38本目 邪神は褒め殺される
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本日はオフなのか普段着の炎樹は、護の隣に座り膝に居る流々を撫で始めた。
「流々ちゃん、元気ないわねぇ。何かあった?」
穏やかな口調で話しかけてくる炎樹。胡愛から何も聞いていないのか、その様子は普段通りである。
胡愛の事がどうしても気になる流々は、思い切って胡愛の事を聞いてみた。
「炎樹ママ、あ、あのね。胡愛ちゃん、知ってる?」
「胡愛ちゃん? 勿論知ってるわよ、私の可愛い娘ですものぉ! そういえば名前を教えた事なかったわねぇ、流々ちゃんと同じ学年なんだけどクラスも一緒?」
「う、うん、おんなじクラス・・・胡愛ちゃん、僕のこと何か言ってた?」
「特に聞いてないけどぉ・・・もしかして、うちの子と何かあった?」
疑問符を浮かべる炎樹に、流々はその日教室で会ったことを伝える。
すると炎樹は思い当たる節でもあるのか、困ったように眉をハの字にした。
「そんな事があったの、うちの子がごめんね。あの日、帰ってきてから様子が可怪しかったから気にはなっていたんだけれど・・・流々ちゃんのを悪く言う事は無かったけど、何に怒っているのかも分からないのよねぇ」
「胡愛ちゃん、まだ怒ってた?」
「うーん、ご飯はちゃんと食べるし何とも言えないわねぇ。流々ちゃん、うちの子と会ったことないのよね?」
「う、うん、学園で初めて会った」
「じゃあやっぱり、あの子が勝手に怒っているだけだと思うのよね」
親と言えど、子供の全てが分かるわけではない。
だが心情的には子供のことが分かってあげられないというのは、親としては情けなく感じられるものである。
炎樹は我が子の事が何も分かっていないと、気落ちするのであった。
「流々ちゃん、胡愛ちゃんは少し素直じゃない性格だけれど悪い子じゃないの。昔、色々とあって少しツンツンしてるのよぉ。だから、良かったら友達になってあげて欲しいわ」
「う、うん。僕も友達、なりたい」
「ありがとう、流々ちゃんは本当にいい子ねぇ」
炎樹はその言葉に流々の髪を梳くように優しく撫で、流々はその気持ち良さに目を細め猫のように甘えた。
◆
流々達を呼んだ職員が到着し、個室に案内するのを切っ掛けにその場は解散となった。
ポテ子が無理やり流々達に着いていこうとしたのだが、炎樹に襟首を掴まれ引き摺られていくのももう見慣れた光景である。
今回流々達を呼んだ女性は名を丹波 薫と言い、ほぼ護専属となっている職員である。
護がダイバーになった頃から担当していて、流々達に学園に通うよう勧めたのも彼女であり、付き合いの長さから本人は護の姉のような気持ちでいる。
所謂お節介焼きな女性である。
「突然呼び出してすみません。実は流々ちゃんに連絡と言うか、お願いがありまして」
「お願い?」
「そう、お願い。お姉さんね、護さんと一緒に流々ちゃんの担当にもなったの。『流々ちゃんは良い子なんだよ!』って知って貰わないと、お姉ちゃんとお出掛けも出来ないでしょ? その為に配信活動しようって前にお話したの覚えてる?」
「う、うん。何となく」
テンタクルス事件が解決した際、彼女より挙げられた提案が探索配信を含めたアピール活動。
流々はその容姿により、一般人に受け入れられ難い。見た目はタコ足が生えただけの少女だが、やはり根本的に人とは違う生物である為だ。
そして一般人は人間かモンスターかでしか判断しない。従って流々の世間に情報を浸透させ、流々が無害であると知ってもらう必要があった。
全ては流々が人の中で生きていけるようになる為・・・というわけでもなく、当然様々な思惑が絡んでいる。
流々の為、勿論それも理由でもある。
だがまず、流々という強カードを手放したくないというのが一つ。
そしてもう一つが協会の宣伝に利用したいからである。
日本はダンジョン出現当初、対応に失敗し強いダイバーを外国に大量流出させてしまった。その結果、氾濫に対応できず国土の3割を失ってしまう。
そもそも国民がダイバー達を強制登録させろと言い始めたのが原因だったりするのだが、失敗からの水掛け論に意味はなく、日本がモンスターに負けたと言う事実が残る。
そのような経緯から50年ほど経過した今でも、自分達のことを棚に上げ失敗を責めてくる者が多いのだ。
