第4話 親のお説教
村に戻り、両親や友人たちと再会を果たしたフォルティナは、その後友人たちと別れ、それぞれの家に戻っていた。
フォルティナも家の中で両親と机を挟んで向かい合い、この後どう怒られるのかと内心ビクビクしていた……
「俺たちは今日、森に行くなと言っておいたはずなんだがな? ティナ? なんで森に行ったか言ってみなさい」
きたぞ……パパの誘導尋問のような説教が始まった……
一つ一つ質問されるから言い訳もできないし、チョ〜こわいのよね……
「みんなと虫を取りに行ったの……黙って行って虫を取るだけだから、バレないと思ったの……」
ひぃぃ……こわいよ……みんなも同じような怒られ方してるのかな?
ジルとマルクスの怒られる様子はなんとなく想像つくけど、ミリィの家もこんな感じなのかなぁ? ちょびっとだけ気になっちゃう……
現実逃避をしている間もなく、父からの尋問は続く。
「バレないと思ったってことは、帰ってからも『森に行ってません〜』って、俺やママに嘘をついてもいいって思ったってことか?」
「……うん」
そう答えると、母が怒り出した!
「あんた! 森は魔獣が出るかもしれないから気をつけなさいって、いっつも言い聞かせてたのに……!」
これはまずい! ……半狂乱気味に怒り出したぞ!
ママの狂乱をバックコーラスに、パパの尋問を受けるのはかなり辛いから、早く解放してほしいなぁ……
「ママ、落ち着いて? 確かに今日、森で魔獣が確認されていたことを俺たちは知っていて、それをお前たちに伝えていなかったのは悪かった。だが、嘘はついてほしくなかったな? それは分かってくれるか?」
「はい……ごめんなさい……もう嘘つきません……」
「今日は大人たちが、必要以上に子どもたちを怯えさせないようにって、きちんと伝えなかったから起きたことだ……パパたちにも悪いところがあるから、今日はこのぐらいにしておこう。いいね? ママ?」
おっ? 今日は早く解放されそうだ! いいぞいいぞ〜
でも待て! 慌てるなアタシ……ここでボロが出たら延長戦突入コース+お尻ペンペン100回コースのおまけも付いちゃうから、反省の顔を保ち続けるんだ!
「アンタがそう言うなら、アタシからは何もないよ……次! 嘘ついたり危ないことしようとしたら、飯抜きだからね!」
よし! ここで決めるぞ! 渾身の反省の構え!
鼻水を大袈裟に出し! それをズビズビすすりながら唇を少し開き! 下唇をピクピク震わせるアタシが編み出した究極のごめんなさいを!
「はひ……ズビ!……ごべん……ズビ!……ばざい」
決まった〜! これは私史上最高のごめんなさいが炸裂したわ!
これで解放されるかと思ったが、父は話を続ける。
「ところで? お前を助けてくれた冒険者だが、本当にいたのか?」
冒険者には依頼を出してはいたが、到着は昼からだったらしく、午前中に来る予定はなかったらしい……
また、あのおじさん冒険者が報酬を受け取りに来た様子もなく、父や村の大人たちは新手の詐欺、もしくは野盗ではないかと警戒しているようだった。
「いたよ! 嘘じゃないもん! そのおじさんがデッカい斧で魔獣をぶっ飛ばしたんだから!」
おじさん冒険者がいたことを証明するため、助けてもらった時の話をする!
興奮するあまり忘れていたが、たった今思い出したおじさん冒険者がいたという確固たる証拠を父に見せる!
