ジラーゴ像
87話 ジラーゴ像
日比屋の地下鉄駅から出て、ちょっとのトコに某怪獣の像がある。
わたしは、そこの前で、旧友と待ち合わせをした。
なかなか時間がとれないというので、ひと月前に約束し、スケジュールをうまく調整してこの日に。
まあわたしのスケジュールなんて、ないようなものだけど。
わたしは、約束した時間の20分前に来た。
旧友は、けっこう時間にうるさい。
平日なので、人はあまりいない。
昔は30分前には来てた旧友。
今日は、まだ来てないようだ。
某怪獣の像をカメラで撮りまくってる初老のおじさんが居た。マニアかな?
移動しながら、いろんな角度で撮っている。
スーツ姿で口髭をはやした品の良さそうな、おじさんだ、地方から来たおのぼりさんには、見えない。
「野々宮、それくらいでいいわ」
近くのファッションビルから現れた女が撮影しているおじさんに言った。
「あ、ハルカじゃない!」
「あら、アイッ。もう来てたの。まだ20分前だよ」
一分でも遅れたら、うるさいあんただから早く来たのよ。
20分ナニして待ってようかと思ってたんだから。
「彼は執事の野々宮。昔会った事がありますわよね」
そうだっけ。忘れてた?
初めて見るおじさんかと。
多分わたしらが子供のときは、その野々宮さんは執事とかじゃなかったんじゃ。ソレにもっと若いハズ。口髭もなかったんじゃ。
わたしの旧友は、ハニークィーン製菓の創始者の孫のいわゆるお嬢様だ。
会社名は、その姓から。
ハルカのフルネームは。
女王蜂遙。
愛とは、小中と同じ学校で、同級生。
わたしたちってそんなに仲良かったけ。
彼女が成長すると会社も大きくなり、今じゃ知らない人がいないと思うくらい、大手お菓子メーカーに。
身なりも、わたしが横を歩いたら、いけないんじゃないかなという高級ブランドに身をつつんでいる。予想はしてたけど。
わたしは、いつものバケットハットにTシャツでアヒルの柄の傘。
コレは今日は日傘だ。
バッグもいつもの肩掛けのお古。
ちょっとまだ暑いので今日はロングスカートはやめてショーパンを履いてきた。
まあ、相手はお嬢様と、わかってたけど。
執事までいるとは。
ハルカは、執事さんが撮った写真をチェックしてる。
「画像の半分に鳥がとまってるじゃないの撮りなおして」
「ハルカって、そーゆー写真撮る趣味あったっけ?」
「あなたのせいよ」
「え?」
「あなたが、ジラーゴの像の前で待ちあわせって……」
「ナニ、ソレ? モライ像の前だったら、モライの写真撮りまくるの?」
「そんなわけないじゃない。ワタシ、あなたがジラーゴと言うまでジラーゴがナニか知らなかったのよ。で、野々宮に聞いたら。第一作目の映画『ジラーゴ』を見せてくれたの。お恥ずかしい話、ワタシはソレを見てジラーゴをはじめて知ったわ。ココの像、はじめは元野球選手の像とか。その映画で、ジラーゴにハマってしまいましたワタシ。で、その後『ジラーゴの逆襲』から、最新作『シン・ジラーゴ』まで観ましたわ」
さすがにわたしでも初作をDVDで観て。
話題になった『シン・ジラーゴ』をシネコンで観たくらい。
あんた、全作品見たの。どんだけハマったのよ。
「お嬢様は全作のジラーゴのフィギュアをコンプリートなさいました……」
「まえは、この近くに違うジラーゴ像が立ってたと知ったわ。野々宮、なんでもっと早くジラーゴを教えてくれなかったのよ!」
あ、執事さんを責めないで。ハルカ!
「まさかお嬢様が怪獣映画を見るなんて思っていなかったものですから」
「なくなった今は、写真でしか見れないじゃない!」
「あんたはイケメンが出る映画しか見なかったじゃない。なんでまたジラーゴなのよ。昔から、よめない子よねぇあんたは……」
はじめの予定が変わって、その日はジラーゴ映画の聖地巡礼になった。
つづく




