50本目 邪神ちゃんの校外学習
作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!
どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m
神戸には天然の良港とも呼ばれる港、神戸港がある。
行政7区の内6区に跨る西日本最大の港で、先進的な建物『ハーバーランド』には様々な商業施設が入り、常に賑わいの絶えない正に『港町神戸』の名を代表する場所・・・と、かつては呼ばれていた。
しかしその景色は、固定ダンジョンが出来たことで一変する。
海中に出来たダンジョンの存在に誰も気付くことが出来ず、気付いた時には時すでに遅し。
モンスターたちはダンジョンから海へ、そして陸へと進行し海洋モンスター達によってハーバーランド付近は占拠されてしまう。
さらにその後も状況は悪化し、漏れ出した魔力により付近一帯がダンジョン化。神戸港一帯から住民が避難した結果、更にダンジョンが複数出現。
神戸港はゴーストタウンならぬモンスタータウンとなってしまったのである。
今回、流々達探索者学園 高等部1年が向かうのはそんなモンスタータウンとなった場所の一つ、固定型海洋ダンジョン『古き者共の塒』。半魚人やローパーを主とした海洋モンスターが出現するダンジョンである。
なお、モンスターの殺傷能力が低いことから新人ダイバーの訓練地として人気の高い場所だが、半魚人の見た目やローパーというネバネバ触手が居ることから女性ダイバーは嫌煙されている場所でもあったりする。
HR終了後、用意されていたバスでここまでやって来た一同は、協会施設でそれぞれのスキルに合わせた戦闘服に着替え3~5人づつのPTに分かれ並んでいた。
余談だが流々は体操服である。
「皆さん、忘れ物はありませんね。装備の点検はしっかりとしましたか? 救急キットやサバイバルグッズは? 本日は浅い階層で数時間の活動になりますので遭難の心配はないと思いますが、くれぐれも注意してプロダイバーの指示に従うように!」
『はいっ!』
担任の尼崎 さなえはダイバーとしての実力は高くなく、護衛としてダンジョンに入ることが出来ない。
必然的に外で連絡救護係として待機することになる為、心配そうに受け持ちの生徒達の顔を見ていた。
そんな過保護な様子を見て、少しでも安心させようと3バカトリオが尼崎に話し掛ける。
「さなえちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫だって! 俺達何回もダンジョン潜ってんだぜ?」
「せやせや、油断もしとらんし怪我も気ぃつけるさかい、大丈夫やって!」
「それに流々ちゃんも護さんもプロの先輩もいるしねー」
「・・・先生は貴方達が一番心配です」
「「「何で(やねん)っ!?」」」
息の合った友人たちの様子を見て、三人に並ぶ流々はくすくすと手で口をおさえながら笑う。
「ふふふっ。賑やかで楽しいね、ククちゃん!」
「あれは賑やかなんじゃなくて馬鹿なだけよ」
『だが雰囲気が良いというのは、中々代えられぬものであるぞ?』
流々とは対照的に胡愛は呆れ顔でやり取りを見ていた。
流々と胡愛を含めたこの五人は同じPTでダンジョンへと潜る。
芦屋の要求が通った・・・というわけではなく、単純に芦屋達のPTだけが3人編成だった為だ。
「流々ちゃん、生徒側で潜るんだね?」
「うん。先生がね、皆と潜る勉強しましょうねって言ってた!」
「なるほどねぇ、じゃあ護衛で来てくれるのは誰なんだろう?」
芦屋がそう呟いたところで流々の背後から朗らかな声が掛かる。
振り向くとそこには、鮮やかな赤い髪の女性が立っていた。
「あっ、炎樹ママ! ママ、いっしょなの⁉」
「うそっ、ママ⁉」
「はぁい、流々ちゃん! そうよぉ、一緒の班だから宜しくねぇ。皆さんも、いつも胡愛がお世話になっています。私は今日護衛を務めさせて頂く、工藤 炎樹と言います」
流々達の班を護衛するのは、なんと炎樹であった。
何という偶然・・・と言いたいところであるが、当然偶然ではなく、尼崎が少しでも流々が緊張しないようにと配慮した為である。
「今回皆さんは五人編成ではありますが、九冬さんは可能な限り手出しをしないようにして下さい。どちらかというとPTで戦う様子を見学して、そして雰囲気を感じてみて下さい」
「うん、分かった。ですっ!」
友人と初めて潜るダンジョン。慣れている筈なのに住んでいた時とは違う、ドキドキとワクワクで流々の胸は高鳴っていた。
◆
《古き者共の塒》の中は海洋ダンジョンの名が示す通り海中を思わせる構造となっていた。
巨大な洞穴の天井に垂れ下がる鍾乳石。そして足元は踝まで海水が浸かっており、更に沢山の珊瑚が生えていた。
天井まで海水で満たされていれば、正しく海中トンネルと言うに相応しい景色だろう。
「海中じゃねぇのに、この珊瑚ってどうやって生きてんだろうな?」
「珊瑚に見える別の何かやないん?」
「探協の情報だと一応珊瑚らしいよー、ただ採っても消えちゃうから持って帰れないけどねー」
三人は雑談をしつつも周囲への警戒は怠っていない。その様子は、流石慣れたダイバー然としていて安心感があった。
流々はその後ろで三人の様子に感心しながら、胡愛と手を繋いで歩いている。
「ねぇ流々、ここで手を繋ぐのは止めない?」
「えっ・・・」
胡愛の言葉に流々は青ざめ、この世の終わりの様な表情になった。
