせまいと、怒涛の攻撃を魔族軍に仕掛ける。

 


 魔法は空を駆け、爆破と共に誰かの肉が飛び散る。

 それは昨日食事を共にした仲間かもしれないし、魔族のものかもしれない。燃えて焦げた肉になれば、最早どちらのものか分からない。

 


 血で血を洗う戦闘だ。魔王を撃たない限り、仲間達は死に向かい続ける一方だろう。

 それでも愛する家族の為、人類が生き残る為にと、皆が震える体に鞭を打ち、胸を締め付ける恐怖を怒号で掻き消した。

 

 

 そんな怒号と爆音が響く中、私達は中立都市フロンタイタス北部関所を横道に通り過ぎ、旧帝国街道に入った。

 ブリーフィングで聞いた通り、この光が差さない地下空間には魔族の姿はなく、魔獣の姿ばかりだ。

 獅子の体に蛇の尾を携えたキマイラ。

 トカゲの顔に爪のない翼を持つワイバーン。

 ここにいる魔獣は、地上に存在するどの魔獣よりも強力だった。

 


 恐らく人の手が一切入らないまま放置された結果、魔獣が進化を遂げたのだろう。急がなければいけないというのに、厄介極まりない。

 


 多少手こずりはしたものの、私たちの連携の前では雑魚にも等しかった。

 私が盾となって攻撃を受け止め、フォルティナとモルトが攻め込み、マロンとイデアが魔法で雑魚を片付ける。

 この戦闘の連続で弱気になった私の心は、高揚感で吹き飛んだ。

 


 これなら勝てる。私達の力と連携があれば、どんな敵にだって!


 

 そう思い辿り着いた魔王城。

 天高く聳える塔のような建造物はどこか機械じみていて、この世界のどの建造物とも一線を画す異様な雰囲気が漂っている。ぐるりと見て回ったが、窓は一切ないようだ。

 侵入出来る場所は、正面の入り口だけのようだ。

 だが警戒はした方がいい。そう言ってモルトは双眼鏡で辺りを見渡す。


 

「見張りは居ねぇな」


「ふ〜ん。伏兵も無しだなんて、随分と余裕じゃないの……」


「余裕……まあこれまでの戦況から奴らがそう思い込んでても仕方ねぇよ。雑魚を倒すので精一杯な俺様達なんだからな」


「へんっ! だったらその余裕を一気にヒリついた緊迫に変えてやろうじゃん!」

 


 フォルティナの言う通りだな。

 奴らは完全に油断している。それにここまで来る為に連合軍の皆が身を張って踊りを演じてくれた甲斐あって、体力も温存出来ている。

 


「今日ここで決着をつけなければな」


「だな。おっし! なら突入だ。マロン、イデア、テメェらはここから魔法でいつでも攻撃出来るように詠唱開始。俺様達が先行すっから安全が確保できたら着いて来い」


「「はい!(おけ!)」」


 

 マロンとイデアの2人は魔石で製造した杖を取り出す。その柄からコードを伸ばして背中に突き刺した。

 オーバード専用の魔法杖だ。

 体内に蓄積された【魔気】を直接杖に流し込む事で出力を上げる機能があるらしい。

 


 2人が詠唱を始める。その言葉は歌のように紡がれていく。その詠唱を皮切りに、私達は塔へと駆け出した。

 距離にして10メートル。

 やはり敵は出てこない。

 難なく入り口に入る事が出来た私達は武器を下ろした。

 そう……塔の中にも魔族がいなかったからだ。


 

 モルトが草むらに待機していたマロンとイデアにハンドサインを送ると、2人はトタトタと駆けて私達の元へ。


 

「敵さん居らんのん?」


「ああ。ご覧の通りだ」


 

 塔の中は鉄で出来た奇怪な造形だった。壁と天井に赤いランプが光っていて、暗い空間が照らされている。

 先は見えない。目に入るのは中へと続く一本道だけだ。

 一歩足を踏み込むと靴の音がコツンと奥まで響いていく。なんとも冷たい印象を受ける内部だ。

 


 怖いが、ここで立ち止まっていても仕方ない。

 私達は頷き合い中へと足を踏み入れた。

 皆緊張で顔が強張っていた。私も足が思ったように動かせない。恐怖で足がすくんでいるのだろう。

 そんな情けない自分の太ももを殴りつけて恐怖を拭う。


 

