第28話 対立
私はジークを先行させた。だがその直後、新たに現れた別のアンデッドに襲われていた。
「この!消えなさい!」
アンデッドの放った風を業火で呑み込み焼き尽くしてやった。
「ふぅ……ちょこまか逃げるから時間かかっちゃった。ジークは犯人見つけたかしら?」
ジークがアンデッドを問題なく倒したとして、今まで横取りしてきた相手が先を越されたとなると……どう出てくるか分からなかった。
私は少しの不安を感じながらジークの後を追うのであった。
俺は、どうすりゃいいんだ……!?
天師の生い立ち、魔術師の罪を知った俺。魔術師の断罪を宣言したシュウに何をすればいいのか迷っていた。
「魔術師をどう断罪するんだ……?」
「無論、人々に真実を伝える。そして証明する。天師が正しいとな。この光の力を持ってして」
手に光を集め、シュウは力強く呟く。
「何をする気だ……!」
「決まっている。憎むべき魔術師を倒すんだ。そして人々の目を覚まさせ……天師こそがアンデッドを倒すに相応しいと証明する」
「っ!」
大胆にも野望を告げるシュウ。しかしこの国は魔術大国エデン。単純な魔術師の数も、魔剣を持つ者も多く抱えている。
「んな事……できる訳がねぇ」
だから、俺の言葉は間違っていない。
「私1人ならばそうだろうな」
「なに?」
シュウの口ぶりに思わず眉をしかめる。だが、次の言葉は更に驚くべきものであった。
「既に計画は動いている。魔術師や一般人問わず、光に対応する者。即ち私達の同胞を何人も勧誘している」
「勧誘……だと?」
「そうだ。彼らは天師の末裔。たとえ半分が穢れた血であったとしても、その罪を償い、赦され無ければならない」
エデン国は魔術師が多い分、光を操る者の割合も多い。つまり彼らが戦力となれば……。
「だから私は戦争を……いや、聖戦を始める。それこそが純粋たる天師の私の使命だからだ」
それこそがシュウの計画であった。だが俺は忽然と言い放つ。
「そんな事……させると思うのか?」
「お前の許可など必要ない。先ずは魔術師を倒し、その正しさを証明しよう」
そう言って展開した光の矢を放つシュウ。俺はそれを魔剣で全弾弾き飛ばす。
「てめぇの理屈は分かった。天師って種族の為に戦うみてぇだな」
「そうだ」
「だがな!はいそうですかって認められねぇんだよ!」
鋒をシュウに突きつけ、俺はシュウの野望を否定する。
「所詮は魔術師。我が身が可愛いと見える」
「そんなんじゃねぇ!てめぇは戦争を起こす気でいるが、そこに居る人達はどうなる!?魔術師じゃねぇ人を巻き込むんじゃねぇ!」
戦争が起これば人は死ぬ。そして戦争をしていればアンデッド狩りも疎かになるかもしれないし、天師との戦いの余波で一般人にも犠牲が出るかもしれない。
だから俺はシュウの戦う理由を聞いても頷けないのであった。
「言ったろ?彼らも罪を背負った当事者だ。罪を隠し、特権を享受する魔術師につくなら同罪だ。容赦はしない」
「イカレてんのか……!?」
「イカレてるのはお前たち魔術師だ」
また怒涛の矢が放たれる。
「喰らいつけ『閃矢追光』」
それらはあらぬ方向に飛ばされた……と思いきや、その軌道を曲げて俺へと襲いかかる。俺は回避するが、その度に軌道を変えて追いかけてくる。
追尾か!なら!
俺は回避を諦め、魔剣を奮って矢を全て切り裂いてしまった。
「そんな矢をいくら撃とうが!」
「なるほど……なら、本気で行こう」
更に矢の本数を増やすシュウ。その速度も軌道も先程より一線を画す。
「くっ!」
俺の回避も迎撃も間に合わなくなり、浅いが体に傷がついていく。
クソ!防ぎ切れねぇ……しかも町が……!
シュウの矢は周囲の地面や建物等お構い無しに攻撃してくる。人払いの結界があるとはいえ、そこには人々の生活がある。
っ!そうだあそこなら……!
俺は破壊を気にしなくて良い場所に覚えがあった。俺は攻撃を否しつつ、シュウと距離を取る。
「逃げるのか!」
シュウはそれを素直に追いかける。
素直で助かるぜ。このまま連れていく!
攻防を繰り広げつつ、2人がやって来たのは寂れた町の一角だ。そこで俺は逃げるのを止めた。
「卑怯にも罠でもあるのかと思ったが……なんだここは?」
訝しげに周囲を見渡すシュウ。それに俺は忽然と答える。
「ここは20年も前に疫病が流行った場所だ。疫病は根絶されたよ。でも病を恐れた人達はこの町に寄り付かなくなった。それは今でも変わらず、ここに住んでた人も居なくなった」
所謂ゴーストタウンと貸しているのだ。
「それがどうした?泣き落としのつもりか?」
そう言って再び閃光の矢が放たれる。だがそれは、高純度の魔力を孕んだ剣圧で防がれた。周囲にも衝撃が伝播し、地面や壁にヒビが入る。
「別に、ただこっちがやりやすくなっただけだ」
物悲しい場所だが、今は被害を気にせず存分に戦える場所である。
「なるほど。なら、私もこれを使わせてもらおう」
そう言ってシュウは懐から取り出した指輪をはめる。するとその指輪が眩い光を放ち、やがてその手に白い刃を手にする。
「それは……魔剣、なのか?」
俺の持つものとは違い、その刃はやや細く曲がっている。所謂、東洋の刀という剣だ。
だが、シュウは別の視点から俺の言葉を否定する。
「そんなものと一緒にするな。これは魔剣ではなく聖剣。偉大なる光の力の結晶だ」
そう言って刀を両手で構える。すると刀身は光り輝いた。空気が揺れる程の力を俺も感じ取る。
魔剣とは違うみたいだが、魔剣と同等の力を持ってるのは明らか……!
俺は魔剣を握る手に更に力を込める。両者睨み合う。
「行くぞ」
シュウは飛び出した。互いの光刃がぶつかり合い、激しい火花を散らす。
2度、3度と剣戟を繰り返す。
さっき迄とは段違いの速度……!
「どうした?この程度か?」
「誰が!」
1歩飛ぶように引き、着地と同時に身を屈めて弾丸のように飛び出した。その勢いを乗せて振るった刃をシュウは受け止めたが、一瞬怯んだ。
ここだ!
俺は突きを繰り出し、肩口を刺し貫く。
「ぐぅ……!だが!」
シュウ剣を掴み、返す刃で袈裟斬りがモロに入る。
「うっ!ぐぅ……!」
俺は大きく下がるが、「これでトドメだ」と言わんばかりの攻めの姿勢でシュウは迫った。その瞬間、辺りは真っ暗闇に染まった。
「っ!」
「『常闇の光』」
闇の中で、眩いエクスカリバーだけがその輝きを持っていた。
そして振るう光の奔流。それはシュウを呑み込むのであった。
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