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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第12章 復讐と未来。帝国編 3
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第56話 過去より劣る未来

 天火大帝イデアによって時空間転送装置に巻き込まれ、異空間に放り込まれたアタシ。周りには時計の模様や意味の分からない数字の羅列ばかりが漂っていてどこまで行っても景色が変わらない。

 そんな先の見えないこの空間に光がようやく見えてきた。


 

 出口かな? そう思った瞬間、アタシの体は光へ真っ直ぐ向かって吸い寄せられるように加速する。

 光を潜り抜けた、その直後。全身を何かに引っ張られる感覚が不意に襲ってきた。


 

 重力だ。

 さっきまでの浮遊感が唐突に消え失せ、アタシの体は土の上に叩き付けられた。

 


「ぐぇっ」



 ドシンと盛大に腹から落ちた。顎を強く地面に打ち付けてしまった……かなり痛い。

 

 にしても、さっきまで帝国のソーサリーズに居たというのに、目に映るのは木、木、木! ここは森の中?


 

 それに今は夜なのか、辺りは暗く、空気が冷たいや。

 鳥の鳴き声に、何かが蠢くような音しか耳に入ってこない。ザ・自然の中だね。

 今の時代、こんなに人の手が入っていない森は珍しいや。

 


 相当な田舎、もしくは共和国のどちらかだろうね。

 立ち上がって土埃を払い落とす。

 荷物はほとんど無い。まあ元々荷物なんてなかったけど……。でもクラフトアックスはしっかりグローブに装着されていて、これならいきなり何者かに襲われても何とかなるはず。

 


「取り敢えずここがどこなのか知らないと」


 

 R.O.Dを取り出してマップアプリを起動した。

 こういう時、R.O.Dは便利だよね。GPSとかいう機能で現在地を割り出してくれるんだからさ。



 だけど画面にはエラーの文字しか浮かび上がらない。


 

「うそうそ! なんで! イデアったら一体アタシをどこに飛ばしたって言うのよ!?」

 


 時空間転送装置って魔具なんだから帝国とは別の場所に飛ばされたはず。

 同じ大陸内のはずなのにマップが表示されないとはどういうこと?

 アプリを閉じて再起動してみたけどやっぱりエラーのまま。


 

「そうだ電話!」


 

 電話なら繋がるかも。そう思いモルト、ノーラにマロン、イデアの番号に連絡を入れてみた。


 

『この番号は現在使われていないか、もしくは電波の届かない場所にあります――』


「なんでよぉッ!!」

 


 無情にもそんな機械音声だけが再生されるだけだった。

 今の時代、どこにいても連絡を取れるはずなのに。

 何だか腹が立ってきた。

 R.O.Dを地べたに叩きつけようとしだけど……やっぱり止めた。

 だって高いから……。壊れたらもう二度とこんな高級品手に入らないかもしれない……。


 

「【伸びろ……】」


 

 念のため、魔法は使えるか試してみる。

 すると手に取り付けられたクラフトアックスの柄がニュッと1メートル伸びた。

 魔法は使えるみたい。ならR.O.Dの故障ではなさそう。

 


「って事は場所の問題か……」

 


 見渡せど木ばかり。途方に暮れたアタシはポケットの中のコンパスに触れた。

 


「行き先に困ったときはコンパスちゃんの出番よね。グルグルしてないと良いんだけど……」


 

 そーっと取り出したコンパスを見てみると、いつもならグルグル回っている針が真っ直ぐ南を指していた。


 

「コンパスちゃぁぁん!」


 

 やっぱ困った時はこのコンパスよねぇぇぇ!

 アタシはコンパスと、これをくれたおじさん冒険者に深く感謝しながら針の指す方向へ向かう事にした。


――――――――――――――――――――――――


 落ち葉が絨毯のように積もる森の中を歩き続けること数十分。奥には木が途切れたような場所が見えてきた。

 出口だ!

