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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第13章 天魔大戦 滅びの未来編 1
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第3話 天火

 かつて勇者パーティーには燃えるような闘気を纏った神官がいた。彼女が歩た道は破壊に満ちていた事を知っている人は知っていた。

 人の意思も力も完膚なきまでに壊し、塗り固められた思想もことごとくを蹂躙した。

 そんな彼女は言った。



『破壊はなにも悪い事ばかりじゃない。燃えた大地に命が芽吹くのと同じように再生をもたらすもの。だからこれは必要な破壊』だと。



 彼女を知る人々は思った。

 そんなメチャクチャな理論は破綻していると。

 そんな彼女はもう居ない。

 今、この世界をぶっ壊してほしいと言うのに……。


――――――――――――――――――――――


 炎が灯った。

 紅く、黒い、とても禍々しい炎だ。



「なんだ……この炎は……」



 側に居た騎士は縛り上げたフォルティナの体から発せられるその炎を見た。

 このロープは生き物の力を吸い上げる特殊な拘束具だ。

 それを燃やして破壊していく様はまるで――



「【破壊の聖女】みたいな……」



 その炎がかつて勇者パーティーに存在した聖女の炎と瓜二つだと思った。

 今生き残っている人類なら皆が知っている炎の色。

 それは空を駆け、太陽の如く燃えあがり、暗い大地を照らした希望の灯火。

 失われた太陽の輝きが騎士の目の前で再燃しているのだ。



 ロープが千切れる。

 炎で焼き切れたのかパチパチと音を立て始めているのだ。

 騎士はハッと我を取り戻し、拘束から解き放たれようとするフォルティナに槍を突き刺そうと腕を動かす。



 【破壊の聖女】はもう死んだ。

 この炎は彼女と似たものだが目の前のこいつは魔族だ。

 一度解き放たれれば、目の前の魔族軍と挟み撃ちになる。

 そう思い騎士は迷う事なく槍を振るったが――



「アンタ達を相手するつもりはないって言ってんでしょ」


「は……?」



 突き刺したはずの槍が千切れ解けていくロープの隙間で止まった。捻ったり引き抜こうとしてみるが中々抜けない。すると隙間から赤々とした液体が滴り落ちた。

 血だ……。



「こいつ!?」



 ロープの中で槍を掴みやがった!?



「今はあの魔族って奴らをなんとかしないと。アンタはいいの? このままじゃノーラ――エレオノーラが奴らに殺されちゃうかもしれないのよ!」


「は、ハッ! あり得ない。団長が負けるなんて事天地がひっくり返ってもあり得ないね! 団長は生き残った人類の中でも最強なんだ! そうそう簡単にくたばってたまるかよ!」


「なら聞くけど。あの人最後いつ体を休めたの?」


「最後ってそりゃあ――」



 そういえば団長が最後に休息を取ったのはいつだ?



 騎士はエレオノーラが体を休めた姿をこれまで見たことがない。いつも会議か指揮か戦闘に明け暮れている姿しか見たことがない。



「その様子じゃ、かなり休んでないみたいね」


「だからなんだってんだ! あの人は疲れ程度でやられるタマじゃない! お前らの言葉を信じるものか!」



 魔族は嘘つきだ。

 人類を殺すためなら手段を問わない。

 和平を申し出たと思えば数分後に平気で子供を攫い、人質にとって、親の目の前で殺すような奴らだ。



「アンタがそこで悶々としてても事態は悪化するだけよ」


「だ、黙れ黙れッ!」


「別にアンタに止められようがアタシは行くけどね」


「魔族と合流させるわけには――」


「誰があんな異形と合流するもんか」


「なに?」


「アンタ達がアタシを魔族だって信じてもらえないなら証明してあげる。今のアタシが持てる全てを尽くしてあの人を助けてあげる。そうすればアタシが魔族じゃないって少しでも信じてもらえるでしょ?」


「だからって貴様を解放するわけにはいかない!」



 騎士の叫びも虚しくロープは焼き切れフォルティナの体は解放された。

 地に足をつき肩を回し始めている。



「どうしても行かせないってなら止めてみなさいよ。それであの人が死んでも後悔しないって言うならね」



 酷い提案だ。騎士はエレオノーラを見る。



 確かにこいつの言う通り団長はどこか疲れているようにも見える。こいつがそう言ったからかも知れないが、なんだかいつもより攻撃が弱々しいような気もしてきた。



 あの人が居なくなれば人類は終わりだ……。

 自分が今ここで決断しなければ。

 こいつの言葉を信じるか、信じないで殺すか。



「はぁはぁ……」



 胸が苦しい。力が抜けて握った槍の感覚が遠のいていく。出来ることなら今すぐ責任を放り投げてこの場から逃げ出してしまいたい。

 だけど、自分がここで決断しないと――



「どうすんの?」


「お、俺は――」



 彼女から溢れる炎が聖女に似ていたからか。

 もしくは今、急かされたこともあったかも知れない。

 この弱った心に団長が死ぬかもしれないと。言った言葉が胸を抉ったからかもしれない。だから答えてしまった。



「お前を……信じる……」


「そっ。なら任せなさい。あんな魔獣。チャチャっと片付けてきてあげるからさ」



 ニカっと笑ってフォルティナは歩き出した。

 それも手ぶらでだ。彼女の武器は連合軍が確保している。武器無しで戦おうってのか? それなのに何が『チャチャっと片付けてくる』だ。



「おい!」


「ん?」


「これを持ってけ」


「これって……アンタの槍じゃないの。いいの?」


「ああ。その代わり……あの人を――団長を助けてくれ。俺たちの力じゃ魔族には敵わない。あの人の力になれることがあるならなんだってしてやる。その代わりッ! 貴様が裏切ったら俺が命を賭けてぶっ黒してやる! 分かったな!」


「はは。上等。まあそんな日は一生来ないだろうけどね」



 フォルティナの体から一気に炎が解き放たれそれは燃える太陽のようだった。

 まるで――【破壊の聖女】の再来――



「さあアタシの信用を勝ち取ってやろうじゃん! アイツらをぶっ飛ばしてさぁッ!!」



 フォルティナは飛び出した。

 その炎はかつて空を駆けた太陽の――天火そのものだった。

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