40本目 邪神の追い込み漁
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どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m
その日、胡愛は平常通り登校し何の変哲もない一日を過ごしていた。
おかしなところは無い、なのに謎の緊張感をひしひしと感じる。
「な、何なのよいったい・・・」
今日は何故か流々が話し掛けてくる様子も無い。
遂に諦めたのだろうかと、胡愛は安堵と寂しさを滲ませる。
何も変わらない一日。だが持ち前の勘の良さで、胡愛は何かおかしさを感じ取っていた。
まさか自分を捕まえる作戦が立てられているなどとはつゆ知らず、掴めない違和感の正体に居心地悪そうにしている。
今日は早く帰ろう、そう思った胡愛は終礼のチャイムと同時に席を立った。
去り際、いつもと様子の違った流々が気になり、ちらりと様子を伺う。
(──え、居ないっ。いつの間に!?)
数日だが胡愛なりに抱いた流々のイメージ、それは『泣き虫なのんびり屋』だ。
こんな気配を消すように居なくなるなど考えられない、何より構いたがりのクラスメイト達がそれに騒がないはずが無い。
やはり何かがおかしい、胡愛でなくとも気付いただろう。
奇妙な感覚につい足を止めてしまった胡愛、そこへ声をかけて来るものが居た。高砂を含む女子生徒達である。
「なぁなぁ、胡愛ちゃん帰んの早ない。ちょっとウチらと遊ぼぉや!」
「そうそう、いつも絡みが少ないから、色々聞きたいしねー」
「お母さん、ダイバーなんでしょ? そのへんもちょっと聞きたいなぁ〜」
わらわらと集まってくる女子達。
一見するとただ話し掛けられているだけだが、その動きは少しづつ胡愛を包囲していた。そして、それに気付かない胡愛でも無かった。
「ごめん、そんな気分じゃないの。また今度」
胡愛は女子達をあしらい逃げようとするが、相手は同じ女子とは言え年上の生徒ばかり。
幼さ残る胡愛が押しのけられるようには思えない。
徐々に狭まっていく包囲網、だがその人垣の中から胡愛の姿がぱっと消える。
「えっ、居なくなった!?」
「どこ行ったの!?」
まるでバレエのような動きで人の僅かな隙間をするりと抜け、胡愛は教室後ろの扉から出ていこうとしていた。だが高砂は逃すまいと声を上げる。
「皆バレたで!! プランBに変更っ、男子共止めえええっ!」
「「「応っ!!」」」
高砂の指示に扉を塞ぐのは、猪名川を先頭にスクラムを組む男子生徒達5名。
「工藤ちゃん、ここは通さねぇぜ!」
「アンタ達、何なのよっ!?」
胡愛の叫びはそっちのけに、猪名川は絶対に通すまいとスキルを使う。
「──《獣化・シールドボア》!! 抜けられるものなら、抜けてみなっ!」
オークを思わせる重量級モンスターに身体を変化させた猪名川は、最早人の力では動かせぬ肉の壁であった。
流石の胡愛も抜けられまいと勝利の笑みを浮かべた猪名川の前で、胡愛はまたもバレエの動きでくるりと回る。そして──強力な後ろ回し蹴りが繰り出された。
「ごっふぁあああああ!?!?」
「「「ぎゃああああああああああっっっ!?」」」
その華奢な脚から放たれたとは思えない蹴りに、猪名川を含むスクラムを組んでいた男子生徒達はまとめて薙ぎ倒された。
「マ、マジかよ・・・流石は、高魔力保持者・・・」
まるでリスがクマを投げ飛ばしたかの様な非現実的な光景だが、実は探索者学園においてそう不思議な事ではない。
一般人とダイバー適性者の決定的な違いは『魔力の有無』である。
魔力がダイバーの身体能力と生命力を上げ、またモンスターへの攻撃を可能としている。つまり魔力が高いダイバー程強い。
