第36話 スポンサー契約
深夜になり、ようやく家の外と中のガラクタ整理が終わった。
一同は綺麗になった居間でエレオノーラが作った軽めの食事を食べていた。
家にあった余り物で作ったのは野菜炒めだ。
「おいし〜!ノーラって料理も出来るんだね〜」
フォルティナはフォークで肉を突き刺し口一杯に頬張っていた。
「いやなに、学校の行軍訓練で多少齧った程度だがな それにせっかくの優勝祝いなのにこんな味気ない物ですまない」
エレオノーラは上品にナイフとフォークで肉を切り分け少量ずつ食べながら申し訳なさそうにしていた。
「いや〜俺様達だけだと料理のレパートリーが少ないからノーラが作ったこの?なんだ?よく分からんが旨くて助かってるぜ?」
モルトもナイフとフォークで上品に食べているが、口は下品だと思った。
マロンとイデアは無言でガツガツ食べている、相当お腹を空かせていたのだろう。
まぁもう深夜だしね。お腹も空くよね〜?
フォルティナは部屋中を確認するように辺りを見渡す。
残骸まみれだった部屋は綺麗になり本来の床が見える状態。
椅子も人数分散らかっていた場所から発掘し居間に集める事ができた。
これでマロンとイデアはガラクタに座らなくて済む……。
「にしても……。かなり綺麗に片付いたね〜」
「だな〜。ゴミ屋敷からボロ屋敷に昇格だぜ」
ポカッとモルトの頭を殴るフォルティナ。
「アンタっていっつも余計な一言つけるよね?空気を読みなさい!空気を!」
「だからっていきなり殴る事ないだろ!ブース!」
「何よ!」
「何だよ!」
フォルティナとモルトが喧嘩を始めようとしたのを見てエレオノーラが机を叩く。
「2人共!食事中だぞ!マロンとイデアの教育にも悪い!やめないか!」
「「はい……すいません……」」
2人してシュンっとなっているのをマロンは見て笑う。
「あっははは!いやぁノーラ姉ちゃんはまるでオカンやな!ウチはオカン見た事ないけど居ったら多分こんな感じなんやろなぁ」
「オ……オカン……」
エレオノーラはオカンという言葉に固まってしまった。
まだ17という若さで母のようだと言われた事がショックだったのだろう。
だけどママみたいなんだよね〜。ノーラって。長い説教に料理上手!きっと良いお嫁さんになれると思う!
口に出すと更にショックを受けそうだったのでフォルティナは心の中で留めておく事にした。
「で?メジャーリーグは1週間後からだけど……その間は何すれば良いの?」
フォルティナは一同に顔を向ける。
体の調整に武器の修理は分かるが1週間は長いと思った。
「ティナ、明日は覚悟しておいた方が良いぞ」
エレオノーラが肉を飲み込みそう話す。
明日何があるのだろう?
「そうだな〜明日は忙しくなるかもな……ティナ……明日はお前に客が大量に来るはずだぜ?」
「何々!?ノーラもモルトも何言ってんの?明日何があるっていうのよ?」
モルトとエレオノーラは食器をテーブルに置きフォルティナに向く。
「良いか?お前はマイナーリーグ優勝者……。つまりメジャーリーグに出場出来る資格を持った無名の選手だ」
モルトの話にフォルティナはフォークで突き刺した肉を頬張る。
「それが何だって言うのよ?」
呆れたのかエレオノーラは頭を抱えた。
「つまりだな……。明日は各地区優勝者に企業が押し寄せてくる日だ。無名でスポンサー契約をしていない有望選手には尚更集まるだろうな……。特に君みたいな人だ」
肉を飲み込みフォークで皿を突きながら2人の話を整理する。
「つまりアタシは明日沢山の企業相手に契約するって事? いや。すでにマロンとイデアと契約してるから断った方がいいの?」
「ティナ行儀が悪いぞ。フォークで遊ばないように……。契約するかしないかは君の自由だ。だが君はこの2人の依頼で優勝すると言う理由があるからな……。他社と契約を交わすと依頼達成条件としては満たされないんじゃないか?」
ため息を吐いたエレオノーラから注意されフォークを置き、マロンとイデアに顔を向ける。
「マロンとイデアはどうしたら良いと思う?」
マロンとイデアは完食し満足そうに椅子にもたれていた。
フォルティナから話を振られ目を開き顔だけを向ける。
「せやなぁ。ティナ姉ちゃん次第やけど、ウチら的には断って欲しいかなぁ。大手企業の装備を身に付け始めたらウチらの装備が目立たんようになるやろ?」
「そうですね……。私たちは大手企業の力があったからこそ勝てたんだ! とか言われたくないですし。それに……」
「それに?」
マロンとイデアが何か言いづらそうにしていた。
少し間を置きマロンが先に話し始める。
「ウチら弱小企業やろ?しかも〈オーバード〉やし……。絶対に嫌がられるからウチらはチームから外されると思うねん……」
「はい。あとは私たちの作った装備の資料提供も要求されたりもすると思うのです。嫌われ者で弱小企業の私達はそんなチームに馴染めないと思いますよ……」
「ふ〜ん……。そっか……」
フォルティナは椅子にもたれて揺らしながら天井を見て考える。
デカい企業と契約すると受けられるサポートも装備も豊富になる。
けどそうすると2人が追いやられちゃうかもしれないって事ね。
それは嫌だなぁ……。
折角ここまで一緒に戦ってきた仲間だし、何よりあの斧の調整は2人にしか頼みたくないし。
「よし決めた!」
フォルティナが椅子を揺らすのを止め机を叩く!
「アタシ契約しない! マロンとイデアの2人と離れるかもしれないなんて嫌だもん! あとあの斧を弄れるの2人だけなんでしょ? だったらアタシ契約しないわ! お金なら買って稼げばいいんだし! それで良いよね? モルト!」
「お、俺様か?!」
自分に話を振られるとは思っていなかったのだろう。
食事を再び食べ始めていたモルトが驚き反応する。
「だってアンタ金にうるさいんだもん。契約しろ〜っとか言いそうだったし。一応アンタの話も聞いておこうと思ったのよ? 後でガミガミうるさく言われたくないし〜」
そう言われたモルトは全員からプレッシャーを感じるような視線を向けられる。
そんなプレッシャーを感じたモルト顔が引き攣りながら
「お前ら……。俺様がそこまで金にせこい奴だと思ってんのか? はぁ……。確かに金は欲しい……。だが」
モルトは頬杖をつく。
「大手企業ってやつはよ〜。な〜んかめんどくさそうなんだよな……。自分とこの装備をアピールする為にアレやれ! コレやれ! って言われそうでよ。俺様的には今のままが1番勝率が高いと思ってんぜ?」
確かに戦いにケチ付けられ始めたらめんどくさいかも。
それなら自由に戦わせてくれる今のままが良いわね。
「お金にうるさいモルトの言質も取れたし! アタシは契約を受けないことに決めたわ! それで良いよね?みんな?」
フォルティナは一同の顔を見て反応を窺う。
「ああ!」
「おう!」
「了解したで!」
「はい……」
みんな肯定し明日の話を終え、食事を再開しながら談笑に戻る。
食後はマロンとイデアの綺麗になった家に泊まる事にした。女性陣は家に、モルトは工房で一夜を過ごしたのだった。
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