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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第2章 観光都市ランブル編 憎悪を超える愛の歌
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第4話 初めての観光と喧騒

「うわ〜! おっきい滝〜!」

「確かに壮観だな……」


 帝国国境を隔てる山脈から流れる滝を見てはしゃぐフォルティナとモルト。

 2人はランブルの名所の1つである〈結託の滝〉に来ていた、フォルティナは無料配布されていた観光パンフレットを見ながらモルトに説明していた。


「ん〜とね……ここは〈結託の滝〉って言って共和国になる前の4国……西のランジール 北のタンボル 東のリーチェン 南のバルドランドが他国からの侵略に対抗する為に平和同盟を結んで共和国が生まれた場所……なんだって!」

「ほ〜……だから結託……ねぇ……水面下ではまだ本当の意味で結託しきれてないに……皮肉なもんだな……」

「なんて? 滝の音できこえなーい!」


 モルトの小さな囁きは滝の音にかき消さられフォルティナには聞こえなかった。


「何でもねぇよ! ん?」


 モルトがそうフォルティナに答え一部騒がしくなっている場所に目が止まる。


「なんだ?」


 フォルティナも遅れて騒ぎに気づき走り出す。


「何かやってるのかな? ちょっと行ってくる!」

「おい! ちょっと待て! ってもういねぇし……足早すぎだろ……」

 

 モルトもあの田舎娘が面倒を起こしても厄介だと思い後を追いかける。

 その人だかりの中では観光客と思われる2人が殴り合いの喧嘩をしていた、1人は金髪の男、もう1人は白髪の身なりの良い男、お互い20代そこらあたりの印象を受ける。


 金髪は王国人で白髪が帝国人ってとこか? それよりあいつは……!!


 モルトがフォルティナを探しているとすぐに見つかった……何故ならその田舎娘は喧嘩をしている2人の拳を両手で受け止めていたからだ!


「クソガキ! クソっ! なんて力だ! どけよ! 俺はその帝国のクソ野郎をぶっ飛ばさなきゃ気がすまねぇんだ!」

「上等だ! このレトロヘッドが!」


 2人の拳を止めながらフォルティナは宥めようと2人に語りかける。

 そしてこの辺り一帯に強い香りが漂っていることに気付く。


 うっ! なに……? このすっごい甘い匂いは……でも今はこの人達を止めないと!