 今思えば、この時に引き返しておくべきだったと後悔している。

 戦争に慣れている魔族が本陣を警戒なく放って置くはずがなかったからだ。


――――――――――――――――――――――――


 今でも私はその目を覚えている。

 暗く赤い光が照明を照らす鉄の空間の中、ガラス張りの容器の中に浮かぶ白い体の少女の紅い瞳を。


 

 私達は魔族に遭遇する事なく最奥の間へと到達する事が出来たのだが、容器の中から覗くその紅い瞳の少女と目が合った瞬間、この身が震え上がり、心臓を鷲掴みにされた感覚が襲ってきた。

 見ただけで……いや。このすくむ体が本能で理解する。奴が【魔王】だと。


 

「汚染体がもうここまで……。やはりこの戦いは長引かせるべきではなかったか」


「汚染体……。はん! その言葉で俺様達を呼ぶってことは魔族に違いねぇな。だがこれは驚きだぜ……まさか人間の姿形をした魔族もいたなんてな!」


 

 モルトが剣を抜いて肉薄する。振り翳した刃が少女を包む容器へと振り抜かれたが――

 ガキン!

 弾かれただと!? なんだ!? 見えない壁があるのか!!

 


 モルトが舌打ちし後退する。

 そんな彼に私は駆け寄ると、小さく呟いた。


 

「障壁だ……。しかも今まで相手したどの防御魔法よりも硬ぇ……」


「厄介だな……」


「ならここはアタシの出番ね」

 


 フォルティナが斧を構えて自信ありげに言った。

 あの障壁が魔気由来なら彼女の力で砕ける。

 ここは彼女に頼るほかない。

 フォルティナは静かに【神気】を解放し始め、ゾゾゾッと私の身が震える。

 何度体感しても慣れない【神気】特有の発狂効果だ。


 

 気を狂わせずにこうして立てているのは、フォルティナが本気を出していないからだろう。

 必要最低限の【神気開放】。

 私達がもっと強ければそんな縛りを科せずに済むのだが……。【神気】を宿した人間と並び立てる存在などどれほど居るのか。私の記憶上存在しない。

 


「汚染体の中にまだデータ過剰体が居たのか」


「はあぁぁぁ! 行くわよッ!」

 


 フォルティナが斧を振り回した! 刃圧により風が巻き起こる。その攻撃は魔王の元へと向かい――

 


「【破山墜ッ!】」

 


 見えない壁に激突した! 障壁に波紋が広がっている!

 だが砕ける様子がない……。なんて硬さだ。フォルティナの【絶技】を持ってしても砕けないとは。


 

「か、硬いぃ……」


「残念だったな。いかにデータ過剰体であっても、我のファイアウォールは砕けまい。だが――その力はやはり危険だな」


 

 少女が容器の中から手を私たちに向けた。

 一体何をするつもりだ!?

 考える間もなく、その答えは次の瞬間明らかになった。


 

「【デスウルティマ】」

 


 未知の魔法!? 黒の球体が私達の真上に召喚された。

 その球体から一直線に光が振り落とされる。

 私達は咄嗟に回避行動に移るが、躱せど躱せど光は私たちを追ってくる。

 


「このッ! 【アースランス!】」

 


 イデアが魔法で生成した岩槍を光に向けて放つ!

 だがその魔法が光にぶつかった瞬間――飲み込まれたかのように消失した。


 

「なっ!? なんで……」


「怯んだらあかん! 光には闇や!【ヴォイドゲイン!】」


 

 イデアと入れ替わるように、マロンが光の根元――球体に向かってブラックホールを発生させた!

 光の魔法には闇を――これなら相反属性効果で打ち消せるはず!

 そう思ったが、結果はさっきと同じだった。

 


「嘘やろ……」


 

 マロンのブラックホールが霧散していく。

 まるでその場に魔法が存在できないような――


 

「汚染体のデータ量で、我の魔法が打ち消せるものか」


 

 光が床を削り、私達の逃げ場を無くしていく。

 これが魔王!? 魔族の頂点に君臨する絶対強者か!

 魔王との決戦――人類最後の戦いが幕を開けた。

 だが、これは本当に戦いと呼べるのか?

 

 

 私は今でもそう思う。

 なぜなら奴は、あの容器から一度も体を出して戦わなかったのだから。

 

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