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第13話 村の異変

 俺……ジーク・ヴァールハイトは、今日も今日とて平和な通学路を1人で歩み、このアイン第1学園に登校していた。


 慣れた道を生き、1年1組の教室に入る。すると、一斉に視線が向く。


 俺はそれを無視して自分の席へと向かうのだった。その間、生徒の囁き声が聞こえてくる。


「なあ、最近思うんだけどさ?ジーク雰囲気変わった?」

「確かに……前まではなんか見た目怖かったような……?」

「怖いって言うか陰険?でも今はなんかこう、爽やかになった気がする……」

「ちょっとカッコいい……かも」

「サーシャ!?あんた本気で言ってる!?あいつマナ無しよ!?確かに顔はいいけどさぁ……」

「でも魔力低いとロクな職に就けないしなぁ〜」

「で、でも……こっちが養えばいいんじゃない……」

「えぇ!?そこまで言う!?」


 今までは男女問わず、魔力が無いと言う理由で蔑まれて来た。なんなら魔術の的にして暴力を振るわれたりもした。


 だがそれもめっきりと無くなり、今ではさっきのような好意的にも見られたりする。


 それが……なんかちょっとムズ痒い……!


 いや、俺の事マナ無しとか関係なくフラットに見てくれるのは嬉しいよ?全然嬉しい。それは本音だ。


 けど……急にそうなられても……手のひら返したみたいでモヤモヤするって言うか……釈然としないのも確かだ。


 その事を学校終わりにエレナに相談もしてみた。


「エレナ、最近クラスみんなの様子が変で……好意的すぎるっていうか」

「なにそれ自慢?」

「違ぇよ!」


 茶化されて憤慨してしまうが、エレナはその反応を見越していたように笑う。

 

「アハハッ!冗談よ?ていうか、認識阻害で忘れるとはいえ、命助けてるんだからそりゃ意識も多少なり変わるでしょ」

「そんなもんか……?」

「そうよ。前も授業中に学校に現れたアンデッドを倒したんでしょ?」

「まあ……そうだけどさ」


 その時は、まさか魔物避けの結界もある学校の敷地内に現れるとは思わなかった。いや、魔物より強力なアンデッドなら魔物用の結界ぐらい破れても不思議じゃないけど……。


 そんなこんなで俺は窓から飛び出し、魔剣を解放して変身。校舎をゆうに超える巨体のアンデッドと戦い、これを撃破した。


 図体の大きさと攻撃範囲の広さ、そんで学校って言う守らなきゃいけない人が多い中だったから結構苦戦した。


 けど死に物狂いで頑張った結果、幸いにも怪我人は居なかった。その後もちゃんとみんな誰が助けたのかは分からなくなってたし、通報を受けてやってきた魔術師の人達にもなんとかバレずに済んだのだった。


 俺はちゃんと人も秘密も守れて安心した。けどその日から……みんなの意識がかなり変わったんだ。


「まあ複雑なのも分かるわ。けど、それはあんたが認められてるって証拠よ。あたしとしても、魔術師代理としての仕事を果たしてるから満足。誇っていい事よ。ジーク?」

「エレナがそう言うなら……そう思っとくよ」


 まだムズ痒くもあったが、エレナの言うように……俺を認めてくれてるって考える事にしたのだった。



 その数日後。


 俺とエレナは第1地区の南部にあるシャナ村に訪れていた。雄大な自然の中にあるその村は、普段は農業や林業が盛んに行われており、エデン国を支える縁下の力持ちであった。


 2人がここに来たのはもちろん、アンデッド絡みの事である。


 数日前の居酒屋ハイト屋。


「週末ちょっと村に行くわよ」

 

 ワインビーフステーキを頬張りながらエレナは仕事終わりの俺に告げる。

 

