第55話 これからの事
フォルティナが姿を消してから数時間後。
気を失ったエレオノーラをベッドで寝かしつけ、残ったメンバーはソーサリーズ本社内の客間で一度集まり、状況を確認し合う事になった。
この場にまたテロリストが戻ってくる可能性もあるとモルトは考え、オーガファミリーのチンピラ達をソーサリーズの外で警護に当たらせた。
山本の応急処置を終え病院に搬送したサーシャとも合流し、ピースメイカー所属のSランク冒険者サルフォッサスもこの場に来ていた。
どうやら軍とガードナーが裏で繋がってフォルティナ達をサーシャ誘拐のテロリストとしてでっち上げた事の裏が取れたらしく、その謝罪と報告に訪れたらしい。
そんなサルフォッサスから、今回の事件に関わった軍上層部、ガードナー役員、それにフォルティナ達を襲うよう無能な判断を下したピースメイカー上司を処刑したと報告を受けた上で謝罪された。
生首となった悪人どもの姿をR.O.Dで見せられた時は、モルト達は反応に困り、ただただそのグロテスクさに吐き気を催すだけだった。
そんなこんなで今回の話は【エクリプス】残党の事もあって、ついでに聞いていってもらう事にしたのだ。
「で? その天火大帝と呼ばれるテロリストがソーサリーズに残されていたレイチェルの遺産を奪い逃走したと……」
「ああ。だよなマロン?」
サーシャがモルト達の話をまとめてそう言った。
モルトは途中からの参戦だった為、マロンに確認を取るが心ここに在らずといった様子のマロン。そんなマロンに「おい、聞いてんのか?」と肘で小突く。
「え、あ。ごめんごめん。なんて?」
「しっかりしてくれよな。天火大帝の奴が魔具を奪って逃走したって事の確認だよ」
「あ、ああせやで? その魔具を使って姉ちゃんがどっかに飛ばされてもたねん……」
ふむ……とサーシャは少し考える。
そんな彼女をチラリと見て、サルフォッサスが腕を組みながらマロンに尋ねる。
「今の話で出た容疑者、天火大帝は未来から来たと言う。そしてその名をイデアと言っていたのですよね?」
「せやな……。それはここにおるウチの妹と同じ名前であって、奴はウチのことも姉って呼んでたから、間違いなく未来の妹なんやと思うけど……」
マロンが目を向けた先のイデアは、なんだか申し訳なさげだ。それもそうだろう。自分自身が何かをした事実はないのだが、未来の自分がこの様な大事を犯したのだから気が滅入るというものだ。
だがサルフォッサスはそんなイデアの様子など気にも留めず、マロンへ質問を続ける。
「ではマロンさん。貴方はその容疑者と対峙したのですから聞きます。逃走先について何か言っていませんでしたか? 協力者、または潜伏先など、覚えている範囲で構いませんので教えてください」
「って言ってもなぁ。さっき話したことしか覚えとらんし……なあランス兄ちゃん?」
「せ、せやなぁ〜」
ランスもランスでなんだか気まずそうだった。
マロンに聞かれたランスはモジモジとして視線を逸らしている。そんなランスにマロンは首を傾げて「どないしたん?」と声を掛けた。
「どないしたもこないしたもないわ! まさか道端で空から落っこちてきたお前が、まさか俺の婆ちゃんやったんやで!? それにここにあった婆ちゃんの遺産が時空間転送装置? はぁぁ? 俺、今夢でも見とんとちゃうかって思っとるねんけど……」
「あはは。せやなぁ。でも、それを言うたらウチの方が理解に苦しんどるとこやで? なんせウチの未来は、アンタを孫にする程の家族を築いたっちゅう訳やからなぁ」
内心複雑だ。未来の自分がどこの誰かと結婚し、子供を産んで歴史に名を残すほどの魔技師になってタイムスリップしているのだから。
そんなマロンの顔を見たランスは「確かにそうか……」と呟く。
「ちょっと混乱してもたわ。ごめん婆ちゃん」
「ちょいッ! 婆ちゃんは止めぇ! ウチはまだ10代やで? おじさんおばさんはともかく、お母ちゃんをすっ飛ばして婆ちゃん呼ばわりされるんはなんか胸に来るもんがあるやろッ!」
「で、でも婆ちゃんは婆ちゃんな訳やし……」
