第34話 開戦の一撃!
「み、皆さん! ハヤトさんの指示通り、配置についてください! あと5分したらバックアップ部隊からZクラス・フォワード部隊の進行方向に【妨害魔法】を開始します! その後にフォワード部隊は突撃開始してください!」
ダラダラと行動しているバックアップ部隊の生徒に、必死な様子で指示を出すニネット・ドリアヌス。 彼女は中級貴族でありながら生徒会に属する実力者なのだが、階級重視の貴族社会で中級のニネットが努力で生徒会所属までに至った事に、周囲からの評判は良くなかった。
「ガリ勉が……そんなこと言われなくても分かってるさ」
「私たちはハヤトの作戦に従うのであって、お前の指示を受けるわけじゃないのよ? ガリ勉?」
「あ……あう……」
クラスからもこの扱い。ハヤトが近くにいる時といない時の差が激しい。
ハヤトが近くにいる時は「ニネットさん!」呼びなのに、少し距離が空いた途端これだ。
そんな自分への扱いにも慣れていたが、それでももう少し緊張感を持ってほしいとニネットは思っていた。
「はぁ……嫌だな……ハヤトさんが近くにいる時は何も考えずにいられるのに。ひとりになると怖くなるもの……早く帰りたい……てか卒業したいよ……」
ぼやくニネットはそれでも指示を出し続けた。中級貴族の自分がAクラス、生徒会に入れたのは奇跡。このまま卒業すれば出世コースは間違いなし! 今は辛いけど、未来で楽するために今は我慢!と自分を励ましながら心に鞭を打つ。
「おい見ろよ。まだ昼なのに星が見える……」
「え……」
ひとりの生徒が指を差して言い、ニネットはその方向を見る。そこには白銀に輝く小さな星が見えた。
錯覚かな? と目をこすり、もう一度見るニネット。やはり星はそこにある。
「本当だ……まだ昼なのに星が……おかしいな?」
ニネット同様に作業に取り掛かっていた生徒たちも、その星の輝きに目を奪われている。
なんて綺麗な光……それに、少しずつ光を増して……増して……この光はまさか!?
「皆さん! これは魔法ですッ! Zクラスの魔法攻撃です! 退避を! 退避してくださいッ!!」
「はぁ? 魔法ったってあの場所からここに届くわけが……」
――キィン――
甲高い音! 呆れてニネットに首を傾げた生徒も星の光に振り返る。あの星がさらに大きく、眩い光を放っている! そんな異常事態にようやく全員が気付き、衝撃に備える。
――ドドドドドドドドッッッ!――
「キャァァァァァァァ!!」
「なんだ! これは本当に魔法か!?」
放たれた光が爆音を轟かせながら一瞬にしてAクラス左翼に降り注ぎ、クラス中から悲鳴が起こった。
「ありえない……あんな距離から当てられる攻撃魔法なんて存在しないはず……それにあの威力。帝国製の最新モデルのR.O.Dでも、あそこまでは……」
ニネットが膝をつき絶望しているが……まだ光は止むことなく、徐々にこちらに向かってくるのが見えた!
「嘘……このまま私たちを薙ぎ払うつもりなの? ……なんて魔法……」
ニネットが目を瞑った、その時!
「【スキル!大障壁!!】」
――バシュゥゥン――
ハヤトが上空で障壁を展開し【アインへリアルブラスター】を防いだ!
やっぱりハヤトは凄い……あんな魔法ですら簡単に防ぐことができるなんて!
「狼狽えるな! 怪我をした奴らは本陣まで運んでくれ! 後で俺が全快にしてやる! だが今は目の前の敵を倒さなきゃ全滅だ! だから俺はあいつを叩く! それまで予定通りに行動してくれ! いけるよな? みんなぁ!?」
「「「ああ!」」」
無事な生徒たちの様子を見て、ハヤトは安心したように頷き、虚空に手を向けスライドさせる。
「なら任せた!【スキル!テレポート!】」
――ブンッ!――
ハヤトが姿を消した。ニネットは知っている。この魔法は目標の場所まで瞬時に移動できる、ハヤトだけの魔法だと。
「やっぱりハヤトさんは凄い……私たちには手が届かないような、凄い魔法まで自作するなんて…… こうしてはいられない! み、皆さん! ハヤトさんの言った通りやりましょう! バックアップ部隊!【妨害魔法】開始!」
「「「了解!」」」
ニネットたちバックアップ部隊が最前線に向かい、様々な【妨害魔法】を放った。地面をぬかるみにする魔法、地形を変形する魔法など、足場を崩す魔法がメインだ。
「私たちは指示された通りにやれば良い!あとはハヤトさんがなんとかしてくれる!」
―――――――――――――――――――――
――ブシュウウウウウウ!――
ロングレンジバレルの背面から排熱され、煙が舞う。【アインへリアルブラスター】でAクラスの左翼はほぼ壊滅に成功したと、バイザーで視認できた。
だが、途中でハヤトに防がれ、これ以上は魔気を無駄にするだけと判断し攻撃を止めた。
『冷却で今からモード・ドラゴンブレスからモード・ヴァルキュリアに移行するぜ』
MORUからのアナウンスで、ロングレンジバレルが分解され、外部骨格にライフルが装着された。
また撃つまでには時間がかかります……仮にすぐに撃てたとしても砲身は完全に焼き切れますね。
――ブンッ――
「よっ!」
「!!?」
冷却のことを考えていると、突然目の前に相手指揮官。ハヤトが現れた!
