53本目 邪神ちゃん、突入
作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!
どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m
「ほんなら、いくでっ! 《反磁力場》!」
コンテナとマーマンに同極の磁力を付与した高砂は、周囲のマーマンを一匹残らず吹き飛ばした。
「美月お姉ちゃん、すごいっ!」
「せやろ? ウチな、何にでも磁力を付けれんねん。せやからこんなことも出来んねん。《磁力場》」
ヒュンッ──パンッ!
高砂の持っていた拳大の石が飛び、マーマンを貫通した。
「まぁ数に制限はないんやけど範囲は狭いし、起点に触らなあかんけどな! ほな、次は頼んだで!」
「任せなさいっ!」
次鋒を任された胡愛が獰猛に笑う。
その感情に呼応するかのように、ツインテールが大きく燃え上がった。
炎はまるで意志を持つかのように大きく膨れ上がり、流々達の頭上で球体となる。
その大きさは凡そ2メートル。煌々と炎光を放つそれはまるで『太陽』のようであり、それなりに離れている筈の流々達の肌をじりじりと焼いた。
「ママ、お願い」
「任せてぇ。これだけの火があれば、ママは無敵なんだから」
炎樹は少し先に居るマーマンの集団に右手を翳す。
すると太陽から極太のレーザーが伸び、マーマンは「ジュッ」と音を立てて一瞬で灰と化した。
それを見て慌てふためくマーマン達は、急いで海側へ逃げようと道を引き返す。しかし、それを見逃す炎樹ではなかった。
「逃さないわよぉ」
炎樹が翳した手を動かす、するとレーザーもそれに追従しマーマン達を次々と焼き払っていく。
レーザーが通った後には溶けた地面と灰しか残っておらず、マグマのように溶解した地面は高熱を放っていた。
「あ、あつい・・・」
「あっ、ごめん。《火面舞踏会》! これで暑くないでしょ?」
胡愛は流々を案じ、火耐性を付与した。
流々の顔に、炎で出来たドミノマスクが、そして背には同じく炎のマントが出現する。
炎樹の放った熱放射によってあっという間にダンジョンまでの道が開ける。
マーマン達も予想外の攻撃にまだ混乱の最中であり、突入するならば今しか無かった。
「さぁ皆、いってらっしゃい。入り口は守ってあげるから、安心してねぇ」
「ありがとう御座います。九冬さん、虚柄さん、ダンジョンに向かって下さい」
尼崎の声に従い二人は未だマーマン達犇く中出来た道を駆け、それぞれ任されたダンジョンに入っていった。
マーマン達もそれに気付き流々達を追うが、しかし──。
「《赤壁》!」
巨大な炎の壁がマーマン達の追跡を阻んだ。
「アンタ達に流々は追わせないわっ!」
「もう少しママ達と遊びましょうねぇ」
「ウチらに近付けるもんなら、やってみぃ!」
ダンジョン入り口を塞ぐ炎璧を背に、胡愛、炎樹、高砂が立ちはだかる。
相手はFランクといえど数は膨大、対してこちらはたったの三人。けれど、全く負ける気がしなかった。
◆
胡愛のサポートを受け《古き者共の塒》へと入った流々。頭にはクトー、それに加え隣に尼崎が居た。
流々はダイバー活動の条件として誰か保護者が必要。
しかし護は隣にある《深淵の境界》に入らなければならない為、担当教員として一緒に入った形である。
「ダンジョン内部に異常はありませんね。やはり強化種、もしくは上位種の発生と見るべきですか」
『そのようだな。特異モンスターの発生に引っ張られ、他のダンジョンが活性化したのだろう』
クトーの言葉を聞き、尼崎は胸を撫で下ろした。
ダンジョンの異変だった場合、広大なダンジョン内の調査から始まり、避難勧告、原因の究明など大きな影響が考えられる。
だが原因が特異モンスターの発生だった場合、ただモンスターを倒すだけである。
当然、そのモンスターは尋常では無い強さが予想される。だがここにはそれに対応出来る戦力が二人もいる。
子供に頼り切りになるのが少々情けなくなるが、それでも最悪の事態は回避できるだろうと、尼崎は少しばかり余裕を取り戻すのだった。
『しかしあの者達、中々に優れた力であったな。人間における実力者なのか?』
「うん、凄かったね。美月お姉ちゃんも凄かったけど、ククちゃんと炎樹ママが凄かった!」
流々は手を大きく広げて、感動をクトーに伝える。
