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無知な田舎娘は未知に憧れを抱く!  作者: ギトギトアブラーン
第1章 冒険者認定試験編
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第14話 模擬戦⁈ 警備隊での鍛錬!

 外壁の東門側にある警備隊の詰所に、フォルティナは警備隊の“枯れ声の隊長”ことアンガス、副隊長のサイモンたちに招かれていた。


 詰所には訓練のための広場が併設されており、弓や射撃の練習用の的、剣や槍などの武器が並んでいた。


 広場ではざっと30人ほどの隊員が、10人ずつ横一列に並んで素振りをしている。


「お〜! やってるやってる〜。にしても隊員多いんだね〜」


 右手を額に当てながら広場を見渡すフォルティナ。大人数で素振りをしている光景に感心していると、副隊長サイモンが号令を掛け、アンガスがそれに続いて指示を出す。


「総員! 一度手を止めろ! 隊長より指示がある!」


「お前ら! 全員%>÷☆! 今日は特別ゲストを連れてきた! それでぇ! この可愛いゲストと模擬戦を行うことにする! #:〒×か! ウジ虫どもぉ!」


 ザッ!と一斉に敬礼し、


「「「了解であります!」」」


 全隊員が一斉に返事をする。

 それにしても、所々声が枯れすぎて言葉が分からないのに、誰も突っ込まない。


 もしかして、聞き取れていない自分がおかしいのでは?とフォルティナは錯覚し始めたが……あれ?……模擬戦? いきなりすぎない?


「アンガス隊長さん? いきなり模擬戦って……ちょっと自信ないっていうか……なんていうか」


 現役の隊員相手に実力が通じるか不安に駆られるフォルティナ。そんな彼女に、アンガスは笑いながら答えた。


「嬢ちゃん? お前、明日の冒険者試験を受けにこの街に来たんだろ?」


「なんで分かったの⁉︎」


 驚くフォルティナに、アンガスは当然のように高笑いしながら答える。


「嬢ちゃん、ワシたちはこの街の警備隊だぜ? 街の端から端まで巡回してるからな。住民か外から来た奴かなんてすぐに分かるさ。それに今は試験の時期だろ? だから模擬戦をするんだよ。試験前の肩慣らしってやつだ!」


「アタシなんか相手になるのやら……」


「大丈夫だ! 嬢ちゃんなら! 実戦は初めてか?」


「実戦はしたことないけど……アタシの村のシスターとなら手合わせを何回かしたよ。ぜ〜んぶアタシの負けだったけど」


「ほほ〜……村のシスターとか……面白いな! だがそれでも大丈夫だと俺は思うぜ? まぁ物は試しだ!」


 不安はあるが、確かにアンガス隊長の言う通りだ。物は試し。今の自分がどこまでやれるか、確かめなきゃね!


「よーし! ……まずはそこのお前! 出なさい!」


「はっ!」


 アンガスが隊員の一人を指名し、木剣を構えて前に出る。フォルティナも斧を構えようとするが、


「嬢ちゃん! これを使いな!」


 アンガスが木の斧をフォルティナに投げ渡す。


「これは?」


「これはあくまで模擬戦だ。嬢ちゃんの斧じゃ危険すぎるからな!」


 軽く振ってみると、とても軽い。斧というより棒のようだ。


「両者、準備はいいか?」


「アタシはオッケー! いつでもいいわ!」


「自分も大丈夫であります!」


 両者の準備が整い、アンガスの開始の合図を待つ……


「始め‼︎」


「でりゃぁぁぁぁぁぁ!」


 フォルティナは斧を構え、隊員との距離を一直線に詰める! 対する隊員は中段に構えたまま動かない……斧を振り切ったタイミングでのカウンター狙いね⁉︎


 カウンター狙いと見抜いたフォルティナは、振りかぶったかと思わせて、接敵ギリギリで右肩からタックルを繰り出す!


「うぉ!」


 斧を振ると予想していた隊員は不意を突かれ、後ろに下がる。


「そこぉ!」


「うぼぁ‼︎」


 隊員が下がったところを逃さず、右足で地面を踏み込み、左足で回し蹴りをみぞおちに叩き込む!


 隊員は数メートル吹き飛ばされ、仰向けに倒れる。肺の酸素を吐き出しきって動けない様子。フォルティナはさらに接近し、斧を振り下ろそうとして――


「そこまで!」


 終了の合図。あっけなく終わってしまい、少し消化不良。


「勝者は嬢ちゃんだ! 言った通り大丈夫だっただろ? それにしても見事だな! 気合の入った掛け声で全力で斧を振ると見せかけ、カウンターの構えを取った相手にタックルで体勢を崩し、回し蹴りとはな! いやはや鮮やか!」


「もう終わり? アタシまだまだやれるけど?」


「そうだよな! あの程度じゃ物足りないだろう……よし! 次はサイモン、お前だ!」


 次の相手は副隊長……絶対強い! どんな戦い方をしてくるんだろ?


 そう思案していると、アンガスがサイモンに指示を出す。


「サイモン! お前は剣で相手をしろ!」

「了解であります! 隊長!」


 両者は距離を取り、武器を構える。

 フォルティナは先ほどと同じく斧を構え、サイモンは両手で持った剣を頭の横で構えている。


「両者、準備はいいか?」

「おっけー!」

「いつでも行けます!」


「では……始め!」


 フォルティナは先ほどと同じように駆け出す! だが、先ほどの手はもう通じない。

 サイモンは剣を突き出すように構えている。腹ががら空き——なら、横振りで一気に決める!


 そう判断したフォルティナは、ある程度距離を詰めてから——


「シッ‼︎」


 ヒュォンッ! フォルティナの眼前に、鋭い剣の突きが飛び込んできた!


