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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第2章 観光都市ランブル編 憎悪を超える愛の歌
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第18話 解決の兆し

 フォルティナとモルトはドレッドベアーを討伐後、報告メールを冒険者協会に送信し辺りを調べていた。


「見た感じ変わったとこは無いけど……何か分かった?」


 広場を中心に異常を探していたフォルティナは森林手前辺りを確認していたモルトに聞く。

 モルトは地面に数匹の獣の足跡と引き摺られたような血の跡を見つけていた。

 

「合ったぜ? 昨日とは違う何かをな!」


 そう答えたモルトにフォルティナは小走りで近づき確認し……ゾッとする。


「うわっ……何これ……血? それに足跡がいっぱい」

「この引き摺られた血の跡はさっきのドレッドベアーのものだろうな……足跡は……中に入ってみれば分かるだろ」


 そう話すモルトは森に入って行く。


「ちょっと! 危なくないの!?」


 慌ててフォルティナがそう叫ぶように聞くとモルトが振り返らず歩きながら答える。


「多分大丈夫だ! 行くぞ?」

「わ……分かった……」


 フォルティナは恐る恐る後に続く。森林内を少し進んだ所で異常を発見した2人は足を止める。


「合ったな……」

「こ……これは……」


 2人は目の前に犬や猫……小型魔獣や中型魔獣の何十体にも及ぶ死骸が無惨に転がっているのを確認した……

 フォルティナは辺り一体の死の光景と血の匂いで青ざめ吐きそうになるも腕で鼻を塞ぎながらなんとか堪えていた。


「動物と魔獣達の死骸がこんなに……一体何があったっていうの……それに凄く……臭い……」


 モルトが近くに落ちていた頭の無い魔獣の死骸と周りを見渡しながら答える。


「複数の噛み跡に頭部が無い死骸……そして飛び散った血の跡から考えられるのは恐らく……こいつら全員が何らかの理由で争っていたんだろうな」

「理由って? 何?」


 フォルティナが不快感に耐えながら今度は犬の死骸を見たままのモルトの考えを聞く。モルトは振り返らず少し考え顎を揉みながら答える。


「ガキンチョ? 昨日の魔獣になりかけていた犬を相手した時に言ったよな? 何らかの理由で魔気を過剰摂取すると生き物は魔獣になるって」

「言ってたわね……まさか本当に普通の動物が魔獣を食べてああなったの? だからこんな死骸だらけって事?」


 フォルティナはそう答えるがモルトは付け加えるように説明する。


「確かに食べてああなったのは違いないだろうが……それだと俺様達人間も魔獣になっちまうだろ? 通常満腹まで魔獣を食べたとしても魔獣化はしない じゃないと世の中魔獣化した人間まみれだ……だがそうはなっていない」

「確かに……なら何で魔獣化したの?」


 モルトはフォルティナに向き返り考えうる答えを告げる。


「簡単だ……満腹を超えてまで魔獣を喰らい続けていたんだ……こいつの腹を見てみろ?」


 モルトの近くに転がる犬の死骸の腹を裂き中を見ると魔獣の肉がぎっしりと詰まっていた……


「うっ……こんなにパンパンになるまで食べるなんておかしいわよ……」


 フォルティナは気分を害していたがモルトは気にせず続ける。


「そうだな ただの喰らい合いじゃねぇ……本来動物は魔獣に襲い掛からない……本能で敵わない事が分かってるからだ だがこいつらは喰った 噛み跡から分かるように自ら襲いかかっていったんだ そしてこの血の匂いを嗅ぎつけ外から来たドレッドベアーに一掃されたって辺りが今回の落とし所だな」

「あいつが現れた理由は分かったけど普通の動物は魔獣を襲わないならなんで! ここの動物は違うの?……まさか!」


 フォルティナは気づく、本来の動物とこの街の動物の違い……街の異常が結び付く。


「香りね……あの香りで怒り狂ってたんだとしたら空腹で食べたっていうより怒りで争ったって事ね」


 モルトは頷き答える。


「正解だ……魔獣やここに転がっている動物達は人間より鼻が良い分早く変化が出た……ならこのままだと……」


 フォルティナはモルトが告げようとした答えを先に告げる。


「街の人達が危ない!」

「そういう事だ……人間は感情も備わった生き物だ……ここの惨状よりも酷い状況になる事は間違いない なんとかしねぇと……」


 モルトは再び考え込む……


 匂いが原因なのは間違いない……だが元は何処からだ……どうやって探せば良い……


「クソっ! どうやって街の中から匂いの元を探せば良いってんだ!!」


 モルトは地面の土を蹴り上げボヤく。 その疑問にフォルティナも考えていた。


「匂いの元……そうだ!」


 何かに気づいたフォルティナにモルトが量肩を掴み聞く。


「何に気づきやがった! 何でも良い答えやがれ!」


 肩を揺らされながらフォルティナは答える。


「滝の場所! あそこでアタシもアンタから離れて匂いを嗅いだんだけどすっっごい甘い匂いがしたって言ったでしょ? でも宿で1人の時は甘い匂いすら感じなかったわ! てか揺らさないで! 吐いちゃう……」

「スマン! つい熱が入りすぎちまった……続けてくれ」


 モルトはフォルティナの方から手を離し、フォルティナは吐き気に耐えながら続ける。


「つまり匂いは自然に出たものじゃなく人から発されている物って事……大通りだと出店……酒場だと料理の香りで紛れるから変化は無い……そして容疑者と思われる女性は香水やお香を売ってたんだからその匂いは1番キツい可能性が高いはず……アンタの【香水魔法】より強い匂いがする場所に行けば何かあるかもって思ったのよ」

「そうなると俺様が匂いに気づいた場所が1番怪しいって事だな……今のところお前の推測だと大通り、酒場を除いて滝、住宅街、それとここは匂わない……それ以外の場所って事だな……」


 モルトはフォルティナの両肩をバンバンと叩き褒める。


「お前! 馬鹿だと思ってたが良くやった! 良いとこで勘が鋭いぜ! ハッハッハ!」

「こ……これぐらい……よ……余裕……オロロロロ!」


 凄惨な情景と血の匂いを耐え肩を揺らされ何とか耐えていたが最後に肩を叩かれたのをトドメにフォルティナはモルトの一張羅のスカジャンに嘔吐した。


「オォォォイ! このクソガキィ! きったねぇ!」


 赤色のスカジャンから前部分が吐瀉物色に変色したスカジャンの汚さにモルトの叫びが森に響き渡った。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

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