第12話 話の通じない男
「バカだと!? そんなしょぼい挑発に乗るほど、俺は暇じゃない!それよりも早く彼女たちを返せ!悪女!」
「だーかーら!知らないって言ってんじゃん!アンタ、言葉分かんないの? しーらーなーいー!」
何回も言ってるのに全然聞いてくれないし、しつこいし……。だいたい彼女が3人? 浮気性じゃない!しかも、あの3人が優しいって? 見る目もないみたいね! あんな腐った性格のどこが優しいのよ? 初対面のアタシにジュースをぶっかけるような奴よ?
「姉御!そいつは誰なんですかい?知り合いですかい?」
フルプロが駆け寄って聞いてきた。「知り合い」と言われ、全力でフォルティナはフルプロに否定する!
「誰が!こんな!節操なしのバカと知り合いなもんか!」
「ひっ!す、すいやせん!姉御!」
怒りをぶつけられ、フルプロが頭を深く下げた。そんなフルプロを、ハヤトが鼻で笑う。
「ふ……モブが、主人公の俺の前に立つなよ? 作画コストが勿体ないだろ? 失せろよ」
そう言ったハヤトに完全にムカついたフォルティナは、胸ぐらを掴み怒りをぶつける!
「アンタ、さっきから失礼すぎじゃない!?用がないならさっさと帰りなさいよ!」
「だから!早く彼女たちを解放しろって言ってるだろ! お前こそ、俺の言うことを聞けよ!」
本当、なんなのよ!このままじゃ訓練もできない……。なんとかして帰ってもらわないと……
「んあ?ティナ姉ちゃん?どないしたん?」
目が覚めたマロンが虚ろな表情でフォルティナたちを見て言った。そんなマロンを見て、ハヤトが心配そうに駆け寄り、抱きかかえる。
「マジか、獣耳っ娘だ! おい、悪女……お前、この子まで虐めてるのか!」
「ん?なんやこの兄ちゃん?」
「君? 大丈夫? この女に酷いことされてないか? 君は〈オーバード〉だろ? 今すぐに俺が君を助けてあげるから、もう大丈夫だ!」
「ね、姉ちゃん……この兄ちゃんなんなん?いきなり助けるとか……意味不明なんやけど……」
ハヤトに抱きかかえられたマロンが、フォルティナに助けを求めるような瞳を向けながら言った。
コミュ力の高いマロンでも、対応に困る相手がいたのね……
「ねぇ……離してあげてよ?マロンが困ってるでしょ?」
「そうか君はマロンって名前なのか……離してあげて?だと! お前こそ、マロンを解放してやれよ!」
「は?」
コイツ、何言ってんの?なんでアタシがマロンを束縛してるみたいなこと言ってるの?
「何か勘違いしてない?アタシ、マロンを束縛なんかしてないんだけど……」
そう言いながらマロンを抱きかかえるハヤトに近づこうとすると……
「来るな! お前みたいな、人を陥れて悦に浸るような奴にマロンを渡すわけにはいかない!逃げるんだ!マロン!」
そうマロンをハヤトの後ろに立たせて、逃げるように促した。さすがのマロンも困惑したように、目を点にしている。
「兄ちゃん? 勘違いしとるみたいやけど……ティナ姉ちゃんはそんな人やないで?」
「関西弁!メインキャラ来た!ますますお前には渡せないな……悪魔!」
マロンの話を無視してフォルティナを「悪魔」呼ばわりしたハヤト。その発言を聞いて、マロンが……
――パンッ――
ハヤトをビンタした!いきなりのビンタにハヤトが戸惑うが、マロンが怒りをぶつける。
「話聞けや!『渡さない』とか、ウチをモノみたいに言うなや!あと友達を『悪魔』って……なんやねん! お前、キモいねん!」
「マ、マロン?……」
ハヤトはビンタされた頬を抑えながら、マロンの言葉に戸惑ったように目を動かした。
「そうか……洗脳魔法か……ティナ・バレー!そこまで〈オーバード〉を奴隷にするか! 下衆め!」
――パンッ!――
さらにもう一発、マロンがハヤトをビンタした!
「お前、ウチの話聞けや!さっきからティナ姉ちゃんを侮辱しよってからに! ウチの心は広い方やけど……お前みたいに人を勝手に悪く言うボケは嫌いや! 帰れ、ボケ!」
マロンが涙目になりながらハヤトに訴えていた。ハヤトは頬を押さえながら立ち上がり、フォルティナに憎しみのこもった目を向ける。
「くそ……なんて強い洗脳なんだ……マロン君は絶対俺が助けてみせる……ティナ・バレー! 今日は退くが、必ずお前を倒す! 主人公であるこの俺――シノノメ・ハヤトがな! 【スキル!テレポート!】」
そう唱えたハヤトの姿が、一瞬にして消えた!
聞いたことない魔法……でも助かった……正直もう会いたくない。
「マロン! 大丈夫?」
「大丈夫や、ティナ姉ちゃん!それにしても、なんやあいつ!話も通じへんし?意味わからんことばっか言いよって……ムカつくわ〜!」
「そうよね?アタシもアイツの話、全く分かんないわ……」
マロンがここまで怒ったの、初めて見た……。あんなに無視されて勝手に話を進められたら、そりゃキレるか……
そう思いながら、マロンの頭を撫でるフォルティナ。
「姉ちゃん?」
「いや。マロンがこんなに怒ったの初めて見たから……大丈夫?」
「あ〜、うん!もう大丈夫や!すまんなぁ」
「それにしても『アタシを倒す』って言ってたけど……アイツ、どのクラスなんだろ……青服だから編入生なんだろうけど」
考えていると、シリルがフォルティナたちの元にやって来て答えた。
「あの編入生、たしかAクラスだよ? セブンハーツ様の推薦で編入したって聞いた気がする」
「Aなの?あんな馬鹿なのに?」
フォルティナが不満げに言った。あれでAなら、マロンとイデアもAに行けたわよ……納得いかない!
「噂で聞いたけど、彼、とんでもない魔法をたくさん使うらしいわ?だからこそのAなんじゃないかな?」
「とんでもない魔法ね……」
最後に使った、消える魔法……あれもよく分かんない……“テレポート”って何? あとアイツが魔法を使う時“スキル”って唱えてるけど……舞踏会では“火”、今のは火に関係なさそうだし……。性格は気に食わないけど、警戒した方が良さそうね。
「と……今はそれより……」
フォルティナがパンパンと手を叩き、Zクラス全員を集合させた。
「飛んだ邪魔者が入ったけど……訓練を再開するわよ!あと1週間で団体戦が始まるんだからね!みんな! 気合入れていこー!」
「「「おおっ!」」」
フォルティナの指示で、各自訓練を開始した。そう、団体戦まであと僅か……タグラスさんの依頼を達成させるためにも、Zクラスで結果を出さなきゃ! 頑張るわよ、アタシ!
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