「嘘でしょ!」


 鋭い刺突をギリギリで左に顔を逸らして回避するが、体勢を崩したままの斧は虚空を切り裂く。

 サイモンは突きを戻すと同時に上段に構え、すかさず振り下ろしてくる! 一連の動作に無駄がなく、正確で速い!


 だが、フォルティナは視線を外していなかった!


 斧を自身の背後の地面に突き刺し、両手を軸に棒高跳びの要領でバク転! 両足でサイモンの顔面を狙うが——

 サイモンは顎を少し上げ、ギリギリで回避!


 この人……めっちゃ強い! さっきの隊員よりもずっとずっと強いッ‼︎


 シスター・シンシア以外にもここまでの強者がいたことに驚きつつも、フォルティナの胸は高鳴る。

 だが今度は、サイモンが攻めに転じて接近してくる!


 構えが……さっきと違う!


 サイモンは腰のあたりで剣を持ち、刃が体に隠れて見えない。フォルティナから見えるのは柄だけだった。


 大振り? いや、足技が来るかも……距離を取れば剣の間合いに入る……でも、近づけば蹴りの可能性も……蹴りなら!


 足蹴りを予想し、密着するほどに接近したフォルティナ——しかし!


 予想は外れ、サイモンは剣の柄をフォルティナの腹に突き当てた!


「ぐぁ……!」


 予想外の一撃に体勢を崩し、立て直そうとするが——


「勝負あり! 勝者、サイモン副隊長!」


 アンガス隊長の声が響き、勝敗が決した。

 フォルティナの横腹すぐそばには、剣の刃がピタリと当てられていた。


「ぐあー! 負けちゃった〜!」


 楽しかったけど、くやしいなぁ……

 にしても、こんなに強いなんて! シスターとは違うタイプの強さでびっくりだよ!


 シスター・シンシアはスピードとパワーというシンプルな強さ。

 それに対しサイモン副隊長は、技量が圧倒的に優れていると感じた。


「フォルティナさんも中々でしたよ。顔面を狙ったあの蹴り、見事でした。油断していたら、私もやられていたかもしれません」


「ホント!? そう言ってもらえて嬉しいけど……完敗だもんな〜! くやしぃ〜!」


 そんな2人のもとへバッカスが近づいてきた。


「いやはや! サイモン相手に嬢ちゃんがここまでやるとはな! 正直驚いたぞ!」


「いやいや、ボロ負けだよ……でも、次は負けないから!」


 フォルティナの宣言に、サイモンは笑顔で軽く会釈する。


「はっはっは! サイモン、そう言ってくれる奴がいるのは嬉しいだろ? 嬢ちゃん? 実はサイモンはな、この街で2番目に強いんだぞ!」


「じゃあ、1番強いのは隊長さんなんだ!」


「その通りだ! そうじゃなきゃ隊長は務まらん! なあ、サイモン!」


「はい……私では、隊長の足元にも及びませんから……」


 あの副隊長さんですら足元にも及ばないなんて……アンガス隊長って……ごくり


「よーし! お前ら、休憩だ! 20分後、嬢ちゃんも含めて鍛錬を再開するぞ! 分かったな!」


「「「了解!」」」


 フォルティナもアンガス隊長に敬意を表し、他の隊員たちと同じように返事をする。

 そして彼女は、ふと気づく。


 ん? そういえばアタシ……気づいたらアンガス隊長の言葉、ちゃんと聞き取れてる……


 休憩に入ると、隊員たちがフォルティナの元に集まってきた。


「おい嬢ちゃん! すげぇな! あの副隊長にあそこまで戦えるなんて!」


「え? そんなに凄いの?」


「ああ! 凄いぜ! 俺だったら開始1秒もかからず気絶するな……あの人の技、多彩すぎて何しても先に攻撃される感じがするんだよ!」


「それ、すっごい分かるかも! 上段で構えてたから、お腹に攻撃しようとしたら突きが来て! 最後も蹴りか横薙ぎか分からなくて、蹴りなら対処できるって思って前に突っ込んだら、柄頭でお腹に一撃食らっちゃって……予想外すぎたもん!」


「いやいや……そこまで考えてる嬢ちゃんも流石だよ……ははは」


「あ! そうだ、アタシはフォルティナ・ロックスっていうの! これからは“ティナ”って呼んで?」


「あいよ、ティナちゃん!」


 隊員たちと談笑しながら休憩を終え、再び鍛錬へ。

 外壁の内側を走り込み、各武器の素振り、筋トレを夕方まで行った。


 フェイたちの家へ戻る際、何人かの隊員から明日の試験に応援に来ると約束され、フォルティナは家路についた。


 帰宅後、シャワーを浴び、アマンダおばさん特製の魚のフライとパンを、今日も泥だらけで帰ってきたフェイたちと一緒に食べ終えすぐに部屋へ。


 流石に疲れた〜! でも楽しかった! 明日の試験、頑張るぞ! そのためにも早く寝ちゃお!


 いよいよ試験は明日。どんな試験か気になりながら、目を閉じ……


「あああああああああああああ!」


 閉じれなかった! フォルティナは思い出したのだ。


「筆記試験のこと、忘れてた……」


 一切勉強していなかったフォルティナは、焦りを感じたが——


「まぁいいや! 明日は明日のアタシに任せよーっと!」


 明日の自分に全てを丸投げして眠りについた。

 きっと明日のフォルティナはこう思うだろう。


「昨日のアタシのバカァァァァァ!」


ここまで読んで下さりありがとうございます!

初の対人戦なので分かりにくい部分があると思いますがもし楽しんでいただけたのであればブックマークと評価をして頂けると励みになります。

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