「おじさんからこれ、もらったの! コンパス! ちょっと壊れてるけど……これが証拠だよ! あと、おじさん色々教えてくれたし優しかったから、悪い人じゃないもん……」
必死に話したが、信じてもらえるかは分からない……
おじさん冒険者は忽然と姿を消し、魔獣は倒されたのに、なんの報酬も受け取らなかったというのは、確かに警戒されても仕方ない。
「とりあえず、数日は様子を見るとするか……だが、その冒険者のおかげでお前が助かったのは、パパは感謝しているんだ。それは本当のことだぞ」
感謝こそすれ、子を持つ親が自分の子を助けた恩人を疑うことはできなかったらしい。
「話は終わりだ。今日は疲れただろう? 少し早いが、もう寝なさい」
確かに疲れが溜まっており、まぶたがすごく重い。足も、転んだ箇所がすごく痛む。
これは明日、筋肉痛だな……と確信したフォルティナは、部屋へ向かおうとする。
「じゃあ、パパ、ママ、おやすみなさい」
「あぁ……おやすみ」
翌朝。
全身筋肉痛で体中に激痛が走る。
イテテ……まぁ、生きてるだけ儲けもんよね……がまんがまん
そう自分に言い聞かせながら、両親と朝食のトーストと野菜のスープを食べ、今日も外に出かける。
「森には行くんじゃないよ〜」
母はまだフォルティナたちが森に向かうのではと心配しているようだ。
フォルティナには昨日の出来事に加え筋肉痛もあったため、さすがに森には行く気が起きなかった。
外に出て村の広場に向かうと、そこにはいつものメンバー、ジル、マルクス、ミリィの姿があった。
「みんなおはよー!」
フォルティナに気づいたみんなが駆け寄り、軽く挨拶を済ませると、昨日それぞれの家での親たちの対応の話をした。
「俺さ……森に行ったこともだけど、蜜に砂糖使いすぎたこともあって、昨日の夜から飯抜きだぜ? めちゃくちゃ怒られたしよ〜 昨日の母ちゃん、ヤバかったぜ……あれは魔獣……ゴリラそのものだったぜ……」
ジルの話はフォルティナからすれば、だいたい想像通りだった。
「僕も似たようなもんだったよ……さすがに反省したよ……魔獣もすごく怖かったしね……」
マルクスも同様にそう答える……ミリィはというと、
「私もお父様に叱られたわ。お母様なんて気を失ってしまって……私、もうお父様とお母様に心配かけないって神に誓ったわ」
ミリィでもちゃんと叱られていたことに少し驚いた!
ミリィの両親は優しいから怒らないものと思っていたフォルティナは、親はどこも同じなのねと理解した。
「ティナ! 昨日は本当にありがとうな!」
「僕もティナちゃんが助けてくれなかったら、死んでたかもしれない……ありがとう」
「私からもありがとう、ティナ」
3人からの感謝を受け、フォルティナは嬉しくもあり、自分が誇らしかった。
アタシにも、あのおじさんとは違うけど、みんなを助けることができたのね!
フォルティナは将来、この村で家族と一緒に畑仕事をして、村の誰かと結婚し、一生を過ごすものだと思っていた。
だが、あのおじさん冒険者から聞いた、見たことのない村の外の世界に強い興味を持ち、そして自分にも誰かの役に立てることを知り、冒険者に憧れを抱き始めた。
アタシ……冒険者になりたい! 冒険者になっていろんな所に行って、たくさんの人を助けたい! そしていつかまた、あのおじさんに会いに行くんだ!…………あっ……
そこで一つ、大事なことを忘れていたことに気づく。
アタシ……あのおじさんの名前、聞いてなかった……
これではあのおじさんを探すのは難しい。
だが、冒険者になって冒険し続けていたら、いつかまた会えるかもしれない——そう思った。
帰ったら両親に話をしようと、フォルティナは心に決めた! そして今日はいつもの4人で村で駆けっこをするのだった……
結果は、全身筋肉痛だったフォルティナは3人に負けてしまい、ジルに
「やーい! ノロマ〜! 今日からこの俺がこの村のスピードスターだぜ!」
と馬鹿にされてしまうのだった。
もう一つ、決めた……
ぜったい誰にも負けないように、特訓もしてやるんだから……!
このときジルに負けた悔しさから、毎日とんでもない量のトレーニングが日課になった。
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