第12話 後悔しない方法
昼、フェイがレースで落ち込むティナを励ます為に出店で買った2人分の串焼きを食べる為に、教会近くの時計塔広場に来た。
街の外から見えた巨大な時計がこの時計塔だった。
「ティナおねえちゃん? これでも食べて元気出して?」
「ありがと……」
広場のベンチに座りながら串焼きを食べる。何の肉かわからないがふっくらジューシーでありながら外はカリッとしっかり炙られており、また胡椒が効いていて美味しかった。
「これ美味し! 何のお肉?」
「アルジャベヒモスって魔獣のお肉だよ ベヒモスは巨大で凶暴な魔獣なんだけど アルジャベヒモスはそこまで大きくない魔獣で今では食用魔獣として飼育もされてる品種なんだ 前足に筋肉が付いていて歯応えがあっておいしいんだ〜」
ほ〜 食用魔獣なんてのもいるのね……ホント村の外は知らない事がたくさんあるな〜
「フェイってすごい物知りだよね? どうして?」
街に来た時からフェイの知識に助けられてばかりであり魔獣や世界にも詳しい事が今になって気になり聞いてみる事にした。
「ぼく本を読んだり勉強して知らない事を知っていくのが好きなんだ! それでかな? 自分ではまだまだだと思ってるんだけどティナおねえちゃんの役に立ってよかったよ」
「ホントホント! すっごい助かってるんだから〜! もっと自信持って?」
すっかり機嫌を取り戻し串焼きを食べる。2本目はタレが掛かっていた。
こっちは甘辛いタレで食欲が掻き立てれすぐに食べ終えてしまった。
食べる事に集中しすぎていたフォルティナは隣に座るフェイにタレについて聞こうとしたが
「……はぁ」
広場の真ん中でボールを蹴って遊んでいるフェイと同じぐらいの年齢ぐらいの子供達を眺めながらため息をついていた。
「どうしたの? あの子達 友達?」
そんな表情になったフェイにフォルティナは尋ねるが
「ううん 知らない子達 ……ぼく友達いないから……」
意外だ……こんなに色々知ってて話も上手なフェイに友達がいない事が不思議だった。
「嘘! こんなに話上手で物知りなのに?」
フォルティナも正直に答えるとフェイはため息をつきながら話しを続ける。
「本当はみんなと遊びたいんだけど……どうやって声を掛けていいか分かんなくて怖いんだ もしかしたら断られるかもとか考えちゃって……どれだけ物知りでもこれだけは分かんないんだ……」
「ふ〜ん……なるほどね」
フォルティナはフェイの悩みを聞き、村の友人の一人ジルがいつも言っていた言葉を思い出し行動に移す事にした。
「フェイは友達が欲しいんだよね?」
「うん……そうだけど どうしたらいいか分かんないから困ってるんだ!」
「おねえちゃんに任せなさい!」
そう胸を叩いて広場の子供達に向かって叫ぶ!
「おーい! そこのボールで遊んでるみんな〜! ここに居る子! フェイって言うんだけど! 一緒に遊びたいんだってさ〜! 仲間に入れてもらってい〜い〜?」
突然の行動にフェイが焦り出しフォルティナにどうすれば良いか尋ねようとするが……
「ティナおねえちゃん! そんなことしたら!」
「そんな事したら? 何? フェイは友達が欲しいけど作り方が分かんなくてこのままの状況を後悔してるんでしょ? なら何もしないで後悔するぐらいなら やってみて後悔した方が良いじゃん?」
理屈としては理解できる……だけど怖いんだ……もし断られたらと思うと……
「大丈夫! 失敗したら次を考えればいいだけよ! それに」
そうフォルティナが話していると話し合っていた子供達から返事が返ってくる。
「いーよー! こっち来なよ〜!」
了承の言葉が返ってくる、もはやフェイにとって後に引けない状況をフォルティナは作り出したのだ。
フォルティナはフェイに向かって告げる、村の友人が言っていたいつもの言葉を
「良いってさ! 行っておいで! "男には後に引けない時がある"んだよ? 今がその時! 一緒に遊んだ後は また明日!って言うだけで友達になってるもんなんだから!」
そうフェイの背中を叩きながら行っておいで、と促す。
フェイは後に引けないこの状況とフォルティナの言葉を信じて子供達の方へ走り出す。
「分かったよ! ティナおねえちゃん! また家でね! 行ってくるね!」
「は〜い! いってらっしゃ〜い!」
子供達の方へ走り出したフェイに手を振りながら見送り
一人になったフォルティナは近くにある教会に向かう。
