第9章 スイスと自衛隊と平和主義
第9章 スイスと自衛隊と平和主義
「なるほど。まとめると、つまりは、自衛隊も軍隊の形の一部なんだけれど、その目的が世界では常識的な軍隊とは異なり、国際紛争は対象外、完全に防衛に特化したことで『自衛隊』って特別な名前が与えられたのですね。」
「自衛隊とは名乗っていないんだけど、世界には自衛隊と目的がほぼ一緒の軍隊もある。スイス軍がそうだ。」
「スイスですか?スイスにも軍隊があるんですか!?」
「アルプスの山々が有名な美しい国だよなぁ。行ってみたいよな。」
「私には海外旅行なんて夢の夢ですから。」
「いや、由美子ならきっと大人になったら色々な国に行けると思うよ。で?」
「スイスって確か『永世中立国』ですよね。スイスは平和を愛し、戦争をしない国なんですよね。」
「違うな。平和をとても大切にしているが、戦争をしない国ではない。」
「?・・・よく分からないです。」
「中立ということと、戦争をしないというのは、全く別の問題だ。」
「どういうことですか?戦争をしないから平和なんじゃないですか?」
「スイスはヨーロッパの真ん中辺にある国で、フランスやドイツ、イタリアなんかに周りを囲まれている国なんだ。周りを海で囲まれている日本とは真逆の国で海はない。周りの国と歩いて行きき出来る国なんだ。戦車も戦闘機も海を超えて簡単には来られない日本とは違い、ひょいとこれらが攻めて来ることのできる国なんだ。」
「それが、どう関係あるんですか?」
「実際に昔、スイスはオーストリア帝国など他国に支配されていたんだ。で、日本ではその感じがとっても分かりにくいんだけども、国境を他の国に接している国は、周りの国からいつ攻め込まれるか、つまり、侵略されるか冷や冷やものなんだ。」
「なんとなく分かります。お堀に囲まれているはずのお城が真っ平の土地にあったら、とても攻めやすいですよね。日本は海という天然のお堀があるのですね。」
「そんなところだ。隣の国から戦車が突然やって来るって日本人にはちょっとイメージ出来ないんだけど、他の国ではごく普通に考えられることなんだ。」
「だからスイスは攻め込まれた時だけ、戦うんですね?なんかそれって、日本と同じですね。それは、何となく分かるような気がするんですが、やっぱり中立なのに戦うって、ピンとこない。誰とも仲良くして、誰とも戦わないんですよね。」
「逆だな。誰とでも戦うということだ。自分たちの国を不合理に踏み躙ろうとする国とは、徹底的に戦うということだ。」
「う?ん?」
「先の世界大戦でもスイス軍は戦っているんだよ。」
「え?」
「本を読むうちにこれくらいは知識を得たと思うけど、第2次世界大戦では連合国側と枢軸国側に別れて戦ったのは知っているね。」
「アメリカやイギリスを中心とする国々とドイツやイタリアを中心とする国々に分かれて世界中を巻き込んで戦ったんですよね。」
「そう、この戦争中、どっち側の飛行機かに関わらず、スイスの国の領空を侵犯した飛行機を自国の戦闘機で撃墜したり、侵入した兵士を捕虜にしたりしてるんだ。」
「うそっ!本当ですか?それってめちゃめちゃ相手をやっつけてるってことじゃないですか!」
「そだね。」
「先生、いちごとか食べる真似とか、やめてください。」
担任の村上はちょっと自慢話がエスカレートし、由美子の熱がかなり上がっているにも関わらずちょっとふざけてしまったことを後悔した。
「『武装中立』っていうんだけど、自分の国は誰にも頼らず、自分で守るということだ。だから、自衛のための軍隊はあるし、国民皆兵制度・・・つまり、普通の市民でも戦争が起きたら、兵隊として戦争に参加するという備えをしているんだ。」
「なんか、イメージがだんだん違ってきて混乱しています。」
「そうだろうな。なんせ国連加盟国が160カ国もあるなかで、今まで戦争をしていない国は片手におさまるくらいだって言われているいらいだから、日本の国際関係のイメージはかなり特殊で、混乱してくるのは、普通だと思うよ。」
「そうなんですか?」
