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第27話 天師

 放たれた光芒。それらは一直線に俺を襲った。着弾と同時に眩い爆発が起こり、地面が砕けて土煙が舞う。


 その煙が晴れるのを金髪をなびかせて待つシュウ・ラ・ルース。


「危ねぇなぁ!」

「っ!」


 声のした方向は煙の中では無い。その付近の屋根の上だ。俺は間一髪、矢を躱していたのだ。


「ならば!」


 また矢を生み出すシュウ。だが先程と違い、周囲に複数本展開する。


「『閃矢(せんや)』」


 言霊と共に放たれた幾つもの閃光の矢。俺は屋根から飛び降りて回避するが、シュウは半分矢を残していた。


 まだ空中の俺に残りの矢が迫る。


「はあっ!」


 だが俺はそれを魔剣で全て叩き落とし、無事に地面へと降り立ったのだった。


 言霊も策も弄したが……こいつ中々やる……!


 シュウは俺の実力の一端を見せられて顔をしかめる。

 

「さっきからよぉ……おめぇわ一方的すぎんだよ!会話しろ会話!」

「なっ!」


 怒りを込めて叫ぶ俺に目を丸くするシュウ。


「あと魔術師と勘違いしたのは謝る!すまんかった!けど撃って来るのは違ぇだろ!」


 更に続けて勢いよく謝罪と文句を言われ、シュウは困惑している。だがまた怒りの表情に戻り、激しく捲し立てる。


「口先だけの魔術師め……!また騙すつもりか!」

「騙すって何がだよ!頼むから一から説明しろ!」

「……いいだろう」


 俺の言葉に一応耳を傾けるシュウ。だが敵意は変わらない。俺は警戒しつつ、シュウの言葉を聞くのであった。


「魔術師は罪を背負っている」

「罪?」

「ああ、お前は魔術師に成り日が浅いのだろう。いや、秘匿されているのかもしれないな。だから教えてやる」


 一泊起き、魔術師の罪とやらを述べる。


「魔術師の魔術は本来5つの属性だけだった。地水火風……そして闇だ」

「っ!?」


 エレナが俺に教えた事もある魔術の属性。それはシュウの述べたものに光を加えた6つであった。2人の話が食い違っており、俺は混乱している。


「どういうことだ……?俺は6つって習ったが……」

「光は元々私たち天師の操る属性。それを1000年前の魔術師は奪ったんだ」

「光を、奪った……!?」


 伝えられた事実に驚愕する俺。だがしかし、まだそれを鵜呑みにする事は出来ない。

 

「奪うって……そんな事できんのか?人によって魔力の対応元素は変わるし……」

「そう、変わる。だがそれは血筋の影響が大きい」


 例えば、父と母が火と風の属性を持っていた場合、子供は火or風が遺伝される確率が50%程ある。残りの50%の内、どちらでも無い属性が48%。残りの2%が二重属性……つまりどちらも遺伝する結果になる。


「だが、光属性は天から力を授かった『天師(てんし)』という人間たちだけしか持っていなかったんだ」


 シュウは天師の歴史を語る。


 神話の時代。天の使いは東の国に降り立ち、その美しい翼を羽衣に変えて手渡した。するとその羽衣は人々の心と繋がり、やがて光を操る力となったという。


「それが……光の魔術」

「そうだ。天師は賜った力で不浄なる者を滅し、その中に呑まれた人の心を救済してきた。やがて西へと渡った天師たちは魔術師と出会った。それこそが全ての始まりだった」


 互いに不浄なる者……魔物や不死者(アンデッド)を倒す存在。だから初めは共闘して対処に辺り、人々を助けていた。


 だが次第に2つの存在はすれ違っていく。

 

 天師は敵をただ倒すのではなく、救済を目的にしている。特別な光の力で滅する事で、アンデッドの不浄……魔素を祓い、食われている人の心を浄化して天へ返すという教えを持っていた。


 だから、アンデッド狩りを全て任せるように魔術師に言った。


「初めは条約は遵守された……だが魔術師は1年と立たずその条約を破った」

「なんでだ?自分たちは戦わないで済むならそれもありとは思うが……」

「単純だ。天師は魔術師より数が少なかった。だから守れる場所には限りがあったんだ」


 幾ら特別な光の魔術と言えど、数が少なければアンデッドを倒す速度も、カバー出来る広さもまるで足りなかった。


「だから魔術師は一度締結した条約を破り、独自にアンデッドを倒していった。それに天師たちは怒り、会合で論争の末に正式に条約を破棄した」

「……」


 俺の内心は複雑だ。どちらの言い分も分かるからだ。魔術師は天師に任せたままでは人は死ぬ。だが天師の光の魔術出ないとアンデッドに食われた心は救われない。


 今生きてる人を救うか、亡くなった人の心を救うか。


「結局どちらの主張も相容れぬ事はなかった」

「なんとなく、分かった。けど、だったらトドメだけ天師の光の魔術で刺す事もできたんじゃ……」

「何度かそれもしている。だが、それも天師の数が追いつかなった」

「……そりゃそうか」


 既に凡ゆる手は尽くした。だが衝突は止まらず、ついぞ魔術師と天師は相容れられなかった。


「そんな中、欲深い魔術師たちは考えた。そんなに天師の力が必要ならば、それを魔術師が取り込んでしまえばいいとな」

「なっ!……一体、何があったんだ?」

「種の吸収……言ってしまえば、無理やり魔術師と天師の子を産ませた」

「っ!?」


 俺は今日1番の驚きを見せる。その悪辣な魔術師の所業を信じられなかったから。


「無論、天師は抵抗した。しかし数で勝る魔術師によって多くは殺され、女子供は魔術師によって天師の力を取り込む為の道具にされたんだ……!」


 袴の袖から伸びる拳を強く握り、語気を強めるシュウ。碧眼にも深い怒りが現れる。俺は伝えられた事実にただ困惑していた。


 特権意識があろうとも、魔術師は人を守って来た。なのに、その裏で天師の犠牲があったなんて……。


「それが繰り返され、純粋な天師は数を減らしていき……やがて魔術師は光の魔術に対応する力を手に入れた。そうして魔術は6属性などと(うそぶ)いているんだ」

「だから、魔術師は光を奪ったって言ったのか……」


 初めに伝えられた表現よりもずっとずっと悪辣でおぞましい事実。シュウの怒りようにも納得する。


「だが、結局は……アンデッドに食われた人を救う光の力は魔術師全員には普及しなかった。そして、光が亡くなった人々の心を救う事実も闇に葬った。これでは……犠牲になった者は浮かばれない」


 属性の遺伝に光が加わっただけで、必ず光の魔術師が生まれる訳では無い。光と光の魔術師で子を成す事が1番確率は高いが、それでも半分はどちらも引き継がない事になる。


 だから、全体で見ると魔術師が天師を取り込む以前と数はそこまで変わっていないのだ。


「だから、魔術師は間違えたんだ。そしてあろう事か、自分たちの罪を隠している。故に私が立ち上がり、魔術師を断罪する」


 使命を胸に宣言するシュウ。心臓から生み出した魔力が全身を包み、周囲の空気を震わせる。


 俺は、どうすりゃいいんだ……!?


 シュウの心が分かるからこそ、俺は揺れるのであった。

 

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