「アンタどんだけ手を繋ぎたいのよっ!? あのね、嫌ってわけじゃないの。ただ繋いでたら咄嗟に動けないから危ないでしょって言ってるのよ」
「う、うん・・・・・・分かった・・・ぐすっ」
危ないからと言われたらワガママを言うわけにもいかず流々は渋々、本当に渋々、まるで永遠の別れかのように惜しみながら、胡愛の手を放す。
ぎゅっ
「待って、タコ足が放してないから。タコ足でも一緒だから。手じゃないからオッケーみたいなルールないから」
「うふふ、流々ちゃんは胡愛ちゃんが好きなのねぇ」
「うんっ、大好き!」
「真横で恥ずかしい話しないでくれるっ!? そんなの私だって流々が、す、すすすっ・・・ん?」
胡愛は顔を真っ赤にしながら返事を返そうとするも、何やら視線を感じ前を向く。するとそこには三つの視線が・・・。
「いやぁ~、美月さんや。これは良いツンデレですなぁ~」
「せやなぁ、もう胡愛ちゃんを見とるだけでご飯三杯はいけそうやで!」
「しっ、お前等いらねぇこと言うなよ。気付かれるだろ『アンタたちいいいいいいいいっっっ!!』・・・あっ、やべ。怒ったぞ!」
「待て、こらあああああっっっ!!」
中々素直になれない胡愛と揶揄う3バカトリオは、此処がダンジョンだという事を忘れているのか余裕があるのか不明だが、子供の様な追いかけっこを繰り広げた。
「はぁはぁはぁ・・・あいつ等、こんな時だけバカみたいに動きが良くなるんだからっ!」
「ね、ねぇ、ククちゃん。お手々繋ぐの・・・ダメ?」
「うっ・・・だって、浅い階層だって言ってもダンジョンだし、両手は開けておかないと・・・」
「(じー・・・)」
「ううぅ・・・あぁもうっ! 好きにしたら良いじゃないっ、言っとくけどアンタが言ってきたんだからね! 私が繋ぎたいって言ったんじゃないからねっ!」
「うんっ、ありがとう! にへー、ククちゃん大好き♪」
流々は胡愛の左腕に抱き着き、そのまま指を絡める様に手を繋いだ。
「うふふふっ、胡愛ちゃん可愛いわぁ」
最後尾に経つ炎樹は、その様子を見て終始幸せそうであった。
さて、邪魔することも躊躇われる幸せな空間が広がっているが、此処はダンジョン。
モンスター達にそんな配慮の気持ちなど微塵も存在せず、突然現れたマーマンは二人の間に割って入るように槍を振るう──
「ギョギョギョ──(バシンッ!!)ゲヒョッ!?」
──が、一瞬で壁のシミとなった。
「流々・・・」
「ちっ、違うよっ! お手々(タコ足)がね、勝手にねっ、ワザとじゃないよっ!」
「しっ、気を付けろ。集まってきたみたいだぜ」
騒ぎを聞きつけ二足歩行の蛙、マーマンが集まってきた。そのどれもが手に槍の形をした珊瑚、自然武器 を携えている。
「よっしゃ、漸く出番だぜ!」
「あら? マーマンってこんないっぺんに出るんやったっけ?」
「まぁまぁ、Fランクモンスターだし沢山出ないと張り合い無いよー。流々ちゃん、私達が戦うから見ててねー!」
「う、うん、頑張って」
流々の声援を背に、三人は油断無く敵と向き合った。
「大河、今日何食ってきたん?」
「あー、ハイオークが五キロ。バーストボアが一キロだな」
「オッケー、ほんならハイオークで前衛がんばっ」
何の相談をしているのか。流々が首を傾げていると、猪名川は背負っていた荷物から身の丈程の大鉈を取り出す。
「《獣化》ハイオークっ!!」
スキルを発動させた猪名川の身体が大きく膨れ上がる。
メキメキと音を立て変化していった数秒後、そこに立っていたのはボディービルダーの比ではない、全身に筋肉の鎧を纏った2メートルを超える青いオークだった。
「ほえー、でっかくなったよ!」
「アイツね、食べたモンスターに変身できるのよ」
『ほぅ、珍しい能力だな』
大鉈を小枝のように振り回し二十を超えるマーマン達に突貫する猪名川は、暴風が如き勢いで敵を蹴散らしていく。
だがマーマン達もただやられるだけではなく、数の利を活かして迫る。そして槍を突き立てようとした時、あらぬ方向から矢が刺さった。
「ギョワー!?」
「よっし、大当たりー」
初撃を確認し終えた芦屋はその後も次々と明後日の方向へ矢を放つ。しかし不思議なことにその矢は全てUターンし、マーマンを背後から襲った。
「あーん、ウチやる事あらへんやーん」
「いや、高砂がやったらそれこそ俺等の出番無ぇじゃん」
「そだよー、美月は強すぎるんだよー」
「じゃあ流々ちゃん、ウチ暇やし遊ぼうなっ」
「「遊ぶなっ!」」
レベル帯が合っていないのだろう、哀れにもマーマン達は片手間に駆逐されていくのであった。
あっという間に数を減らしていくマーマン。
だが、じゃれ合う三人を余所に炎樹は一人眉をひそめ何かを考えていた。
「炎樹ママ、どうしたの? お腹いたい?」
『何かあったか?』
「うーん、可怪しいわねぇ・・・」
炎樹は経験から僅かな違和感を敏感に感じ取っていた。
違和感、詳しくはマーマンの行動の異変である。
「嫌な予感がするわ。皆、一度戻るわよぉ」
ダンジョンの僅かな異変は命に関わる。その事を痛い程理解している炎樹は、自分の考え過ぎであることを願いながら三人に撤退の指示を出す。
三人がやや不満を表しながらも素直に指示に従う中、流々は地面を──下層をただじっと見詰めるのであった。
流々「カエルなのに、マーマン(半魚人)なの?」
胡愛「気にしなくて良いのよ」
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