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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第13章 天魔大戦 滅びの未来編 1
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第4話 エレオノーラの苦戦

 守備隊を置いて、エレオノーラは最前線に飛び出し、魔族どもを薙ぎ払いながら前進し続けた。

 レギオンと呼ばれる下級魔族は大した力こそないが、数が異常に多く、さらに回復も早い。


 

 団員たちの力では一時的に戦闘不能にこそできるだろうが、時間が経てば復活し、いずれ押し負けてしまう。

 だからこそ、徹底的に体を粉微塵に吹き飛ばす必要がある。

 


 そんなことができるのは、この場において唯一エレオノーラだけと言っていいだろう。

 ゆえに、この場にいる連合軍の部下には守備を固めさせ、エレオノーラ自身が攻撃に打って出るほかなかった。


 

「ぐっ――」

 


 いつも通り、侵攻してくる魔族を返り討ちにするだけの仕事だというのに、今日は体の調子が芳しくない。

 なぜだ――。

 思い当たることがあるとすれば、休息を取らずに戦い続けたからか。だが、この戦時中にそんな甘ったれたことを言っている暇などない。

 


 先立った仲間たちの無念。託された想いと命を繋ぐためにも、私は――


 

「こんなところで立ち止まっているわけにはいかんのだああああーーッ!!」


 

 大剣とハルバードを豪快に振るい、レギオンの後列に控えるドミニオンへ向かう。

 ドミニオン。レギオンを指揮する隊長格であり、知能はレギオンより高い。そして魔法の威力も桁違いだ。


 

 瞳に映るドミニオンの体は、黒く刺々しいフォルム。

 目はないように見えるが、顔はこちらを確かに捉えている様子から、見えてはいるのだろう。

 そんなドミニオンが小さく笑みを浮かべる。

 


「エレオノーラ・ライオネル。人類最後の砦……。話には聞いていたが、思ったより大したことがなさそうだな」


 

 ドミニオンが指をパチンと鳴らし、爆破がエレオノーラを襲った。

 爆破の衝撃と熱で体のあちこちが痛む。だが耐えられないほどじゃない。


 

「これで終わりだと思うなよ、汚染体!」

 


 さらに指を鳴らし、エレオノーラの周囲が爆破する。


 

「ぐっ! 小癪なッ!」

 


 大剣でガードするが、至るところで起きる爆破の衝撃と、巻き上がった石の破片が鎧を叩き、頬を掠めて傷を作った。

 これが魔族の魔法。

 詠唱もなしに、際限なく魔法を放ってくる。

 


 人類の魔法には詠唱が必要で、威力も高くはない。

 ゆえに魔法は後方に控えた魔法使いが放ち、その援護を前衛が行うのが基本戦術にして完成された形だ。


 

 エレオノーラは魔法を扱うことができるが、そんな貧弱な力に頼ることなく、この身ひとつで十分と武を極めた。

 結果、ここまで生き残ることができたし、生き残った人類を守ることもできている。

 肝心の仲間を守ることはできなかったがな……。

 


「攻撃は大したことないくせに頑丈だな。だが、あと何発爆破に耐えられるかなッ!」


「ぐっ――ううぅ」


 

 堪えろ! ここを耐えて、奴の次の隙で一気に勝負を決めてやる……。

 


「ははは。愉快痛快爽快! お前の痛みに歪むその顔は愉快な余興ではあるが、これは戦争だ。お前ひとりに構っている暇も無いんでな」

 


 そう言ってドミニオンが手を、エレオノーラから後方の守備隊――いや、その奥の街へと向けた。

 それが自分への攻撃ではなく、街の――守るべき人類への攻撃だと気付き、駆け出し――

 


「貴様ぁ!!」


「哀れな女騎士。また目の前で命が散る様を嘆くがいい」


「やめろおおおおおッ!!」


 

 手を伸ばしたが、パチン――

 ドミニオンが指を鳴らし、後方で爆発が――


 

「【断崖絶壁ぃ――ッ】」


 光の壁に遮られ、爆風が辺りに拡散した。


「な、なんだ!?」


 

 余程自慢の魔法なのだろう。そんなドミニオンの魔法が謎の光に防がれたことで隙が生じたのを、エレオノーラは見過ごすはずもなく――

 


「【剛力斬!】」

 


 斬り上げた大剣がドミニオンの片腕を斬り飛ばした!