この探索者学園の生徒たちは、既にEランクダイバーと同等の魔力を持つ。つまりそれだけ一般人とは隔絶した能力を持っているわけだが、中でも突出して魔力の高い生徒が居る。
胡愛もその一人で体が変質する程の高い魔力を保有している、故に蹴れば男の数人軽く蹴り飛ばせるのだ。
「ごめん、じゃあね」
胡愛は軽く謝罪し、男子生徒達を飛び越えて廊下に出ていった。
「胡愛ちゃんっ、そんなんしたらパンツ見えんで!」
「短パン履いてるわよっ!!」
胡愛は顔を赤くし、「付き合ってられないわっ!」とズンズン廊下を歩いて行った。
男子が敵わなかった以上、高砂に出来ることはない。だがこれで終わりではない、昔とある武将はこう言った『矢は三本合わされば簡単に折れない』と。
胡愛は恐らくまだ控えているであろう様々な妨害にいちいち付き合う義理は無く、足早に下り階段に向かう。
階段を下りればそこはすぐ下足入れである。胡愛は後ろから誰も追って来ないか警戒しつつ階段を降りようとする。だがそこには──階段を埋め尽くす侍達が居た。
「火付盗賊改であるっ、神妙にお縄に着けー!」
「バカなんじゃないのっ⁉」
最前列で陣笠を被り、提灯片手に指揮をとるのは芦屋である。
「今日この日の為にクラス全員分の衣装作って貰ったんだ〜、カッコいいでしょ?」
「バカなんじゃないのっ!? バカなんじゃないのっ!?」
「さぁ、皆の者! やっておしまいーっ!」
何か色々混じっている芦屋だったが、物量で押すというのは有効らしく、胡愛は上階への退避を余儀なくされた。
「はぁ・・・はぁ・・・アイツ等しつこ過ぎるのよっ!」
上に逃げれば追い掛けられ、別の階段で降りようとすれば阻止され、窓から出ようとすれば鏃の無い矢を射られ、胡愛はとうとう屋上に追いやられていた。
「いったい何が目的なのよっ!」
目的は不明だが今回のことに流々が関わっているだろうことに、胡愛は勘付いていた。
流々は未だ姿を見せない。もしや今まで避け続けた報復だろうかと考え、頭を振り即座にかき消した。
流々はそのようなことをする人間ではない、その程度のことは胡愛とて理解している。
ならば今回の騒動は? もしや流々を可愛がる者達の暴走だろうか。あながち無くもなさそうなので、判断に困る。
よく分からない事だらけだ。
だがとにかく、屋上ではあるが外に出ることが出来た。「あとは帰るだけ」と胡愛は呟き、息を整えて顔を上げる。
その時、胡愛に影が落ちた。
見上げるとそこには、タコ足含め10本の手足を大きく広げた流々が胡愛目掛け飛び降りてきていた。
「ぎゃあああああああっっっ!?!?!?」
「く、くく胡愛ちゃんっ、つつ捕まえっ──っだ!?」
びたーん!!
胡愛は避け、流々が顔面から墜落した。
「ちょっ、大丈夫!? すごい音したわよっ」
「ぐすっ、よけたあああっ! くるあちゃんが、よけたあああっ!!」
「避けるに決まってるじゃないっ! それより怪我はっ、大丈夫なのっ!?」
「ゔああああああん!」
胡愛は号泣する流々の身体を触り、大慌てで無事を確認する。
幸い額が赤くなっていることと鼻血が出ていること以外怪我は無さそうだった。すると安心からか今度は胡愛が泣き出す。
「よがっだあああああっ、うわああああん!」
「い゛だいよーっ、う゛ああああああん!」
泣き声を聞きつけたクラスメイト達がぞろぞろと屋上に集まってくる。
皆何がどうなったと二人に声を掛けるが、二人は泣くばかりだった。
「けががなくてよかったあああああ!」
「なんでなくのぉーっ、ゔえええええんっ!」
「しらないわよ、ばかあああああっっっ!!」
作者コメント:鬼平犯科帳っておもしろいよね。
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