「スイスには兵士を職業としている人もいれば、普段は別の職業をしていて、時々義務となっている訓練を受けていつでも戦闘に参加できるようにしている人たちもいる。また、核シェルターなんか普及率100%だとも言われている。日本の防災倉庫と同じように町内ごとの倉庫には自動小銃などの武器がストックされているし、スイスっていつでも戦争ができるようにハリネズミや亀の甲羅のような用意をしている国家なんだ。とっても平和な国なんだけど危機感は日本と全然違うだろう。」
「ちょっとにわかには信じられないような話です。」
「まあ、最近はだいぶ緩んできたらしいけど。」
「そうなると、最初スイスを目指していた(?)日本は、どう、とらえたらいいんですか。」
「おそらく、どんどん変わってきたんだと思う。」
「戦後、日本が最初にイメージした行きつく先はきっと『非武装中立』だったんだと思う。でも直ぐにお隣で朝鮮戦争が起こり、アメリカがそれをあきらめたんだろう。で、日本に『警察予備隊』を創設し、」
「『警察予備隊』?」
「ああ、警察って悪いことをした人を取り締まるだろう?でも、基本的に国内の犯罪を取り締まることが目的で、外国から武器を持ち込んで組織的に国民の生命や財産に危害を及ぼそうとしている者に関しては弱すぎる。だから、外国勢力に対抗できる装備をもった組織を作ったんだ。」
「軍隊もどきですね。言い訳っぽさ、ムンムンです。それが自衛隊となるんですね。」
「まあ、そうなんだが。その前に保安庁が発足し、保安隊と名称変更してから自衛隊となっていったんだ。」
「もう戦争はあまりないって考えていたけど、あっというまに近くで戦争が起こった。それで、あわてて軍隊をつくったというところですか?」
「自衛隊は軍隊じゃないぞ。軍の機能の一部、自衛だけを切り取った軍隊だから、軍隊じゃない。」
「え?やっぱり軍隊って言っているじゃないですか。」
「世界で一般的な軍隊じゃないから、差別化して自衛隊って言っている。」
「先生、けっこう苦しいですね。スイスだって同じなのに自衛隊って言ってないじゃないですか。」
「それはスイスが伝統的に選んだんだから、それでいい。」
「ううん#$%&!・・・で、『武装』は分かりましたけど、日本の『中立』の部分はどうなったんですか?」
「厳密に言うと最初から中立ではなかったんだけど。」
「!?」
「日本が戦争に負けて連合軍に占領されていたんだけど、戦争を起こした人たちや戦争に協力した人たちが裁判で裁かれ、憲法を中心とした新しい体制ができて、再び日本が独立国として歩み始めのが、サンフランシスコ平和条約なんだけど、その時一緒に日米安全保障条約というのも交わされたたんだ。」
「それ、耳にしたことがあります。安保ってやつですね。」
「ああ、でもきっと由美子が知っているのは改正された方のことを言っているんだと思う。」
「??」
「由美子のは大学がヘルメットをかぶった学生たちに占拠され、警察と揉めているやつだろ。」
「ええ、違うんですか?」
「厳密にはね。連合軍、まあアメリカなんだけど、当時の日本は軍隊を持たせるとまた侵略のような悪いことをするかもしれないから、独自の軍隊は持たせないようしようとしたんだ。『非武装』だね。でも、その代わりにアメリカが日本に何かあったら守ってやるという約束をしたんだ。だから、独立国として認められても依然として日本国内に基地が残ったんだ。普通は全部引き上げるんだけどね。ちなみに重要な位置にある沖縄はしばらく返してもらえなかったんだ。(平和条約が未だに結ばれていないロシア(旧ソ連)は北方領土を返してくれないどころが自分の国にしてしまっているけどね。)」
「なるほど。でも、朝鮮戦争で理想がひっくりかえったんですね。」
「理想というよりは、世界情勢の変化だろうな。アメリカは資本主義かつ自由主義の国づくりをしようとしていたんだけど、ソビエト連邦共和国や中華人民共和国のような共産主義や社会主義の国づくりを目指す国が出てきて、その対立が世界に生まれてしまったんだ。」
