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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第6章 恋と友情の王立騎士学校編②
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第24話 爆弾発言

「マロンちゃん!ほんとにいいの!?」

「大隊長ってお呼び!これでええんや!」


カフェ【フォレスタス】の店内の端で、マロンとカペラが座りながらフォルティナたちを見守っていた。話し声こそ聞こえないが、楽しげな様子はマロンにも伝わっていた。

だが、どうにもデートらしい雰囲気とは違うと悟っており、「なんかワクワクするイベントがないとな~」と考えたマロンは


「だからって!勝手に注文を変えちゃダメだよ!」

「え〜!絶対こっちのほうがええもん……まあ、見とき!」


カペラが怒って話すとおり、マロンはフォルティナたちの注文を取った店員を呼び止める。


「あの人の注文、変えてくれへん? ウチ、あの人の知り合いなんやけど、この国に来てまだ間もないから、よう分からんまま注文してもうたんよ。せやから、ウチがその人の好みに合わせて変えたいんやけど」


……と強引に交渉して注文を変更した。決してマロンが注文を変えたと悟られないように、という条件付きで。


最初は店員も首を振って断っていたが、マロンがテーブルに小袋いっぱいのゴールドを置いた。


「やってくれたら、これ全部あげる……チップや? 受け取り?」


と話すと、店員は大型犬のように尻尾を振って喜び、承諾したのだった。


 カペラは思った。そのゴールドは一体どこから来たのか。まさか悪事で稼いだ闇の金なのでは……?

 だが、「お金の話には首を突っ込むな」と教育されて育ったカペラは、それ以上は聞かないことにした。


「ええか?デートっちゅうもんはな?トラブルが必要なんや」

「トラブルっていうと?注文を変えたのがそれなの?」


首を傾げるカペラに、マロンは指をパチンと鳴らした。


「せや!それが今回のトラブルや!あえて巨大なパフェを出すことによって、食べきれへんティナ姉ちゃんは……『お腹いっぱい……でも食べ切らなきゃ……』ってなるはずや!そこであの兄ちゃんが『大丈夫……2人で協力すれば食べ切れるさ……』ってなるはずや!」

「そんな子供みたいな……」


そう言ったが、自分もまだ子供だったと内心で納得するカペラ。そして2人は、天井に届きそうな巨大なパフェが運ばれていく光景を目にした!


「マロンちゃん……」

「大隊長や!なんや? カペラ」

「あれ……さすがに多すぎなんじゃ……」

「ま……まあ?ウチにもミスはある……あれも一種のトラブルやな!うん!」


「トラブルって!これ私たちにとってもトラブルだよ!

 あれでお互い食べきれなくなって空気悪くなったらどうするのよ!マロンちゃん!」


カペラはマロンの首を掴んでガクガクと振る!