「待った待った! とりあえず手を下ろして! 一体何があったの?」

「うるせぇ! クソガキ! お前に関係ねえ!」

「そうだ引っ込んでろ! 大体いきなり出てきて何様だ!」


 全く話を聞いてくれない2人にフォルティナも苛立ち始める。


「アンタ達……良い加減にしないと……!」

「おい! ガキンチョ! そこまでだ!」


 様子を見兼ねたモルトがフォルティナの肩に手を置き落ち着くよう促す。 2人の男はモルトにも怒りをぶつける。


「お前も何様だ! 引っ込んでろ!」

「邪魔するな! どけよ! おっさん!」

「あー……俺はこういうもんだ」


 モルトはポケットからR.O.Dのカバー、冒険者に配布されたR.O.D全てについている協会の印の付いたカバーを2人に見せる。


「……ッ! 冒険者!」

「クソッ……」


 2人がそれを見て腕を下ろす、完全に力を抜き腕を下ろしたのを確認しフォルティナも手を離す。


「何があった? 何でこんな殴り合いになったか説明してくれ」


 モルトが2人に質問すると帝国人が最初に答える。


「俺はただ滝を眺めてたらコイツが後ろからいきなり殴りかかってきやがったんだ!」

「ほ〜……それは本当か?」


 モルトが王国人に聞く。


「こいつが俺を見て笑いやがったんだ! 俺は聞こえたぞ! 小さくレトロヘッドって言ったのをよぉ!」

「言ってねぇよ! 被害妄想も大概にしやがれ!」

「んだと!」


 2人ともまた興奮し始めるがモルトはまーまーと諭しながら続け帝国人に聞く。


「お前は本当に言ってないんだな?」

「あぁ……言ってもないし笑ってもねぇよ! 大体こいつの顔なんかこんな人だかりの中でピンポイントに見て笑えるか?」


 周りは観光客だらけで確かに個人を指して笑う事はないだろう……特別な恨みがない限りは……

 モルトは2人に1つ質問をする。


「お前ら仕事は何やってる?」


 帝国人が最初に答える。


「魔法技術推進研究員だ……帝国で新たな魔法の開発 研究をしている……」

「お前は?」

「俺は王国で商売をやってる……」


 なるほどな……帝国人の職業、それに服装から分かるが……たぶん稼ぎがいいんだろう。そして王国人だが、身なりは普通 恐らく商売関係で何かあったのかもな……恐らく観光中に白髪の身なりの良い帝国人の顔を見て自分との差に腹が立ったって辺りかな?


 モルトは職業と服装から大体の予想をつけ王国人に質問をする。


「王国人? だよな? お前……」

「あ……あぁそうだが……」

「お前……最近仕事で何かあったのか?」

「何でそこまで言わなきゃダメなんだ! 関係ねぇだろ!」


 あまり深入りされたくなかったのか突然怒り出した。


「うるせぇ! 別にお前がどうこう言おうが俺には関係ねぇよ! こちとら仕事なんだよ! さっさと答えねぇと代わりに俺様がぶっ飛ばすぞ!」

「ひぃ!」


 男の怒りはモルトへの恐怖に変わり話し出す。


「分かった! 言うよ! 最近うちで新しく王国製の魔具を売り出したんだ…… だけど王国製は古臭いだの性能は帝国製の方が良いって言われ続けてここ数日の売り上げが赤字続きなんだ……この旅行も気分転換の為に来たんだ……そしたらソイツが小さくレトロヘッドって」

「笑ったってか? レトロヘッドって言うと王国人を馬鹿にする言葉だったか?」

「そうだ……」


 伝統を重んじる国の悪い部分……古い考え方しか出来ない頭って意味の王国人を侮辱する言葉だな……だがここには大人数の観光客となによりこの滝の音だ 小声の罵倒なんて聞こえるわけがねぇ


 そう考えたモルトは王国人に話す。


「お前さんよぉ……周りを見てみろや? ここは観光地で名所だ……笑顔で笑ってるやつの方が多いに決まってるぜ? 帝国人の兄ちゃんの話でもよ?滝を見てたらいきなり後ろから殴られたって言ってるわけだしよ? まぁ答え合わせに聞いてみるか……誰か? この中に コイツらの現場を見た奴居るか?」


 モルトの呼び掛けに2人組の女性観光客が出てくる。


「アタシ達見てました……ただ滝を見ているそこの人にその人がいきなり殴りかかるところを……」

「それは確かか?」

 

 もう1人の女性も答える。


「間違いありません……そうだ! 滝の写真をR.O.Dで撮ったんですが……これ……殴られた男の人……滝を見て笑ってますよね? 証拠になりませんか?」

「十分だ! ありがとうお嬢さん達」


 見せられた写真には小さくだが帝国人の男が滝を見て笑顔でいる姿が写っていた、それを王国人に見せ話し出す。


「答えが出たな……お前は商売で帝国製品の人気に負け商売で失敗し帝国に対して怒りを持っていた……そこに偶然身なりの良い帝国人が滝を笑顔で眺めていたのをお前は自分に対して向けられたものと錯覚した……レトロヘッドって小さな悪口が聞こえたって言ってたが……この滝の音だぞ?聞こえるはずがねぇ……完全にお前の被害妄想だな……」

「そんな……」


 王国人はその場にへたり込んだ。


「で? そこの兄ちゃんはどうする? コイツを許すか許さないか……どっちだ」

「いきなり殴られたんだ! 許せるわけないだろ!」

「だそうだ……冒険者規定に則りお前をこの街の保安局に連れて行く……いいな?」

「はい……すいませんでした……」


 フォルティナは終始モルトの行動を見ていた。


 アタシ……ただ殴り合いを止めて怒鳴る事しか出来なかった……それをモルトは言葉と推理で解決しちゃった……何でこんな事でイライラしちゃったんだろ


 フォルティナは自身の無力さを痛感しながらモルトと一緒に保安局に向かった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし面白いと思って頂けたら幸いです!

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