「そんな悲しそうな顔すんなやッ! あんたの婆ちゃんはあくまでレイチェルの方や! まだウチはあんたらを産んだ覚えはありませんッ!」
2人の言い合いにコホンとサルフォッサスが咳払いし、切り上げさせた。
「で、覚えてることは他にないと?」
「「ああ。せやな」」
これにはお手上げとばかりにサルフォッサスが頭を掻きむしる。手がかりは未来と異世界という言葉だけ。
ここに攻めてきた時に乗り込んでいたのがステルス機能付きの戦艦である事から、追跡も難しい。
「天下のピースメイカー様もこれにはお手上げな様だな」
モルトが困り果てるサルフォッサスを見て肩をすくめた。
「まあ今回は異世界も関わってんだ。だったらその筋の専門家に話を通した方がいいんじゃねえの?」
「教会か」
モルトの言葉にサーシャが答えた。
言葉を濁したが、どうやらサーシャとサルフォッサスは教会が秘匿している情報をある程度掴んでいるようだ。
「知ってんのか?」
「まあな。帝国の情報部の実力を甘く見てもらっては困る。まあ全てを知っているわけではないが、多少理解していると思ってもらっていい」
「私達も同じです。ピースメイカーは組織柄、全大陸の全てを網羅すべき機関。独立した情報収集技術があるので裏の話にも精通していますよ」
「なるほどな。だったら話は早い。ここに教会関係者の連絡先がある。それも裏に通じる奴のな」
そう言ってモルトは自分のR.O.Dをチラつかせた。
そこにはリトゥンの連絡先が入っていた。今回のあらましを話せば飛んできてくれそうな人物だ。
「確かな手掛かりがないなら、今ある情報を教会と共有して奴らの痕跡を一つずつ解き明かしていくしかねぇだろ」
「そうですね。ではモルトさん、連絡をお願いします。私は一度ピースメイカー本部に戻って上層部に報告してきます」
「ああ。了解だ」
そう言ってサルフォッサスはこの場から出ていく。
サーシャは「なら私は――」と呟き、マロンとイデアの元へ歩み寄る。
「マロン、イデア。君達の見た話から、その時空間転送装置の構造と効果を解析しよう。解明できればフォルティナがどこに飛ばされたか解明出来るし、なんだったら連れ帰る手段を見つけ出せるはずだ」
「は、はい!」
「おけおけ。なら――」
マロンはランスの元へ駆け寄り、袖を引っ張ってサーシャの元へ連れてきた。
「兄ちゃんにも手伝ってもらわんとな」
「ちょ!? 婆ちゃん! 俺もかいな」
「婆ちゃん言うなッ! 当たり前やろ。アンタはレイチェルの孫で一緒にバイクを作った程の仲良しやったんやろ? やったらあの魔具について何か託されとるはずや。ウチやったら絶対何かを託すはずやで」
「そんなもんあったかなぁ」
ランスはうーんと唸ったが、マロンは確信していた。
未来の自分なのだ。元の性格や癖は同じはず。だったらこの考えは当たっている可能性が高い。
転送装置の機能に血縁者しか起動出来ないというものが備えられていたぐらいだ。それは身内以外の誰かに奪われることを想定した機能のはず。
それもこれも最悪の状況を想定した自分らしい発想。だったらその身内が悪さをする可能性も考慮しているはず。それを家族に託しているとマロンは考えた。
「思い出すんや。それがあの装置の解析の近道なんやからな」
「わ、分かった。なら親父と後で確認してみるわ」
「頼んだで」
「話はまとまったな。ならマロン、イデア。私達は研究所に向かおう。そこでなら設備も十分備わっているし、ここよりも作業は捗るはずだ」
マロンとイデアは頷き、サーシャと共に行動する事になった。イデアの様子はあまり優れない様だが、何かに没頭していれば気も紛れるだろうとモルトは考え、2人を見送った。
「んじゃ俺様はっと――」
R.O.Dでリトゥンに連絡しようとした時、部屋に1人の少女が慌ただしく入ってきた。
「ティナが消息不明ってどう言うこと!?」
「あー……」
やって来たのはミシェルだった。確かこいつはティナの友達だったな……。
モルトは頭を掻き、どこから説明したものか迷い、ため息を吐いたのだった。
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