47本目 幼き邪神の心
作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!
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結社ルルイエがそうであったようにクトー達にもルールが存在する。作らねば乞われるがまま力を振るい、この星が人の世界ではなくなってしまうからだ。
「そうですか・・・いえ、無理なお願いを言いました」
書類上のものではあるが、流々の力を知っている六車としては是非とも当てにしたかったのであろう。
そしてその力を与えたのがもしクトーであるのならばと。
しかし残念ながら、そして予想通り断られてしまった。肩を落とし、俯く六車にクトーは言葉を続けた。
『我は力を貸せぬ・・・が、全てはこの子次第だ』
六車は顔を上げる。
『我はこの子の日常が平和であれば他はどうでも良い、しかしこの子が救いたいというのであれば止めはせぬ』
ふわりと流々の上へと降りたクトーは、短い手で流々の頬を撫でる。
『今我の持つ力、権限の殆どをこの子が持っている。我に残っているのは知識のみである』
「では・・・」
『あぁ、この子と護に聞くが良い。ただし取り込もうなどと考えるなよ』
「ありがとう御座いますっ・・・」
クトーの言葉に、六車と新開地は深く深く頭を下げる。
その表情には万感の思いがにじみ出ていた。
◆
「ほーん、そんな事があったんすね」
話し合いを終え兵庫探索者協会を後にした流々達は、明石支部に戻ったところで暇そうにしていたポテ子を捕まえ事の経緯を話していた。
「全く・・・お偉いさんが出てくるわ、クトーさんから初めて聞く話が出るわで全然付いていけなかったわ」
『聞かれなかったのでな』
「それでも重要な事でしょ、早く言っておいてよ。流々に何かあったらどうするのよ」
『む、むぅ・・・』
可愛がっている流々の事を出されるとクトーは弱い。
「こんな所で聞くのもあれなんだけど、以前貴女が言っていた『流々が持つ権限』ってこれの事なの?」
以前ポテ子にルルイエ本部に招かれた際、ポテ子は流々がある権限を有していると話していた。
人間の生殺与奪を決める権利。あの時の護にはよく理解出来ていなかったが今ならば分かる、流々が持つ権限とはつまり『力を貸さない』ことなのだろうと。
「つまり流々・・・というかクトーさんは今も力を使って次元の浸食を防ぎ続けている、流々にはそれを続けるか止めるかを決められるって事ね」
「そうっす、そして止めた場合、人間絶滅に待ったなしっす」
『恐らく10年かからんだろう』
恐らく、止めれば文字通りこの世界は呑まれるのだろうなと、護は思った。
正直、護としてはこの世界が消滅しようと構わないと考えていた。
無責任な事を言うなと言われるかもしれないが、そう思う程度には護は酷い幼少期を過ごしている。
勿論、寧々子や炎樹の事を考えると思うところが無いでもないが、それでも護にとって何よりも優先するのは流々の思い。流々はそうしたいと言えば、護は率先して手伝う気でいる。
何故なら護にとっての世界とは流々の事だからだ。
護にとって世界を守るとは『流々を守る』ことであり、地球を守ることでは無い。
自身の考えを再確認した護は、膝の上でもくもくとお菓子を頬張る流々に視線を移す。
「流々、貴女はどうしたいの?」
護の問い掛けに流々は考える様子を見せ、菓子を飲み込む。
「世界を守るって、僕よく分かんない。何するの?」
「んー、そうっすねぇ・・・そもそも流々ちゃんは人間を守りたいんすか?」
「分かんない」
幼い流々には難しい質問だった。
「流々ちゃん、君は今まで痛い思いも怖い思いもいっぱいしたと思うっす。それでも人間と仲良くしたいっすか?」
ポテ子の言葉に、流々はこれまでの事を思い出していた。
流々にとって最も古い記憶は、母親に食事を抜かれ死ぬほど殴られたことである。