せっかくだからお祈りして行こうかな
村の教会より大きい佇まいだった、門は開かれており中に入り並んでいた椅子に座り祈りを捧げる。
神への感謝と試験合格をひとしきり祈り目を開けると
「街の外から来たのですか?」
この教会のシスターに話しかけられた、村のシスターシンシアと違い落ち着いた黒のロングスカートタイプの修道服にベールで隠れているが金髪のセミロングに糸目でお胸が大きいおっとりとした印象を受けるシスターだった。
「うん! そうなの! 村にも教会はあったんだけどここはそれより大きいんだね?」
フォルティナは正直な感想を伝えるとシスターは、あらあらうふふと優しい笑顔を浮かべていた。
「ある程度大きいのは交易街の教会だからですね ところで先程外でフェイ君を子供達と交流出来るように話している姿を見掛けたんで話しかけたんですよ」
「どゆこと?」
このシスターにさっきフェイに友達を作らせようとしていた一部始終を見られていたらしい。
「あの子はここで開かれている日曜学校に来てくれて それはそれは熱心に学ぼうとしてくれているのは嬉しいのですが……」
シスターは小さくため息をつきながら続けて
「引っ込み思案な性格もあり中々同年代の子達と打ち解けることが難しかったのですよ それがさっきあなたとのやり取りであの子が同年代の子供達と一緒に遊びに向かった姿を見たので どう導いたのか気になったのです」
「なるほどね〜 アタシは何にも特別なことはしてないよ ただ逃げ道をなくしただけ!」
逃げ道?とシスターは首を傾げる。
「そう! 逃げ道! アタシも村の友達からの受け売りなんだけどね! なんでもやりたがらないのは理由があってそれを逃げ道……つまり言い訳ね! だからその言い訳ができない状況になれば……ほら! もうやるしかないでしょ? アタシはさっきそうしただけなの!」
シスターはフォルティナの言葉に感心した。まだ若いのにも関わらず先程のやり取りにはちゃんとした考えがあっての行動であった事に
「私は相談に乗って優しく答えを教えるだけでそのような発想は思い浮かびませんでした……私にも導けなかった事を貴方は成したのです 感謝を……」
シスターから感謝を受け、鼻の下を人差し指で擦りながら照れてしまった。
シスターは続けて自己紹介に入る。
「自己紹介が遅れました……私はシスターサーシャと言います 王国出身なので連邦の方達とは少し印象が違うと思いますがよろしくお願いしますね」
「アタシはフォルティナ・ロックス! ここには冒険者の試験を受けに来たの! それで神様にも日々の感謝と合格できますよ〜に!ってお祈りしてたんだ!」
「そうだったのですか……試験無事に合格できる事を祈っておりますね?」
シスターはそうしてフォルティナから去ろうとするが
「シスターサーシャ! アタシと鍛錬しよ? シスターは強いんでしょ? ぜひお願い!」
シスターサーシャの糸目が少し開くほど呆気に取られていた、意味が理解できずにいたシスターサーシャはフォルティナに告げる。
「フォルティナさん? シスターは戦闘などしませんよ? まして私は全く戦えません……できる事と言えば子供達の為に学校を開き 迷える人々を導くことだけです……すみません……」
フォルティナもまさかのシスターサーシャからの言葉に驚いてしまった。
なにせマインツ村のシスター……シスターシンシアは戦闘経験豊富でバーサーカーだったからである、なのでフォルティナは、シスターって戦闘が得意な人がなれるものなんだ〜っと今まで思っていたからだった。
それがまさかシスターは戦闘をしない? なら村のシスターシンシアとは一体……?
混乱し始めたフォルティナに対し申し訳なさげに、では……と去るシスターサーシャ、フォルティナはしばらく混乱して落ち着いてから教会を出た。
外はもう夕方だった。
帰ろう……今日も色々あったから疲れちゃった……
そうしてフェイとアマンダおばさんの家に向かうのであった。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
友人を作る事以外にも怖い事ややりたくない事って沢山ありますよね? 私はどうせ後悔するならやるだけやってみて後悔する派です!
この話が面白い、続きが見たいと思っていただけたならブックマークと評価をよろしくお願いします!
ではまたの機会に〜