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第12話 査察を乗り切れ

 俺とエレナ、そしてローザはエレナ宅の地下工房に来ていた。


 そして黒板の前に立つエレナ。その前の席に俺とローザが座る様子はまるで教師と生徒のようだ。


 こうなったのはローザがエレナの仕事っぷりを見たいと言い出したから。そして俺はエレナの弟子と言う事になったので、どのように師事しているのかを見せる事にしたのだ。

  

「さて、それじゃあ今日も授業を初めて行くわ。今日は基礎魔術についてよ」

「エレナちゃーん?魔剣の事じゃなくて基礎の魔術なの?」

「はい、こいつは今まで魔術は愚か、魔力が使えなかった。それは魔剣を使えるようになった今でも変わりません。ですが不死者(アンデッド)にも魔術を使う個体も居るので知っていて損は無いですから」

 

 ローザの疑問にサッと答えるエレナ。実際俺は魔術に関しては授業で習う基礎……それも知識しか経験が無い。なので改めて教えておく必要があり、嘘は言っていない。


「なるほど。止めてごめんなさい。続けて?」

「はい。魔術師が心臓から生み出した魔力。それに思念や言霊により術式を与えて形にしたものが魔術。ここまでは分かるわね?」

「ああ、知ってる」


 流石に基礎中の基礎すぎであるのでジークも知っていた。それを確認してエレナは次の説明をする。 

 

「じゃあ次、この世には6つの元素があるわ。地、水、火、風、そして光と闇の6つ」


 そう言って地水火風を時計回りになるように描き、その横に光と闇を並べた図を書く。 


「さて、どれぐらい知ってるか言ってみなさい」

「元素は世界を構成する最小単位。人が持つ魔力も1人につき1つ、6つの内のどれかに対応した属性を持ってる。対応した元素の術は少ない魔力で扱えて、逆にそうじゃない元素は沢山魔力を使わないと扱えない……だろ?」


 火の魔術には火の元素を、水の魔術には水の元素に対応した魔力が最も効率良く術を具現化できるという事だ。 


「そうよ。そして6つの属性は相性があるわ」


 図に矢印を書いていくエレナ。


 地→水→火→風→と来て円に配置されたそれはグルっと1周する。


「同じ出力の術同士をぶつけた場合、矢印が向いた相手には有利、逆は不利になるわ」


 つまり地は水に有利であり、水は火に有利、火は風に有利で風は地に有利ということ。


「因みに光と闇は互いに反発する性質があるわ。地水火風と分けたのは、この2つはお互いにだけしか反応しないからよ」


 俺はそれに深く頷く。


「そして戦闘でもこの相性が重要になるって事だな」

「そうよ。魔剣だって解放段階が進むと属性が付与されることがあるしね。それともう1つ。合成術という、2つ以上の属性の術を組み合わせる魔術にも関わってくるわ」

 