 アタシはそう思い駆け出した。

 森を出れば人の痕跡が見つかるはず。

 そう思ったのだが目に入ったのは――

 


「ここ……どういうこと?」

 


 目の前に広がっていたのは、舗装されていない道に魔獣が何匹も徘徊していて、奥に見える大きな街は共和国風だが、なんだか古めかしい。まるで昔の時代に放り込まれたかのような風景だった。

 


 どう古めかしいかと言えば、街の外壁の中、住宅と思しき建物の煙突から煙がモクモクと立ち上り、ソーサリーズやガードナーの会社のような近代的なビルなんて一切ないように見える。

 だがそんな街にはなんだか見覚えのある大きな時計塔が一つあった。


 

「あの時計塔……まさかラング!?」

 


 間違いない。あれはアタシが冒険者試験を受けた街ラングだ。だけど知ってるはずの街並みと違う。一体どういう事だろう。

 

 でもあそこに行けば何か分かるはず。

 それに、なんだか嫌な予感がする。

 それはアタシがここに飛ばされる前に、天火大帝のイデアが言っていた言葉――

 


『敵を知りたいのだろう? だったら見てくるんだな』


 

 敵――イデア達が戦っていたという存在。それは未来にしか居ないはず。それを見てくるんだなと言われた……。

 


「いやいや、まさかね……」

 


 考えすぎかな。

 アタシは魔獣を魔法と神技で蹴散らしつつ街へ進んでいると、街から馬に乗った甲冑姿の集団がアタシの向かって駆けてくるのが見えた。

 


「止まれ! そこの魔族!」


「な、なになに!? なんなの!?」

 


 甲冑姿の集団は一斉にアタシを取り囲み、剣を向けてきた。咄嗟にアタシは手を上げて抵抗する気が無いことを全身で表した。


 

「白昼堂々、1人で襲撃とは随分と舐めた魔族だ。武器を捨てろッ!」


 

 どうやらこの人がこの集団のリーダーみたい。


 

「魔族って……。アタシは人間よ! 人をそんな魔獣みたいに呼ぶなんて失礼なんじゃないの!」


「黙れ黙れ! さっきから物の形を変える魔法に火魔法を詠唱も無しに発動させていたのを私たちは見たぞ!」


 

 どうやら街の監視塔のような所から、アタシと魔獣が戦っている姿を見てたらしいわね。

 詠唱も無しって……今の時代じゃ当たり前の技術のはずなんだけど。

 


「詠唱も無しって。普通のことでしょ! ほら」

 


 そう言ってアタシはクラフトアックスのサイズを1メートル伸ばしてみせた。

 なんの変哲もない【伸縮魔法】だ。

 


「ね? 普通普通」


 

 とニッコリ笑顔を向けたが、騎士達はそんなアタシを何やら恐ろしい物でも見るかのように震えだした。



「魔族だ……」

 

「魔族がとうとうこの街にまでやって来たんだ……」

 

「ええい鎮まれッ! 魔族と言えど相手は1人! 我々レジスタンスが束で掛かれば討伐は容易い! 総員構えッ!」


「「「は、はい!!」」」


 

 全員が馬から降りて剣を構え始める。

 怯えはあるみたいだけど、覚悟は決まった様子……。

 この人たち……アタシを攻撃するつもり!?

 


「ちょっと! 少しはアタシの話を聞きなさいよッ! 大体、魔法を使ったぐらいでなんでそんなに怒って――」


「魔法隊! 詠唱開始!」


「「「雷よ。疾く速く駆け抜ける雷光の一閃よ――」」」


 

 話を聞くつもりは無いって!?

 騎士達の後衛が木の棒のような小さな杖を額に当ててブツブツ何か呟き始めた。


 

「なんだかよく分かんないけど――ここは引いた方が良さげね!」

 


 穏やかじゃない様子にアタシは踵を返し、この場を去ろうとしたが、リーダーが「逃がすなッ!」と言って騎士達が襲い掛かってくる!

 それをアタシは格闘術のみで応戦し、転がす程度に留めつつ離脱しようと試みた。


 

「隊長! この魔族只者ではありませんッ!」


「怯むな! もうすぐこの場に彼の方が来られるはずだ! それまで持ち堪えるだけで良い! 魔法隊まだかッ!」


 

 リーダーの叫びに魔法隊の1人が「準備できました!」と答え、リーダーはニヤリと微笑む。そして剣をアタシに向けて叫んだ!