それから母の恋人にも血を吐くほど蹴られたこともあった。
ヤクザに売られそうになった。
脱走し川で溺れた。
ダンジョンに流されてモンスターに体中を食い千切られた。
クトーに助けられたものの人の姿を失った。
モンスターだと追い回された。
人を助けて感謝されたもののそれ以上に罵られた。
あまつさえ石を投げられた。
そして実験動物として外国に売られそうになった。
流々には人間を見捨てるだけの理由が揃っていた。
復讐しようと考えてもおかしくない程の経験をしていた。
そして同時に──。
全てを諦めかけた時、護という最愛の姉に出会えた。
死にかけていた時、クトーという頼りになる父に出会えた。
寂しかった時、ポテ子が抱き締めてくれた。
不安だった時、炎樹が手を引いて歩いてくれた。
悲しくて泣いていた時、寧々子が助けに来てくれた。
一緒に来たネネコファン達が壁になり、悪意から遮ってくれた。
丹波が流々と護が一緒に居られるよう頑張ってくれた。
ダイバーの皆が応援してくれた。
クラスメイト達が優しく接してくれた。
胡愛という初めての友達が出来た。
──大切な人がいっぱい出来た。
寧々子が言っていた通りだった、人間は怖くて悪い人が多い。
でもその中に良い人も居た。
正直な所、流々にも人間と世界を助けたいのかどうか分からないし興味も無い。
流々はただ護とクトーと居られれば、それだけで幸せだからだ。
そして昔ならそれ以外は要らないと答えていただろう、だが最近はそれが少し変わってきていた。
「僕は守るとかよく分からない。仲良くしたいかって考えると・・・まだ怖いよ。でも寧々子お姉ちゃんとか、炎樹ママとか、ククちゃんとか、クラスの皆とか、優しくしてくれた皆とまだ一緒に居たい。僕が何かして、それが出来るなら・・・僕がんばる!」
嘘偽りの無い流々の言葉聞いたポテ子は、八重歯を見せてにぱっと笑顔になった。
その様子を見た流々と護は、不思議そうに首を傾げる。
「・・・そっすか、分かったっす! いやぁー、良かった良かった。もし全滅させるって言ったらどうしようかと思ったすよぉー」
「ポ、ポテ子お姉ちゃんは、助けたかった・・・の?」
「意外ね、貴女は人嫌いというか人間に何の興味も無いものと思っていたわ」
人を平気で陰謀に巻き込む様子からポテ子はどちらの答えでも構わないのだと思われたが、意外にも心から喜んでいる様子が見て取れた。
「いやぁ、ウチは別に人が嫌いなわけでも、興味がないわけでもないっすよ? ただ苦労してまで助ける価値はあるかなって考えてるだけっす。流々ちゃんが動いてくれるなら他の仲間も動いてくれるんで、楽じゃないっすか!」
「あぁ、そういうことね」
常に楽しくて楽な選択肢をとっていくのがポテ子の基準らしく、今回は楽しいが苦労しそうで答えに困っていたらしかった。
「さて流々ちゃん。流々ちゃんはこの世界を助けるって方向で良いんすね?」
「うん」
「なら、流々ちゃんにやって貰いたい事があるっす」
ポテ子は流々の目の前で手を平げて見せる。
「今、日本に居るウチらの仲間は5人っす。外国に居るのを合わせても知ってるのは8人ぐらいなんすけど、これじゃあ守り切れないんす」
流々、護、ポテ子、餺飥、蓮田で五人、恐らくクトーは戦力計算外なのだろうなと流々は納得して、ポテ子の言葉に頷く。
「ここに人間の実力者を足しても、それでも全く足りないんすよ。ここまでは分かります?」
流々は再度、うんうんと頷いた。
「だから、流々ちゃんにミッションっす」
「流々ちゃんには、まだ見つかっていない邪神達を探してきて欲しいんっす!」
いわゆる、お使いクエスト
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最後まで読んで下さり、ありがとう御座いました!
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