性別は変われど流々も男の子、大きな炎や強い技に憧れるのか瞳をキラキラさせていた。
「確かに強いと言えば強い人達なのですが、色々と制限があるんです」
尼崎の言う通り三名とも優れたスキルを持っており、特に胡愛は流々と同じく特定の条件下でのみ活動が許されているダイバーである。
また流々とよく共に居る高砂達3バカトリオも1年にも関わらず学園屈指の実力者であり、その実力は既にDランクと同等、場合によってはCランクにすら届きうる。しかし全員必ずしも安心できる能力ではないらしい。
炎樹は炎を操る能力者であるが、その操作には手の動きが必須であり、また火力は元の火種に依存する。
胡愛が居ない場合、自身で火種を用意する必要があり、咄嗟に攻撃をするとなると焚火を用意するわけにもいかずライターだと片手が塞がる。想像以上に制限を受ける能力なのであった。
それに対し、胡愛は人体発火能力者であり、自由に炎を生み出すことが出来る。
火力は天井知らずだが発生元は自身の体が起点であり、細かい操作が出来ない。
その為、チームプレイというものが難しく、また攻撃できるほどの火力に上げるまで数秒の時間を要する。要はチームプレイが必要な、ソロ推奨のスキルなのである。
炎樹と胡愛は二人が揃って初めて無敵に近い能力を得ることが出来る。
なお、3バカトリオは当然ダイバー経験が足りていない事もあるがスキルの理解力が足りていない事に加え、すぐ調子に乗るので安心よりも心配が先立つようだ。
『成程な。先程の火力を見れば護以上と思ったが、そういった制限が前提となると扱いが難しい』
「あの方達に限らず、ランクの上がらない方というのは力の扱いが難しい方が多いんです。そう考えると、九冬さんや虚柄さんのように単純にフィジカルの強い方は活動しやすい傾向にありますね」
『流々の場合、フィジカルが強いとは意味が違う気もするがな』
「ふぇ?」
次元の浸食に対抗するためにも、人間の協力は必須。
ダンジョンを移動する最中も尼崎から情報を収集するクトーであったが、ふと気にあることがあった。
『(・・・人体発火能力とは、あのような力であったか?)』
胡愛の力が自身の知るものと毛色が違う事に気が付き、クトーは思考に耽るのであった。
◆
《深淵の境界》に入った護は、ぐるりと周囲を見渡す。
(ダンジョン内に異変無し。モンスターにも、今の所大きな異変無し。という事はダンジョンの成長では無さそうね、上位種の発生とかでしょう)
足元に転がるモンスター達を見て、護も流々達と同じ答えに至っていた。
潜ったのはまだ一層目ではあるが、出現するのはマーマンと飛ぶピラニアくらいなものである。
代わり映えのしないモンスター達。だが、僅かに強くなっている。
(このダンジョンは五層、一気に下まで降りるべきかしらね。流々も同じ様に考えていてくれれば良いけれど・・・)
そこで流々は走るのが苦手だった事を思い出した護は、此方をさっさと片付けて流々と合流すべきか暫し考え込む。
久々に誰も居ない左側が、少し寂しく感じる護だった。
(あの子は素直で責任感が強い、だから無理を押してでも達成しようとする筈。まぁその必死になる姿が堪らなく可愛いのだけれど、それでコケて怪我でもしたら大変だわ・・・絆創膏は持っていたかしら? 何だか凄く心配になってきたわ)
今すぐ駆け付けてあげたい、でもそれは過保護過ぎないだろうか? でも寂しがっているかもしれない。
しかし流々だって成長しているのだし、少し離れた程度で寂しがることはもう無いのかもしれない。
・・・それはそれで護が寂しい。ただでさえ最近、胡愛にポジションを奪われかけていて、スキンシップが減っている。寂しくない何て言われた日には、護は死んでしまう。
護はぐるぐると同じ場所を回りながら思考に耽る。
そして、カッと目を開く。
「十分で倒して戻る! それから合流して流々をいい子いい子する。そして『お姉ちゃん大好き』って言ってもらおう」
完璧な作戦だと、鼻息荒く行動を開始する護であった。
胡愛「流々が心置きなく戦えるよう頑張るわ!」
炎樹「娘達をサポートするのは、ママの役目よねぇ♪」
高砂「流々ちゃんにええトコ見せなっ!」
護「流々に『お姉ちゃん大好き』って言ってもらう!」
一人だけ欲望だらだら・・・
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