「何とか主義とか難しすぎてよく分からないけど、朝鮮戦争もそうだったんですね。」
「そう、当事者の韓国と北朝鮮は今でも戦争状態なんだ。ただ停戦といって途中でやめているだけ。ロシアとも平和条約が結ばれていない以上、日本も同じ状態なんだけどね。」
「ふ?ん。知りませんでした。」
「新安保は日本を再び戦争に巻き込むものとして、多くの人々から反対されたんだ。というのも、親子のように無償の愛で守ってあげるというものが、お互いが対等で相互に防衛し合う本格的な軍事同盟になろうとしていたし、そのため基地も、アメリカが戦争遂行のために日本も含めて充実させようと変わろうとしたからだったんだ。しかも、さっきの対立も深まり、現実的に日本も戦争に巻き込まれるおそれが出て来んだよ。」
「巻き込まれる?」
「そう、共産主義は新しい考え方で、どんどん広がってきたんだ。自由主義の国ぐにから見るとどんどん世界がむしばまれていくように見えたんだろうな。」
「それを武力で止めようとしたんですか?それってひどくないですか?」
「いや、そうとばかりも言えなくて、『革命』と称して共産主義をとなえる人たちは武力で今ある政府を倒そうとした面もあるから、『どちらか』という問題でもないんだ。由美子なら多少歴史に関係ある本も読んでいるだろうから知っているかもしれないけど、王政を倒して民主主義を勝ち取ったフランス革命は、民衆による武力の行使だった。共産主義の人たちから見れば、それと同じスタンスだったと思うよ。」
「フランス革命の話はちょっとは知っています。考え方が違うんだから『話し合い』でってわけじゃなくて、結局は殴り合いで勝負することになるんですね。けっこう野蛮ですね。」
「神様が決めるような絶対的な正しさなんてあるわけないからね。要は勝ったものが正しいとなるわけさ。」
「『勝てば官軍、負ければ賊軍』って本当なんですね。」
「本当とは思わないが、悲しいけどそれが『今の』世の中の現実なんだろうな。」
「そう、悲しいですね。」
村上は由美子がまだ小学生であり、悲観的な世界ばかりは見せたくないと思った。しかし、考えれば考えるほど悲観的になってくる。もっと未来に希望をもてる話はないだろうかと頭の中の空間をスキャンし始めたときだった。
「先生、なんかあっちこっちに話が飛んでますね。今思い出したんですけど、兄が日本国憲法の三原則を話してくれたことがあるんです。一つは『国民主権』、もう一つは『基本的人権の尊重』、そして最後が『平和主義』って言っていましたが、今のは日本の『平和主義』に関わる話ですよね。」
「そうだね。」
「この三原則って日本が戦争に負けたとき、二度と戦争の惨禍にさらされることがないように憲法の柱として定められたことですよね。法文に前文がある世界でも珍しい憲法だって兄が言ってましたけど、その決意が前文にしたためられ、それを具現するための原則がそれらなんだって。言い換えれば日本が幸せでいられるためのものなんだって。日本国憲法の『平和主義』って『戦争放棄』と同じ意味で論じられていると私は感じているんですけど、あってますか?」
「まあ、確かに私が生まれた頃は特にそんな感じだったな。戦争しなければ、平和だっていうのは論理的にも間違ってないと思うし、日本が戦争をしなかったというのは紛れもない事実さ。その当時、平和を満喫していた日本人には、全くと言っていいほど実感はなかっただろうな。攻める事実はなくなったと思うけど、攻められる事実もほぼ皆無だったからね。当時、平和条約が結ばれていないソビエト連邦、つまり戦後処理が終わっていない、言い換えれば未だ戦争中ってことさ。そのソ連でさえ、日本と戦争になるかもしれないなんて誰も考えなかった。一応、北海道にはけっこう自衛隊の戦車なんかがいたんだ。でも、実際にアメリカと一戦を交えるだけの戦争を起こすだけの実力はソ連にはなかったし、国民はそれはそれで平和だといって戦後を満喫していたのさ。これはこれで間違いだと批判は出来ないよね。」
