第2話 無知なフォルティナとだらしないモルト
流石に目立ち過ぎちゃった……
フォルティナはモルトと一旦目の前の喫茶店に入り、感情に任せて苛立った自分が恥ずかしくなっていた。
目の前に座るモルトはというと……
「でへへ〜……あの姉ちゃん……良い尻してんなぁ……」
鼻の下を伸ばしながら女性店員(尻)を眺めてこの調子である……モルトはその店員を注文のため呼んだ。
「姉ちゃん! 注文いいか?」
「は〜い!」
「コーヒーを1つ? お前は?」
唐突にアタシの注文の問いにフォルティナは驚いたが即答した。
「アタシはお金ないからいらないわよ……」
そうフォルティナが告げるとモルトはため息をつきながら
「はぁぁ…… 姉ちゃんコーヒー2つだ! よろしく!」
「は〜い! 少々お待ち下さい〜」
意外! なんでアタシなんかの為に注文してくれたんだろ!
「そのコーヒーってやつ……アタシの分?」
「そうだが?」
「なんで!? アタシの事嫌いなんでしょ!」
モルトは先程のため息より深く息を吐きながら睨みつけるように話す。
「はぁぁ……お前さ? 分かんねぇかな?……貧乏なガキにコーヒーを恵む俺様と貧乏なガキを目の前に1人コーヒーを飲む俺様……どっちがモテると思う? 断然前者だろうが! お前の為じゃねぇよ! あの姉ちゃんに良い男って印象付ける作戦だよ! さーくーせーん!」
コイツ実は良い奴かも! と思ってしまった1分前の自分を殴ってやりたいわ……アタシをダシにしやがって……もうっ!
そう考えていると間もなく先程の店員がコーヒーを2つ持って来た。
「お待たせしました! コーヒー2つです!」
「ありがな! 姉ちゃん! ところでさ……仕事の後暇? 良かったら街を案内して欲しいんだけどさ! 俺初めてなんだよねこの街!」
「すみません! この後……彼氏とデートがあるので…… それではごゆっくりどうぞ〜」
店員が頬を赤く染めながらそう答え奥に去る、がっくりと項垂れるモルトが小さく呟く。
「チッ……彼氏持ちかよ! はぁ……あの様子じゃゾッコンみたいだし横槍も無理そうだなぁ……くそぅ……」
「あははははは! フラれてやんの〜!」
「黙れ!!まな板! そのコーヒー返しやがれ!」
「もうコレはアタシのもんですぅ〜」
そう言い放ちコーヒーを初めて飲むフォルティナ。
「にっが! 何よコレ?!」
初めてのコーヒーは苦過ぎた……それを見たモルトも笑う。
「ひー!ひっひっひ! お子ちゃまにはこのコーヒーの芳醇な香りと苦味はわかんねぇか!」
そう笑いながらコーヒーを飲んだモルトも……
「にっが!」
モルトは付いてきたミルクと角砂糖を6つ入れティースプーンで混ぜる。
フォルティナもそれにならい同じようにミルクと砂糖6つ入れ混ぜて2人同じタイミングで一口飲む。
「美味い!」
「美味しい!」
甘いコーヒーを飲んで話の続きを話し合いを再開する。
「で? パートナーで居てくれるの?」
開口一番にフォルティナがモルトに告げる。
こっちとしては願い下げだけど最初はパートナーと依頼をこなさないとFランクから上がれないのよね……
「仕方ねぇからパートナーで数日活動してやる…………資格剥奪されたく無いしな……」
本音が漏れていたが正直ありがたいとフォルティナは思った。
「で? この後はどうすれば良いの? モルトさん」
「あー……モルトで良い お前からさん付けされると気持ち悪くてしょうがねぇ!」
「じゃあモルト! どうすれば良いの!?」
「さんは付けなくて良いとは確かに言ったがよ?……流石にお前遠慮がなさ過ぎんだろ……」
ニコニコの笑顔でコーヒーを飲むフォルティナにモルトは話を続ける。
「とりあえず……R.O.Dの冒険者アプリの中にあるこの街の依頼をこなしていくとするか……おいガキンチョ?聞いてるか?」
コーヒーを飲み終えたフォルティナはカップを机に置き、モルトを勢いよく指差しながら答える。
「ガキンチョでも! まな板でも無い! アタシにはフォルティナ・ロックスって名前があるの! これから一緒に行動するんだからティナで良いわよ!」
椅子にドンッと座りながら膨れっ面になりながら窓の外を眺めた。
「はいはい……で? 話聞いてた? 俺様の話?」
「聞いてたわよ! 冒険者あぷり……で依頼をこなすんでしょ! あぷりがまだよく分かってないんだけど……」
モルトはため息を吐き呆れる。
「そこからかよ……冒険者アプリってのはな……R.O.Dのここをタップして……」
「うんうん」
モルトから冒険者アプリの説明を受けラングの受付嬢から聞いた話を思い出した。
これあの時の説明じゃん! あの時はわかんなかったけど こう見ながらだとわかりやすいわね
説明を聞き終わりモルトが再度確認する。
「分かったか?」
「ありがと! アンタの説明わかりやすかったわよ? 受付嬢からの説明だけじゃ分かんなくて……」
「それはどうも! お前みたいなガキじゃなく美人に褒めてもらえたらテンション上がるんだがな〜……とりあえず依頼を見てみるか」
「なんか余計な言葉が聞こえた気がするけど……良いわ!見てみましょ?」
2人は机の真ん中に置かれたモルトのR.O.Dを眺める。
モルトが操作をしながらフォルティナは眺めていた。
「お前……自分ので見ろよ……」
「良いじゃない! 一緒に見れて!」
スクロールしながら画面に流れてくる依頼は……
――隣人の夫婦喧嘩の仲裁――
――出店の定員同士の喧嘩の仲裁――
――観光客同士によるトラブル――
――犬猫の縄張り争いをなんとかして!――
「なんて言うか……ここってこんな喧嘩が多いの?」
「そだな……観光地ってのもあるだろうが犬猫までなんて……みんな変な食いもん食べてんじゃねぇのかってぐらい多いな……」
どの依頼を見ても喧嘩関係の依頼だらけだったので1番上にあった隣人の夫婦喧嘩の仲裁を引き受けて店を出たのだった。
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