第12話 違いの気付き
2人は食事を終え各自の部屋に入り過ごしていた、フォルティナは最高級ステーキを涙を流しながら堪能し「アタシ今日はもう寝るわね……」と悲しげな顔で部屋に入っていった。
モルトは部屋でR.O.Dを椅子に座り机に頬杖をしながら操作しランブルの街中の依頼を確認していた。
「ナイフを持った不審者の捜索に魔獣化した動物の討伐依頼……それに喧嘩や観光客同士のトラブル案件が多数か…… やっぱおかしいよな?」
モルトは街に最初に着いた時から徐々に治安が悪くなっている事が気になっていた、フォルティナと合流するよりも前に到着していたがここまで治安が悪くなかったと記憶している……
「ガキンチョが言っていた甘い匂いってのも気になるしな……アイツの事はそんなに知らんが滝での一件は腹を立てる程の事じゃなかったはず……にも関わらずアイツは手を出し掛けていた……そして俺にはその匂いが分からんと来た……ガキンチョと俺の違いは何だ?」
モルトは指で顎を揉みながら険しい表情で考える、フォルティナが匂いに気づいて自分が気づかない理由を……そしてここ数日での街の異変を……そう考えているとR.O.Dの魔気残量が無くなりかけていた……
「おっと…… 魔気をチャージしなきゃな……」
部屋に置かれた魔石台座にR.O.Dを置く。R.O.D内の魔気をチャージする方法は魔気を多く含ませた石……【魔石】に置く事で石の中の魔気からR.O.Dへと移る仕組みだ。
「これがなきゃ俺様の魔法が維持出来ねぇからな! 気を付けねぇと……ッ! そうか!そう言う事か!分かったぞ!」
R.O.Dをチャージする為台座に置いた時に気付いた! フォルティナには気づいて自身は匂いに気付けなかった、その違いに!
「【香水魔法】か! この魔法は常時展開式だからR.O.D内の魔気が尽きるまで設定された匂いの種類に匂いの強さを決めておけるんだが……まさかバラの香りを強設定にしてたから気づかなかったのか……酒場では料理の香りが強かったから騒動も起きなかったって事だな……って事は!」
そしてある考えに行き着く! 自身と行動していたフォルティナは近くにいた時は問題無かったが、自身から離れた時……滝での騒動時に自身から離れた時にフォルティナに異変が起こった事を思い出し!
「アイツが匂いにやられちまう!」
モルトはチャージ中のR.O.Dを持ち出し走り出す!フォルティナの部屋は隣! 急げば間に合うかもしれないと急ぐ!
「資格の為! あいつには無事でいてもらわねぇと困るんだよ!」
鍵がかかっていなかった為、バンッ!! とフォルティナの部屋のドアを勢い良く開ける!
「おい! ガキンチョ! 無事か!」
目の前にはシャワーを浴び終えて全裸のフォルティナが顔を赤くしてこちらを見ていた……
「ふむ……まだまだ子供だな……」
無事の確認よりもフォルティナの体の成熟具合の確認が出来た……やはりまだまだ子供だな!と考えているとフォルティナは怒りだし
「いきなり入ってきてアンタ何なのよぉぉぉぉぉ!!!」
フォルティナの右ストレートがモルトの顔に放たれた!! 強烈な一撃に顔が歪みながらモルトは体を回転させながら吹っ飛んだ!
なんて力だよ……てか鍵ぐらい閉めとけよ……
そうモルトは意識を失っていった……
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モルトを殴り飛ばしたフォルティナは気絶していたモルトをベッドに運んで目が覚めるのを椅子に座り怒りながら待っていた。
「何なのよ! いきなり入って来て アタシの……はは裸を見て……子供って!」
気絶していてモルトには聞こえていないが、この変態非常識男ことモルトに怒りが収まらないフォルティナはぶつぶつと文句を言い続けていると、モルトが目を覚ます。
「う……ん? 俺様はいったい……そうだ……俺様ぶっ飛ばされたんだ……」
起きたモルトをフォルティナは汚物を見るように冷たく見つめながら怒りをぶつける。
「アンタいきなり何なのよ! 乙女の部屋に無断で入って来て! アタシのッ……裸を見て! この変態!」
目覚めたばかりのモルトをフォルティナはまた殴り掛かろうとする、モルトはこの荒れ狂うメスゴリラの説得を試みる。
「待て待て! 裸を見たのは悪かった! だが聞け! とりあえず殴るのはやめろ!」
「うっさい! アタシの事をガキンチョガキンチョって言って馬鹿にして! アタシだってもう立派な16歳の大人なんだからぁぁぁ!」
いや……まだまだガキじゃねぇか……少なくとも体は貧相だったぞ? いや……筋肉はしっかり付いていたが……って今はそれどころじゃない!
「ガキンチョ! とりあえずこれを嗅ぎやがれ!」
モルトは自身のR.O.Dをフォルティナに向けて突き出し【香水魔法】の香りを嗅がせる。
「これが何だって言うのよ! 大体アンタ! 人の部屋に勝手に入ってくるってなんなの?! なんとか言いなさいよ! ……あら? いい匂いね……」
R.O.Dからの匂いを嗅ぎフォルティナは徐々に落ち着きを取り戻す。
「やっと効いたか……まぁ今回は俺様も怒りの原因になったが先にこれだけは言っておく!」
「何よ!」
「鍵はちゃんと閉めやがれ!」
ゴチンッとフォルティナに拳骨をくれてやった!
「いったぁ! 何すんのよ! 鍵なんて別に閉めなくていいでしょ! アタシの村では鍵なんてした事ないわよ!」
「それは田舎だからだ! いいか? 田舎の外じゃ鍵は普通締めるんだよ! 強盗とか変質者が入ってくるだろうが!」
「確かに! アンタみたいな変態が来たわね!」
「俺様はテメェの体に興味なんかねぇぇぇ!」
このガキ! いちいち人をイラつかせて来やがるな! 俺様は【香水魔法】で無事なはずなんだが……とりあえずこのままじゃ埒があかねぇ! 話題を戻すか!
「あーあー!すみませんでしたー 立派な16歳の裸を見た俺様が悪かったですー」
ほぼヤケクソな棒読みで反省の言葉を告げる。そんなモルトの態度にまだ苛立つフォルティナだが話を聞く事にする。
「な〜んか誠意が足りないけど良いわ! で? 何かあったの?」
フォルティナの許しを得てモルトは先程部屋で気づいた事をフォルティナに説明するのだった。
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