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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第13章 天魔大戦 滅びの未来編 1
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第1話 天魔大戦

 ある日、その存在は帝国の空から現れた。

 全身の色は漆黒。禍々しい翼を携え、人のそれとはかけ離れた異形の姿を模る人型の魔獣が、晴れた空を斬り裂き、空間の裂け目から軍を率いてこの大陸へと攻めてきた。


 

 魔獣は恐ろしく強かった。

 いや、理不尽なほど圧倒的で、まったく歯が立たなかったと言うべきだろう。

 


 武を極めた英傑達が技を放つが硬い外郭に阻まれ、魔獣は呼吸するかのように人類の魔法を遥かに凌駕した超常的な能力を見せつけたのだ。


 

 ある魔獣は空間に亀裂を生み、あるものは海を割った。

 しまいには時間停止など、とても相手にできる存在ではなかった。


 

 そんな魔獣を、いつからか人類は「魔族」と呼ぶようになった。


 

 そんな魔族を討伐するため、人類は冒険者に魔法使い、騎士や軍などを総動員し、連合軍を結成した。

 彼らの中には、魔族に立ち向かう“勇者”と呼ばれる存在もいた。

 


 名は知られていない。

 だが彼らを知る人々は語る。


 

 言葉は汚いが人情に熱い男。双子の女奴隷。そして女騎士と神官の五人組だったと。


 

 彼らは各地に侵攻する魔族を相手に一騎当千の活躍を見せた。

 女騎士がすべての攻撃を受け止め、男が剣で道を切り開き、奴隷二人が魔法で魔族を穿ち、神官が斧で大地を割った。

 


 人々はそんな彼らを希望の存在と呼んだ。

 彼らがいれば、この世界に平和が訪れるかもしれない。

 そう思わされるほどの英傑達。

 


 だが――そんな希望は突然消え失せた。

 


 燃え上がった炎に嵐が吹きかけられ、かき消されたかのように。それは一瞬だった。

 


 だが人類は、そんな英傑達の活躍を忘れない。

 いつか平和を取り戻す。

 その心意気だけで泥水を啜り、屈辱に耐え、仲間の死を乗り越え続けた。

 


 そんな終わりの見えない魔族との戦争を、誰かがこう名付けた。


 ――天魔大戦と。


――――――――――――――――――――――――


「ちょっ!? 話を聞いてってば!」


 

 ラングの街から少し離れた平原で、アタシことフォルティナは今、目の前の騎士甲冑姿の女性からハルバードと大剣の二刀流で攻撃を受けていた。

 


 どちらの武器も大物で、二刀流で扱うものなんかでは決してない。

 それなのにこの女性は、軽々と片手で武器を振り回してくるじゃないか。

 


 まるで木の枝を振るうようにしなやかにハルバードをぶん回し、流れるような剣術で大剣を斬りかかってくる。


 

 技術も高いけど、それよりも見るべきはこの異常な筋力だろう。

 馬鹿みたいな筋力があって大物を軽々しく扱う彼女から繰り出される洗練された技に、アタシは躱すので精一杯だった。


 

 試しにクラフトアックスで攻撃を受けてみたら、衝撃で腕の骨がジンジンと痛んだ。

 はっきり言おう。この力をまともに受けたら骨が粉々だ。

 


「魔族の話など聞くに値せん! だが殺しはせん。生かして捕らえ、貴様らの本拠地を吐かせるッ!」


「ぐっ! 【断崖絶壁ッ!!】」

 


 女性の二振りの攻撃を、アタシの【絶技】で防御する!

 衝撃でアタシの体が吹っ飛ばされるが、身を捻り、クラフトアックスを地面に突き刺して勢いを殺した。


 

「ちっ、なんてしぶとい魔族だ」

 


 反撃しようと思えばできる。だけどそれは無理な話だ。

 だって彼女は、アタシにとって大事な人と同じ名前なんだから。


 

 エレオノーラ・ライオネル。

 アタシの親友と同じ名前、同じ体。唯一違うのは歳ぐらいだろう。


 

 そんな彼女に攻撃することなんて、アタシにはできない。

 ましてや、こんな命をかけた戦いなんて最も無理な話だ。

 


「聞いてって! アタシは過去の世界から来た人間なの! それもアナタと友達だったフォルティナ・ロックスよ! ここが未来ならノーラの友達にもいたはずでしょ! ほら、この姿を見て思い出さないの?」

 


 言って手を広げて見せた。

 これだけ全身を見せつければ、いかに子供の姿であってもノーラなら気付いてくれると思った。


 

「フォルティナ……だと?」

 


 だが結果は、彼女の怒りを助長させるだけだった。

 アタシの名前を聞いた途端、ノーラの顔がより険しくなる。

 


「確かにその者は私の友人だ……」


「だったら――」


「だが彼女は死んだ! それも私の目の前でなッ!」

 


 ハルバードを全力投擲してきた!

 風を裂く音と風圧が目の前から迫ってきて、アタシは顔が引き攣った。

 身を逸らしなんとか回避してみせたが――

 


 ドオオオオオオオオンッ――!!


 

 信じられる?

 ただハルバードを投げ飛ばしただけで、穿たれた大地が爆発したんだよ?

 


 これが【絶技】だって言われたら納得するけど、今のノーラは技の名を叫ばなかった……。

 つまり素の力だけでこの爆発を生み出したってこと!


 

「殺す気!?」


「この程度で殺せるなら人類はここまで後退なんてしないッ!」


 

 振り向いたと同時、ノーラが大剣で斬りかかってきた。

 瞬時にクラフトアックスで受け止める。


 

 ノーラ達が戦ってる魔族って存在、一体どんな強度してんのよ!


 

「貴様がフォルティナを語る狡猾な知恵を持った魔族ということだけは分かった。もう言葉は十分だ。貴様の話す言葉は嘘しかない。なら極限までその体を斬り裂き、腕を引き千切り、仲間達の前で後悔と懺悔の言葉を吐いてから、すべての情報を吐かせてやるッ! 覚悟しろッ!」


 

 アタシの防御を崩し、ノーラは大剣を大きく振り上げた――

 その大剣にオーラがゆらりと纏っていく。

 それが練り上げられた闘気だとアタシは瞬時に理解する。

 


「やば……」


「これで終わりだ……【グローリ・ア・ライオ――】」


 

 闘気が一層輝きを増し、アタシの頭がカチ割られると思った瞬間!


 

「団長!! 大変です!」


 

 ラングの街から早駆けの騎士が馬に乗ってノーラに叫んだ。

 その叫びにノーラは手を止め、「なんだッ!」と答える。


 

「街に魔族が侵攻! その数五千! 大至急、指揮をお願いします!」


「なんだとッ!? くそ! こいつは囮だということか!」


 

 悔しげなノーラはアタシの首根っこを掴んで――


 

「えっ……」


「貴様は捕虜だ! 奴らには効果がないだろうが、交渉材料として連れていく! しばらく寝ていろッ!」

 


 ズガンッ! とアタシの顔が地面に叩きつけられた。

 その痛みと衝撃は、過去の帝国で連戦して疲れたアタシの意識を断つには十分すぎるほどのものだった。

 


 意識が薄れゆく中、アタシはノーラの馬に乗せられ、ラングの街へと運ばれていくのだった。

 

第13章開幕です。

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