 有利不利の関係の属性2つ。それを上手く波長を合わせると有利属性を強くする事ができる。それを合成術という。


「地と水をかけ合わせると、水が地の術を強化するわ。ただぶつけると地の術が水の術を壊すだけになってしまうけどね」

「だから波長を合わせるのが大事なんだな」

「ええ。1人につき得意な属性は1つだから、他の魔術師との連携で特に意識しなければいけないわね」


 戦闘中に他人と波長を合わすのはかなりの高等技術である。使い手がいるとすれば手練であろう事は俺でも分かった。


「まあでも、極偶に2つ属性を持ってるやつも居るわ。二重属性っていうの」


 二重属性持ち。本来1つのはずの対応元素を2つ持っている者。ダブルホルダーとも称させる。


 これは俺も授業でも習わなかった事であり、興味深けに反応を示している。


「へぇ〜。じゃあ、火と風とか属性同士の相性がいいのも居るのか?」

「ええ、勿論よ。そういうのを二重持ちの中でも優生二重属性使いと言うわ。逆に、地と火とか相性の関係にない組み合わせは劣勢二重属性使いで価値は下がるわ」

「そうなのか。2つ持ってるだけ凄いと思うけどな」


 俺の言葉に隣のローザもうんうんと頷いている。


「ま、あたしは全部に適性があるんだけどね!」

「マジで!?嘘だろ!?」


 エレナのカミングアウトに俺は驚きのあまり声を荒らげる。そのリアクションを待ってたかのようにエレナは笑う。


「嘘じゃないわ!見なさい!」


 そうして手をかざしたエレナ。その手から地水火風光闇の球体が現れ、グルグルと回り出す。彼女の言う通り、全ての属性を操っている。


「ホントだ……エレナって凄かったんだな」

「最初から凄いに決まってるでしょ!?」


 俺の言葉に憤慨するエレナ。それを見てローザは愉快そうに笑う。


「エレナちゃんは六重属性使い(オールラウンダー)と呼ばれていたぐらいだものね」

「ええ、そうです。ジーク、あたしの凄さが分かったかしら?」

「ああ、ローザさんが言うなら間違いない」

「なんか微妙に分かってなさそうだけど……まあいいわ!続きよ!」

 

 ご機嫌な様子で講義を続けるエレナであった。

 

 暫くすると、俺の懐の指輪が光った。


「アンデッドね。行くわよ」

「おう!」


 講義を中断し、3人は地下工房から階段を上がって外に出る。


「来い、『エクスカリバー』」


 装着した指輪が輝き、俺は姿を黒衣に変える。


「わあっ!ホントに魔剣が使えるのね!」


 ローザはそれに藍色の瞳を輝かせ、興味深げに観察する。


「ふむふむ、装衣型なのね」

「装衣……?」

「うん。武器だけじゃなくて衣服まで変化するタイプの事よ。珍しいタイプなんだけど、エレナちゃんは教えてくれなかった?」 

「あれこれ言うとパンクするからまだ言ってなかっただけです。それより早く行きましょう」


 手短に説明を済ませ、何処かに現れたアンデッドへ向かって3人は駆け出していくのだった。


「見つけた!」


 俺の視線の先には、巨人のような体躯のアンデッドが佇んでいた。


「周囲に人影はないわね。行きなさい」

「言われなくても!」


 俺は屋根を蹴り、空気を切り裂いて一直線に向かっていく。アンデッドはそれに気がついた。そしてその大口を開けて魔力を集める。


「っ!術か!」


 ジークは足を止める。すると読み通り、魔力は大岩となって放たれた。それを身を屈めて躱す。避けた事で大岩は地面へと激突し、舗装された石畳を剥がしてしまった。


「いい判断ね。さて、あの術には何の術をぶつければ有利かしら?」

「岩……地だから風だろ?」

「正解。見てなさい」


 俺の隣へと降り立ったエレナに向かって、アンデッドはまた大岩を撃ち出す。エレナは回避の素振りすらしない。ただ手をかざすだけ。


「『風弾(ウインドバレット)』」


 彼女の掌に集まった魔力は掌大の風の弾丸となり、勢いよく放たれた。そして大岩とぶつかり、それを砕いてしまった。


「ガアッ!」


 風の弾丸はそのままアンデッドの肩に直撃し、着弾部分の肉を抉った。


「小さいのに大岩を貫通した……やっぱ相性は重要だな」

「ええ。それじゃ、もう倒していいわよ」

「あいよ!」


 相性の講義を実践すれば後は俺の仕事だ。俊敏な動きで瞬く間に接近し、大剣でその首を断つ。アンデッドの胴体は力無く倒れ地面を揺らす。首も落ちて数十m転がった後、胴体諸共塵となって消えるのであった。