あまりに突然すぎて心臓が跳ね上がるイデア!いきなり現れるなんて、まるでホラーである!
急ぎイデアはフォルティナから習った格闘術で応戦するが……
――ガン!ガン!――
見えない壁のようなもので拳を阻まれた!悔しげな顔を浮かべるイデアに、ハヤトが話しかけてきた。
「ちょい!いきなり殴るとか、そりゃないだろ!てかお前……昨日の夜、エレオノーラ様と冴えないおっさんと一緒にいたやつか!?あの時はただの鎧だと思ってたけど……あんな魔法まで使えて空まで飛ぶなんて……アメコミヒーローかよ!」
「冴えないおっさん」と聞いて、イデアは嫌悪感を露わにする。
「アメコミヒーローというのは知りませんが……あなたの言う冴えないおっさんとは、モルトさんのことですか?」
「え?あー……あのおっさん、そんな名前だったの?あまりに情けないキャラだったから、あんま覚えてないんだよな〜」
ハヤトの無神経な態度。ティナさんやお姉ちゃんが言ってた通り。この人、超ムカつきますね!
でも一瞬でここまで詰めてきた謎の魔法……このまま逃げたら後ろのみんなの所に行ってしまうかも。そうだとしたらみんなが危ない。私がここで足止めしなきゃ!ティナさんが来るまで!
「そうですかッ!」
さらに拳を放つが、やはり見えない何かに防がれる!
「何回やっても無駄だって!な?諦めた方がいいぜ!【スキル!火炎龍!】」
――ゴオォォォォ!――
ハヤトの前に火炎の龍が現れた!魔法で作られたはずなのに、まるで生きているかのように唸り、イデアに襲いかかる!
急ぎ上空に全力で逃げるが、龍も後を追いかけてくる!
私の飛行速度に追いつくなんて!?
そう焦り、汗が流れる!
「まだまだ!【スキル!水龍!】」
――ゴポポ……――
火炎龍の後に続いて、ハヤトが新たに水の龍を召喚した!火炎龍と同じようにイデアに向かい、互いに連携するように襲いかかってくる!
これを巧みな技術で回避しながら飛行を続ける!一瞬でも気を抜けば、間違いなく戦闘不能になる!そんな迫力が、この2匹の龍から感じられた!
「イデアちゃんをいじめんなよ!編入生!」
「「そうよそうよ!」」
――バシュンバシュン!――
ハヤトに追いついたジョセッタ、カペラ、マイカが、一斉にハヤトにライフルを発砲する!
ハヤトはチラッと振り向き、ライフルのレーザーを優雅に回避する。
「めんどくさいなぁ……モブに用はないんだよ!【スキル!光球!】」
――ポポポポポ!――
ハヤトの後方に光の玉がいくつも現れ、駆けつけた3人に向かって放たれる!
3人は急ぎ光の球を回避するが、球はしつこく後を追ってくる!
「何よこれー!」
「ホーミング弾だよ!この世界じゃまだないのかな?」
ジョセッタの叫びにハヤトが答えた!ライフルで撃ち落とそうとしても、玉は消えずに襲い続ける。
そんな3人のピンチを、イデアは2匹の龍の猛攻を回避しながら、ただ見ていることしかできない!
このままじゃ……3人が!なんとかしないと!それにしてもこれだけの魔法を同時に扱えるなんて……明らかにR.O.Dの性能を超えてます……まさか!あの人は〈オーバード〉!?
いや、体から魔気が溢れている様子も獣型の特徴もない……でも、それしか考えられません!
〈オーバード〉レベルの高い魔法の力に力を温存している余裕は無いと判断する。
仕方ありません……2発目の【アインへリアルブラスター】は諦めましょう!
「MORU!【ソードフェザー!】」
『冷却が済んでねぇ!今のまま使えば【アインへリアルブラスター】は確実に撃てなくなるぞ!』
「いいから!やって!」
『あいよ!』
MORUが答え、ライフルの翼が2つ外部骨格から外れ、ライフルの銃口からビームが剣のように放たれ、ハヤトに向かう!
「お!マジかよ!ロボアニメみたいな機能まであんのかよ!」
イデアの魔気で自動的に斬りかかるフェザーソードを回避し続けるハヤト!2本じゃ足りない……なら、もう2本!
さらに2つの翼が剣となり、ハヤトに襲いかかる!
最初は面白そうに回避していたが、段々腹が立ったのか、声を荒げた。
「うざい!そういうのは主人公の役割だろうが!【アイテムボックス!天叢雲剣!】」
ハヤトが虚空に手を入れ、中から長い剣。ヒョウカが持っていた武器と同じ形の物。刀を取り出した!
「【スキル!剣聖技!泣時雨!】」
ハヤトが目にも止まらぬ速さで刀を横に一閃すると、雨の様な針が一斉に放たれソードフェザーを2本撃墜した!
それを見たイデアの表情が険しくなる……
今のは【絶技】。まさかあの人も使えたなんて!いや、おかしい……ならなんでMORUが反応しないの?【魔気】や【気】を察知する機能がついてるのに、さっきから一切反応がない……まさか【魔気】や【気】とは別の観測不可能のエネルギーを使ってる!?
そんなことありえない……とイデアはハヤトを見る。だけど、それしか考えられない。
強力な魔法に【絶技】。それが未知の力なら……果たしてあと何回使用することができるんだろう。
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