46本目 邪神の知る世界
作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!
どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m
世界とはどこか、何を指すのか考えた事があるだろうか?
地球上に存在するもの全てをもって『世界』である、と昔の人ならば答えただろう。ならば他の星は、宇宙は『世界』ではないのか?
答えは是であり否である。
では宇宙の果て、人の行き着けるところまでをもって『世界』だろうか?
それもまた、是であり否である。
『世界』とは、その者が生き、干渉している場所の総称である。
その為、『手に届く範囲が世界』だと答える者と『この世の全てで世界である』と答える者、その双方の意見は共に正解であり不正解だ。
ただしそれが神の視点からすると話が変わる。
クトー曰く、この世界は一冊の本のようなものであるらしい。
世界は何層もの次元がページのように重なり合っており、宇宙とはその中の一枚。
そして地球とはそのページの中にある一行もしくは数文字、そう宇宙とは神の描いた物語である。
何千年も昔に、数百年前に、数時間前に、何度も枝分かれしていった多次元世界、平行世界、あり得た世界そういったものが次元として存在し綴られ続けた一冊の本、それが『神の視点の世界』である。
全く同じで全く異なる宇宙が次元を隔てて同じ座標に何千何万と並んでいるわけだが、宇宙はまだ未完成であり、インクが乾ききっていない状態である。そうなるとインクは向かいのページに、裏のページに染み移ってしまうことだろう。
インクが染みると何が起こるか、当然字が読めなくなってしまう。それ即ち、『次元の侵食』である。
これが地球が生まれて今日までクトー、『邪神クトゥルフ』が防ぎ続けていたものであり、次元に干渉できるクトゥルフにしか出来ないことであった。
そしてこれが現在発生しているすべての事象に関係している。
「・・・想像もつかない事ですが、我々はとんでもなく小さな世界で騒いでいるのですね」
『信じられぬかもしれぬがその通りだ、だがそれが世界であり貴様等にはどうすることも出来ない事実である』
「でもクトーさん、それがアタシ達やダンジョンにどう繋がるの?」
護は未だピンと来ず、クトーに話を促す。
『先程説明したな、次元が浸食してくると。それこそがダンジョンの正体だ。ダンジョンとは別の次元がこの次元を浸食した結果できた染み、つまりダンジョンの向こう側は異世界であり、別の未来を辿った地球だ』
「あれが・・・地球? じゃ、じゃあモンスターとかは・・・」
『はっきりとは言えぬが、何らかの影響でそう進化した生物だろう』
魔法という概念があったかもしれない地球、モンスターという動物が居るかもしれない地球。
そういった別の可能性の地球がダンジョンの奥に広がっていると、クトーは語る。
『次元の侵食を受けると世界は強い方に飲み込まれるか、対消滅を起こし消滅してしまう。しかしそれを防ぐ為に、侵食をダンジョンというシステムに作り変えることで崩壊を防いでいる者達がいる。それが各次元を書き綴っている者達、貴様等で言うところの『神』という存在だ』
「神が我々を護って下さっているということですか」
『そうだ、だが侵食を消すことはできん。我が抑え、その神とか言う奴等が作り変えることで漸くと言ったところだ』
皆が驚きを隠せない中、「そして・・・」 とクトーは続ける。
『我も間もなく抑えきれなくなるだろう、そうなればモンスター共が溢れ出してくる。色々と言ったが、一言で言えばこれは『世界の生き残り戦争』だ』
戦争、その言葉に息を呑む音が聞こえた。
ダンジョンとは新たに生まれた可能性、世界のその認識が大きく間違ってた事を六車は再認識する。そして確信した、地球は今攻撃を受けているのだと。
「やはり、私の予想は間違っていなかった・・・ということですか」
『ほぅ、ここまでの可能性を考えていたか』
「えぇ、流石に神や宇宙の事までは想像も出来ておりませんでしたがね」
六車は目を伏せ自傷気味に笑う。