「やめて?カペラ?ウチまだ何も食べてへんから胃液が出ちゃう……逆流性食道炎になってまう……やからやめて?お願い……」

「うるさい!これで仲が引き裂かれたら、マロンのせいだからね!」


とうとう“大隊長”から呼び捨てにされたマロン。だが、そんな2人はこのあと、信じられない光景を目にすることになる……


――――――――――――――――――――――


「フォルティナさん……キツくない?」

「ほえ……ふぇんふぇん?」


ドン引きのクロノ。そんなクロノの目の前には。

巨大なパフェをあっという間に8割も食べ尽くしたフォルティナの姿があった。そして、その勢いは衰えることなく、口へとパフェを運び続けていた。


「ははは……すごい食べるんだね。だから強いのかな?」

「んく……いや?アタシの村ではさ?食べ物は食べられるうちに食べられるだけ食べまくれっていう習慣があってね?貴族が感情を表に出さないのと同じよ! 同じ!」


 そう言って、フォルティナはパフェをさらに口へ運び続ける。

 これにはクロノも笑うしかなく、コーヒーを啜りながら見守った。


 10分後、パフェをすべて”1人”で平らげたフォルティナは、パイナップルジュースを一口飲んで一息ついた。


「ふぅ……美味しかった!で?魔法の自作が難しいのはなんでだって?」

「え、あ!そうそう魔法だ魔法……」


 信じられない光景に一瞬反応が遅れたクロノは、コーヒーを一口飲んで気を取り直す。


「魔法の自作には、発現させる事象の理解が必要。例えば火の魔法を作るなら、火について深く理解しないといけない」

「火……その時点でアタシには分かんないわ……」

「火なら分かるけど、深くとなると僕も分かんないよ。自作する魔法の規模や事象が大きくなるほど、さらに複雑になるんだよ……君にも分かるように言うなら……」


クロノは辺りを見渡し、ふと空になったパフェのグラスを指さした。


「フォルティナさんが食べたそれ?美味しかった?」

「え?いきなり何?美味しかったわよ?一番上のフルーツたちは瑞々しくて、下のクリームは甘すぎずフルーツの味を邪魔しない……さらに下にはアイスクリームの層!クリームで甘くなった舌に冷たくスッキリした甘さが洗い流されて……その下のフレークの層は……」

「ストップ!ストップ!つまり美味しかったんだよね?」


あまりに巨大なパフェゆえ、説明が長引きそうになったため、クロノは両手でアタシの食レポを止めた。


「うん……美味しかったよ? すごいよね? こんなに大きいのに飽きずに食べられたんだから」

「強い魔法も同じだよ」

「え? 魔法も甘いの?」

「複雑さだよ!」


 余裕のあるクロノが声を荒げてアタシにツッコんだ。その表情に、フォルティナは少し戸惑う。


「ああ……驚かせてごめんね。感情を出しちゃった……。そう、同じなんだよ。そのパフェみたいに巨大でいろんな要素を一つにまとめようとすると、飽きないように一つ一つ細かい工夫が必要なんだ。魔法もそう。すごい魔法ほど、複雑で緻密な理解が必要なんだ。つまり……相当頭が良くないと魔法を作ることは不可能だよ」


 なるほど。じゃあヘインズはあの【殲滅魔法】を組み上げるために、爆発や光について理解を深めたってこと?

 いや、目に見えない要素の理解もあるはず……しかも改良もしてるってイデアが言ってたよね?

 じゃあアイツ、なんでZに居んの!?


「ヘインズ……たしかマルタ家の次男だよね?」

クロノがテーブルの上で腕を組みながら言った。


「うん! 口が悪いチンデレね」

「チンデレ?」


クロノはその言葉を復唱し、どんどん顔が赤くなっていく。


「な、ななななんてことを言わせるんだい!チンデレって!まさか君は……!」


 しまった!チンデレはツンデレをもじったアタシオリジナルの言葉!

ツンデレが「ツンツンがデレる」なら、チンデレは「チン○ンがデレる」って誤解される!


「ち、違う違う!チンデレはチ○○ンがデレるって意味じゃなくて!チンピラがデレるって意味よ!」

「な! チン……端ないよ!君みたいな女性がそんな卑猥な言葉を使うなんて!」

「勝手に解釈したのはクロノじゃない!だいたいチ○チ○のどこが卑猥なのよ!まさかクロノ……エッチなこと考えたんじゃ……」

「違うよ!考えてないよ!」


 2人が席を立ち、指を差し合って口論を始めた――その時。


「あのぉ、すみません……退店してもらっていいですか? 他のお客様の迷惑ですので……」

「え……」

「あ……」


 周囲を見回すと、他の客たちが睨みつけていた。

 これはやっちゃった!チ○ンチンって言いすぎた!クロノも呆れてアタシのこと嫌いになったかも。


「ははははは!」

「クロノ?」


 クロノは涙を流すほど笑い出していた。


「アハハハハハハ!すみません!そうですよね? 皆さん、ご迷惑おかけしました!僕たち出ますんで!ほら、フォルティナさん?行こ?」

「……うん!ごめんなさい!お邪魔しました〜!」


 2人は頭を下げながら、申し訳なさそうに店を出た。

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