 

「くぅッ!」


 

 だが致命傷じゃない。すんでのところで躱された。

 片腕一本程度……ドミニオンであれば物の数分で再生させてしまうだろう。

 悔しいが今はそれより――

 


「大丈夫!?」


「貴様! 魔族がなんの真似だ!」


 

 フォルティナの名を語る魔族がエレオノーラに声をかけてきた。そいつの手には仲間である騎士の武器――槍が握られているじゃないか。

 


「ちっ。誰か知らんがこいつに騙されたな……」


「騙してなんか無いわよ! アタシはアンタを助ける為に勝手に抜け出したんだから」


「ならみすみす逃した部下は相当大馬鹿者だと言うことだな、消えろ! 貴様の手など借りん」


「なんでよ! アンタ負けかけてたじゃない!」


「負けかけていただと? ハッ。何を寝ぼけたことを――ここから反撃の時間だというのが分からんのか」


「反撃って――今アタシが守りに入らなかったら街に被害が出てたじゃない! 分かってんの!?」


 

 悔しいが、確かにこいつの言う通り今のドミニオンの攻撃は私の想定外だった。よもや射程が町まで届くとは思いもよらなかったのだから。

 


「確かに不意を突かれたが、貴様に感謝するつもりは毛頭ない。これが貴様ら魔族の罠だと言うことも考えられるのだからな」


 

 ドミニオンの攻撃をこいつが防ぎ、私たちを信用させて内部から崩壊させる作戦かもしれん。そうそう信じてなるものか。

 


「あーもうっ! いちいち人の話を聞かないとこ昔のノーラそっくりッ!」


「昔の私だと??」


 私の何を知ってると言うのだ。それに昔だと? 貴様は10代の見た目だろうが……。見え透いた嘘をペラペラとよく話すものだ。

 


「もういい。アンタ無視してアイツをぶっ飛ばすから」


「は? あいつを倒すだと?」


 

 仲間である魔族同士が殺し合うだと? どう言うつもりだ?


 

「何よ。その顔は……。みんながアイツに困ってんでしょ? だったら倒さなくちゃ。だってアタシはみんなを守る冒険者なんだもん!」

 


 そう言って見たこともない魔具を取り出すじゃないか。

 なんだあの四角い魔具は?

 


「あ。ここにはR.O.Dが無いんだったね。これ見ても分かんないか」

 


 何やら馬鹿にされた気がしてムカつくな。だが今は無視だ無視。

 


「どうでも良い。それに加勢など不要だ……ぐっ」


「ノーラ!」


「近寄るなッ!」


 

 膝を着き、フォルティナが駆け寄ろうとしたのを止める。

 いかん……。集中が切れて力が抜けてしまった……。

 


「やっぱりアンタ疲れが……」


「この程度。大して問題では無い……」


 

 立ち上がろうとしたが膝から力が入らない。

 それになんだか頭がぼーっとする。ダメだ……眠気が――

 


「はぁ。強がっちゃって。良いからアンタは休んでなさい」


「それは許されん――」


「いいから! ここはアタシがちゃんとぶっ飛ばしてあげる」

 


 意味が分からない。何故そこまでして仲間である魔族と戦おうとする。今の弱った私であれば協力して倒すことなど簡単なはずだ。なにも姑息な作戦を継続する必要性が見えない。一体なぜ――

 


「言葉じゃ信じてもらえないようだから、アタシがアイツを倒すとこを見せるだけよ。そうすればアタシが魔族って誤解も解ける筈でしょ?」

 


 彼女の体が紅く発光する。

 その光はどこか知り合いの纏う【気】に似ている――いや、瓜二つだ。

 


「だからそこで黙って見てなさい。アタシの話が嘘じゃなくて本当のことだって分からせてあげるんだから」


 

 いやまさか――あの【気】は……。


 

 エレオノーラはその【気】が、かつて旅を共にし、背中を預け合った大事な仲間のものであると感じ取ることができた。

 守れなかった彼女。守りたかった相棒。尊敬し憧れた力の象徴。


 

「貴様は【破壊の――】」


 

 【破壊の聖女】と呼ぼうとしたところで、フォルティナは駆け出した。奥には腕を再生させたドミニオンが、避けるように開いた口を悔しげに歪ませている。

 


「なんだお前は?」


「アタシはフォルティナ。フォルティナ・ロックス! マインツ村出身のジャガイモ農家の娘! そして――」


 

 騎士から譲り受けた槍をドミニオンに向けた。

 それも、これからお前を倒すと言わんばかりの宣誓のように言い放つ。

 


「アンタをけちょんけちょんのパッパラパーにしてやる冒険者よ!」

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