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91話 孫


「獄門島さん、ちょっといいかな」

 

 午前中ヒマしてる、わたしのデスクに会社の最高齢ベテラン探偵の等々力さんがやってきて、外のカフェ月光に行くことに。


「あら、等々力さん久しぶり」


 珍しく午前中に社長の琴吹好きの女将が居た。


「実はな、孫が来月誕生日なんだ。小さい頃は、まあ子供の喜ぶ物と、適当なオモチャを買ってやってたんだが、さすがに中学生になるとな……」


「あの、わたしに中学生のお孫さんへのプレゼントの相談ですか……それは」


「さすがだ、飲み込みが早い。ナニをやっていいのかわからんのだ」


「子供とか、いない未婚のわたしに聞かれても……中学生ですか……むずかしいなぁ」


「それとなく欲しいものはないかと、聞いたんだが」


「なんと?」


「新しいスマホと……。実は、母親に高価な物はあげないでくれとクギをさされているだよ」


「じゃ簡単だケーキとか、なにか美味しい物でも」


「実は孫はダイエット中なんだよ、ぽっちゃりでな。それにケーキは親が用意する予定になってる」


「そうですか、じゃ遊園地とか、テーマパークに連れてくとか」


「それがなウチの孫は出不精でな、あまり外へは出かけないんだよ……それもあってなのか、ぽっちゃりしてる」


「お孫さんの趣味は?」


「イズミの趣味ねぇ……。絵を描くのが好きで、小学生の頃からよく賞をとってた。よく部屋にこもって描いてるようだ」


「絵ですか。絵画ですか?」


「いや、漫画のようなものらしい。中学生になって、なんかのサークル入ったらしくて、年末のコミケとかに出るとか」


「そういう方ですか、なら道具とか」


「道具……と、言われても何を買っていいのやら」


「あの、お孫さんはパソコン使ってます?」


「ああ」


「じゃ道具はいらないか。やっぱり、お孫さんに聞かないと。でも、そういう相談ならわたしより歳が近い田守くんとか金田一さんの方が?」


「ああ、だが彼らは若いから、話しにくいんだよ……」


 あー。等々力さん、わたしをいくつだと?

 彼らより少し上なだけですよ。


「あ……。孫は、なんとかってーアイドルグループのファンでな、小さいの頃はテレビを見て踊ってたわ」


「なんというグループです?」


「なんだっけ……幽霊坂じやなく、悪霊塾でも、ジェイソンマスク」


「そんなホラーな名前のグループあります?」


「おやすみフレディ! だった」


「ホラーっぽい名前で思い出したんですか? それ、たしか5人の男性グループですよね、韓国人が二人居るわよね」

「詳しいね……」


 聞いてなかったけど孫は女のコだよね。イズミっていった。


「そーゆーの詳しくありませんけど。たまたま。あの、コンサートのチケットとかは?」


「来月にあるのかな?」 


 私はスマホで「おやすみフレディ」・コンサート・ライブで検索した。

 このまえ田守くんに検索の仕方を教えてもらった。簡単だったマイクマークを押してしゃべればイイ。


「あー残念、今年は夏のライブまでで先がない」


「残念だな。そうだ、獄門島さん、孫に会って、それとなくプレゼント可能な物がないか、探ってくれないか。もちろん報酬は出す」


 まあ暇だったし、意外と報酬が良かったので、アルバイトだと思って引き受けた。


 小遣い程度だけどね。


 孫って可愛いんだな、やっぱお祖父ちゃんわ。




 その週の土曜日。わたしは等々力さんのお孫さんに渋屋の駅前で会った。


「私の孫の等々力和泉だ。彼女は私の部下の獄門島さんだ。悪いな、イズミ。約束日に仕事が入ってしまい。この人が代わりに映画に付き合ってくれる」


 見る映画は、中学生以上は保護者と一緒でないと見れないエロチックバイオレンスホラーである。


 しかし、わたしは、てっきり名前を聞いて完全にお孫さんは女のコだと思っていたが、男のコだ。

 イズミという名の男のコ。


 たしかに顔は丸いし、少しお腹がでたぽっちゃり系だが、想像したほどのおデブさんでもない。


 黒縁のメガネでコミケを楽しみにしているオタク系なのはわかった。

 着ているTシャツは、わたしが知らないアニメの女のコの絵が表一面にプリントされてる。


 この男のコが男性グループ「おやすみフレディのファンなの?


 後で聞いてわかったのだが、彼がファンなのは「貞子の井戸」という名のガールズバンドだった。


               つづく

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