そして少し考える様子を見せた後、クトーに再び目を向ける。
「・・・我々は勝てますか?」
様々な想いの籠もった短い質問だった。
『不可能だ』
クトーの簡潔な答え、短い一言を聞き六車はソファーの背もたれに身を沈めた。
「ふぅ・・・不可能、ですか」
『不可能だな──今のままでは』
付け加えられた一言に六車が反応する。
「まだ何か出来ることがあると?」
『あぁ、世の中は不条理ではあるが救いが無いわけではない。確かに今のままでは貴様達人間は負ける、数年すれば絶滅するだろう。だがそうさせない為に生み出されたのが、ダンジョンというシステムだ』
護や丹波はピンとこないようで危機に徹しているが、それとは対称に六車と新開地は何かに気付いたようで顔をハッとさせていた。
「もしかして、ドロップ素材のことかしら?」
「成る程、ここ十年ほどの適正者増加はそれが理由ですかっ!」
『ふむ、気付いたか。そうだ、貴様等がドロップ品と呼ぶ物たちは言わば神が用意したパワーアップアイテムの様なものだ』
ダンジョンで倒されたモンスター達は、死亡後体を残さずドロップ品という形で素材のみを残す。それは倒されたモンスターにまつわる物が多く、またその殆どが食材である。
その為専門家達は今日迄『どうやってドロップ品になるのか』ということを議論してきたが、クトーによりそもそも考え方が間違っていたことが明かされた。
どうやってドロップ品になるのかでは無く『何故ドロップ品になるのか』を考えなければいけなかったのである。
何故ドロップ品になるのか、言い換えればなぜドロップするのか、そこに神の意志が隠れていた。
『ドロップ品には魔力が籠っている、そして食し身に付ければ魔力を取り込むことが出来る。扱うことは出来ずとも体内に魔力が溜まり、そして次世代へ魔力や才能が受け継がれる。これがどういう事か分かるか?』
「強くなれ、そして備えよ・・・という事ですか」
『そういう事だ』
クトーの言葉で、六車の中にあった様々な疑問が解消した。
ダンジョンの意味、突如として現れた魔力という存在、スキルという謎の技術が扱えるようになった人類の誕生、そして何より何故日本のダイバーは弱く少ないのか。
世界の食糧事情は逼迫している、何故なら今まで農作物を作っていた土地をダンジョンに奪われてしまったからだ。
その為各国では比較的早い段階でダンジョン産の食料を取り入れていた──日本を除いて。
日本人は良くも悪くも潔癖症で、また変化を拒む傾向にある。
その為、ダンジョンから採れたというよく分からない肉や野菜を忌避する動きがあり、結果魔力を持った子供達の生まれる時期も人数も他国に大きく劣ってしまう。
更には新人類ともいえる強い魔力を持った人間を拒んだことで、国内に高ランクダイバーになれる人間が居なくなってしまった。
「完全な悪循環ですね」
『これをどう伝えるか、それは貴様等に任せる』
「難しいですね・・・」
ダンジョン食材を食べれば強くなると言われれば魅力的に感じるだろう、だがそれをこれから母親になる女性に伝えられるだろうか?
胡愛がそうであるように強い魔力は人を変質させる、それを望む女性は存在しないだろう。だが食べねば地球の未来が閉ざされる、六車と新開地は頭を抱えることしか出来なかった。
六車は目を閉じ、再び考える様子を見せる。
そしてゆっくりと目を開け、意を決したようにクトーに声を掛けた。
「クトーさん・・・貴方は人間の味方で居て下さいますか?」
六車には分かっていた。これから世界中の人間がどれだけ努力を重ねようと、来る日には間に合わないと。
クトーという邪神の力を借りなければ、きっと遠くない未来に人間は死に絶えると。
永遠にも感じる沈黙が流れる。
『我は──』
『──手を貸すことは出来ん』
だってクトーさん、手が無いもんw
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最後まで読んで下さり、ありがとう御座いました!
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