60本目 復活
作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!
どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m
「(あったかい・・・)」
胸を聖剣で貫かれ、瀕死の重傷を負った流々は朦朧とする意識の中、謎の浮遊感に包まれていた。
「(ドクンドクン聞こえる・・・すごく安心する・・・)」
靄が晴れる様に少しづつハッキリとしていく意識。
まだ体に力は入らないものの、朧気に自身の状態を思い出した。
「(・・・あれ? 生きてる、痛くない)」
『流々、目を覚ましたか』
「(おとーさん! あれ? おとーさん何処? お姉ちゃんは? 此処どこ?)」
何故か刺された胸に痛みが無い、だが力が入らず目が開かない。
仕方なく気配を探ればクトーと姉の存在を近くに感じる、だがまるでフィルターが掛かったように捉え辛い。
「(おとーさん?)」
『大丈夫だ、我は近くに居る。それよりも体に違和感はあるか?』
「(うぅん、ちょっと力が入らないだけ!)」
『それは良かった、心配したぞ』
クトーの声に、心から安堵しているのだろう色が混じっていた。
流々は倒れてからの記憶が無い。だが何となく二人にすごく心配をさせた事だけは覚えている為、しょんぼりとした。
「(ごめんなさい・・・)」
『いや、我が過剰に心配しただけだ。流々に非はない。色々と説明してやりたいところだが、今は緊急だ後にしよう』
「(うん。お姉ちゃんにも、後でごめんなさいする)」
『うむ、そうすると良い。当分の過保護になるだろうが、そこは甘んじて受けるより仕方がないな』
もしかすると怒られるかもしれない、泣かれてしまうかも。そう考えると少し気持ちが沈む。
だがそれに何処か嬉しくなってる自分もいて、少しだけ悪いなと思いつつも口元に笑みを浮かべた。
『さて、流々──もう、動けるな?』
「(うんっ!)」
◆
護の腹からタコ足が飛び出し、背後から迫る村正を捕える。見れば左右で護に刀を刺す村正達も同様に捕らわれていた。
動揺を見せた彼等はタコ足の力に抗う事も出来ず持ち上げられ、そのまま排除される。
護は目を疑った、そんなわけが無いと。
確かに心臓は止まっていた、損傷していたのだから再び動き出すだなんて無理だと知っていた。
だから悲しかった、悔しかった、失ったのだと怒りに燃えた。
じゃあ、これは?
村正を排除したタコ足は護に刺さる刀も抜き捨てた後、地面で踏ん張る様子を見せる。
すると、ぐぐぐと何かが体から這い出てきた。
いや、自分はよく知っている。これをよく知っている。
長い睫毛に、くりくりとした丸く大きな瞳。
ツンと上を向く可愛らしい鼻。
小さく桜色をした唇。
歯を見せ笑う顔が可愛い子。
話を上手く伝えようと手を振る仕草が愛くるしい子。
ちょっと舌足らずな話し方愛おしい子。
自慢して回りたくなる、大切な、大切な、自分の妹だ。
「~~~っ、ぷはっ! 苦しかった!」
緊張感の無い可愛らしい声に、護の目玉から涙が零れた。
これは死ぬ前の幻だろうかと肉の触手を伸ばす。幻でも構わない、触れたい、消えないで欲しい。
だがその幻は消えることなく触れる、そして触手を握り返してきた。
再び目玉から望陀の涙が溢れる。
流々は肉の触手を伸ばしてくる肉塊をじっと見詰める。
それもその筈、今の護は控えめに言って悪魔も生温い姿をしていた。分からなくても仕方がない。
だが流々は頬に伸ばされた触手を握り返し、満面の笑みで肉塊に抱き着いた。
「お姉ちゃんっ、おはよう!」
「──っ!」
幻では無かった、流々は確かに生きている。護は燃え盛っていた怒りが収まっていくのを感じた。
抱き締め返し、帰ってきた温もりを感じる。
流々と触れている箇所がジワリと熱くなる。次の瞬間、ズルリと斬られた両腕が生えてた。
「──っ!?」
「よかった、治った! お姉ちゃん、もうだいじょうぶだよっ。戻って、戻って!」
「ル、ル・・・ワカル、ノ?」
「んぅ? 当たり前だよぉ、だってお姉ちゃんはお姉ちゃんだもん!」
べちゃべちゃと生々しい音を立てながら、裏返っていた肉が元に戻る。
中からは無傷の護が姿を現した、その瞳には溢れんばかりの涙が溜まっていた。
「よがっ、よがっだ・・・お姉ちゃん、るるが、死んじゃったがど、思っでっっっ!!」
「だいじょうぶっ!」
