53本目 フィジカルモンスター
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【深淵の境界ダンジョン】
ダンジョンを攻略中。
護は広い一階層を探索し、漸く二階層へと続く階段を発見する。
ダンジョンはその殆どが下へすり鉢状、もしくは上へピラミッド状に伸びていて、従って最終階層が深ければ深い程、高ければ高いほど一層目の広さは広大。
深淵の境界ダンジョンは比較的浅い全五階層のダンジョンではあるが、それでも一階層の広さは東京ドーム約四個分である。
護は十分で攻略すると啖呵を切っていたが、当然そんな広さの、しかも迷路のようになっているダンジョンの中で隠れるように存在している下層への階段を探すのは根気のいる作業であり、短時間で発見などほぼ不可能。
化け物じみたスタミナと五感を持つ護をもってしても至難の技であった。
「はぁ、やっと見つけた・・・全く、誰かマッピングぐらいしておきなさいよ」
以前紹介した通り、神戸ハーバーランド付近のダンジョンは初心者推奨のダンジョンだ。
しかしそれは裏を返せば、初心者以外には旨味の少ないダンジョンという事でもある。
ある程度戦闘に慣れたダイバー達は、このダンジョンに深く潜るよりも一階層でも多くモンスターが出現するダンジョンを選択する。何故なら全く儲からないから。
結果、神戸ハーバーランド付近のダンジョンは攻略が進められず、マッピングもされていない。
逆に「そんなに簡単ならさっさと攻略して、土地を取り戻したらどうだろうか?」と考える者も居たが、そもそものダンジョン発生原因は海の中。
攻略しては増え、攻略しては増えと鼬ごっこを繰り返すだけになり、「それならダイバー育成場所として活用しよう」となったわけである。
さてそんな裏話はさておき、侵入した二層目に出現するモンスターは一層目とそう変わり映えしない。ただ決定的に違うのは出現率の高さだ。
畳み掛けるように迫ってくるマーマン達を捌き、一息ついた隙を狙ってピラニアが飛んでくる。
そう、二層目からはモンスターが"殺しにやって来る"のだ。
まるで世紀末のモヒカンのように武器を振り回し襲い掛かってくるマーマン達。
言葉が通じない為果たして「ヒャッハー!」などと言っているかは不明だが、もれなく全員が護の手により「あべしっ!」している。
いくら二層に入り、モンスターの数が増えたところで所詮はFランクモンスター。
どれだけ徒党を組もうとも、護の攻撃の手・・・もとい指の数が一本から二本増えただけ程度の差でしかなかった。今も護が弾く小石弾がマーマン達を爆散させていく。
魚が二足歩行に超進化したところでフィジカルモンスターを止める術は無いのである。
さっさと面倒事を片付けて流々の下へ行きたい護は、ドロップした魔石や魚の切り身、そして宝石の様な珊瑚も、全てを放置して攻略を続けていき、30分後には三層目へ侵入を果たしていた。
三層目からはモンスターの種類も変わり、魚に加えて貝が出現するようになる。
その殻は硬く、戦槌のフルスイングにすら耐えると言われており、また貝の中から出てくる歯は鋼も食い千切ってしまう。
防御も攻撃もさせてくれないこのモンスターの名は『シャークシェル』、前衛泣かせとして有名なモンスターで割とあちこちの海系ダンジョンで出現するため、初心者の最初の壁としてよく知られていた。
ジェット水流による高速移動と鉄壁の防御は非常に厄介で、ベテランでも数人で囲み魔法で焼いて倒すのがセオリーであり、ソロで戦うようなモンスターではない。
「邪魔っ!!」
「ガッ⁉ ゴッ・・・」
・・・ソロで戦うモンスター、ではない、はず。
コンクリートが粉砕されるような音と共にシャークシェルが次々と消え、残るのは貝柱と真珠だけ。
勇気をもって護に喧嘩を売りに来たシャークシェル達は安く買い叩かれ、ついでに上からも叩かれて、あっという間に光の粒子となって消えていった。
下に行くほど探索範囲が狭くなる構造上、踏破する速度は上昇していく。
その為、三層に降りてから一時間程経つ頃には、護は五層のボス部屋前に到達していたのだが、時間が経つ毎に顔付きは険しくなっていく。
修羅のようなオーラを放つ護。その殺気は凄まじく、モンスターが怯えて近寄って来ない程である。
(早く流々に会いたい、早く流々に会いたい、早く流々に会いたい・・・)
もうかなりの時間流々の顔を見ていない(約2時間)、流々不足の禁断症状が出始めていた護はボス部屋の巨大な岩戸を粉砕し侵入する。
「Gisyaaaaaaaaaaa!!!!!!」
中に居たのは身の丈三メートルを超える巨大な魚人系のモンスターだった。
王冠とマントを身に着け、これまた巨大な剣を携えた『魚人の王』。全身が筋骨隆々で、銀色に輝く硬質な鱗が覆っている。
側には近衛兵だろうか、同種の魚人たちが隙無く此方に武器を構えており、少しづつ護を包囲するように動く。
ここまでに現れたモンスターとは比べ物にならない存在感と殺気が護に叩きつけられる。
お互い僅かな隙もあらば突こうと息を殺して睨み合う。
そして、その高密度の殺気に天井では雫が震え──落ちる。
──水滴が床で弾けた。
それを魚人の王が視認した時、護は既に王の目前に立っていた。
「──っ!?!?!?」
いつの間にっ! 部下は何処だっ⁉ 早く守りをっ!
だが、王が声よりも護の蹴りの方が早かった。
「臓物をブチ撒けなさい」
王がその声を聞いた瞬間には壁に叩きつけられていた。
"やけに身体が軽い"と、ただそれだけを思い王は絶命する。
崩れ落ちる王の魚眼に最後に映ったものは、ひき肉になった部下の姿と、誰かの下半身だった。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
「さて、早く流々の所へ行かないと(早く流々に会いたい)・・・」
至って平静を装う護だが、心の中で愛をシャウト中。
流々の事となるとポンコツがちになる護だが、それでも一応は日本を代表するダイバー。思考の一割ほどは冷静に状況を分析していた。
(ここのボスが普段どういった奴なのかは知らない、でも明らかにこのダンジョンに不釣り合いな奴ではあった。それを倒したって言う事は騒ぎは収まったと見て良いのかしら? こっちが当たり? じゃあ流々の方には何も居ないのかしら)
まぁ外に出れば分かるか、と出口に足を向けた時。
ぺた・・・。
「──っ⁉」
不意に聞こえた足音に振り向いた。
ぺたぺたと少しづつ近付く足音に護は拳を構える。
よく見るとそこには入ってきたものとは違う穴、恐らく下へと続く道があった。
ぺたぺた・・・ズルズル・・・・・・
「・・・・・・」
そこから聞こえる足音、そして何かを引き摺る音。その主が少しづつ暗がりから姿を現す。
小柄な体、そして頭から伸びる何本もの触手。
姿を見せたのは意外な人物であった。
「あれぇ? おねーちゃん?」
流々「くーるー、きっとくるー♪」
護 「それは何の唄?」
流々「こういう時に歌うんだってー。"お決まり"なんだって、ポテ子お姉ちゃんが言ってた!」
護 「アイツが言う事は覚えなくて良いわよ」
※次回より、毎週土曜の更新に戻します。
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