「平和が続いている。だから現状維持で『戦争しないよ!』って言っとけばいいみたいな。つまり、『武器を持たなければ日本は戦争出来ない。だから戦争は起こらない。』ということですね。例え相手国が武器を持っていてもですね。スイスのように『武装中立』で平和を目指すのとは真逆の考え方ですね。スイスは『世界には悪いやつもいる』という考え方だけど、日本は『世界は良いやつばかりだから自分から手出しをしなければ戦争が起こることはない』というような。」
「それだけではない。日本は『中立』じゃないよ。」
「確かに。なんか中立だと勘違いしてしまう自分がいるんですけど。」
「日本はアメリカと同盟関係にある。」
「?」
「元々は第2次世界大戦が終わってすぐに朝鮮半島で戦争が起こったために『世界は良いやつばかりだから自分から手出しをしなければ戦争が起こることはない』という考え方が早くも崩れたんだ。」
「アメリカは日本を一度完全に日本を武装解除し、『いざとなったら守ってやるよ』と日本の軍国主義の解体を第一に考えていたんだけど、朝鮮半島で起きた戦争によってそんな軽い考えは吹っ飛び、日本にすぐに再武装をはじめさせたんだ。」
「確か北朝鮮が韓国に攻め入って、アメリカ中心の国々と中国中心の国々が支援をしつつ戦いを始めた戦争ですよね。」
「そう、結局この対立前は日本なんてどうでもよかったんだけど、アメリカ側としては日本が共産主義国になることを恐れたし、むしろアメリカ側の方に引き入れておきたいと強く意識するようになったんだろうな。」
「私たち女子の、友だちの取り合いみたいですね。」
「ぷっ!真面目な顔で言うな。」
「で?」
「アメリカは、共産主義が広がりつつある国々に軍隊を派遣してそれを阻止しようとしたんだ。」
「朝鮮戦争やベトナム戦争はそれなんですね。なるほど。」
「そこで、『同盟』のことなんだが、『同盟国』って知ってるか?」
「同じ、名前の、国?」
「ごめん、チームメイトみたいなもんだ。そういうのを同盟国っていうんだ。つまり、戦争の時の仲間で、自分が攻められても仲間が攻められてもお互いに助け合う国同士の関係さ。」
「それでは、自分が関係なくても一緒に戦争になる事もあるんですね。」
「そうだな。由美子、そのとおり。そこがスイスと違ってきたところだ。スイスが誰ともからまず、誰の助けも借りず、誰でも助けるのと違い、誰かとつるんで生き抜く道を選んだ日本の同盟国は?」
「アメリカ?」
「うん、正解。」
「でもアメリカっていろいろ戦争しているようなんだけど、日本はしてないように思う。・・・合ってますか?」
「合ってるし、合ってない。」
「???またぁ、先生。」
「日本人が自衛隊を送って直接戦争に参加したことはない。」
「つまり、日本は戦争をしていない。」
「でも、日本にはアメリカ軍の基地があって、そこから飛び立った飛行機が他の国に爆弾を落とすようなことはあった。」
「手を貸していたわけですね。」
「朝鮮戦争、ベトナム戦争なんかはそうと言えると思う。日本が攻められた時にその基地からアメリカ軍が日本を守りに行くし、そもそもアメリカの基地があるからうかつに手が出せないというのもある。でも、アメリカが戦争している時には、当然ながら日本と関係なくても基地を利用させているいるわけだから、本来、日本国内のアメリカ軍基地が攻撃を受けても不思議はないし、基地を置かせている日本が攻撃されてもちっとも不思議はない。」
「よく日本が無事でしたね。」
「それは、アメリカが『世界の警察』と豪語するほど圧倒的な力をもっていたからさ。そして、日本の軍事化を強力に推し進めない代わりにアメリカの持つその圧倒的な力で一方的に日本を守るという、当時は一方通行的な関係があったんだと思う。」
「今は違うんですか?」
「中国などがどんどん力をつけてくるとともにアメリカも国内のいろいろな問題が大きくなってゆとりがなくなってきた。相対的にアメリカの力は弱くなってきて自分ばっかり頑張るんではなく、お互いに出来るところは自分でやろうってなってきているんだと思う。」