「よがっだ、うええええんっ!!」
「お姉ちゃん、だいじょうぶ。だいじょうぶだよ!」
「ぐすっ、ぐすん・・・」
縋りついて泣く姉を抱き締めて、『だいじょうぶ、だいじょうぶ』と子供をあやす様に頭を撫でる流々。
正直流々も自分がなぜ無事だったのか分かっていないが、姉も元気そうだし怪我も治ったし、まぁ良いかとニコニコしていた。
だがそれに納得いかない者が1名、欲望の汚泥の母体ことマザーである。
「何でオまえ生きてる!? 刺されたロっ、聖剣に刺されたロっ! 何で生きてるんだヨ!!」
「お姉ちゃん、あの真っ黒な大きな人、だれ?」
「聞けヨっ!!」
欲望の汚泥に飲まれ多少格が落ちたが、それでも流々を刺したのは紛うことなき聖剣である。
ただの剣とは比べようも無い攻撃力であり、ましてや心臓を狙いとどめを刺した筈。人間なら生きているわけがないのだ。
まぁ人間ではないのだが。
「何なんだオ前達はっ、私はオ前達を人間だなんて認めない!!」
自分の知る人間とは何もかもが違う二人に納得がいかず、マザーは怒りに吠える。
だがそんなマザーを見て、流々は全く気にする様子が無かった。
「別に良いよ、僕はお姉ちゃんと居られるなら、何でも良いもん」
「アタシも流々が幸せなら何だって良いわ。流々が人間じゃないってんなら、人間の方が間違ってるのよ」
いや、それはどうなんだろうか。
護は流々をギュッと抱き締め、お前が間違っていると堂々言い放つ。
「モう良いっ! 人間じゃ無いなら、オ前達は要らないっ!! 村正あああああっっっ!!!!!!」
意識の外から刀を振るう村正、冷たい光を放つ刃が流々の首に吸い込まれる──がその刃が届くことはなかった。
剣先が白く細い指に摘まれる。
「おい、危ねぇもんを流々に向けるな。流々の綺麗なお肌に傷が付いたらどぉすんだぁああ、あぁああんっ⁉」
お前はチンピラか。
余程腹が立ったのだろう、美女の顔に人殺しの目を添えて護が村正を睨めつける。
摘んだ刀がグニャリと歪んだ。
「爺はお呼びじゃないのよ、死ねっ!」
村正の頭がボンッと音を立てて粉砕された。
殴り飛ばした姿勢の護の背後から別の村正が二人神速の突きを放つが、それを護の脇から伸びたタコ足が防ぐ。
身を締めたタコ足から、刺さった刀が抜けない。
それにより出来た一瞬の隙に足を捕らわれた村正達は、床に叩きつけられ弾けた。
「すごいわね流々、受け止め方覚えたの?」
「うん! だってお姉ちゃんに心配かけたくないし、治すのお腹が空くんだもん」
護はいい子いい子と流々の頭を撫でた。
それを隙と見た村正が音もなく接近する──流々が見る──護の回し蹴りが村正を吹き飛ばす。
その軸足を狙って次の村正が刀を振るうが、護の姿が消える。
「──っ!?」
村正は驚愕の表情で上を見る、そこには足を振り下ろしたポーズのまま上に跳ぶ護が居た。
してやったりと笑う護の手には流々の触手が。村正の動きに気付いた流々が護を持ち上げていた。
村正は護と入れ替わりに下から滑り込んだ流々に下から打ち上げられた。
「ぐっ!?」
護とは違いタコ足による力任せのパンチだが、込められている力が人間のそれではない。
浮体、消力、更に腕と刀で防ぐも致命傷に至る一撃、今意識があるのが奇跡である。そしてそれも頭上から落された護の踵落としで終わる。
流々と護が笑い合う。
流々がタコ足を広げ、独楽のように回りながら村正達に突進する。
村正達は宙へ後方へ退避するが一人がしゃがみ、流々の足元へ接近した。
一歩で五メートルの間合いを詰める村正、刀を振るうが流々はが後方へ仰け反った事で刃が空振る。
人間では在り得ない緩急の動きに村正は目を見開き驚く──しかしそれは回避のための行動では無かった。仰け反った流々の両手が股下から何かを引っ張る。
股下から姿を現したのは流々に引っ張られ、既に蹴る体勢に入っている護。流々の力が乗った護の蹴りを村正は回避できず、一瞬で壁の染みになる。
護はそのまま流々の手に引っ張られ宙を舞う。そして宙へ逃げた村正を叩き落した。
流々は落ちてきた村正を捕まえ、そのままグルンと村正を振り回し、後方に逃げた村正に叩きつける。
「ソ、ソんな・・・村正が・・・」
「これ、お姉ちゃんと踊ってるみたいで楽しいね!」
「ならもっと踊りましょう、オーディエンスは腐るほど居るわ」
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