第26話 謎の存在
今日も今日とて俺は授業を抜け出し、アンデッド狩りをしていた。コウモリのような羽根になった腕を持つアンデッド。それは空から火の玉を吐き出す。
「空、飛んでんじゃ!ねぇよ!」
それを俺は華麗に躱し、壁や屋根を蹴って高さを稼いで跳躍する。アンデッドの顔は驚きに包まれる。まさかここまで来るなんて……そう言いたげだ。
「落ちろ!」
翼である腕を切り裂く。バランスを崩したアンデッドは地面に叩きつけられた。そして俺は空中で姿勢を整え、大剣の鋒を顔面に突き刺した。
それで決着だ。アンデッドは塵となって消滅した。
「おっしゃ」
地面まで刺さった大剣を抜いて一息つく俺。そこに後方で見守っていたエレナが歩いてくる
「お疲れ様。飛行型相手なのに手馴れたものね」
「おう、もう2ヶ月だからな」
「明日には月の報酬が入るわ。楽しみにしてなさい」
「おう、ありがとう。じゃ、戻るわ」
俺は抜け出した学園へ向かって駆け出していく。この光景も見慣れたものだと思うエレナ。
「さて、あたしも帰ろっと……ああ、お昼だしついでにご飯買って行こっと」
伸びをしながら町に繰り出すエレナ。だが彼女は気づいていなかった。いや、彼女だけでは無い。ジークですらそれには気がつかなかった。
2人のアンデッド狩りを覗き見ていた人物を……。
次の日の朝。居酒屋ハイト屋。
1階では、偶々同じタイミングで起きた為、朝食を共にしている俺とユウカが居た。
「ジークくん、最近サボり過ぎじゃないですか?」
「え?」
ユウカの突然の問いかけに俺は固まる。それは授業中、アンデッド退治の為抜け出す事について……だ。
勿論、何も無い日はあるが、日によって2、3度そういう事があったりと頻度が増している。同じクラスのユウカはそれが気になっていたのだった。
アンデッド狩りの事は言えないしなぁ……。
「まさか、あの女……いえ、エレナって人と会ってたり……?」
「い、いやいや!なんでエレナが出てくるんだよ!」
アンデッド狩りには元魔剣所有者のエレナも同行する。決して間違いでは無いそれをユウカに問われ、俺は目に見えて焦りを見せてしまう。
「ホントに会って無いよ」
なんとか平静を取り繕い、誤魔化す。その心臓はバレないかどうかや、嘘をついて気が引ける事も相まって激しく脈打っている。
「……ジークくんがそう言うなら、信じます……」
「ああ、ありがとう。ユウカ。信じてくれて」
「いえ……」
なんとかバレずにすんだ事で、内心でホッと胸を撫で下ろす。
そのまた1週間後。
昼下がりのアイン町。いつものように教室を飛び出した俺。途中で合流したエレナと共にアンデッドの元へ走る。
その最中、2人は違和感に気がついた。
「なんか空気おかしくね?汚いというより、寧ろ綺麗すぎるっていうか……」
「あたしもそう思ったところよ」
走りながら2人が肺に送る空気。それは非常に清涼で、吸っているだけで活力が湧いてきそうな気さえした。一見して良い事に思えるが、異常には変わりがない。
「なんか人も……全然居ないな?」
「恐らく人払いの結界ね。あたしもあんたが戦ってる間に張ってるの知ってるでしょ?」
エレナはいつもそれとなく結界を張っており、戦闘での二次被害を抑えている。
「それじゃ、魔術師が居るって事か」
「そうかもね。一応そのつもりでいなさい」
「分かった」
言われた通り心構えをしておく。すると、前方に巨大なアンデッドを見つけた。
「あいつだな……」
俺は剣を構え、飛び出す為に屋根をグッと踏み込む。
「待って!」
だがそれはエレナによって止められた。理由はすぐに分かる事となる。それは、目標のアンデッドがその形を綻ばせ、塵と化していったからだ。
「倒したのか……!?誰が……!」
「分からない!探して!」
2人は視線を動かし、現場を細かく観察する。しかし、どこにもそれらしい存在は居なかった。
「アンデッドも、それを倒した奴の気配もない……どうなってんだ?」
「あたしたちより早く駆けつけて倒したとしか……アンデッドを倒せるなら並の魔術師じゃないわね」
2人は立ち止まって思考するが、暫く考えてもそれらしい答えは出てこなかった。そして残った魔力の後からも魔術を使った事しか分からなかった。
一体誰が、何の目的でアンデッドを倒したのか……全てが謎に包まれているのだった。
1週間後。
このような事が立て続けに起こっていた。
「だぁもう!まただ!また先を越された!」
「別に競争してる訳じゃないわよ。でも、担当地区でも無いのにアンデッドを倒して行くなんて……どっかのお人好しか、横取り野郎かしらね?」
俺を宥めるエレナの顔にも流石に不満が溜まっている。無駄足をした挙句、貰える筈の撃破金も無くなるのだから当然であろう。
「なんかあたしもムカついてきた……こうなったら絶対とっちめてやるんだから!」
「おう!」
2人は怒りを燃やし、この事件の犯人を追うのだった。
土曜日。
2人は町の高台へ来ていた。ちょうどこの高台はアイン町の中心部。どこに現れようとだいたい同じ距離でいける。
2人がここを待機場所に選んだ理由は言わずもがな、最近アンデッドを倒す謎の人物を見つける為である。
お金を貰う為、魔剣に習熟する為、そしてなにより人を守る為に、何時でも現場に行けるように準備する。俺たちは本気だった。
そして2時間後……指輪に反応があった。
「行くわよ!」
「ああ!」
俺は指輪から魔剣を腰に携え、黒衣に変身する。そしてユウカを背に乗せ、高台から跳躍するのであった。
「『推進火』!」
そう唱えると、エレナの背中から炎が吹き出し、一気に加速した。
グッ!すげぇ勢いだ……!けど早い!このまま先に現場へ行く!
高速で移動する2人。しかしエレナの術の限界が来る。
「先に行きなさい!」
「分かった!」
エレナに背中を押された俺。その勢いがある内に屋根を蹴って大きく飛び出し、この先に居るアンデッドの元へ駆ける。
「よし!」
他に誰も居ない!
出し抜いた。そう思い俺は刃を構え、先ずはアンデッドへ迫る。だが同時に、嫌な気配を感じた。ゾクリと背中を撫でる悪寒。俺はそれを知っている。
死の予感だ。
「くっ!」
俺は身を捩り、その場を飛び退く。するとそこを橙色に輝く光の矢が通り過ぎた。そしてそれはアンデッドの顔面に命中。それで倒されたのか、風に吹かれる塵と化した。
「誰だ!」
着地した俺は、すかさず光が放たれた方を睨む。そこには金髪碧眼の同い年ぐらいの少年がいた。しかし纏う衣は大きく異なり、上下で白黒のゆったりとした衣だ。
ここいらでは珍しい、東方の着物……その中の袴という衣服だ。
「あんた何もんだ?アンデッドを倒せるからかなりやる魔術師みたいだが……」
「魔術師……だと?」
すると、金髪の少年の雰囲気が変わる。目を鋭く細め、俺を睨む。
「ああ、違うのか?」
「分からぬなら……教えてやろう!」
そう言って魔力を生み出し、橙色の輝きをした光の矢を生み出した。
「私はシュウ・ラ・ルース。魔術師を滅ぼす天師だ」
そう言って瞬くような輝き発し、矢は放たれるのであった。
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