 どうやら、商いに来た村の人に生気が無い事が異常の発見になったんだとか。


「1人や2人じゃない。その村の住人が何人も無気力だったりしてるの。これは明らかな異常よ」

「だからエレナが調査にって感じ?」

「ええ。アンデッド絡みなら当然魔剣の力が必要だもの。代わりにまたローザさんが来るから、安心して予定空けときなさい」

「はいよ」


 そんなこんなで村を訪れた俺たち。


「さて、一体何があったのやら」

「一応少しなら分かってるわ。あたしらが来る前に調査員が派遣されたからね」


 俺は獣道を歩きながらエレナの話を聞く。調査の結果によると、何やら村で変な信仰が流行っているらしい。


「蛇神様に供物を与える事で豊作になったりするらしいわ」

「蛇神様か……ホントにそういうのあるのか?」

「無いとは言いきれないわ。ゾロア教以外にも宗教はあるし、修道女が奇跡を賜ったって話もあるしね」

「なるほどね」


 俺は納得して頷く。魔術という力があり、魔物だっているのだからあっても不思議では無い。


「でも問題なのはその供物ね」

「まさか……人とか?」

「ええ。むしろ信仰と生贄は古来からメジャーよ。ゾロア教には無いからピンと来ないとは思うけど」

「そうなのか」


 俺にはあまり馴染みが無い。しかしそれが本当なら、蛇神信仰でも行っている可能性は高い。


「そして、調査員は2度目の調査で行方不明になった」

「えっ!?」


 エレナの言葉で俺は目を見開く。思わず進む足も止まってしまった。


「じゃあ、蛇神様に捧げられたかもしれないのか……」

「限りなく黒ね。調査員だって魔術の心得がある。でも村人複数人相手や不意打ちされたらひとたまりもないわ」

「村人がそんなひでぇ事を……信じたくねぇな」


 外部から来た人とはいえ、同じ人間を襲って供物に差し出すなんて事は考えたくなかった。だが可能性がある以上調査せねばならないのは確か……それはジークも分かっている。


「見えたわ」

「あれがシャナ村……」


 そうこうしている内に村が見えた。雄大な自然に囲まれた、ごくごく普通の田舎の雰囲気がある。しかし中ではおぞましい信仰がとぐろをまいている……かもしれなかった。



 村に入った2人は道なりに進む。


「取り敢えず村人に話を聞きましょう」

「そうしよう。何があるかわかんねぇし、警戒しながらな」

「言われなくても分かってるわ」


 そうして俺たち2人は警戒心を胸に村人へ聞き取り調査をする。


 最初に見かけたのは中年の男性。農作業の精を出していた所に声をかけた。

 

「すいません」

「はい。外から来た方のようですね。どうしました?」

「はい、ちょっと自然の調査に来ていて……最近なにか変わった事は無いですか?」

「うーん、自分としては特に変わった事は無いですね。自然の事なら、林業やってる奴に聞いてみてはどうですか?」


 農家の男性に林業をしているこれまた中年の男性を紹介された。同じように話を聞くが、特に変わった事は無さそうだ。


 それから村中を歩いて声をかけたが、やはりの答えは同じであった。そして夕方になった頃、最後に村長を紹介された。そこまでの道中、俺たちは現状を確認する。


「収穫無しか……」

「そうね。でもみんなどこか異様に疲れてそうだったわ」

「だな。顔色も悪いし動きも辛そうだ。アンデッドの術か何かか?」

「その副作用も考えられるわ。魔術は慣れてないと自分にも負担がかかる。それがアンデッドのものなら余計ね」

「だったら早く原因を突き止めねぇとな」


 そうしていると村長の家に着いた。村人のものより1段階立派な屋敷だ。


 門番に声をかけ、魔術師の紋章が入った板を見せるエレナ。するとすんなりと通してくれた。


「あれ何?」

「魔術師の身分証よ。あれを見せたらだいたいどこでも通れるわ」

「なるほど……すげぇな」


 魔術師は言わずもがな特権階級。身分証を見せるだけで色々と顔が効くのだ。


 屋敷に入るとメイドに案内される。その後をついて行くと、応接間に村長がいた。


「これはこれは魔術師様……お初にお目にかかります。シャナ村長のガイ・シャナと申します」


 ガイと名乗った村長へ俺とエレナも挨拶を返す。


「それで、今回はどう言ったご用件で?」

「最近村で流行ってる信仰について聞かせてもらえるかしら?」

「ほほう!蛇神信仰ですな!」


 ゴマをすっていた顔を明るくするガイ村長。どうやら信仰があるのは本当だったようだ。


 やっぱ直球で聞いた方が早かったかもな。


 念の為村人には目的を濁して調査したが、こうもすんなり認められては余計な時間を取ってしまったと考える。


「蛇神信仰というのは、最近現れた白い蛇を祀った信仰でございます」

「白い蛇?」

「はい。物珍しい為、村の者が神の使いと言い出しまして……その蛇に供物となるものを与えると、なんと次の日にはすこぶる力が沸いたのです」


 白蛇を祀って供物を与えると力が手に入ったらしい。


「確かに、最近この村の仕事っぷりは目を見張ると資料で見ました」

「ええ。それも全て蛇神様のお陰です。村の外れに簡素ですが神殿がございます。魔術師様方も参ってはどうでしょう?」

「そうね。じゃあこれからそうさせて貰おうかしら」


 俺とエレナは掴んだ手がかりを元に、その神殿へと向かうのだった。


 日が傾いて辺りはスッカリと暗くなる。特に神殿がある場所へ行くには光源の無い森を通る必要がある。


「暗いわね。明かりを付けるわ」


 そう言ってエレナは光の魔術を使う。優しく周囲を照らす浮遊する光源だ。

 

「サンキュ」

「まあ戦闘になったら消すわよ。魔術師は身体強化魔術で夜目も強化できる。あんたも魔剣を使ったらそうなるわ」


 魔剣は使用者に高純度の魔力を纏う。その純度の高さによって、魔力であろうとも並の身体強化魔術を超える効果を発揮する。


 そして俺たちは歩いて行く。すると……。


「ぐっ!」

「きゃっ!」


 背後から何者かに殴られ、地面へと倒れた。そして光源の魔術も消える。


「へへへ。ただの村人の俺らでもやりゃあできんじゃねぇか」

「魔術師のこいつらがショボかったんだろ。よし、縛るぞ」


 俺たちは村人の男性達に拘束され、何処かに運ばれるのであった。

 

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