そういったネガティブなイメージを、流々と護に払拭してもらいたいと協会は考えているらしい。
「まぁ難しい話は護さんにするので、流々ちゃんは気にしなくて良いですよ。ただ、流々ちゃんの配信がいつ始まるんだという問い合わせが凄くてですね・・・」
「・・・よく分からないけど、僕を見たいの? どうして?」
流々は自分が忌み嫌われるような容姿をしていると考えており、人とは違うこの姿を見たいという気持ちがよく分からなかった。
「そんなの決まってるじゃないですか、可愛いからですよっ!」
「ひゃううう!?」
いきなり目の前で叫ばれ、流々はビビる。
「流々ちゃん、貴女自分がどれだけ可愛いか理解してないんですか?」
「え、え?」
「お人形の様に整った顔に、小動物の様な行動! 庇護欲そそられる表情! なのに可愛いとは対極にいる軟体生物の姿に、大型モンスターさえ圧倒する強さっ! もうギャップ萌えですよ、これで人気でないわけがないですっ!! 少しでもダンジョンに足を踏み入れた人なら、流々ちゃんの魅力にすぐ気付く筈です!」
「あ、あうぅぅぅ・・・」
丹波の言っていることはよく分からないが褒められていることだけは理解できた流々は、恥ずかしさからクトーで顔を隠した。
そして流々の様子を微笑ましく見ていた丹波は、真面目な顔をして護の耳元に顔を寄せる。
「それと、外国からの情報開示要求が日に日に増しています。早めに流々ちゃんの事を広めないと、強硬策に出る国もあるかも知れません」
「分かった、注意するわ」
あまり流々に聞かせたくない内容。
人類が初めてコンタクトを取れたモンスターなんて日本には勿体ない、流々を偉大な我が国に寄越せという声が来ているのだ。
当然どの国も流々が人間だったであろう情報を掴んでいる。それでも流々をあくまで『モンスター』と呼ぶ理由は、モンスターならば死んでも問題がないからだ。
大国は流々を人類進化の可能性として見ている。
実験動物を殺して罪に問われた者はいるだろうか? いるはずが無い、何だかんだと自分たちの為なら動物が死ぬのもやむ無しと大体の人間は意識無意識に考えている。相手がモンスターならば、その扱いはそれ以下だろう。
──それが可能ならば。
「流々を自分達で何とか出来るとでも思っているのかしら?」
「本当に愚かとしか言えません。まぁ聞くと知るでは全く違います、知らない者達の反応はそういうものなのかも知れません」
正直、人間が流々に勝てるビジョンが見えない。
護はあまりの馬鹿らしさに溜め息をついた、そして未だ恥ずかしそうにヒレをパタつかせる流々に視線を移し「それに・・・」と呟く。
以前ポテ子は流々は人類の生殺与奪を握っていると言っていた、そういう権利を持っていると。
詳しい内容はまだ伝えられていないが、恐らく単純に暴れるといったものでは無いだろう。もっと絶対的な何かである。
これは丹波に相談すべきだろうかと護は考えたが、まだ詳細の分からない状態であり、場合によっては流々が人類の敵になる可能性もある。
安易な行動は出来ないなと、一旦その事をぐっと飲み込み流々の頭を撫でた。
流々は護がそんな事を考えているとはつゆ知らず、嬉しそうに更にヒレをパタつかせていた。
「あの事件が終わってから引っ越し、試験勉強、入学と色々続いていましたので、もう少し落ち着くまで待つつもりだったんだけど、見たいって人が多くてねぇ・・・困ってるんですよ」
「そんなに僕が見たい、の? へ、変なひと多いんだ、ねっ!」
「変な人・・・まぁ小さな女の子が見たいって言ってるんだから、あながち間違ってもいないわね」
「全然違いますからね?」
『幼女が見たい』と『活躍が見たい』では意味が全く違うので、丹波は溜め息をつきながら訂正する。
「もし流々ちゃんの都合が良かったら次の日曜日はどうかな? 自己紹介みたいな軽いやつで良いんだけど」
「お、お姉ちゃんも一緒?」
「うん、サポートに来てもらったら良いよ」
「わかっ、た。ががが、がんばるっ!」
こうして流々の配信が決定した。
しかし丹波は失念していた、邪神の関わることに平穏など無いということに。
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