42目 邪神と待ち合わせ
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金曜日、平日最終日の朝の歩道を歩く人の表情は様々である。
明日に何か予定でも控えているのか緊張した面持ちの男子学生。
休日出勤に肩を落とすサラリーマン。
2連休を待ちわびたと足取りの軽い女子学生。
そんな彼等彼女等が行く中、一人のタコ足を持った幼い少女が姿を見せる。
「いってきまーすっ! お姉ちゃん、早く早く!」
「楽しみなのは分かるけど、落ち着きなさい。鍵も閉めないと」
上機嫌で家から出てきたのは流々、そしてそれに寄り添う護である。
件の騒ぎがあった翌日の今日、流々は登校時間になるのを心待ちにしていた。普段より1時間も早起きするほどだ、付き合わされた護は少し眠そうである。
流々が軽い足取りで門に近づいた時、側に誰かが立っているのが見えた。
「ククちゃんっ、炎樹ママっ!」
「おはよう。流々ちゃん、護ちゃん」
「おはよ。ふんっ、来てやったわよ!」
「うんっ、ありがとう! それと、おはよう!」
そう、流々がこんなにも登校時間を待ちわびていたのは、胡愛と一緒に登校する約束をしていたからである。
「ねぇ、やっぱり『クク』って呼ぶの?」
「呼ぶっ! ダメ?」
「ダメじゃないけど・・・わ、分かったわよ、好きに呼びなさいよっ。言っとくけどね、流々が呼びたいって言ったんだからね! 私が呼んで欲しいわけじゃないんだからっ、勘違いすんじゃないわよっ!」
「うんっ、分かった! ねぇククちゃん、手繋ご?」
「す、好きにしたら、良いじゃない」
口では色々言っているが本当は嬉しいのだろう、ツインテールが煌々と燃え、波打っていた。
何故この様な状況になっているのか、その理由は前日に遡る。
お互いの心の内をさらけ出しあった胡愛と炎樹は蟠りを解消した後、流々に今まで避けていた事を謝罪する。
流々は自分も無茶をしたことを謝り、改めて友達になりたいと胡愛に伝えた。
登校の約束や愛称はその際に決まり、そして今ではお互いを『流々』『クク』と呼ぶ仲になったのである。
二人の様子を見て安心したのか、炎樹は学園とは逆方向へ足を向けた。
「それじゃあママはお仕事に行ってくるわねぇ。流々ちゃん、うちの子のを宜しくね」
「ちょっ! ママ、恥ずかしいって!」
「うんっ、いっぱい仲良くする!」
ひらひらと手を振り、炎樹はバス停へ歩いていった。
今日は遠出をしてダンジョンに潜るようである。
「ほらっ、私達も行くわよ」
「うんっ! お姉ちゃん、手っ!」
「はいはい、ふふっ」
右手に姉、左手に友達。
大好きな人に挟まれ登校する流々の心はとても晴れやかで、幸せに満ちていた。
「ちょっと、流々っ! タコ足は下げてっ、重い重いっ肩が抜けるううううっっ!?」
「あ、ごめん!?」
未だ細かいコントロールが苦手な流々だった。
◆
探学には通常の学校とは異なる学習内容が幾つか存在する。
その内の一つが『ダンジョン学』。ダンジョンの種類から仕組み、そして歴史など、ダンジョンに纏わる知識を得る授業である。
尚、モンスターに関しては『モンスター学』というものがあり、それとは別枠である。
「──と、この様にダンジョンには大きく分けて2タイプありまして、それにより難易度も大きく違います」
担当教諭が分かりやすくイラスト付きで説明してくれる内容を、流々はふんふんと頷きながらノートに書き写していた。
ダンジョンには大きく分けて『突発型ダンジョン』と『固定型ダンジョン』がある。
固定型はダンジョンをクリアしても消えることがなく、何度でも出入り出来るが総じてモンスターが強い。
対して突発型は一度クリアすると消えてしまい、モンスターも然程強くはないが、何処に出現するか予測不能なうえ氾濫が起こりやすい為早めの対処が求められる。
そこまで説明を終えたところで、教諭は生徒に振り返る。
「さて、ここで問題です。九冬さんが以前住んでいらした《邪神の呼び声》は、どちらのタイプでしょう?」
「固定型ダンジョンです!」
「正解、では氾濫を最後に起こしたのはいつでしょう?」
「えっ、この間じゃないの?」
「はい、不正解。正解は34年前です」
教室に「えっ?」という声が響く。
「先日起こった事件、あれはモンスターの大繁殖が原因です。これはモンスター学の範囲ですが、ダンジョンからは氾濫以外にも様々な理由でモンスターが溢れる事があります。ダンジョンは未だ未知数です、皆さんは固定概念に縛られず様々な視点で考えるようにして下さい」
教諭がそう締め括ったところで終業のチャイムが鳴る。
「今日の授業はここまで。来週には体験学習がありますので、予めパーティーを組んでおいてください。以上!」
「「「ありがとう御座いました!」」」
教諭の退室を皮切りに、静かだった学園が賑やかさを取り戻す。
クラスメイト達はあちらこちらで仲のいい者と会話を始めるが、内容は揃って体験学習についてであった。
「体験学習か、やっと入れるんだな」
「最期に入ったんは中3の三学期やっけ? あの時は先生とかプロの人の後ろ着いてっただけやったなぁ」
「先輩に聞いた話だと、高校からはパーティー毎に分かれて浅い階層で実際にモンスターを倒してくんだってー」
「おぉ、マジか! 腕が鳴るぜ!」
芦屋、猪名川、高砂は小学一年から探学の生徒であり、既に数回授業でダンジョンに入った経験がある。
「今回、流々ちゃんはどうするんだろ?」
「ウチらとパーティー組む? あっ、そもそも仮免下りるんやろか?」
「っていうか生徒側で来るのか? どっちかと言うと護衛側じゃねぇか?」
ダンジョンに潜るには、仮令探学の生徒であったとしても正式な免許証が必要となる。
許可証は試験を受け合格せねばならないのだが、これは特別な許可がない限り18歳未満は受けられない。
だが探学の生徒達は、授業でダンジョンに潜らなければいけない。そこで発行されるのが、特定の条件下で探索活動が許される『探索活動仮免許書』。通称『仮免』である。
こちらは探学の生徒である事が確認できれば許可が下りるのだが、ただ発行までに時間がかかるのだ。
「ま、仮免は私達が考えても仕方ないよ。それより潜る時はパーティーどうするの? できれば私は流々ちゃんと一緒に潜りたいなー」
芦屋に限らずクラスメイトの誰もが流々とパーティーを組むことを望んでいる、しかし学園側の流々の扱いがよく分からない。
流々は強さだけで言えばAランクを超えるのである。
「僕、お姉ちゃんと潜りたいな!」
「「「いや、ダメでしょ・・・」」」
「えー・・・」
過剰戦力である。
作者コメント:Aランクの姉と、特Aランクの妹。たぶん日本の最強戦力です・・・。
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