「突出して強かったアメリカが他の国とどんぐりの背比べ的になってきたんですね。警察が守れなくなってきたから、自分の家はある程度で自分で守れよってことですね。」
「そう、基本的に今度は『対等の関係』だから、アメリカがやられたら、アメリカを守らなくちゃならなくなった。つまり単純に言えば、基本的に戦争に参加しなくてはいけない状況になったということさ。ベトナム戦争に参加することは本来は条約を守るということだ。」
「いやですね。」
「当時の人々が大反対したのは、戦争に行くのがいやだからというだけじゃない。ここで憲法第9条が大きく関わってくるんだよ。」
「平和主義に反するということですね?」
「まあそう、平和を願い、二度と国際紛争解決のために戦争はしない。軍隊も戦力も持たない、交戦権・・・つまり武器を使用することも認めない・・・ということをなし崩しにするとして、猛反対が起こったんだ。」
「それは、憲法どうのこうのでなくても当然だと思います。」
「当時はまだ戦争のリアルが完全に消え去った時代ではなかったしね。終戦が1945年、反対闘争が1960年、つまり東大に立てこもった大学生は戦争を幼いながらに経験しているんだよ。何があろうとあの戦争の悲惨さを二度と味わいたくない、味わせたくないという強い思いがあったんだ。しかも、それを他国の巻き添えで味わうなんてとても許せないというものだったんだと思う。」
「私もそう思います。せっかく自分の方から戦争はしないって言ってるのに、戦争になっていくのは、おかしいと思います。自分のせいならいざしらず、他人のとばっちりを受けて戦争になっていくなんて、当然許せなかったと思います。」
「お、珍しくエゴだな。」
「?」
「自分のところさえ戦争にならなければ、他はどうでもいいわけ?」
「先生、それって詭弁じゃ無いですか。」
「何?詭弁なんて言葉知ってるの。意味は?詭弁を弄するとか使うよね。」
「一見正しそうで、でも相手をごまかすためのウソ・・・。先生が私たちをはぐらかすときに使う手です!」
「同盟国は日本に何かあったときには手助けしてくれるのに、日本は同盟国の人たちがバタバタ死んでいくのをただ見てるの?そうでなくても、よそで戦争が起こっても自分のところだけ起こらなければそれでいいわけだから、仲間付き合いもしないの?」
「うっ、・・・・確かに『エゴ』ですね。でも、スイスはもっと『エゴ』みたいなのに、そう感じない。」
「まあ、誰ともつるまんかわりに、誰とでも仲良くするってことだから、『単なるエゴ』じゃないんだろうね。」
「スイスって『エゴ』じゃないんですね。むしろ、日本が目指していることの本質を体現しているような国なんですね。」
「まあ、日本も最近は世界の世論に押されて『エゴ』を見直しつつある。良い悪いは別として。」
「もしかして、PFOとかPKFとかというもの?」
「そうだね。国連の『平和維持活動』に参加するようになったんだ。」
「平和維持活動って、確か争いが絶えず、多くの人が亡くなったり食料や医薬品が足りなくなったりする地域に、行事さんが入って水を差すような活動ですよね。」
「今度は相撲か。まあ、そうだな。二人を引き離し、間に入って再び殴り合いが起こらないようにするみたいなもんだな。ただし、本当は殺し合いだし、一般の人々がとんでもないとばっちりを受けるんだから、とても大切な役目さ。また仲裁に入ったことで逆恨みを買うこともあるし、超危険な任務でもある。」
「自衛隊も参加してるんですよね。」
「ものすごい反対の中、法律が改正されて参加するようになったんだ。当時はお金を出しても人、言い換えれば軍隊だな、は、出さなかったんだ。いや出せなかったというのが正しい。」
「法律の問題ですね。」
「ああ。平和のために各国の若者が血を流しているというのに、日本は金で解決しようとしているってね、国際的な世論は日本バッシングだったわけさ。でも、この当時はちゃんとした『交戦規定』はタブー視されていて、国際的にはそんな当たり前の決まりもなく、正当防衛しか認められていなかったんだ。つまり、平和維持活動中にどちらかが民間人を殺そうとしていてもそれは正当防衛が成立しないから、わざわざ見殺しにするか、自分が犯罪者となることを承知の上で助けるしかなかった。これでは無理だろ。」
