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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第1章 冒険者認定試験編
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第29話 初めての魔法はこれに決めた!

 昼過ぎ──フォルティナはフェイと一緒に、商店街のメインストリートから外れた目立たない横道にある、ブルーメの家──魔具修理屋〈アクアリペアSHOP〉にやって来た。


「ここがブルーメの家か〜」


 木造の建物で、外にはたくさんの魔具が並んでいる。フェイの話によると、ここは魔具のリサイクルショップも兼ねているらしい……2人は店の中へと入った。


「こんにちは〜」


「はい! いらっしゃい!」


 ハンチング帽にフィンチ型のメガネをかけたおじさんが迎えてくれた。きっとこの人がブルーメのお父さんだろう。


「ブルーメに呼ばれて来たんだけど……はじめまして! フォルティナ・ロックスです!」


「フェイです」


「おぉ、いらっしゃい! 待ってたよ? 僕はレイモンド・アクア。ブルーメの父親だよ。ちょっと待ってね……おーい、ブルーメ! ロックスさんが来たぞ〜」


 やっぱりお父さんか〜。見た目でわかる、すごく優しそうな人!


 父の呼びかけに、ブルーメが店の奥からドタドタと走って来た。


「いらっしゃい! ティナちゃん、待ってたよ!」


「ちょっと遅くなっちゃってごめんね?」


「いいの! お父さん? この人がティナちゃんだよ!」


「うんうん。さっき挨拶したよ。改めて、試験合格おめでとう。そして──ありがとう」


 レイモンドさんが深く頭を下げて、フォルティナに礼を述べた。


 アタシ、なにかしたっけ? 今日が初対面のはずだけど……?


「僕の娘を守ってくれたこと……僕たちのために怒ってくれて、本当にありがとう」


 ああ、実技試験でのことか。あのとき、ただアイツに腹が立って、体も口も勝手に動いたんだけど……


「いやいや、レイモンドさん、頭上げて! アタシ、そんな大したことしてないから。ただムカついて勝手にやっただけだし」


「それでも君には感謝してもしきれないよ。あの日、僕も観客席にいたんだ。相手の冒険者に娘と妻を侮辱されたこと……僕が不甲斐ないせいで娘が傷つけられたことが、本当に辛かった」


 レイモンドさんも来てたんだ……バエルのヤツ、確かに酷いこと言ってたもんな……


「でも、ロックスさんが倒れた娘を庇って、僕たちの代わりに怒ってくれたことが本当に嬉しかったんだ。今日はそのお礼をさせてくれないか?」


「お礼だなんて! そんな! アタシ、魔具も持ってないし……お金も20ゴールドしかないしね……はは」


 我ながら貧乏さが身にしみる……でもこれから稼ぐんだから!


「お代はいらないよ。言っただろ? お礼だって。何か困ってることでも良いんだよ?」


 そう言われても……う〜ん……


 考え込むフォルティナに、フェイがひとつ提案を出してきた。


「お姉ちゃん、冒険者用のR.O.Dもらったんでしょ? 魔法を作ってもらったらどうかな?」


「そうね! ティナちゃん、そうしよ? まだ魔法決めてなかったじゃない!」


 ブルーメもその案に乗る。


「魔法って言われても、何が何やらさっぱりで……」


「なら、僕に任せなさい。コスト1でも、僕にできる範囲の魔法を作ってあげるよ。ただ……僕は4級魔技士だから、そこまで大した魔法は作れないんだけどね……」


 ブルーメとフェイの提案に、レイモンドさんも乗ってくれたが、やや自信なさげに笑う。


「4級魔技士って?」


「ああ……魔技士にはね、5級から1級までのランクがあるんだ。その資格によって、作れる魔法の幅が違ってくる。4級の僕くらいだと、基本魔法や生活魔法くらいしか作れないけど、1級だとすごい魔法も作れるんだ」


「それって……なんでなの?」


「単純に、頭の良さだね。魔法を作るってことは、その魔法で実現する内容の原理や特性……それにどう動かすかも組み込まないといけない。強い魔法ほど、それが複雑ってわけさ」


 なるほど……つまりアタシには一生無理ってことね!


「でも、レイモンドさんは4級なんでしょ! すごいじゃない! アタシ、魔法の“ま”の字すら分からないのに!」


「いやいや、大したことないよ」


 レイモンドさんは照れくさそうに頭を掻いた。


「じゃあ! みんなが言う通り、魔法を作ってもらおうかな! お願いしていい?」


「ああ、いいとも」


 こうして4人は、フォルティナの初魔法を何にするか、話し合うことになった。


 レイモンドさんが、自分の作れる魔法の一覧を見せてくれた。


「ふむふむ……基本の属性魔法に、欠けた刃を研ぐ魔法、空中に物をぶら下げる魔法なんかもあるね!」


 見た感じ、生活魔法が多かった。ほかにも収納系の魔法や、回復力は弱くても回復魔法なんかもある。フォルティナたちはどれにしようか迷っていた。


「ティナお姉ちゃんは、どんな魔法が良いの?」


「そうだね。ティナちゃんがどんな魔法を使いたいかによるから、教えてくれる?」


 フェイとブルーメに聞かれたが──


「う〜ん! 属性魔法はよく分かんないし、便利なのが良いけど……バエルとかブルーメみたいな魔法にも憧れるしなぁ……う〜ん……」


 悩みながらもう一度リストを見ていると、フォルティナの目に、一際輝いて見える魔法があった。思わず指を差す!


「これだ! アタシ、これが良い!」


「本当にそれで良いのかい?」


「ティナちゃん……もうちょっと良いのにしない? これは今の時代じゃあんまりだと思うよ?」


「僕も、そう思う……」


 みんな、アタシの選択はやめた方が良いって感じだけど……でも? この魔法、めっちゃ便利じゃない?


 その魔法は、収納系魔法の一覧にあった。


 【伸縮魔法】……物質を伸ばしたり縮ませたりできる魔法です。大きい物は縮めて鞄に収納しやすく、取り出す時に伸ばして元の大きさに戻せます。


 これ、絶対便利でしょ! そうして、フォルティナの初めての魔法は【伸縮魔法】に決まったのだった。

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