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トイレの中

99話 トイレの中


 合気道は、試合の大会がない。

 大会は演武を見せ、どれだけ手練をつんだかを発表する場で、空手や柔道のように闘い強さを決めたりしない。


 おまけに中学に合気道部なんてある学校が少ないせいもあり、県で一番と言っても格闘技の猛者になったわけではない。


 アヤが、言ってた。お姉ちゃんが合気道をやめてテコンドーにいったのも、そこんトコにあるのかな? 

 ウチにいた頃は、格闘ゲームで小さいあたしらに手加減なくボコボコにしてくれた。

 でも、普段は優しい人でテコンドーの試合を見て普段と違うお姉ちゃんに驚いたのと、ゲームのお姉ちゃんを思い出した。


 お姉ちゃんは、テコンドーでオリンピック選手の候補に選ばれながら練習中の事故で辞退し、それからあたしら家族の前から消えた。



 全国合気道演武大会が、都内で、おこなわれマネージャーというコトであたしら合気道部員にまざりアヤも同行。

 アヤは他部だけど、あたしの付き添いで先生にOKをもらった。


 実はあたしもアヤも都内に来たのは、初めての千葉のいなか者。


 試合ではないので、緊張感もそれほどない。


「さすがだな。姉の愛と同じ舞台に立てるとはなぁミヤ。リラックス、リラックス」


 相変わらず変な動きをして言う先生。

 その指の動きが卑猥に見えた。


「大丈夫です先生。あたしは緊張とかしてませんから」

「そういうトコは、姉の愛とは違うミヤのとりえだ」

「ミヤちゃん頑張って!」

「アヤ、あんたもやっていれば一緒に参加出来たのに……」

「わたしはミヤちゃんみたいなキレイな演武は無理だから。大島さん、姉をよろしく」


 大島さんは、3年の先輩であたしの演武の相手をしてくれる。


「獄門島さん、妹のアヤさんが相手をしたらどっちがどっちかわからなくなって審査員が混乱するわよ」


「ウハハ、そうだな。頑張ってやってこい!」


   パン


「あ」


 先生があたしのお尻をたたいた。

 アヤと先生ロリコン説を話たから意識してしまった。

 先生、ソレッセクハラ。 


 あたしの演武が終わり、十五分間の休憩が。

 

 あたしはトイレに行き。

 個室に。


 なんだかんだ言ってたが、全国からの出場者。ホントは、ちょっと緊張していた。

 

  ジャーッ


 隣から水を流す音が。

 でも、また。ブリブリという音が。お隣さんお腹こわしてるのかな。


「はあー」


 って、ため息が。聞こえた。


 ガタガタとトイレットペーパーをまわし取る音。そしてまた、水が流れた。


 あたしが個室から出ると、隣も同じタイミングでドアを開けた。


「お姉ちゃん!」


「ん、ミヤ?」


「お姉ちゃん、来てたの」

「ああ、たまたま近くで仕事があったんだよね。ミヤの演武、良かったよ。わたしの中二のときよりずっと良かった。玉蟲先生元気そうだったね。客席から見えた。アヤも合気やってるの? 一緒に居たよね」


 久しぶりの再会。やめても興味あったんだ。お姉ちゃん。


「アヤだけじゃないよ。隣のシンペイも居るよ」

「新平くんと合気道部に入ったのよね。そうかぁ懐かしいなぁ……あの泣き虫シンペが」

「お姉ちゃん、お盆に叔母さんトコに行ったんだって。なんでウチに帰らなかったの?」

「いろいろ面倒だっから……」

「最後まで見てくの?」

「いや、ミヤが出たから帰ろうと思って……まだ、仕事があるから」


「そうなんだ。ねぇ仕事ってナニしてるの連絡とかナニもないから心配してんだよ」


「あの、とーちゃんやママは心配なんてしてないでしょ。便りがないのは元気な証拠とか、言ってさ。ミヤも心配いらないよ。じゃアヤによろしく」


「待ってよお姉ちゃん!」


 あ、手を洗わないで行っちゃった。


 なんで合気道をやめたのか聞きたかったのに。テコンドーのことも聞きたかつた……。それに近況と連絡先とかも。


 なんの仕事してるのお姉ちゃんは。

 でも、元気そうだったからいいか。 

 あ、お腹は大丈夫だったのお姉ちゃん。


「あ、ミヤちゃん。続き、始まるよ」


 アヤがトイレに。


「ねえ、アヤ。ココに来るとき誰かを見なかった?」


「会ったよ。お姉ちゃん!」

「あんたも、会ったのね」

「ミヤちゃんも! 話した?」

「少し……アヤは?」

「わたしも。仕事が忙しいから帰るって……」


「お姉ちゃん、仕事のコト言っていた?」

「ナニしてるのかと聞いたらMIBと言って走って行っちゃたわMIBって、メン・イン・ブラック? まさかね……」

「それってコンピューターの会社じゃなかったけ?」

「違うと思う……」


『獄門島家の双子と長女』の巻 おわり


               つづく

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