 


「覚悟しろ魔族! これが人類の魔法だぁ!」


「「「ライトニングピアースッ!!」」」

 


 バチバチと迸る雷光がアタシに向かって放たれた。

 これが……魔法?

 長い詠唱の末に放たれた雷魔法は、思ったより大したことが無いように見える。


 

 今まで体験してきた魔法の中でも下級レベルの物だ。

 アタシは手に【気】を纏わせてその魔法を弾いてみせた。

 


「なっ!?」

 


 リーダーが驚愕の声を上げた。

 後ろに控えた騎士達も「そんな……」と絶望している様子だ。


 

「ライトニングピアースだぞ……。現代最強の魔法がこうも容易く……やはり魔法では魔族に敵わないというのか……」

 


 動揺してる……今だ!

 そう判断しアタシは森に向かって駆け出した。

 走り出した瞬間、空からハルバードが放物線を描きアタシの目の前に突き刺さるように落下した!


 

「今度はなに!?」

 


 バックステップでハルバードを躱し、振り返る。

 騎士達の背後から身長2mはあろう全身騎士甲冑の人物が現れた。ハルバードを投げたのはこの人だろう。

 背中には大剣、もう片手にはバックラーとかなりの重装備だ。相当重いはずにも関わらずこの投擲。かなりの腕の持ち主みたいだね。

 


 騎士達が左右に散って道を開ける。その道を歩いてアタシの前に立つ巨体の騎士。

 そんな人物にリーダーが駆け寄った。

 


「団長! すみませんこの魔族見た目はただの子供の癖に相当やり手です……。我が連隊の魔法が一切通用しませんでした」


「そうか……」

 


 巨体の騎士の声音から、驚いたことに女性のようね。

 そんな騎士は背中の大剣を抜き、地面に突き立て仁王立ちし始めた。

 


「お前達は下がれ。この魔族の相手は私がする」


「団長!? 危険です! 我々にも手伝わせてください!」


「ならん! 貴様達が倒れたらあの街に残された人々は誰が守るというのだ!」


「団長! それは私たちの言葉です! 生き残った英傑はもう貴方だけなのですよ! 貴方の命は皆の希望だ! そんな貴方を1人残すなんて出来るはずがないでしょう!」


「英傑だからこそだ! 先人達が貴様達を生かしたのだ。それをみすみす見殺しにするなど、この私――エレオノーラ・ライオネルの中に流れる王国騎士の血が許さんのだ!」


「ノ、ノーラだってぇ!?」

 


 アタシに騎士達は顔を向けてくる。

 


「こいつ団長のことを知ってるだと……」


「やはり危険です! 敵に正体が悟られている以上、不利です! ここは退くべきです!」


「いやここで迎え撃つ……」


「団長!」

 


 騎士達を手で退かし、エレオノーラと呼ばれた騎士がアタシの目の前に立つ。

 顔は兜で見えない。同一人物なはずがない。今ノーラは帝国にいるはずなのだから。

 だがアタシはもしかすると――と考えてしまう。

 天火大帝イデアが言った一言が頭の中を巡るのだ。

 その言葉がアタシの中で一つの仮説を導き出している。


 

「アンタ。本当にエレオノーラ・ライオネルなの? あの王国騎士団長タグラス・ライオネルの1人娘の……」


「ほう。どうやら本当に私のことを知り尽くしているようだ。魔族め……」


 

 そう言って騎士は兜を取った。

 中にあった顔は、アタシのよく知る親友エレオノーラのものとは少し違った。

 歳を取っている? それも20代か30代ぐらいの……。

 目の下にはクマが出来ていて、かなり疲れた様子だ。

 その顔を見てアタシの中の仮説は証明されてしまう。


 

『敵を知りたいのだろう? だったら見てくるんだな』


 

 天火大帝イデアの言葉――それらが導き出した答え、それは――


 

「どうやらアタシ……未来に来ちゃったみたいね……」


 

 大剣を片手に持ち迫る未来のエレオノーラは、アタシを敵として完全に見てる……。

 どうやらアタシの知ってる時代とは流れが違ってるみたいで、このエレオノーラは一切優しくなさそうだという事だけは、漂わせる【気】から察することが出来た。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし面白いと思って頂けたら

評価とブックマークをして頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

帝国編完結。

次回より未来編突入です!

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