「速〜い!」


 ローザは俺の一連の動きに驚嘆の声を漏らすのであった。


 すると、その背後に別のアンデッドが迫っていた。


「危ない!」


 そう叫び、ローザの元へ戻ろうとする。だがそれには及ばなかった。


「輝いて?『クラウ・ソラス』」


 懐から取り出した剣が短剣となり、白く光り輝く。そして投擲されたそれは、アンデッドの頭を一息に撃ち抜いたのだった。


「こんなところね」


 そう締めくくり、塵となるアンデッドを眺めるローザ。クラウ・ソラスは空を駆けるように1人でに動き、主の元へ戻ってくる。そして元の剣のサイズまで変化し、鞘に収められるのだった。


「あれがローザさんの魔剣……!」


 俺が目にする魔剣は2つ目。その強力な力に感嘆するのであった。


 魔剣の力はまだまだこんなもんじゃないって事か……頑張んねぇとな。


 熟練者との違いを理解し、己を叱咤するのだった。


 そうして3人はエレナ宅に戻ってくる。そして時間は午後2時。ローザの出立の時間が迫っていた。


「どうでしたかローザさん!あたしの仕事っぷりは!」

「うん、バッチシ!1人で1地区の担当って聞いてたから心配してたの。でもちゃんと講義もしてるし、ジークくんも魔剣の扱いしっかりしてて安心したよ」

「そうでしょう!ま、あたしからしたら当然ですけど!」


 褒められて嬉しそうに胸を逸らすエレナ。その仕草も昔と同じで安心し、ローザは柔らかく微笑む。

 

「それにしても、エレナちゃんが弟子を取るなんて意外だったわ」

「そうなんですか?」


 ふと呟いたローザの言葉に俺は問いかける。

 

「うん。エレナちゃんって、魔術学院の頃から気難しい子でね?自分から他人と関わろうとしなかったの」


 当時を思い返すローザ。エレナはライア家という魔術師の名家に生まれた事や、学院に首席で合格した事で注目を集めていた。


 当然、そんなエレナとお近づきになりたい生徒は男女問わず初日から居たらしい。しかし、そんな彼らに言い放ったのは「邪魔。遊びに来てんじゃないわよ」だった。


 そうして他人を寄せ付けず、自分からも歩み寄らない。畏怖を込めて付けられた異名は『金色の氷晶』。その態度は卒業まで変わらなかった。


 先輩に対してもそれらは変わらず、唯一尊敬しているローザぐらいしか素の彼女を知る者は居なかったらしい。


「へぇ〜。『金色の氷晶』ね。ハリネズミの方がそれっぽいと思いますけど」

「な、なによハリネズミって!どこが針塗れなのよ!」


 俺の何気ない言葉にエレナは憤慨する。そのツンツンした態度を見てそういう所だぞと思う俺とローザ。


「フフッ♪まあ、だからエレナちゃんが弟子を取るなんて思ってもみなかったの。でも、今日見守ってなんとなく分かったわ」

「ど、どういう事ですか?」

「エレナちゃんは思ったより、ジークくんの事が気に入ってるって事♪」

「えっ!?」

「は、はぁ〜〜〜っ!?」


 ウインクしてそう言うローザに驚き目を見開く。そしてエレナの口からは不満の声が出る。


「ど、どこが!?私の魔剣が無いとなんもできないコイツのどこが気に入ってるって言うんですかローザさん!」

「言い過ぎじゃね!?ひでぇ!」


 指差してド直球の暴言に流石に傷つく。

 

「どこがと言われても……。うーん。大事な魔剣を預けたり、魔術について教えてたり……なにより、そうして仲良く話してる事自体かな?」

「仲良くありません!それにどうしてもって言うから教えてるだけです!」

「分かったわ。じゃあそういう事にしておいてあげる♪」

「ちょっと!絶対分かってな〜い!」


 土曜日の昼下がり。晴天にエレナの抗議の声が木霊する。色々あったものの、なんとか秘密を守り通した俺ととエレナなのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

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