「・・・・。」
「それで国際世論の高まりによって参加することになるんだが、武器使用のない活動に当たるんだが、例えば、道路を整備したりすることね。で、後方の安全なところで活動をするんだが、それはそれで現地からは評価されたんだけど、迷彩柄の軍服を着用して活動をするんで、対立する武装勢力から見れば違いなんて分からないさ。キャンプ地にロケット弾が撃ち込まれたり、活動中に武装勢力と一触即発の危機もあったらしい。持っていく武器もかなり制限されていて本格的な戦闘になれば大勢の犠牲者が出ても不思議じゃない状態だったんだ。」
「もし、万が一そうなったら・・・。」
「いや、平和維持活動には各国から多くの軍隊が参加しているから、実はそれらの軍隊から守ってもらっていたんだ。」
「ボランティアに行きながら、現地の人から暖かい寝床と炊き出しをいただいているみたい・・・。」
「21世紀が始まったくらいから徐々に法改正も参加の仕方も変わってきて、今ではいろいろなところで活躍しているのは知っての通り。でも、本当のところは変わっていない。海上自衛隊などがアデン湾で海賊に対応していることは知っているだろう。海賊に対しては輸送船を軍艦で護衛し、その姿で威嚇しているんだけど、実際にミサイル攻撃を受けそうなときは、そんな海域には入らないし、他国の軍艦のように場合によっては相手を撃沈してしまうなんてことはおそらく、ない。」
「・・・。」
「ちなみに『PKO』とは『国際連合平和維持活動』と言い、"Peacekeeping Operations"というし、『PKF』とは"peacekeeping force"の略で、『国際連合平和維持軍』と言う実際に『国際連合平和維持活動』に当たる軍隊を指すんだ。以前はPKFには加わらなかったんだけど、今は加わって活動が出来るようになっている。」
「平和を維持するには『力』で押さえることも・・・必要ってこと・・・なんですね?」
「なんとも言えないんだけど、きれい事だけで済まないのが世間といったらいいのか、日本の常識が世界と違っているのか、俺には分からない。平和を維持するのは日本人が抱いているイメージとはかけ離れているのかもしれない・・・。」
「憲法前文の『不断の努力』って、話し合いとか仲良くいようとするばっかりじゃなくて、場合によっては実力行使も含むってことなんでしょうか。」
「至って普通の世界ではそうだろ。犯罪を犯せば罰せられる。教育のせか・・モゴモゴ・ちが・・・モゴモゴ・・・。」
「あっ、先生なんか言ってるけど、ごまかしてる!」
「モゴモゴ。」
「しかし、先生はなんでそんなにくわしいんですか?安保の時の人とは違う感じがするのに、なんかずっと戦争を見てきたみたい。」
「小さい頃の戦争映画がきっかけかな。ただカッコいい!って憧れたんだ。でも、興味をもったそこからどんどんとはまってってその対象を深く知りたいと思うようになった。当然のことだろう?そして深みにハマり、戦争の本質にたどり着くわけさ。戦争を本当にやりたいなんてやつは身の回りには絶対いないと思う。戦争のゲームや映画が大好きなやつだってあくまで遊びの延長さ。中には他国に傭兵・・・傭われ兵としていく人間もいるんだが、かなりの例外だ。彼らが戦争を始めるとかはあり得ないし、戦争どうとかとは違い、戦闘ずきは全くの別物さ。だから、最初のステップをストップさせちゃいけないと思うんだ。戦争に興味をもった子をまるで危険人物みたいに見て、そこでストップさせたら絶対にそこの本質にはたどり着けない。知識で『戦争は悪い』とすり込んでも、逆にそういう人は世界情勢が変わってマスコミ等が戦争に流れたとき、真っ先に賛成していくようになるじゃないかな。新しい知識を覚えるだけみたいなもんだからね。」




