信じる者は呪われる
96話 信じる者は、呪われる
アメ横の雑貨屋さんのお婆ちゃんにアキバのショップの詳細を聞いて秋葉薔薇に。
メイン通りから、横に入った裏通りのビルの二階だとか。
入り口が狭いので見過ごさないようにと言われた。
階段のあるドアに「不死蝶」という店名が書いてあると。
あった。
これは常連しか来ないんじゃないかと思うドアだ。
不死蝶の字もかすれてる。
ドアを開けると、階段が。
上がるとフィギュアの箱が積まれた倉庫のような、せまい店で。
客は誰も居ない。
奥に入るとガラス棚があり、箱のないフィギュアたちが並んでいた。そこを見ても新風セツラは、なかった。
おそかったか。
「あの……」
店内で声をかけられた。
「はあ」
「やっぱり。獄門島さんだ!」
その少年の声がせまい店内に響き渡る。
低いガラスケースの奥の長髪の男性店員がこちらを見た。
「等々力くん」
「まさか、こんなトコに獄門島さんが……やっぱり、探してるのですねフィギュア」
「まあそんなとこ……友達に頼まれて」
「でも、この店に来るなんて、よほどのレア物を探してるんですね」
「まあ……」
わたしは店員のトコへ行くと、新風セツラのフィギュアの有無をたずねた。
「いや、ありませんが……何処でその話を?」
「アメ横」
「あの婆さんですか……。なら、言いますが。あのフィギュアは入ってすぐにオーナーが、どこかへ」
どうやら店出しをしなかったようだ。
「またね」
と、わたしは等々力和泉に一声かけて店から出ようとすると。
スカートの裾をつかまれた。
「待って下さい」
「ごめんね。忙しいから」
「すみません。聞こえちゃたんです。新風セツラのフィギュア。ボク持ってます」
なんと中学生の彼が最終回のスーツを着たセツラのフィギュアを持っていると。
アメ横の雑貨屋で中古のセツラを買った子供とは、彼とその友人だった。
マニアのあいだではレアな品だけに見つけたときは貯金をおろしてまでして買ったそうだ。
それを見に、彼の家に。
手にとって、色を確認した。復刻物ではない。
例のスマホの画像と見比べた。
「それ、間違いなく初期に出たレア物です。通称『呪われたフィギュアの新風セツラニュースーツバージョン』」
「で、等々力くんは、大丈夫なの?」
「多分……。テストの成績が悪かったとか、体育の時間に転んで、かるい捻挫しましたが、関係ないでしょ。テストの前の日は、ほとんど勉強せずにゲームしてましたから。呪いで、かるい捻挫ってないですよね。こんなコトを大げさにネットにあげるヤツとかいるから変な噂になるんです」
「そうね……で、もう一体を買ったという友だちは?」
「多分偶然だと、思いますが……先週話題になっていた大手の会社の倒産。知ってますよね」
「ええ、けっこうなニュースになり、いまだに売買などで不正があったやらと問題も出まくり。事件にもなって騒がれてるわね」
「友だちの両親がその会社の社員だったんですよ」
「それは不幸な……」
「彼はきっとあのフィギュアのせいだと。売りたがってます。彼はボクと違い『ライゼロ』のファンでもなく興味本位で買ったので手放すのになんの未練もないようです」
「じゃあその友だちに連絡をして、わたしが……」
いやまさか、最初に連絡をした等々力くんが持ってたなんて。
最初に協力してもらっていたら早くかたづいた仕事だった。
会社に帰り、そのコトを社長に伝えると、依頼人から返信がきて相手の言い値で買うと。
はじめから新品は無理と思っていたらしく、箱なしの中古でも充分だということだ。
その後の等々力くんが失恋して落ち込んでると祖父であるウチの等々力さんから聞いた。
まさか、呪いではあるまい。
等々力さんの話では街で見かけたロリータファッションの女の子にフラれたと。
もしかしてカオルかテマリかと思いメールで、白いのか黒いのかと等々力くんに聞いてみた。
そしたら黒と白のアキバのメイド喫茶の娘だと。
メイド喫茶のバイトの娘か。
等々力和泉も田守くんみたいに年上好みなのか?
『呪われたフィギュア』の巻 おわり
つづく




