第19話 次の階層へ
ゴブリン達がどす黒い緑の光……魔素の輝きを発しながら消滅するのを確認し、俺たち4人はまた道を進む。
「しっかし、ゴブリンも魔術を使うのか……強化されるのも厄介だな」
「そうね。ま、あんな下級の魔術じゃあたしが使う下級魔術にも届かないわ」
俺の言葉に自信満々に返すエレナ。同じ魔術でも使用者の魔術の練度によってまるで出力が変わる。故に、エリート魔術師たるエレナと魔術が使えるようになっただけのゴブリンでは話にもならないのだ。
「それにしても……ほんとにダンジョン初めてか?ってくらいいい動きするなジーク」
「そ、そうか?」
少し照れる俺にアーサーは力強く頷く。
「ああ。通路じゃ剣を振るだけでも細心の注意を払わないといけないからな」
アーサーの言う通り、狭い洞窟などでは剣を振り回すのは悪手である。味方を切ってしまったり、壁や天井に剣をぶつけて怯んでしまったりするからだ。
そのミス1つでパーティを全滅に導いてしまう事もある。
「魔剣を解放せず素の剣を使ってましたね。最小限の動きで切ったり突きを使ったのもお見事です」
「あ、ありがとうございます」
アーサーとリアに立て続けに褒められて俺は礼を述べるのだった。
「魔剣の切れ味なら壁に引っかかるなんて無いけど、考え無しに使ったら通路の方が崩れかねない。魔剣を解放して大剣にするのも、狭い通路では危ないし余計な力を使うからね。褒めてあげるわ」
一応、師匠であるエレナも尊大な態度を崩さず俺を褒め称える。
「おう、エレナも凄かった……ってかちょっと怖かった。こう、グシャッてさ……」
「怖かったってなによ!?相手が弱すぎたからああなったの!」
エレナの言う通りであったが、ゴブリンとはいえ鎖で果汁絞りにした絵面は中々にバイオレンスであったのも確かである。
憤慨するエレナに3人は笑顔を見せる。それでまた拗ねてしまうのだが、その様子もどこか可愛らしいのであった。
そうして4人は地図を頼りに通路を進み、階段を降りて次の階層に入る。ゴブリンはもちろん、鉱石系の魔物とも出会った。
白い水晶を身に纏ったクリスタルワーム。宝石の原石を取り込んだ巨大なルビーバットやサファイアスライム等々。
煌びやかだが魔物に違いは無く、どれも凶暴。俺達を見つけては襲いかかって来た。
しかし、最初の通路よりも広がった空間に出た事で存分に剣が振るえる俺達。
「はあっ!」
俺の魔剣は存分にその力を発揮し、クリスタルワームの硬い鎧をバッサリと切り裂いてしまう。
「流石魔剣……!でも俺も負けて無いッスよ!」
剣に強化魔術を付与するアーサー。青白く輝く刃は、赤い軌跡を描いて飛んでくるルビーバットを次々に切り落としていく。
その側面からサファイアスライムが飛びかかる。それをアーサーは盾で弾き飛ばす。鉱石で固くなっているので、甲高い音を立ててスライムは地面に落ちる。
そこに俺の魔剣が振り下ろされ、核を真っ二つにされてその形を物言わぬ液体に変える。
「ナイスジーク!」
「そっちもナイスパリィ!」
互いを褒める俺とアーサー。初めてパーティを組んだとは思えない程、何度も息のあった連携を見せていく。
しかし、奥からどんどん魔物が湧いてくる。
「めんどくさいわね。2人とも!合図したら射線から離れなさい!」
「ドデカイのやっちゃいます!」
そう言ってエレナは地、リアは風の魔術を生み出し、2つを重ね合わせた。
「任せたわ。リア」
「行きます。『粉砕旋風』」
放たれた旋風はクリスタルワームやサファイアスライム等問わずに巻き込み、彼らに岩石を激しくぶつけて粉々にしてしまう。
相性の有利不利の関係にある元素の魔術。その波長を合わせる事で強力な魔術を繰り出せる合成術。今回はエレナの地の魔術がリアの風の魔術を強化した。
それにより、魔物の群れは一斉に薙ぎ払われたのだった。辺りには魔物が取り込んでいた鉱石が落ちる。中には当然、値の張る宝石が含まれている。
「魔物と一緒だったからって消える訳じゃないんだな」
「そうね。言ってしまえば防具とか武器とかの外付け装備みたいなものよ」
「だから倒しちゃえばこうして分離するんスよね〜」
「よく冒険者が言う、落ちるするっていうのはここから来てるんです」
本家本元の冒険者から蘊蓄を教えて貰い俺は関心する。
「持って返ってもいいわよ?」
「マジで!?」
「重荷にならない程度にね」
「分かった。じゃあそうする」
俺は辺りに散らばった水晶や宝石の欠片を少量ずつ拾い上げていく。
「あたしも拾おっと。魔術に使えるし」
「宝石は念を込めやすいですからね」
「俺は装飾にするのがいい!気分に寄って付け替えられるし、飽きたら高値で売れるしな!」
他3人も各々の理由で鉱石を拾っていくのだった。
そして一通り集め終わり、暫く休憩した4人。
「よし、次に行くわよ」
エレナの言葉に3人は頷き、また先へ進む。一行は同じように進み、戦い、時折休憩を挟む。それを繰り返して地図の最終ページの第25層まで辿り着いた。
「ここからは地図に無い階層ですね。用心して行きましょう」
「リアがマッピングをするので、少しゆっくり進んでくれると助かります」
「ああ。エレナ、傍で警戒頼む」
「分かってるわよ。行きましょう」
4人は少し歩くペースを落として慎重に進む。
詳細な地図が無い場合、より注意深く周囲を警戒する必要がある。ダンジョンのような広大で入り組んだ場所では、行き止まりや罠が待ち受ける道も多い。
帰り道で迷わない為にも地図を書く必要がある。よって、行軍は最初よりも遅くならざるを得なかった。
「速さを求めるより、ゆっくりでも確実に行く。それが生き残る為に必要な事ッス」
「急いては事を仕損じるとも言いますしね」
「なるほど……勉強になる」
アーサーとリアからダンジョン攻略において重要な心構えを伝えられた。
絶対帰還者と呼ばれる2人が言うんだ。間違いないな。
2人はこれまで何度も致命傷を受けず、無事に帰ってきた確かな実績がある。俺はその言葉に納得し、胸に深く刻むのだった。
ダンジョンに入ってから数えて5時間。4人は第30層まで深く潜った。
そして、遂に迷宮の主が鎮座するボスの間へと辿り着くのであった。
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